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【SaaSの死は嘘?】43兆円消失の裏にある"論理矛盾"を読み解く

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【SaaSの死は嘘?】43兆円消失の裏にある"論理矛盾"を読み解く

ある朝、あなたが信じて疑わなかった優良SaaS企業の株価が、音を立てて崩れ去る。

そんな未来が、現実のものになろうとしています。

わずか1日で優良SaaS企業の株価が43兆円を吹き飛んでしまったのです。

2026年2月、Anthropic Shockと呼ばれるSaaS株の大暴落が世界を襲い、日本市場にも飛び火しています。

しかし、冷静に数字を追うと、この恐怖には"致命的な論理矛盾"が潜んでいます。

本記事では、「SaaSの死」の全貌と投資家が取るべき行動を、ファクトに基づいて解き明かします。

目次

そもそもSaaSとは何か

SaaSとは「Software as a Service」の略で、インターネット経由でソフトウェアを利用するサービスモデルのことです。

以前は業務ソフトをCDやDVDで購入し、パソコンにインストールして使うのが当たり前でした。

それが、クラウド技術の発展とともに「月額課金でネット上から使える」形へと進化したのがSaaSです。

身近な例を挙げましょう。

Salesforce(顧客管理)、freee(クラウド会計)、Sansan(名刺管理)、Slack(ビジネスチャット)。

これらはすべてSaaS型のサービスです。

企業はサーバーを自社で持つ必要がなくなり、常に最新の機能が使えるため、世界中で爆発的に普及しました。

SaaS企業側にとっても、「1ユーザーあたり月額〇〇円」というサブスクリプション型の課金モデルは、安定した収益をもたらす優れたビジネスモデルでした。

2020年のコロナ禍でリモートワークが一気に普及すると、SaaSの導入は爆発的に進みました。

株式市場でも毎月の請求書(ARR:年間経常収益)が積み上がるビジネスモデルで「成長株の代名詞」として高い評価を受けてきたのです。

しかし2026年2月、この20年間にわたる"SaaS神話"が、たった一つのAIツールの発表で揺らぎ始めました。

「SaaSの死」とは何か

それではSaaSの死とはどのようなものなのでしょう?

発端:Claude Coworkと11のプラグイン

2026年1月30日、AI企業のAnthropic(アンソロピック)が「Claude Cowork」というAIツールに、11種類の業務プラグインをGitHub上で無料公開しました。

法務、財務、営業、マーケティング、カスタマーサポートなど、これまでSaaSが得意としてきた業務領域のほぼ全域をカバーする内容です。

従来のAIは「質問すれば答えてくれるチャットボット」でした。

しかしClaude Coworkは違います。

PC上のファイルを直接読み取り、資料を作成し、保存まで自動でこなす。

いわば「自分で手を動かすAI」です。

さらにプラグイン同士が連携することで、市場調査からコピーライティング、営業リスト作成まで、人手を介さずに一気通貫で処理できることが実証されました。

ここで投資家が恐れたのは、シンプルな構造変化です。

それは、「人間がソフトウェアの画面を操作して仕事をする時代の終わり」です。

私たちはこれまで、ソフトウェアの「使い方」を学ぶために膨大な時間を費やしてきました。

操作マニュアルを読み、研修を受け、資格まで取得してきました。

しかし、AIエージェントが普及すれば、人間がソフトウェアに直接触れる機会は激減します。

人間はAIに「目的」を伝えるだけ。あとはAIが裏側で複数のSaaSを叩き、結果だけを持ってくる。

つまり、SaaSは「人間が使うもの」から「AIがアクセスする単なるデータ保管庫」へと降格させられるのです。

これが、「SaaSの死(Death of SaaS)」あるいは「SaaSpocalypse(SaaS大暴落)」と呼ばれる衝撃の正体です。

Anthropic Shock

市場の反応は凄まじいものでした。

2026年2月3日、世界中のSaaS関連株が一斉に暴落。複数の海外メディアの報道によると、わずか数日間で約2,850億ドル(約43兆円)の時価総額が消失しました。

