新NISAはイギリスのISAを模倣せよ。ISAを日本のNISAと比較してみた

先日、日経新聞が報道した新NISA制度。

かなり否定的な意見が多くなっています。

富裕層優遇だという意見が多かったために改定をするはずなのに、制度がより複雑になって投資初心者を寄せ付けないような制度になっています。

また、既存の方からしても投資信託を買わないと株や海外ETFが買えないというかなり使いにくい仕組みとなり改悪に近い状態だからです。

考えた人はどうかしてるじゃ??って思うほどひどい内容となっています。。。(あくまでもまだ案の段階ですが)

新NISA制度について詳しくはこちらの記事を御覧ください。

一方、元々のNISA制度のモデルとなったイギリスのISA制度。

こちらはどんどん使いやすく進化しているのです。

ISAは元々NISAのモデルですし、その進化を単純に模倣するだけでいいじゃん・・・って思ってしまうですよね。

なぜ制度をこねくりかえすのか・・・

今回はそんなイギリスのISA制度について見ていきます。

イギリスのISAとは

イギリスのISA(Individual Savings Account)とは日本とNISAと同様に投資非課税制度です。

元々NISAはイギリスのISAの日本版として誕生しています。

日本のNISAと比較しながらイギリスのISAについて見ていきましょう。

イギリスISAの概要

ISA概要
ISA概要

出所:金融庁「安定的な資産形成に向けた取り組み(金融税制・金融リテラシー関連)」より

ISAといっても実はいろいろな種類があります。預金やMMFに投資ができる預金型、株式、債券、投資信託、保険などに投資ができる株式型、ソーシャルレンディング等に投資ができる社会的投資型、人生設計型とあります。

日本のNISA制度とつみたてNISA制度のように選択制ではなく、預金型ともう一つを併用することも可能です。

さらに未成年向けのジュニアNISA、住宅購入支援ISAというのもあります。

これだけ見ればISAもかなり複雑ですが、仕組み自体はかなりシンプルです。


ISAの非課税保有期間は無制限

着目したいのは非課税保有期間です。

なんと基本的に無制限

日本のように5年だとか20年という制限がないのです。

ずっと保有し続けることもできるんですよ。

長期投資を促すならこれが正しいでしょう。

非課税保有期間が無制限ならつみたてNISAとNISAを分ける必要もなくなりますね。

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ISAつみたてNISANISA/新NISA
非課税期間無制限20年5年

年間拠出限度額も雲泥の差

年間拠出限度額も日本とは雲泥の差です。

ISA制度全体で£20,000(約296万円)となっています。※為替レートは金融庁資料準拠

年間ですからね。これだけ非課税枠があれば老後資金はかなり容易に形成が可能だな・・・って思います。

日本のNISAの120万とかつみたてNISAの40万とはえらい違いですね。

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ISAつみたてNISANISA/新NISA
年間拠出限度額£20,000(約296万円)40万円120万円/122万円

投資対象も大きな違い

投資対象にも大きな差がありますね。

ISAは預金型は預金、MMF、株式化型は株式、債券、投資信託、保険と分かれていますが併用できますので基本的に幅広い投資対象に投資ができることになります。

面白いのが社会的投資型ではソーシャルレンディング等も対象となっていることでしょうか。

日本のNISAはそれなりに幅広く投資できますが、つみたてNISAは基本的に限定された投資信託だけです。

ここにも大きな差がありますね。

途中売却や口座引き出ししても再利用OK

さらにイギリスのISAは2016年4月から途中売却や口座からお金を引き出しても非課税枠の再利用がOKなフレキシブルISAなる制度が導入されています。

年度内の資金引き出し・再拠出可。つまり、売却や一旦引き出しをしても年度内なら枠を消費しないのです。

かなりありがたい話ですね。

ただし、未使用分は翌年以降に繰り越すことは不可です。

このあたりの使い勝手も日本のNISAとは雲泥の差ですね。

日本のNISAは売却した時点で非課税枠はおわってしまいますから・・・
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ISAつみたてNISANISA/新NISA
途中売却・引き出しの扱い引き出しても再拠出で年度内なら非課税枠が再利用可能口座引き出し・口座内売却で再利用不可口座引き出し・口座内売却で再利用不可

ISAは普及具合がすごい

制度が分かりやすく充実していることもあり、利用者も利用金額もかなり多くなっています。

日本のNISAは利用者は1,197万人で11.4%です。しかし、利用金額は一人あたり70万と少なくなっています。銀行等のノルマのために口座だけ作っている人が多いためでしょう。

