知り合いから相談を受けました。
その方は自営業者さんなんですが
自営業者が健康保険の扶養に入るハードルは高い
健康保険の扶養の条件は健康保険組合や健康保険協会により定められています。
ですから条件が違いはありますので、加入されている健康保険組合や健康保険協会に確認を取る必要があります。
なお、国民健康保険の場合にはそもそも扶養という概念はありませんのでご注意ください。
まずは奥さんがどの健康保険に入っているのか確認するところから始めるとよいでしょう。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
よくある健康保険組合の扶養の条件
前述のようにその健康保険組合や健康保険協会によって扶養の条件は異なりますが、よくあるのが以下のような条件です。(同居の場合)
直接的な経費と認められる範囲が狭い
全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合
控除できる経費の例 | 売上原価(一般所得)、種苗費、肥料費(農業所得)等 |
控除できない経費の例 | 減価償却費(一般所得、農業所得、不動産所得)等 |
出典:全国健康保険協会 扶養者とは より
減価償却費なんかははじめから経費と認められないのです。
他にも青色申告特別控除なんかも認められないですね。
デンソー健康保険組合の場合
デンソーの健康保険組合「デンソー健康保険組合」では以下のように公開しています。
必要経費とするもの | 売上原価、給料賃金 |
---|---|
必要経費としないもの | 租税公課、広告宣伝費、接待交際費、損害保険料、減価償却費、福利厚生費、利子割引料、借入金利子、販売促進費、雑費、青色申告特別控除、生命保険料控除 |
出典:デンソー健康保険組合 自営業のご家族が被扶養者になれる条件 より
直接的なものとして売上原価、給料賃金しか認められないんですよ。
さらに以下のような条件も追加で課せられています。
②従業員を雇っていないこと、または、雇っていても人件費(給料賃金)が、総額130万円未満であること。
また、ある健康保険組合では直接的な経費である「仕入」しか認めないというところもあります。
そのあたりの細かいところはWEB上では公開していないケースがほとんどですので直接問い合わせるしかありません。
年間収入は過去ではなく今後の話
また、もう一つややこしい点があります。
それは健康保険の扶養を判断する際の年間収入とは「その年の収入」ではないことです。
これから1年間見込み収入のことを指します。
つまり、今後の話なんですね。
例えば営業時間の短縮や酒類の提供禁止、外出自粛の影響で売上が大きく落ちてしまっているようなケースは一時的な経営悪化に過ぎないと判断される可能性があります。
今後も同じような状況なのかどうかということは健康保険組合等が判断することになります。
ですから基本的になかなか認めてもらえないというのが実情ですね・・・
中にははなから自営業者は扶養と認めないと内々で規定しているとこもあるとかいう噂もきいたことがありますね。
実は健康保険組合はかなり財政状態がわるいところが多く、あまり扶養等はいれたくないというのが実情のようです・・・
年金の扶養も同様
年金の扶養も同様です。
年金も奥さんが第二号被保険者(会社員向け)なら扶養に入れる可能性があります。
扶養に入れれば第三号被保険者となり、国民年金の納付は必要なくなります。(将来も国民年金を払ったものとおなじに扱われる)
ただし、こちらも扶養の条件は健康保険と同じで少々厳しいです。
今後の収入が130万円未満と認められる必要があります。
所得税、住民税の扶養
所得税の扶養は少し健康保険や年金と計算方法や考え方が違います。
こちらは年間合計所得が48万円以下であれば配偶者控除が受けられます。
こちらは所得で判断ですからわかりやすいですね。
ですから健康保険、年金と判断が変わるケースも多くなります。
配偶者控除の金額
なお、適用される配偶者控除(所得税)は納税者の所得で変わります。
控除を受ける納税者本人の 合計所得金額 | 控除額 | |
---|---|---|
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
出典:国税庁 配偶者控除より
つまり、こちらの対象になれば奥さんの所得税が減るということです。
なお、住民税も控除額は違いますが、配偶者控除の対象となることで減らすことができます。
扶養に入れなくても減免制度や支援策がある
今まで見てきたように自営業者が健康保険等の扶養に入るのはそれなりにハードルが高いことがわかっていただけたと思います。
しかし、他の救済策は使える可能性があります。
国民健康保険の減免制度
まず、検討したいのが国民健康保険の減免制度です。
国民健康保険は高いですからね・・・
令和3年の事業収入等(事業収入、不動産収入、山林収入又は給与収入)のいずれかが令和2年に比べて10分の3以上減少することが見込まれる世帯の方は適用が受けられる可能性があります。
国民健康保険の運営は自治体主体なので減免制度も県によって対応が違います。
まずは利用できるのか確認してみてください。
詳しい制度等はこちらをご覧ください。
さらに条件によっては全額免除されたり、一部免除(減免)される制度があります。
これらも基本的には自分から言い出さないと適用されない場合が多いんですよ。
合わせて確認しておきましょう。
国民年金の減免・免除・猶予
また、国民年金も減免や免除の制度があります。
条件によっては猶予が認められるケースも。
詳しくはこちらを御覧ください。
月次支援金
あまり知られていませんが、月次支援金という制度もあります。
こちらは実質的に「持続化給付金」2回目のような制度となっています。
簡単に言えば緊急事態宣言等で売上が落ち込んだ分を支給するって感じですね。
利用できる方はこちらも活用しましょう。
詳しくはこちらをご覧ください。
まとめ
今回は「自営業者の収入が大幅に減った場合に健康保険など妻の扶養に入れるのか?」と題して自営業者の扶養問題について見てきました。
なかなか健康保険の扶養に入るのはハードルが高くなっていますが、他の支援策と合わせてなんとかこの難局を乗り切っていきたいですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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