プロ野球セパ12球団の決算書を比較してみた。観客規制の影響はどこまででているのか?

プロ野球を巡って最近不穏なニュースが多く流れるようになっています。

まず、注目されたのがプロ野球選手会により抗議があった千葉ロッテマリーンズの多くの選手から、下交渉の段階で査定担当者に「一律で25%ダウンからスタートする」と説明されたことです。

なお、本件については選手と担当者との間に行き違いとのことで一律のダウンからスタートについてロッテ側は否定しています。

また、日本ハムファイターズが主力選手3名を「ノーテンダー」という実質自由契約という思い切った策を講じるなど厳しい経営環境が想定される話が続いています。
そこで今回は新型コロナ環境下での無観客化や観客動員人数の上限規制があることでの影響がどのくらいあったのかをプロ野球セパ12球団の決算書を元に考えてみました。

プロ野球セパ12球団の決算書比較

それではプロ野球セパ12球団の決算書を比較してみましょう。

なお、プロ野球球団は詳細の決算書を発表しているところはありません。

決算公告によるものとなります。

そのため、義務化されている簡単な貸借対照表のみ確認が可能となっていますのでわかる範囲は限られるんですよ。(ソフトバンクのみが簡単な損益計算書も公開)

また、球団により決算日が異なりますので単純比較できない部分もありますのでご注意ください。

※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。

なお「ー」なっているのは非開示の部分です。

決算日売上高当期純利益資産合計負債合計株主資本利益剰余金
東京ヤクルトスワローズ2020年12月31日△149百万円4,450百万円3,736百万円713百万円23百万円
阪神タイガース2021年3月31日△1,407百万円16,092百万円8,631百万円7,396百万円7,348百万円
広島カープ2020年12月31日△2,934百万円15,733百万円9,671百万円6,061百万円5,737百万円
横浜DeNaベイスターズ2020年12月31日524百万円16,476百万円10,551百万円5,925百万円5,275百万円
オリックスバッファローズ2021年3月31日2,237百万円2,145百万円92百万円△8百万円
千葉ロッテマリーンズ2020年12月31日△540百万円5,179百万円4,487百万円692百万円632百万円
東北楽天ゴールデンイーグルス2020年12月31日16百万円10,891百万円10,108百万円783百万円△16百万円
福岡ソフトバンクホークス2021年2月28日22,996百万円△7,520百万円113,459百万円95,352百万円18,106百万円1,291百万円
北海道日本ハムファイターズ2020年12月31日△39百万円9,801百万円655百万円9,146百万円8,946百万円
埼玉西武ライオンズ2021年3月31日△2,471百万円7,207百万円4,759百万円2,448百万円2,348百万円

読売ジャイアンツと中日ドラゴンズは不明

上記の表に読売ジャイアンツと中日ドラゴンズが載っていないので不思議に思った方もみえるでしょう。

読売ジャイアンツと中日ドラゴンズはWEBや官報等に決算公告を出していません。

そのため、決算公告の内容を確認できませんでしたので比較から外しています。

ちなみに会社の規模や上場、非上場の有無に寄らず全ての株式会社は決算公告を義務付けられています。

一般的な企業は貸借対照表のみ、大企業は貸借対照表と損益計算書を官報、もしくは日刊紙、WEBページで公告しなければなりません。

おそらく両球団は親会社が新聞社ですので自社の日刊紙に掲載しているんだと思います。

なお、読売ジャイアンツについては読売新聞グループ本社と傘下の読売新聞東京本社、同大阪本社、同西部本社、読売巨人軍、中央公論新社の基幹6社の合計としては発表されています。
当期純損失4,185百万円でした。



多くの球団が赤字に・・・

横浜DeNaベイスターズと東北楽天ゴールデンイーグルスを除いた7球団が赤字となっています。

※前述のとおり、読売ジャイアンツと中日ドラゴンズは不明。オリックスは当期純利益が非開示。

新型コロナの規制により無観客だったり、上限が5,000人となっていたことによる業績への影響が大きかったのでしょう。

かなり厳しい環境に置かれていたのが分かります。

最も赤字幅が大きかったのは福岡ソフトバンクホークスです。

選手年俸という固定費が大きい球団ですからどうしても売上が上がりにくい現在の状況では仕方ない部分もありますね。

また、横浜DeNaベイスターズがどのように黒字を確保したのか気になるところです。

筒香のポスティング(譲渡金がもらえる)分もあるでしょうし、もしかしたら後述する親会社からの赤字補てんがあるのかもしれません。

このあたりはもう少し詳細な決算書がないとわかりませんね・・・

利益剰余金がマイナスが2球団あり

また、利益剰余金がマイナスとなってしまっている球団が楽天とオリックスの2球団あります。

利益剰余金はよく内部留保として政治家などにやり玉に挙げられる部分で過去からの利益の蓄積などがわかります。(配当などを出していなければ)

