10月1日から「こどもNISA」の口座開設受付が始まり、周りが申し込み始めると焦りますよね。
ただ、口座残高を増やすことと、子どもの将来を豊かにすることは同じではありません。
制度の仕組みや格差の議論を整理し、お金と「稼ぐ力」を育てる家計の順番を考えます。
こどもNISAはやるべき?家計と教育を削らないなら選択肢
私の答えは、「生活の備えと今の教育費を確保でき、長く使わないお金があるなら、利用を検討する価値はある」です。
反対に、家計に余裕がなければ、急いで始める必要はありません。
こどもNISAで考えたいのは、非課税枠をどれだけ埋められるかではなく、そのお金で子どもの選択肢を増やせるか、ということ。
将来の進学費用を準備するのも、今の学びや体験に使うのも、子どものためのお金です。
将来の口座残高を増やすために、現在の生活や学びを無理に削る。それでは、手段と目的が逆になってしまいますね。
制度そのものはシンプルです。
0歳から17歳の子どもを対象に年間60万円まで非課税で投資でき、投資対象はつみたて投資枠と同じ一定の投資信託に限られ、非課税保有限度額は600万円です。
この枠は18歳になると成人向けNISAへ自動的に引き継がれます。
ここで注目してほしいのは最後の一文です。
18歳になると、口座の中身はそのまま大人のNISAとして子ども本人のものになります。
つまり、親が10年かけて育てたお金は、ある日まとめて子どもに手渡されるわけです。
考えてみてください。
18歳の子が、ある日いきなり数百万円の資産を持ったらどうなるでしょうか。
投資の意味を知っている子なら、その資産を大学や起業、次の積立に回すはずです。
何も知らない子にとっては、宝くじに当たったのと変わりません。
同じ金額でも、受け取る側の準備しだいで結果は正反対になるんです。
だから、この記事の答えはこうなります。
- やるべき家庭: 生活に余裕があり、積立を子どもと一緒に見て、話題にできる家庭
- 急がなくていい家庭: 親自身のNISAや生活防衛資金がまだ整っていない家庭
- 慎重に考えるべき家庭: 12歳前に教育費として取り崩す可能性が高い家庭
「やるか、やらないか」より先に考えたいのは「どう使うか」のほうです。
こどもNISAで本当に片付けたい用事は、口座の残高を増やすことではありません。
子どもが自分の人生のお金を自分で判断できるようにすることです。
この視点を持つと、後で紹介するデメリットも格差の問題も、まったく違って見えてきます。
では、制度の中身から具体的に確認していきましょう。
こどもNISAとは。制度の基本を3分で整理
そもそもこどもNISAってどういう制度という疑問から整理します。
制度のスタートは2027年1月です。
ただし口座の準備はもっと早く、2026年10月1日から受付が始まります。
楽天証券は2027年1月開始のこどもNISAについて、2026年10月1日から口座開設受付を始めると発表しました。(出典:楽天証券プレスリリース、2026年)ほかにもSBI証券やマネックス証券などのネット証券が10月1日から事前受付を始め、キャンペーンで口座獲得を競っています。
キャンペーンについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。

申し込みの前に知っておきたい点が2つあります。
親の口座が必要
1つ目は、親の口座が必要なことです。
主要ネット証券では、子どもの口座を開くときに親権者も同じ会社に口座を持っている必要があります。
普段使っている証券会社で開くのが、いちばん手間がかかりません。
書類
2つ目は書類です。楽天証券の場合、子どものマイナンバーと続柄が載った、世帯全員分の住民票の写しをアップロードする必要があります。
役所に行く予定を先に入れておくとスムーズですよ。
制度の要点
制度の要点を表にまとめます。
| 項目 | こどもNISA |
|---|---|
| 対象 | 0〜17歳(その年の1月1日時点) |
| 年間投資枠 | 60万円(月5万円まで) |
| 非課税保有限度額 | 600万円 |
| 投資対象 | つみたて投資枠の対象投資信託のみ |
| 払出し | 12歳以降、一定の要件を満たせば可能 |