この衝撃は「Anthropic Shock(アンソロピック・ショック)」と名付けられています。

2月4日の日本市場でも、SaaS銘柄が軒並み急落しました。

銘柄名下落率(2/4)事業内容
ラクス-13.50%クラウド経費精算など
Sansan-12.45%クラウド名刺管理
弁護士ドットコム-9.29%法務SaaS
freee-9.00%クラウド会計

(出典:各種報道、NewsPicks、2026年2月4日データ)

この波はSaaS企業だけに留まりませんでした。

2月24日にはベイカレント・コンサルティングが13.8%安、トレンドマイクロが13.7%安と、「AIが既存サービスを代替する」というテーマで、コンサルティングやサイバーセキュリティ企業まで巻き込まれています。

IBM株25年ぶり大暴落

Anthropic Shockの波は、さらに意外な方向へ広がりました。

2026年2月23日、AnthropicはAIコーディングツール「Claude Code」がCOBOL(コボル)のモダナイゼーションに活用できるとブログ記事で発表しました。

これを受けてIBM株は1日で13.2%暴落。Bloombergによれば、2000年10月以来、実に25年ぶりの大幅下落となり、2月だけで27%下落と1968年以来最悪の月間パフォーマンスを記録する見通しです。

COBOLとは1959年に開発されたプログラミング言語です。

約65年前の言語がなぜ今、市場を揺るがすのでしょうか。

実は、COBOLは今も世界の金融インフラの根幹を支えています。

Anthropicのブログによると、米国のATM取引の約95%がCOBOLで稼働しているとされます。

航空予約システムや政府機関の基幹業務にも使われています。

問題は、COBOLを理解できる技術者が年々減少していること。

引退した開発者の知識が次世代に引き継がれず、システム移行のリスクとコストが膨れ上がっていたのです。

AnthropicはClaude Codeが、従来コンサルタントが数か月かけて行っていたCOBOLコードの解析、依存関係のマッピング、リスク評価を自動化できると主張しました。

投資家はこれを「IBMのメインフレーム事業の根幹が脅かされる」と解釈し、大量の売りが出たのです。

ここに、SaaSの死との"接点"があります。

SaaSの死が「業務ソフトのAI代替」なら、COBOL問題は「レガシーシステムのAI代替」です。

つまり市場は、AIが代替できる領域が"新しいソフト"から"古いインフラ"まで、想像以上に広いことに恐怖したのです。

「SaaSの死」に潜む致命的な論理矛盾

ここまで読むと、「SaaSは本当に終わるのか」と不安になる方も多いでしょう。

しかし、ここからが本記事の核心です。

大暴落には論理矛盾あり

Bank of Americaのシニアアナリスト、ヴィヴェク・アリヤ氏のチームは2026年2月のレポートで、今回の売りは「2つの矛盾するシナリオに基づいている」と鋭く指摘しました(出典:Fortune、2026年2月4日)。

矛盾の構造は、こうです。

シナリオA:悲観論シナリオB:楽観論
AI投資のROIが低く、成長は持続不可能 → AI企業に投資しても意味がないAIの普及が進みすぎて、既存のソフトウェアが完全に陳腐化する → SaaS企業は消える

お気づきでしょうか。

「AIは大して使えない」と「AIは強すぎてSaaSを全滅させる」は、同時に成立しません。

AIの投資対効果が低いなら、SaaSを駆逐するほどのパワーはないはずです。

逆にAIがSaaSを本当に代替できるなら、AI企業への巨額投資は正当化されます。

このことからBank of AmericaはDeepSeekショック(2025年1月)と同様の「過剰反応」である可能性を指摘し、NVIDIAのジェンスン・ファンCEOも「ソフトウェア業界がAIに取って代わられるというのは、世界で最も非論理的なことだ」とコメントしています。

さらに、Gartnerは「エンタープライズアプリケーションの死は大げさに語られている」と題したレポートを発表。

タスクレベルのAIエージェントは業務に影響を与えるものの、企業の基幹業務を管理するSaaSアプリケーションの代替にはならないとの見方を示しています。

COBOL問題にも同じ"過剰反応"がある

IBMのSVPロブ・トーマス氏は、Anthropicの主張に対して自社ブログで反論しています。

「コードを別の言語に翻訳することと、メインフレームのシステム全体をモダナイズすることは全く別の話だ。近代化の課題はCOBOL言語の問題ではなく、アプリケーションが稼働する環境すべてとの統合の問題だ」と。

