2023年に天引きされる税・社会保険料の負担が50%を超えるってホント?調べてみた

SNSで「サラリーマンが天引きされる税・保険料負担が増加 2023年に負担率50%超へ」という記事が話題となって何度も回ってきました。

所得税も社会保険料増えており、負担率が2023年に50%を超えるというのです。

確かに健康保険は国民健康保険の上限が引き上げられますし、下記の健康保険組合の見通しを見てもかなり厳しそうですからわかります。

しかし、その他はそこまで変わっていませんし、合わせて50%もいくか?とちょっと疑問だったので元記事をちゃんと調べて見ました。
結論から言えばちょっとびっくりの内容な記事ですね・・・

税・社会保険料の負担が50%を超える??

まずは元記事の内容から確認してみましょう。

税・社会保険料の負担が50%を超える

出典:マネーポストWEB サラリーマンが天引きされる税・保険料負担が増加 2023年に負担率50%超へ

現在(2021年)には負担率が46%だったものが2年後の2023年には50.05%と50%を超えるというのです。

年々負担が増えていっているという話にはなんら異論はありませんが、センセーショナルな記事にしたいがためなのかちょっと盛っている部分もあるんですよ

具体的に見ていきましょう。

天引きの話のはずなのに会社負担の社会保険も含まれている

まずいちばんはじめに指摘したいのは上記の表には会社負担分がそのまま組み入れられていることです。

この記事のタイトルは「サラリーマンが天引きされる税・保険料負担が増加 2023年に負担率50%超へ」です。

グラフのタイトルも「約20年間で給料から天引きされる税・保険料負担率は10%も増えていた」です。

そのため、このグラフはサラリーマンの給料から天引きされる税・保険料の話だととらえるのが普通でしょう。

しかし、実際にグラフの中で使われている数字には天引きされない会社負担分の金額も含んだ率で計算されているんですよ。

まず健康保険も厚生年金も介護保険も半分が会社負担です。

つまり、天引きされるのは上記のグラフにある数字の半分となります。

例えば東京の一般の事業の令和3年度は以下の負担となります。

厚生年金保険料:労働者負担 9.15%、会社負担9.15%(令和3年度)
健康保険料(介護保険なし):労働者負担 4.92%、会社負担4.92%(令和3年度、東京)
健康保険料(介護保険あり):労働者負担 5.82%、会社負担5.82%(令和3年度、東京)
だいぶ印象が違いますよね。

また、雇用保険は事業の種類によって多少異なりますが労働者負担は3分の1程度です。

令和3年度の一般事業の場合こんな感じですね。

雇用保険:労働者負担0.3%、会社負担0.6%(令和3年度)

つまり、サラリーマンが天引きされる税・保険料負担の話のはずなのに会社負担分も入ってしまったミスリードとなってしまっているのです。

一応図の下の方に「社会保障料は会社負担分も加えている」って小さく書いてはありますが・・・

年々社会保険料の負担が増えているのは確かですが、会社負担を含めてしまうと話の前提が全然違ってしまいます。

タイトルでサラリーマンが天引きされる税・保険料負担が増加と言うなら会社が負担をしている分は除いてグラフ化すべきでしょう。

会社負担の分も本来であれば本人の給料に回るはずという主張があるのも分かりますが、それとこれとは別の話。

この記事タイトルでこのグラフの見せ方はどうかと思うわけです。

2023年の天引きされる税・社会保険は50.05%としていますが、会社負担分(厚生年金9.15%、健康保険6%、介護保険1.4%、雇用保険1.3%)を引くと32.2%なんですよ

さらに税金もおかしいのです・・・・

所得税、住民税も控除が未考慮

次に税金(所得税+住民税)15%もちょっとおかしな話です。

15%は額面30万円の方が前提とのことですから、所得税5%+住民税10%として計算されているのでしょう。

しかし、所得税・住民税は基礎控除や扶養控除など各種控除があります。

また、今回の問題となっている社会保険料が増えれば社会保険料控除も増えるのです。

本来であればそれらを引いたあとに税率を掛けるわけで額面からみた実質的な税率はだいぶ低いんですよ。

天引きですから源泉徴収される所得税としても額面30万円の方は扶養0人だと8,420円。扶養1人いると6,740円となります。

額面との割合で見ると3%切る数字ですね。

また、天引きされる住民税は前年のもので控除等は合わせて計算済みです。

ですからこの前提なら合計15%もいかないという・・・

所得税は所得によって税率も異なってきますので一概には言えませんが、とりあえず控除を考慮せず15%とするのはミスリードとなってしまっているのです。

グラフはミスリードですが結論は理解できないでも・・・

たしかに今回のマネーポストWEBの記事は間違えたグラフの見せ方をしていますのでどうかと思います。

しかし、「隠れ増税」なんとかしろっていう結論というかこの記事で言いたいことは理解できないでもないですよ。

ですからちゃんとした数字つかってもその主張はできるはずなんですけどね。

話題にしたくて盛ったんだとは思いますが・・・

と一応フォローしておきます。

 年金生活者やサラリーマンは社会保険料の負担増で手取り収入が減り続けているにもかかわらず、「隠れ増税」で議員に税金を貢がされている。

出典:マネーポストWEB サラリーマンが天引きされる税・保険料負担が増加 2023年に負担率50%超へ




まとめ

今回は「2023年に天引きされる税・社会保険料の負担が50%を超えるってホント?調べてみた」と題して話題の記事を調べてみました。

昔から統計の世界でよく言われている有名な言葉があります。

数字は嘘をつかない。嘘つきが数字を嘘に使うのだ

です。

こういった目的があってそれ用に作られたグラフや統計って本当に多いんですよ。

今回はWEBメディアでしたが、雑誌、テレビなどでもよく見かけます。

そういったまやかしに騙されず判断できるようにしたいものです。

統計の嘘に騙されないポイントはこちらの記事を御覧ください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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