| 18歳以降 | 成人向けNISAへ自動で移行 |
ジュニアNISAとの違い
2023年末で終わったジュニアNISAとの違いも押さえておきましょう。
ジュニアNISAは原則18歳まで払出しができず、利用実績も乏しかったため2023年末に新規口座開設を終えました。
新制度では一定の要件のもと、12歳以降の払出しが可能になります。
「18歳まで引き出せない」という縛りが、ジュニアNISAが使われなかった大きな理由でした。
その反省から、中学進学の時期に使える設計へ変わったわけです。
ただし「使いやすくなった」と「何でもできる」は別の話です。
こどもNISAのデメリット6つと「向かない人」
次は、あまり語られないデメリットを見ていきます。
証券会社の案内ページはメリット中心です。
ここではあえて、弱点から正直にお伝えします。
12歳までは原則として引き出せない
1つ目は、12歳までは原則として引き出せないことです。
0歳で始めても、最初の12年間は動かせません。
12歳以降も自由には引き出せない
2つ目は、12歳以降も自由には引き出せないことです。
資金の使い道が子のためであり、子が払出しに同意したことを示す書面とともに、親権者等が申出書を金融機関に出す必要があります。
要件を外れた払出しについては、20%の源泉徴収の対象になります。
さらに、制度上引き出せることと、必要額を用意できることは別問題です。
たとえば、入学時に使う予定の300万円が、直前の30%下落で210万円になったとします。
これは説明用の仮定ですが、90万円の不足は「長期投資だから大丈夫」では埋まりません。
お子さんが若くても、お金を使う日が近ければ、その資金の運用期間は短い。
この区別を忘れたくないですね。
商品の選択肢が狭い
3つ目は、商品の選択肢が狭いことです。
旧ジュニアNISAのように個別企業の株をこどもNISAで買うことはできません。
「子どもと一緒に好きな会社の株を買う」という使い方はできないんですね。
元本保証がない
4つ目は、元本保証がないことです。
18歳の時点で相場が大きく下がっている可能性もあります。
また、こどもNISA内の損失は、課税口座の利益と相殺する「損益通算」や、翌年以降に持ち越す「繰越控除」ができません。
贈与の問題
5つ目は、贈与の問題です。
子ども名義の口座に入れたお金は、法的には子どもへの贈与になります。
暦年課税では年110万円以内の贈与は非課税で、年間上限60万円だけなら対象になりにくいと考えられますが、複数の人からの贈与は合計して判断されます。
祖父母からの援助と重なる家庭は注意が必要です。
18歳でお金の管理が子どもに移ること
6つ目は、18歳でお金の管理が子どもに移ることです。
制度上は長所ですが、準備のできていない子どもにとっては最大のリスクになります。
親自身のNISA枠は埋まっていますか?
ここで一つ、立ち止まって考えたい問いがあります。
親のNISAは1人1,800万円、夫婦で3,600万円の枠があります。
親の口座なら、いつでも自由に引き出せます。
銘柄の選択肢も多いです。
お金を増やすことだけが目的なら、親の枠を使い切るほうが柔軟性は上です。
こども向けならこどもNISAという固定概念を捨てて、親のNISAを先に埋めるという選択肢も考えて見る価値はあるでしょう。
こどもNISAに向かない人
以上を踏まえると、こどもNISAが向かないのは次のような人です。
- 親のNISAも生活防衛資金もまだ手つかずの人
- 12歳より前に教育費として使う予定がある人
- 祖父母から毎年まとまった援助を受けている人(贈与の合算に注意)
- 子どもとお金の話をするつもりがない人
最後の項目に引っかかった方もいるかもしれません。
実はこれが、格差の議論にそのままつながっていきます。
「こどもNISAは格差を生む」は本当か?
こどもNISAをめぐっていちばん議論を呼んでいるのが、格差の問題です。
親のマネーリテラシーによって、子どもが18歳になる頃に大きな格差が生まれるのではと危ぶむ声です。
金融教育の機会になるという肯定的な意見がある一方で、親の経済力やリテラシーに左右されるため格差が広がるという懸念が示されています。
18歳時点で1,115万円の差が生まれる?