実際、IBM自身が2023年からAIを使ったCOBOLの書き換え(watsonx Code Assistant for Z)に取り組んでおり、Anthropicが"発見"したことは業界にとって新しい話ではありません。

The Registerは「IBMは3年前から同じことを言っている」と指摘しています。

IBMのインフラ部門の2025年通年売上は前年比12%成長、第4四半期は21%成長と好調であり、メインフレーム事業の基盤は崩れていません。

AIが本当に変えるもの ——SaaSは"死ぬ"のではなく"変態"する

では、「SaaSの死」は完全なフェイクニュースなのでしょうか。

AIは本当にSaaSを代替えできるのか?

ここで、一つの根源的な「問い」に対する結論を出しておきましょう。

AIは本当にSaaSを完全に代替えし、この世から消し去ってしまうのでしょうか?

結論から言えば、代替えされるのは『操作』であり、『システム』そのものではないというのが真実です。

銀行のATMが普及しても、銀行の金庫や裏側の勘定系システムは消えませんでした。

窓口の行員(インターフェース)がATMに代わっただけです。

SaaSも同じです。

画面(UI)というインターフェースはAIエージェントに完全に代替えされますが、堅牢なセキュリティ、複雑な権限管理、コンプライアンス要件を満たしたデータ保管庫としての「コアシステム」は、容易にはリプレイスできません。

だからこそ、表面的なツールは死滅し、深いデータを持つ基盤は生き残るのです。

この非対称な変化を正確に見抜くことこそが、次なる投資の勝敗を分けます。

生き残るSaaS企業の3つの条件

条件1:独自の「クローズドデータ」を独占

AIはデータがなければ機能しません。

世界中のAIモデルがどれほど進化しても、あなたの会社の「昨日の詳細な商談履歴」や「極秘の財務データ」はインターネット上には落ちていません。

こうした企業の心臓部となるデータをがっちりと握り、AIが学習するための基盤となっているプラットフォーム(業界特化型のSaaSなど)は生き残ります。

汎用AIモデルには持ちえない、業界固有のデータと知見が最大の防衛線です。

条件2:セキュリティや法律規制対応など深い

また、法規制対応、コンプライアンス、セキュリティ、個人情報、決済処理などの責任が伴う部分もすぐには代替えされないでしょう。

企業側からしてAIで法的責任、経済的責任を伴う意思決定を自律的に行わせるのは、まだまだ怖いというのが本音だからです。

内製化して問題が発生すれば、そのあたりの責任はすべて自社に来てしまうというリスクもあります。

経営学などで出てくる用語でいえば「スイッチングコストが高い」ということですね。

条件3:AIを"敵"ではなく"共生相手"にすること

Gartnerは2026年末までに企業アプリケーションの40%にタスク特化型AIエージェントが組み込まれると予測しています(2025年は5%未満)。

先進的なSaaS企業は、Claude CoworkのようなAIエージェントと対立するのではなく、連携することで自社サービスをより強力にする道を模索し始めています。

生き残れないSaaS企業

逆に言えば以下のようなSaaS企業は生き残るのは困難となるかもしれません。

・業務が“薄い”領域(入力と出力が単純で、AIで置き換えやすい)
・差別化がUI中心(裏側のデータやプロセスが浅い)
・座席課金への依存度が高い(ユーザー数が増えないと伸びない)

投資家が今すぐ取るべきアクション

それでは今回の話に投資家はどのようなスタンスを取ればよいのでしょう?

