びっくりするニュースが流れてきました。
多くの会社の確定給付年金を預かる日本生命保険が予定利率を21年ぶりに引き下げることを発表したのです。
日本生命保険と契約している企業は約5200社で、受託残高は6兆6939億円(21年3月末時点)とかなり影響は大きいものとなります。
今後、他の保険会社なども追随する可能性がありますので、老後資金を見直す必要もでてくる方もいそう・・・
今回はこのニュースをわかりやすく解説していきます。
日本生命の団体年金商品の予定利率引き下げ概要
まずは今回の発表内容から確認してみましょう。
日本生命保険相互会社は2023年4月1日から、団体保険一般勘定の確定給付企業年金保険、厚生年金基金保険、新企業年金保険の保険料率(予定利率及び手数料率)を改定します。
予定利率は、現行の1.25%から0.50%に引き下げるとともに、お客様から引受額に応じて手数料率についても、その上限を0.50%から0.35%に引き下げます。
出典:日本生命保険相互株式会社 団体年金保険一般勘定の保険料率の改定について より
1.25%から0.50%とかなり大きな引き下げとなります。
改定は2023年4月からとなります。
しかも改定は21年ぶりとのこと・・・
なお、保険会社の取り分の手数料も合わせて改定されていますが、予定利率を考えると手数料はかなり高いですね笑
0.5%の利率のものを0.35%(上限)の手数料払うって。。。
また、報道では確定給付年金の話ばかりでしたが、厚生年金基金の方も引き下げとなるようです。
確定給付型企業年金は運用が会社責任
今回の話の前提となる確定給付型企業年金についても解説しておきましょう。
確定給付型企業年金とは国民年金、厚生年金にプラスして、企業が積み立てて従業員の退職後に年金や一時金として支給する年金制度のこと。
年金制度の全体像は以下のとおりですが、年金の3階部分にあたるものですね。
企業型DC(確定拠出年金)は企業が拠出額を決めて従業員が運用するものですが、確定給付型企業年金は従業員が最終的に受け取る金額があらかじめ決められたものとなります。
- 確定給付:従業員に最終的に払う金額が確定(運用、責任は企業側)
- 確定拠出:会社が従業員に拠出する金額が確定(運用、責任は従業員)
ですから、確定給付型企業年金の場合、運用がうまくいかなければ企業の負担が増える形となるのです。
自社で運用しているとそのリスクをもろ被りとなりますので、保険会社などの予定利率を定めたところに運用を委託しているケースが多いのです。
その運用を委託されてる会社の一つが日本生命保険なのですが、今回、企業年金用の保険の予定利率の変更を発表したということになりますね。
また、最近は運用やその責任を従業員側におく、企業型DC(確定拠出年金)にシフトしている企業が少しずつ増えてきてはいますが、それでも2021年3月時点で確定給付年金加入者は933万人、企業型DC(確定拠出年金)加入者は750万人とまだまだ確定給付年金利用者のほうが多いんですよ。
なぜ予定利率を引き下げるのか?
それではなぜ今回、予定利率の引き下げが発表されたのでしょうか?
こちらも同じIRで以下のように述べてます。
長期金利の低迷が長らく継続するなど、将来にわたって予定利率を維持することが困難な状況を踏まえ、予定利率の引き下げを決定しました
出典:日本生命保険相互株式会社 団体年金保険一般勘定の保険料率の改定について より
低金利の影響ということですね。
日本は金融緩和を続けており、超低金利となっていますので仕方ない部分もあるでしょう。
ただし、最近はアメリカなど利上げの方向に舵をきっている国も多く世界的にみるとそうでもないんでしょうけどね・・・
また、IRには書かれていませんが2025年に導入される資本規制で、実際の市場金利より高い予定利回りを約束している場合、負債が膨らみやすくなるよう改正されますので、その部分の影響も大きいのでしょう。
他の保険会社や同様の商品を提供しているところがどう判断するのかは注目です。
自営業者などが加入する国民年金基金も現在1.5%の利回りですが、準備金不足が問題となっていますからどう判断されるか・・・
個人保険・個人年金保険の予定利率も引き下げ
今回発表されたのは日本生命保険の企業年金の予定利率でしたが、先立って2022年1月には個人保険・個人年金保険の予定利率の引き下げも発表しています。
主な対象商品のの予定利率は以下の通り。
出典:日本生命保険相互株式会社 保険料率等の改定について 2022年1月13日 より
年金保険などでも予定利率0.6%まで低下しています。
これ入る意味あるの??ってレベル・・・
予定利率引き下げでどうなる?従業員の老後資金
それでは今回の予定利率の引き下げで従業員の老後資金等はどうなっていくのでしょう?
いくつか考えられます。
企業が負担を増やす:従業員側の影響なし
まずひとつ目に考えられることは企業が掛け金を積み増しすることで、従業員の受け取れる金額は変わらないというパターンです。
日本生命保険が予定利率を引き下げたとしても、企業と従業員の支払う退職金・年金規定などをそのままにするならばこちらの方法を取られる形となります。
ただし、今回の改定は予定利率が1.25%から0.50%に下がるというかなり大きなものですから、それを全て会社が負担となれば大きな影響となります。
それをどう判断するのか・・・
また、企業の負担を増やせば、当然企業業績の悪化材料となります。
企業年金がそのままだったとしても、賞与や給料などに間接的に反映はされそうですね。。。。
他の運用会社に乗り換え:従業員側の影響なし
もう一つが他の運用会社への乗り換えというケースです。
第一生命が2021年10月に年1.25%から0.25%に引き下げた時はかなり他社に流れたとのこと。
今回も同じような形となる可能性もあります。
ただし、第一生命、日本生命と大手の引き下げが相次いでいるということは、各社とも運用が厳しいという状況が見て取れますので、乗り換えた先もいつまで今の予定利率を維持できるのかは未知数です。
企業型DC(確定拠出年金)に移行:従業員側の影響あり
また、運用、運用責任を従業員が取る形となる企業型DC(確定拠出年金)への移行が更に進みそうです。
企業型DC(確定拠出年金)は企業側からして運用の責任は負いませんし、従業員からしても運用を選択できるメリットもありますから右肩上がりで加入者が増えています。
今回の予定利率引き下げは企業型DC(確定拠出年金)への移行のさらなるきっかけとなりそうです。
ちなみにiDeCo(イデコ)は個人が加入するタイプの確定拠出年金ですね。
掛け金を企業が負担するか、個人が負担するかが主な違いです。
年金、退職金を減額:従業員側の影響あり
もう一つ考えられるのが従業員に支払われる年金や退職金のルールを変えて減額することです。
ただし、日本は従業員の力が強い国ですから、既得権益でなかなか減額というのはやりにくいのですが・・・
業績悪化等の理由が明確なら認められるでしょうけどね。
こうなる可能性も否定できませんので、従業員個人側としてできるのは自分で老後資金を少しでも用意しておくことでしょうね。
前述したiDeCo(イデコ)やつみたてNISAなんかは税制優遇もありますのでおすすめです。
詳しくはこちらを御覧ください。
まとめ
今回は「日本生命が企業年金の予定利率を1.25%から0.5%へ大幅引き下げ。どうなる?従業員への影響は?」と題して日本生命の企業年金の予定利率引き下げのニュースを見てきました。
昨年の第一生命に続いて日本生命まで予定利率の引き下げを発表しました。
今後も同様のニュースが出てくる可能性もあるでしょう。
従業員側としてできるのは自分である程度老後資金の備えをしておくことでしょうね。
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