数字で確かめてみましょう。
0歳から月5万円を10年間積み立て、その後18歳まで保有したと仮定します。
どれくらいの利回りで運用できたかで異なりますが、例えば年率5%で計算すると、18歳時点で約1,115万円になる試算です。
| 毎年一定と仮定する利回り | 18年後の計算上の残高 |
|---|---|
| 0% | 600万円 |
| 3% | 約871万円 |
| 5% | 約1,115万円 |
まったく積み立てられなかった家庭との差は、18歳の時点で約1,115万円です。
たしかに大きな差です。
国もこの点は意識していて、親の収入による格差を防ぐために、子どもの上限を600万円とする案が出ていたと報じられていました。
ジュニアNISAのときより上限が低くなっているんですよ。
自分で稼げる力を教育
ここで、もう一つの意見を紹介します。
「NISAでお金を作ってあげるより、自分で稼げる力を教育するほうが良いのでは?」という声です。
私はこの意見に半分賛成です。
お金の格差より判断力の格差のほうが、人生を大きく左右するということです。
ただし、「NISAか、稼ぐ力か」という二択には反対です。この二つは対立するものではありません。
こどもNISAには、ほかの制度にない仕掛けがあります。
12歳以降の払出しに「子どもの同意」が必要なことです。
国が意図したかどうかは別として、この仕組みのおかげで、12歳の子どもが自分のお金の使い道について意思表示する当事者になります。
たとえば「中学の制服代に使いたいけど、いい?」と親子で話す。
「このお金はどうやって増えたの?」と聞かれる。そんな会話が自然に生まれる制度なんです。
格差を生むのは、口座の残高そのものではありません。
格差を生むのは残高ではない。18歳で、その意味を知っているかだ。
月5万円を積み立てられない家庭でも、月1万円の積立を子どもと毎月一緒に見ることはできます。
児童手当は0〜2歳が月1万5,000円、3歳以降が月1万円支給されており、そのまま積立に回せば家計から追加の支出をせずに資産形成を進められます。
もちろん、児童手当を生活費に回さざるを得ない家庭があるのも事実です。
この制度だけで格差が解消するとは言えません。
それでも「金額」ではなく「会話」で差がつくのなら、どの家庭にもスタートラインに立つチャンスはあります。
世界的投資家ジム・ロジャーズは子供に・・・
ちなみに世界的な投資家として有名なジム・ロジャースはお金の教育のために娘に成人するまでに必要なお金を一括で渡してあとは君の好きなようにしなさい。としたそうです。
それは極端な例ですがお金の知識は生きていくために本当に必要ですからね。
なお、ジム・ロジャーズのお金の教育に興味ある方はこちらからどうぞ
こどもNISAの銘柄はどう選ぶ?
次に「こどもNISAの銘柄は何がいいの?」という疑問にもお答えします。
最初にお断りしておくと、この記事では特定の商品はおすすめしません。
家庭ごとに正解が違うからです。そのかわり、選び方の軸をお伝えします。
軸は一つ、「いつ使うか」です。
こどもNISAで買えるのは、つみたて投資枠の対象投資信託に限られます。
金融庁が長期の積立・分散投資に向くと認めた商品だけなので、極端なハズレを引きにくい仕組みです。
加えて、2026年度の税制改正で選択肢が広がりました。
指数に連動しない投資信託の要件が「主に株式に投資するもの」から「主に株式又は公社債に投資するもの」に改められ、リスク許容度が高くない若年層や高齢層向けに、債券中心やバランス型の選択肢を充実させる狙いが示されています。
これを踏まえて、使う時期ごとの考え方を整理しました。
| 使う時期 | 考え方の例 |
|---|---|
| 12〜15歳(中学の費用など) | 取り崩す数年前から、値動きの小さいバランス型の比率を上げていく |
| 18歳前後(大学の費用) | 株式中心で育て、高校入学前後から徐々に守りへ移す |
| 使う予定なし(18歳以降も本人が運用) | 全世界株式などの幅広い株式インデックスで長く持つ |
教育費の目安も確認しておきましょう。
日本政策金融公庫の令和3年度調査では、高校入学から大学卒業までの入在学費用の平均は子ども1人あたり942.5万円でした。
こどもNISAの上限600万円だけで、すべてをまかなう設計にはなっていないわけです。
だからこそ、「必要な時期に必要な分だけ使えるか」を優先したいところです。
大学入学の半年前に株価が3割下がったら、どうしますか?
