一律25%減?千葉ロッテマリーンズの資金繰り、業績はそこまで悪いのかを決算書で確認してみた

プロ野球選手会によると、千葉ロッテマリーンズの多くの選手から、下交渉の段階で査定担当者に「一律で25%ダウンからスタートする」と説明されたと報告があったことが大きな話題となっています。

 日本プロ野球選手会は5日、ロッテが今年の契約更改交渉を一律25%ダウンから始めると選手に説明しているとして抗議文を送ったと発表した。

選手会によると、ロッテの多くの選手から、下交渉の段階で査定担当者に「一律で25%ダウンからスタートする」と説明されたと報告があったという

出典:スポーツ報知 プロ野球選手会、ロッテに抗議 契約下交渉で「一律25%減から」やり直し求める より

新型コロナの規制により無観客だったり、上限が5,000人となっていたことによる業績への影響が大きかったのでしょう。

しかし、千葉ロッテマリーンズはシーズン2位で終わっていることもあり納得できない選手が多かったのか揉めているようです。

今回は千葉ロッテマリーンズの決算書を元に資金繰りや業績について確認してみました。

千葉ロッテマリーンズの決算書を確認してみた

株式会社千葉ロッテマリーンズも親会社の株式会社ロッテホールディングスも上場しておりません。

そのため、決算書は株式会社に義務化されている決算公告としてかなり簡単な貸借対照表のみ確認が可能となっています。

なお、現在手に入る最新は第72期(令和2年12月31日現在)のものです。

つまり、1年前の決算書となります。

千葉ロッテマリーンズの第72期決算公告

千葉ロッテマリーンズ第72期決算公告

出典:千葉ロッテマリーンズ  決算公告 より

  • 流動資産 2,183,613千円
  • 固定資産 2,996,327千円
  • 資産合計 5,179,940千円
  • 流動負債 2,608,191千円
  • 固定負債 1,879,623千円
  • 負債合計 4,487,814千円
  • 純資産合計 692,126千円
  • 当期純損失 540,905千円

要旨だけですのでわからない部分も多いですが、この決算書から言えることについて見ていきましょう。

当期純利益がマイナスへ

まずは当期純利益(当期純損失)です。

前年(第71期)の当期純利益は755,360千円(7億5,536万円)でした。

第71期は令和元年1月1日から12月31日でしたからまだ新型コロナの影響が出ていない時期ですね。

それが第72期では-540,905千円( -5億4,090万5,000円)と一気にマイナス転換となりました。

ただし、千葉ロッテマリーンズは創業以来ずっと当期純利益はマイナス(当期純損失)となっており、第70期(平成30年12月期)に観客が増えたことやインターネット通販が好調だったことから初めて黒字転換したばかりだったんですよ。

ですからマイナスという状況自体はそこまで特殊ではありません。

一時期は成功例として各種メディアで取り上げられた程です。

プロ野球・千葉ロッテマリーンズは、球団設立以来50年間、ずっと赤字(単体)だった。だが、2018年に球団創立以来初の単体黒字を達成した。

出典:プレジデントオンライン 「弱くて地味で50年間赤字」そんな千葉ロッテを黒字球団に変えた3つのアイデア より

それが2年ほどで大きなマイナスと転じてしまいました。

新型コロナの影響で他の球団も程度の差はあれど同様の影響がでていますね。




流動比率は100%割れだが・・・

次に資金繰りを考えて見ましょう。

貸借対照表の要旨しかわかりませんので流動比率しか確認できませんが。83.72%と100%を割っています。

流動比率:83.72%

ちなみに流動比率とは簡単に言えば近々払う必要があるお金(流動負債)をすぐお金になる資産(流動資産)でどれだけ賄えているかを示すもので高ければ高いほど資金面の安全性が高いことを示します。

つまり、高ければ資金繰り上に問題がないってことです。

ちなみに流動比率の安全性の目安は100%と言われています。

近々払う必要がある流動負債をすぐお金になる流動資産で100%賄えているということですね。

千葉ロッテマリーンズはそれを割っているということになります。

数字だけ見ると厳しそうですが、黒字だった過去の流動比率も

  • 第71期:85.82%
  • 第70期:72.10%

と100%を割っていますし、こちらの面では大きな問題はないと思われます。

小売業や飲食業など現金商売などだと上場企業でも80%くらいが当たり前にありますからね。

流動比率は簡易的な資金繰り確認ができるだけの指標で、流動負債や流動資産の中身を見てみないと判断は難しいですしね。

債務超過間近?