対してイギリスのISAは2,215万人で国民の42.5%が登録しています。

一人あたりの利用金額も400万円と日本とは大きな差となっています。

アメリカのIRAも多くの人に利用されていますね。1世帯辺りの利用金額は2,240万円とかなり多くなっています。※アメリカのIRAはiDeCoに似た退職後資金積立制度です

それだけ日本のNISAは各国と比べてあまり普及していないことが分かりますね。

成人人口・世帯に占める税制優遇制度の普及割合
成人人口・世帯に占める税制優遇制度の普及割合

出所:金融庁「安定的な資産形成に向けた取り組み(金融税制・金融リテラシー関連)」より

ISAは家計の金融資産に占める割合も大きく

また、家計の金融資産に占める割合も大きく違います。

日本はNISAの占める割合は0.4%程度で7.7兆円ですが、イギリスのISAのは9.3%、89.9兆円もあります。イギリスは私的年金制度の割合もかなり高くなっていますからそれも含めるとさらに大きな差となっています。

日本はまだまだこれからなのです。NISA制度はISA制度に比べて魅力度が低いですから仕方ない部分がありますけどね。

また、そもそも日本人の金融資産は多くを預金が占めてしまっているのも要因でしょうけどね。

家計金融資産に税制優遇制度が占める割合
家計金融資産に税制優遇制度が占める割合

出所:金融庁「安定的な資産形成に向けた取り組み(金融税制・金融リテラシー関連)」より

イギリスのISA改正の歴史

日本のNISAも改正されようとしていますが、イギリスのISAも改正を何度か行っています。

ISA制度の改正経緯
ISA制度の改正経緯

出所:金融庁「安定的な資産形成に向けた取り組み(金融税制・金融リテラシー関連)」より

1999年に開始したISA。

約10年後の2008年には恒久化しています。

2011年にはジュニアISAの導入

2015年には配偶者へのISAの相続を可能にする措置を導入

2016年からは年度内なら途中売却や口座からお金を引き出しても非課税枠が復活する仕組みであるフレキシブルISAまで導入されています。


ISAの年間拠出限度額の推移

1999年当時は年間拠出限度額は£7,000(うち預金型£3,000まで)が上限でした。

それが2010年には上限が£10,200(うち預金型£5,100まで)

そこから少しずつ上限を増やしていき2015年には上限が£15,240(預金型の上限撤廃)

2017年には上限が現在の£20,000となっています。

制度開始から見て3倍近くに非課税枠が増えているんですよ

日本のNISAの改定の歴史

日本は以下のような歴史となっています。

2014年NISA(少額投資非課税制度)スタート 年間投資上限100万円
2016年NISA(少額投資非課税制度)上限改定(100万円→120万円)
ジュニアNISAスタート
2018年つみたてNISA制度スタート

イギリスと比較するとまだ歴史はかなり浅いんですよ。

元々株の売買等に掛かる税金は軽減税率が導入されて10年近く20%から10%に引き下げられていました。

そしてそれが富裕層優遇という批判が強かったこともあり、2013年末で廃止になります。

その代わりに翌年、2014年から導入されたのがNISA(少額投資非課税制度)なのです。

各国の金融資産比較

上記のような大きな差がある日本のNISAとイギリスのISAです。

それもあってか日本、イギリス、アメリカでは金融資産の比率が明らかな違いがあります。

日本の預貯金多すぎなんですよね。

日・英・米比較
日・英・米金融資産比較

出所:金融庁「安定的な資産形成に向けた取り組み(金融税制・金融リテラシー関連)」より

金融教育にも大きな差がある

高校の家庭科で資産形成が授業で行われれるという話もでていますが、日本人は相対的に世界的に見て金融リテラシーが低いです。

上記のようなやばい統計結果まであります。

落ちているお金を拾うことすらできないですよね・・・

この原因として大きいのは教育にあるでしょう。

下記記事にも書きましたが、欧米はお金の教育をそれなりにやっています。

対して日本は教育がほとんどされていないんですよ。

この差がとても響いてしまっています。

実際に日本人の多くは投資=ギャンブル投資=損するというイメージを持ってしまっているんですね。

まとめ

今回は「新NISAはイギリスのISAを模倣せよ。ISAを日本のNISAと比較してみた」と題してイギリスISAについてみてきました。

日本の新しいNISA制度案のように難しい制度にするのではなく、単純にISAを見習えば良いと思うのですが・・・

特に日本と他の国との間の金融資産の差を見るとそう思わざる得ませんね。

非課税保有期間無制限
非課税枠拡大
途中売却・引き出し年度中なら枠が復活
ISAと同じく3つのルールを改定するだけでかなり使いやすく、分かりやすい制度になると思います。
ぜひ検討してほしいところですね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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イギリスISAと日本のNISA
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