この問いに答えられないなら、株式100%の商品は少し攻めすぎかもしれません。
もう一つのコツは、商品選びそのものを子どもとの教材にすることです。
「世界中の会社に少しずつお金を預ける商品なんだよ」と説明できる商品を選ぶ。
子どもに説明できない商品は、親もよく理解できていない可能性が高いからです。
よくある質問
- こどもNISAは、満額ではなく少額でも意味がありますか?
-
金融機関の最低積立額を満たせば、少額から検討して構いません。
判断の基準は満額に届くかではなく、家計を圧迫せず続けられるかです。
使う時期が近い教育費は別に確保し、利益が出る保証はないことも踏まえて、無理のない金額を考えましょう。
- 親のNISAとこどもNISAは、どちらを優先するべきですか?
-
増やすことだけが目的なら、いつでも引き出せる親のNISAを優先するほうが柔軟です。
親の枠が埋まりそうな家庭や、子どもへの金融教育に使いたい家庭には、こどもNISAが向いています。
12歳前に教育費として使う予定があるなら、親のNISAで準備するのが無難です。
- ジュニアNISAの商品を、そのままこどもNISAへ移せますか?
-
ジュニアNISAで保有している商品を、そのままこどもNISAへ移すことはできません。
ただし、移せないからすぐに売る必要があるわけでもありません。
旧制度の非課税保有を続けられる条件を確認し、売却と新たな積立は分けて判断しましょう
- こどもNISAで個別株は買えますか?
-
買えません。対象はつみたて投資枠の対象となる投資信託に限られ、成長投資枠にあたる枠はありません。
旧ジュニアNISAのように子ども名義で個別株を買うことはできないため、株式投資の体験をさせたい場合は、18歳以降に本人が成人向けNISAで取り組む形になります。
- こどもNISAはいつから始められますか?
-
制度の開始は2027年1月です。口座開設の受付は2026年10月1日から、楽天証券・SBI証券・マネックス証券など各社で順次始まります。
多くのネット証券では親権者も同じ会社に口座が必要なので、まずは親の口座がある証券会社の案内を確認すると手続きがスムーズです。
まとめ
ここまで読むと、「制度の良さは分かったけれど、結局わが家はいくら出せるの?」と思うかもしれません。
そんなときは、家族のお金を三つに分けると整理しやすくなります。
| 財布 | 役割 | こどもNISAとの関係 |
|---|---|---|
| 守る財布 | 生活費、急な出費、使う時期が近い教育費 | 原則として投資に回さない |
| 育てる財布 | 今の学び、体験、健康、親の学び直し | 残高を増やすためだけに削らない |
| 渡す財布 | 子どもの資産として長く置いておけるお金 | こどもNISAを検討する部分 |
これは制度上の分類ではなく、家計を考えるための私なりの整理です。実際に口座を三つ作る必要もありません。
たとえば、長く置けるお金はあるけれど、親の老後資金になるかもしれない。
それなら、まだ「子どもに渡す財布」と決めないほうがよいでしょう。
子ども名義にする前に、誰のためのお金なのかを確かめるわけです。
反対に、生活の備えも教育費もあり、子どもに渡す資金だと家族で合意できている。
その場合は、こどもNISAを検討しやすい状態です。
今は積立額がゼロでも構いません。
家計が変われば、判断を変えてよいのです。
「始めるか、永遠にやらないか」の二択ではありません。
また、私なら、金融教育を値上がりする商品探しだけにはしません。
お小遣いを何に使うか、欲しい物のために何を後回しにするか、広告のうまい話をどう見抜くか。
こうした会話も、家庭でできるお金の学びと考えます。
口座を使う場合も、残高を見せるだけでなく、なぜこのお金は今使わないのか、下がったらどうするのかを年齢に合わせて話す。
運用と学びをつなげるなら、そんな使い方をしたいですね。
今日やることは、家族で「使う年・必要額・今は投資しない金額」を一枚のメモに書くこと。
この三つだけなら、まずは3分で始められます。分からない欄は空欄で構いません。
私が子どもに残すものとして考えたいのは、お金の額だけではなく、お金が必要な場面で自分の道を選べる余地です。
こどもNISAは、そのために使える道具の一つ。使わない選択を含めて、家族に合う形を選んでください。
なお、本記事は一般的な情報提供であり、利益の保証や個別商品の推奨ではありません。

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