日本はお金に関する教育(金融・経済)がほとんど行われていない件。米国、イギリスなどと比較してみた

日本人は欧米各国の人々と比べるとかなりお金の知識(金融リテラシー)が不足していると言われています。日本ではお金は汚いものといった認識がある親も多く、「子供の前ではお金の話はするな!!」といった話も聞きますね。これは教育による部分が大きいと思われます。実際に小学校・中学校の義務教育ではほとんど金融・経済教育に関する教育が行われていないのです。親もそうやって育ってきていますのでお金は汚いものだという刷り込みがつよくなってしまっているのです。

うちもそんな感じでしたね。私は昔からなぜか新聞の株式欄が好きでいつもみてました。チャートまでは作ってませんが、知ってる会社の株が上げ下げしてるのをずっとノートにメモしてた気持ち悪い子どもでした(笑)それをみた親はいつも怒ってましたね。今考えるとなぜ怒られるのかまったくわかりませんが・・・

一方、海外では早い段階から株式を含むお金に関する知識を体系的に学ぶ機会を設ける国が増えています。

今回は「金融経済教育を推進する研究会」の調査結果を元にこの辺りを海外の国々と比較して行きましょう。

義務教育では金融・経済教育がほとんど行われていない


まずは日本でどれくらい金融・経済教育(つまりお金周りの教育)が行われていないのかのデータを見てみましょう。

下記は「金融経済教育を推進する研究会」が行った調査「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書」の結果の抜粋です。

質問内容:現在、金融経済教育を行っている年間の時間数はどの程度か、学年ごとにご回答ください。

中学1年生「0時間」74.2%
中学2年生「0時間」58.2%
中学3年生「「1時間〜5時間」44.6%
高校1年生「「1時間〜5時間」60.9%
高校2年生「1時間〜5時間」49.3%
高校3年生「1時間〜5時間」47.7%

つまり、ほとんど金融・経済教育(つまりお金周りの教育)が行われてていないということになります。

金融・経済教育の内容

それでは実際に行われた教育はどのようなものなのでしょうか?こちらも年齢が18歳になることで経済詐欺が増えそう金融経済教育を推進する研究会「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書」を元にみてみましょう。

消費生活に関する分野

まずは消費生活に関する分野です。多くで行われているのが「消費者問題と消費者保護」と「消費者の権利と責任」ですね。消費者の立場で詐欺に合わないという点ではよい教育かもしれません。とくに成年となる年齢が18歳となりますので詐欺が増えそうですしね。

ただそれ以外の項目はかなり少ないのがわかると思います。とくにリスク管理の教育が低いですね。これが新卒でいきなり保険のおばちゃんに勧誘される理由かもしれません(笑)知らないうちに売りつけてしまえ・・・的な

中高校の金融教育

出所:金融経済教育を推進する研究会「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書」より

金融・経済に関する分野

次に金融、経済に関する分野です。「経済の基本的な仕組み」については、全体で5割を超えていますね。 一方、「保険の働き」以外の項目については、全体では3割前後の実施状況となっているが、学 校担当教科別に見ると教科の学習内容に応じた差異が見られる感じになっています。

金融経済分野の教育実施内容
出所:金融経済教育を推進する研究会「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書」より

これらの結果は当然の結果といえるかもしれません。そもそも学校の先生自体がそういった教育を受けていませんし、知識もない人も多いですしね・・・。個人的には週1時間でもよいのでそういう専門科目が必要だと思うのですが・・・簿記なども含めてですね。

日本の金融教育は劣っている

それでは実際に日本の金融教育が劣っている結果の数字を見てみましょう。下記は日本銀行調査統計局の「資金循環の日米欧比較」を私がグラフ化したものです。日本人の金融資産における現金預金の占める割合は約52%、対してアメリカは約14%しかありません。逆に株と投資信託合わせて日本では約14%なのに対してアメリカは約46%と大きな差があります。これだけ現金預金が多くなっているのはそもそも金融に関する知識が不足しているからと言わざる得ないでしょう・・・。ピケティさんの本がベストセラーになったことでこの辺りの意識も変わってきてるといいのですがなかなか難しいでしょう。

