健康保険組合の見通しがかなりやばい件。大きな見直しが必要な時期が到来

先日、自営業者等が加入する国民健康保険の上限が3万円引き上げられるニュースをご紹介しましたが、サラリーマン等が加入するう健康保険組合もかなり厳しい見通しとなっているようです。

健康保険組合の決算状況が悪ければ当然、健康保険の金額や給付に影響が出てくることは避けられないでしょう・・・

今回は健康保険組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)から発表された2021年度(令和3年)の決算見通しについて詳しく見ていきましょう。

健康保険組合の令和3年度予算:経常収支の状況

令和3年度(2021年)の健康保険組合の決算予想(1,387組合)は以下のようになっています。

健康保険組合令和3年度経常収支見通し

出典:健康保険組合連合会 「令和2年度 健康保険組合 決算見込状況について」より

健康保険組合の経常収入

まず普通の企業の売上にあたる「経常収入」は8兆1,181億円と予想されています。

令和2年が8兆3,423億円ですから2,242億円(2.7%)減っています

主な要因はそもそもの保険料収入が減っていることです。

この保険料収入とはサラリーマンの方が給料から引かれて納めている健康保険のこと。

給料があがらないという予想ということでしょうね。

経常支出

次に普通の企業で言えば経費に当たる「経常支出」です。

こちらは8兆6,278億円と予想されています。

令和2年が8兆5,729億円ですから550億円(0.6%)増えています。

主な要因は後期高齢者支援金287億円(1.4%)増、前期高齢者納付金1,007億円(6.5%)増となっています。

これは高齢者医療費の負担を行っているものです。

つまり、構造的な問題なんですよ。

もともと2025年問題といって戦後のいわゆるベビーブームで生まれた世代(約800万人)が75歳の後期高齢者に達するという少子高齢化は問題視されていましたが、その影響がで始めていると言ってもよいでしょう。

まだ2025年になっていませんから今後さらにこの傾向は強くなることが予想されます。

経常収支差引額

経常収入と経常支出の差である経常収支差引額は5,098億円となっています。

つまり5,098億円の赤字ということです。

前述のように赤字の理由は給料が上がらず保険料収入が増えないこと。

高齢者が増加し負担が増えてきたということです。

とくに後者はこれからが本番ですからさらに悪化することが目に見えてしまっている状況です。

赤字の健康保険組合は77.9%

1,387組合の健康保険組合のうち赤字予算となっているのは1,080組合です。

実に77.9%が赤字なんですよ。

令和2年の予算では65.6%ですから12%以上予算段階で赤字の割合が増えてしまったという・・・

赤字の健康保険組合の割合

出典:健康保険組合連合会 「令和2年度 健康保険組合 決算見込状況について」より

黒字の健康保険組合もまだありますが。307組合に過ぎません。

ただし、黒字組合の黒字総額でも505億円しかなくとても裕福な状況とは言えなくなっていますね。

昔はIT系など加入者が比較的若い健康保険組合がかなり大きな黒字を出してて給付なども充実していましたがそういう状況でもなくなってきたのでしょう。

健康保険組合を作る意味は?

個人的に今回発表された「令和2年度 健康保険組合 決算見込状況について」で一番インパクトがあったのは下記の業態別平均保険料率及び実質保険料率のデータです。

健康保険組合保険料率

出典:健康保険組合連合会 「令和2年度 健康保険組合 決算見込状況について」より

平均保険料率及び実質保険料率のどちらかが10%を超えている業態が4つもあるんですよ。

  • 印刷・同関連品、
  • 飲食品小売業
  • 宿泊業、飲食サービス業
  • 複合サービス業

飲食品小売業と宿泊業、飲食サービス業はわかりやすく新型コロナの影響を受けた業種ですね。

会社員等が加入する健康保険には今回ご紹介している「組合健保」とそれに加入していない企業が加入する「協会けんぽ」があります。

一般的には「組合健保」のほうが福利厚生が充実していたり、保険料率が独自で決められますので低く押さえられるケースが多くメリットがあります。

しかし、このメリットも赤字となっている健康保険組合では出せなくなっていると思われるです。

「協会けんぽ」は県ごとに保険料率は異なりますが、令和3年度の平均保険料率は10%です。

つまり。一部の健康保険組合では「協会けんぽ」と同等もしくは高い保険料率となってしまっているということなのです。

給付部分でメリットがある可能性もなきにしもあらずですが、赤字が多い状況では今後も継続するのはかなり難しいでしょう。

つまり、そもそも一部の健康保険組合では設立メリットが消えてしまっているという状況なのです。

協会けんぽと組合けんぽの違い等について詳しくはこちらの記事を御覧ください。




まとめ

今回は「健康保険組合の見通しがかなりやばい件。大きな見直しが必要な時期が到来」と題して健康保険組合の見通しについてみてきました。

2025年が徐々に近づいていますが、その前の今の時点でもかなりやばい状況となりつつあるのがわかりますね。

すでに人材派遣健保組合(人材派遣の健康保険組合)や日生協健保組合(生協の健康保険組合)が解散するなど厳しい環境にあった健康保険組合。

さらに解散が相次ぎそうな予感しかないですね。

厚生年金を国民年金の財源に回すことも検討されるなどこれまた厳しい状況にある年金も含めて社会保険と税金を抜本的に考え直す時期に来てるのは確かでしょう。

年金などの社会保険を見直そうとすると政権が倒れると言われるほど既得権益が強い部分ですから難しいのでしょうが・・・

18歳以下に一律10万円の給付とかバラマキをやっている場合ではないと思うのです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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