"SaaS"で一括りにしない

今回のアンソロピック・ショックでは、SaaSとは関係の薄いNECやSIer企業まで「IT関連だから」という理由で売り込まれました。

事業構造を精査すると「売られすぎ」の銘柄が見つかる可能性があります。

パニック時こそ、個別企業の事業内容を冷静に見極めることが重要です。

"矛盾シナリオ"を判断基準にする

Bank of Americaが指摘した論理矛盾を、自分の投資判断にも応用してください。

「AI企業の成長性」と「SaaS企業の壊滅」を同時に織り込んでいるポートフォリオはないでしょうか。

どちらの未来を信じるかで、投資戦略は大きく変わります。

SaaS企業の壊滅を考えるならAnthropic関連銘柄への投資というのが最右翼ですね。

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日本市場の"構造的な強み"を見逃さない

日本には独自の文脈があります。

経済産業省が警告した「2025年の崖」レガシーシステム問題は依然として解消されていません。

AIによるCOBOL移行コストの低下は、日本のSIer企業にとってむしろビジネスチャンスになる可能性があります。

また、日本の中小企業のAI導入はグローバル平均と比べて遅れており、国内SaaS企業はそのAI化の橋渡し役として不可欠な存在でもあります。

野村證券は、日本のセキュリティ・インフラやSIer、ERPへの需要は比較的堅調で、過去の新技術台頭時の懸念局面のパターンから見ても、50営業日程度で落ち着く傾向があるとの分析を示しています。

歴史は繰り返す 。過去の"○○の死"、◯◯ショックに学ぶ

「SaaSの死」を正しく理解するために、歴史を振り返りましょう。

実は過去にもいろいろな◯◯な死ってあったんですよ。

時期当時の"死の宣告"その後の現実
2000年頃「書店は消える」(Amazon登場)形を変えて生き残り。蔦屋書店は体験型へ進化。小型なお店は壊滅
2007年「携帯メーカーは終わる」(iPhone登場)Samsungはスマホで成長。Nokiaは地図で復活、日本の企業は衰退
2016年2月「SaaSバブル崩壊」(LinkedIn -44%)SaaS市場はその後5年で3倍以上に成長
2025年1月「AI投資は無駄」(DeepSeekショック)過剰反応と判明。AI投資は加速
2026年2月「SaaSは死んだ」(Anthropic Shock)???

2016年のSaaSパニックは特に示唆的です。

当時、LinkedInが44%、Tableauが50%、Salesforceが13%急落しましたが、SaaS市場はその後も力強い成長を続けました。

Bank of AmericaのDeepSeekショックとの比較も、過去の「○○の死」が多くの場合、過剰反応であったことを物語っています。

もちろん、今回は過去と異なり、AIの「認知的な幅広さ」が従来の自動化とは次元が違うという議論もあります。

Anthropic CEOのダリオ・アモデイ氏は「今回のAI革命は、金融、法務、コンサルティング、テック全体に同時に圧力をかける」と指摘しています。

歴史は完全には繰り返さないかもしれませんけどね。

まとめ

最後に、本記事をまとめます。

「SaaSの死」は、正確には「SaaSの常識が死ぬ」である。

SaaS企業そのものが消滅するのではなく、課金モデルと提供価値が根本から再定義される構造変化が起きています。

AIは業務ソフトの"敵"ではなく、"進化圧"です。

この圧力に適応した企業は、むしろ以前よりも強くなるでしょう。

投資家にとって重要なのは、「AI関連銘柄だから買い」「SaaS銘柄だから売り」という単純な二元論を捨てることです

AIによって恩恵を受けるのか、脅威にさらされるのか

この問いを、一社一社に対して丁寧に投げかけることが、アンソロピック・ショック後の投資判断の新基準になります。

かつてインターネットの登場時に「すべての既存企業は死ぬ」と言われましたが、実際にはAmazonが書店を駆逐したのではなく、Amazonが"小売"そのものを再定義しました。

同じように、AIがSaaSを殺すのではなく、AIが"業務ソフトウェア"という概念を再定義していく。

それが、「SaaSの死」の本当の意味ではないでしょうか。

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この記事を書いた人

豊かに生きていく上で必須なのがお金の知識です。
しかし、日本では「お金」が汚いものという認識が根強く、あまり勉強されてきませんでした。そのため今後は老後破産が増えてしまうなんて話もありますね。
そんな世の中を少しでも変えたいという強い信念を元に「お金に生きる」を立ち上げました。
投資歴15年以上、社会保険労務士、中小企業診断士、簿記1級、1級販売士、ファイナンシャルプランナー2級、年金アドバイザー3級持ちの私が「お金」についてどこよりもわかりやすくお伝えることを目指していきます。
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