次に利益剰余金に着目してみましょう。

ここはよく内部留保としてやり玉に挙げられる部分で過去からの利益の蓄積などがわかります。(配当などを出していなければ)

  • 第72期:632,126千円
  • 第71期:1,173,031千円
  • 第70期:417,670千円

第72期の利益剰余金は前年までの蓄積が大きく黒字転換したばかりの70期よりはまだ多い状況ですね。

ただし、心配事があります。

プロ野球の観客規制など新型コロナの影響は2021年(令和3年)も続いています。

そのため、まだ発表されていない第73期(令和3年12月期)も第72期と同様の赤字が出ている可能性が高いです。

仮に第73期が72期と同じ赤字額となれば単純計算で利益剰余金は91,221千円まで落ちてしまいます。

もともと資本金の金額は少ないですから、2022年(令和4年)も新型コロナの影響が残って観客規制が続けば債務超過にまでなってしまうという厳しい状況となっています。

つまり、現在はまだ大丈夫だけどあと1年この状況が続けば厳しいレベルということです。

そのため、経営者からすればプロ野球球団の一番ウエイトが大きい部分であろう選手の年俸を厳しく締めるという判断はおかしくはないと思います。

一律カットという手法は選手会側からして苦情を言いたいのも理解できますけどね。

ちなみに日本ハム球団が行った「ノーテンダー」もやり方さえ違えど選手の人件費削減という目的は同じだと思われます。

千葉ロッテマリーンズも2022年が観客規制が終わっており、第70期や第71期程度まで回復すればなんら問題はない状況となるのでしょうが、楽観論で経営はできませんしね。

なお、よく勘違いされていますが債務超過だからといってすぐ倒産するという話ではありません。

また、内部留保があるからといってお金に余裕があるというわけでもありませんのでご注意ください。

議員なんかもよく勘違いしていますのでご注意ください。

親会社からの赤字補てんも期待できない?

なお、プロ野球は親会社からの赤字補てんが広告費として税務上認められているという特殊な部分もあります。

そのため、多くの赤字を垂れ流しながらプロ野球球団を運営しているという実情がありました。(最近は単独黒字の球団が増えているようです)

ただし、千葉ロッテマリーンズはその点もあまり期待できないかもしれません。

親会社のロッテホールディングスも非上場企業ですから直接決算書は確認できませんが、報道によると厳しい状況のようです。

コロナ禍での韓国事業の不振などにより、21年3月期の連結売上高は前期から1兆2394億円減の5兆498億円。親会社株主に帰属する当期純損失は1012億円を計上した。

出典:ダイアモンド・オンライン ロッテHDが過去最大1000億円超の最終赤字、悲願の子会社上場に黄信号?

当期純損失は1,012億円、売上も1兆2,394億円減の5兆498億円とかなり厳しい状況となっていますね。。。

これでは千葉ロッテマリーンズへの赤字補てんはあまり期待できないですね・・・



まとめ

今回は「一律25%減?千葉ロッテマリーンズの資金繰り、業績はそこまで悪いのかを決算書で確認してみた」と題して千葉ロッテマリーンズの決算書を見てみました。

詳細がわからない要旨だけ、しかも貸借対照表だけですからそこまでわかりません。

しかし、これだけみてもあと1年観客規制などの状況が続いていくと債務超過になる可能性すらあるということが分かります。

ですから千葉ロッテマリーンズの対応もわかりますし、選手会が反発するのもわかるという状況です。

新型コロナの蔓延が早めに終わってくれれば問題は解決しそうなんですけどね。

なお、決算書の見方はこちらからどうぞ。

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