東北楽天ゴールデンイーグルスは資本金が大きいので株主資本がマイナスとなってしまう債務超過までまだ余裕がありますが、オリックスはあと92百万円以上赤字が出ると債務超過というギリギリのところに来ています。

2021年はパ・リーグで優勝しましたので盛り返している可能性はありますが、当期純利益が非開示ですのでなんとも判断が難しいところ。

他の球団も先日一律で25%ダウンで話題となった千葉ロッテや西武ライオンズもあと1年から2年現在のような観客の上限がある状況が続けば債務超過の可能性が高そうな数字となっていますね・・・

現在公開されている決算書は千葉ロッテが2020年12月31日時点。

西武ライオンズが2021年3月31日のものです。

それ以降も新型コロナの影響での観客規制は続いていましたので更に数字は悪化している可能性があります。

ノーテンダーを行った日本ハムはまだ余裕がありますね。

なお、よく勘違いされていますが債務超過だからといってすぐ倒産するという話ではありません。

決算公告レベルの数字だけだとこのあたりは判断しづらいというのが正直なところでしょう。

また、内部留保があるからといってお金に余裕があるというわけでもありませんのでご注意ください。

議員なんかもよく勘違いしていますのでご注意ください。




プロ野球は親会社からの赤字補てんが広告宣伝費

なお、プロ野球は親会社からの赤字補てんが広告宣伝費として税務上認められているという特殊な部分があります。

親会社が、球団の当該事業年度において生じた欠損金(野球事業から生じた欠損金に限る。以下同じ。)を補てんするため支出した金銭は、球団の当該事業年度において生じた欠損金を限度として、当分のうち特に弊害のない限り、一の「広告宣伝費の性質を有するもの」として取り扱うものとすること。

出典:国税庁 職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について より

そのため、昔は多くの球団が赤字を垂れ流しながら広告としてプロ野球球団を運営しているという実情がありました。(最近はパ・リーグ球団が営業努力をしたこともあり単独で黒字の球団が増えているようですけどね。)

ですから本当の実情を確認するには球団単独ではなく親会社の状況を確認する必要があります。

ただし、利益がでていないと広告宣伝費と認められても税務上のメリットがなく赤字補てんも厳しいでしょうからここでは親会社の利益がどれくらいあるのかを見てみましょう。

親会社の利益一覧

なお、今回の比較は上場会社、非上場会社が混じっているのもあり、計算基準が異なります。

そのため、会社により「親会社株主に帰属する当期純利益」もしくは「当期純利益」となっています。

ですので単純な比較できませんので目安としてお考えください。※広島カープは親会社がありません。

  • ヤクルト:39,267百万円(2021年3月31日)
  • 阪神阪急HD:△36,702百万円(2021年3月31日)
  • 読売新聞グループ:1,559百万円(2021年3月31日)
  • 広島カープ:親会社なし
  • 中日新聞社:2,958百万円(2021年3月31日)
  • ディー・エヌ・エー:25,630百万円(2021年3月31日)
  • オリックス:192,384百万円(2021年3月31日)
  • ロッテHD △2,389億ウォン(2021年3月31日)
  • 楽天:△115,016百万円(2020年12月31日)
  • ソフトバンクグループ:4,987,962百万円(2021年3月31日)
  • 日本ハム:32,616百万円(2021年3月31日)
  • 西武HD:△72,301百万円(2021年3月31日)

ソフトバンクが圧倒的利益

まず目につくのがソフトバンクグループが圧倒的な利益を出していることでしょう。

他と桁が違いますね。

楽天、阪神阪急HD、ロッテHD、西武HDは赤字

逆に楽天と阪神阪急HD(阪神タイガース親会社)、ロッテHD、西武HDが親会社も厳しい結果となっています。

楽天は楽天モバイルの負担が大きいようで営業利益段階でマイナスとなっていました。

阪神阪急HDと西武HD、ロッテHDは子会社の鉄道やホテルなどがコロナの影響を大きく受けた部分が大きいのでしょう。

中日新聞は読売新聞よりも利益を出している

中日ドラゴンズ親会社の中日新聞社は本業でもライバルの読売新聞グループ(読売ジャイアンツ親会社)よりも大きな利益がでています。

ただし、これは一時的なものです。

年金制度の変更に伴う2,183百万円の特別利益がでたことが大きいですね。




まとめ

今回は「プロ野球セパ12球団の決算書を比較してみた。観客規制の影響はどこまででているのか?」と題してプロ野球球団の決算書を比較してみました。

多くの球団が赤字となるなど厳しい状況下にあるのは確かなようです。

ただし、過去からの蓄積で余裕もある球団もありますね。

親会社も業績がよいところ、悪いところが分かれています。

今後の球団運営にもこのあたりは影響してきそうです。

新型コロナの蔓延が早めに終わってくれれば各球団の問題は解決しそうなんですけどね。

なお、決算書の見方はこちらからどうぞ。

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