金融資産内訳
出所:金融経済教育を推進する研究会「中学校・高等学校における金融経済教育の実態調査報告書」より

日本人は実際に金融知識が少ない

また、実際に金融知識も他国と比べると低いというデータもでています。下記は知るスポットが行った「金融リテラシー調査」の結果です。金融問題をどれだけ解けたのかの平均です。日本は47%に対しアメリカは57%と10%近く差があるのです・・・

金融問題結果

全ての項目でアメリカのほうが上となっており、アメリカと比べて日本はだいぶ金融知識が薄いと言えます。ちなみにヨーロッパの国々と比べてもだいぶ劣る結果となっておりました。中でも特に複利の項目などは日本が43%なのに対して、アメリカは75%と大きな差があります。

消費者金融問題があれだけ大きくなったのもこの複利に対する金融知識が不足している人が多かった事が大きかったのでしょう。

海外の金融教育はどうなっているのか?

それではここからは海外での事例をみていきましょう。

イギリスの金融教育

まずはこの分野で進んでいるイギリスからです。

イギリスでは小学校低学年から高校生くらいまで継続して金融教育を行う仕組みを構築しています。とくに14歳~16歳の学生は金融システムのあり方を 含む、経済の授業が必修必須教科となっているんですよね。

数学

例えば数学の金融リテラシーに重要であると位置づけられ金融における利率、単位価格なども数学の重要項目として学ぶことになります。

シチズンシップ

また、シチズンシップでも金融教育が行われてます。シチズンシップは日本では馴染みがない科目ですが市民としての資質・能力を育成するための教育のことです。

シチズンシップでは「生徒が毎日使うお金を管理できるようにするとともに、将来に必要となるお金を計画できるようにする」ことが目的の一つとして定義され貨幣の役割と使用、予算を立てることの重要性と実践、リスク管理が教育されています。所得と支出、クレジットと借金、貯蓄と年金、金融商品と金融サービス、税金もカリキュラムに入っています。

ジュニアISA

また、イギリスにはジュニアISAという仕組みがあります。子どもの将来のための資産形成を目的とした制度のことですね。いろいろ違いはありますが日本のジュニアNISAと同じような制度です。面白いのが口座保有者が16歳になると自ら運用することが可能となることです。投資などのお金を勉強するには実践するのが一番ですからこれはとてもよい取り組みですね。

ISAのような素晴らしい制度が普及するのにはこういった土壌もあるのでしょうね。

ISAについて詳しくは下記記事をご覧ください。

米国の金融教育

次に米国の金融教育について見てみましょう。

米国はイギリスと違い全米で共通する教育課程はありません。ただし、各州、各学校、各団体で様々な取り組みが行われています。特に7州では金融教育関連の授業が必修科目となっています。 (“Personal Finance”という個別科目あり)

また、36州で必須ではないが“Personal Finance”  の科目を有しているそうです。

「金融リテラシー及び金融教育改善法」なんて法律もあり、20の連邦政府関係機関から構成される金融リテラシー教育委員会が設立されて様々な取り組みで金融教育を行っています。

ゲームで教育

米国では金融教育にゲームを利用してたりします。例えばVISA 社の提供する、無料のonline シミュレーション・ゲーム形式の教材である。iPhone、iPad でもゲームが可能であるとされている。「 Financial Football は、Practical Money Skills for Life」

これは金融に関するクイズとアメリカンフットボールのゲームを組み合わせて、金融の学習を進めるため、 アメリカンフットボールに興味をもつ児童・生徒の関心を引くように設計されています。

これを授業でやっている学校もあるそうです。

まとめ

今回は「日本はお金に関する教育(金融・経済)がほとんど行われていない件。米国、イギリスなどと比較してみた」と題して日本と米国、イギリスのお金に関する教育について見てきました。

イギリスが特に進んでいるなって感じがしますね。今回のデータは学校教育による部分のみの話でしたが、家での教育の差も大きいと思われます。世界的な投資家として有名なジム・ロジャースはお金の教育のために娘に成人するまでに必要なお金を一括で渡してあとは君の好きなようにしなさい。としたそうです。それは極端な例ですがお金の知識は生きていくために本当に必要ですから小学校、中学校の必須科目としてお金の勉強があってもいいように思いますね。

今回は子どものお金の教育について見てきましたが、これは大人も同じです。特にお金の教育を受けたことがない大人でもこの辺りの勉強は行きていくために必須です。ぜひ勉強する機会をもうけていただきたいところです。

まずは自分のお金のセンスを測ってみてください。

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