世界的に有名な投資格言に「セルインメイ(Sell in May)」というものがあります。
投資をしている方なら一度は聞いたことがあるでしょう。
セルインメイの日本語の意味としては「株は5月に売れ」ということです。
今回は「セルインメイ」について詳しく見ていきます。
実はセルインメイには続きがあるんですよ。
投資の世界のアノマリーはよく当たる?
投資の世界ではアノマリーと呼ばれる論理的に説明できないけど経験的に観測できるマーケットの規則性がよく当たります。
例えば「節分天井彼岸底」、「靴磨きの少年」なんかが有名ですね。また、「小型株効果」なんかも広義で捉えるとアノマリーですね。
最近大きな話題となったのが「タピオカが流行ると株価が大暴落する」です。
2020年は新型コロナウィルス感染症の影響で株価は大きな暴落となりましたが見事にタピオカが流行っていたんですよ。
過去日本で流行った3回の流行時と日本で起こった暴落時のタイミングがかなり合致していたのです。
バブル崩壊、リーマンショックと今回の新型コロナウィルスですからね・・・
詳しくはこちらの記事をどうぞ。

ただし、この手のアノマリーは格言を表面的に捉えると勘違いしてしまいがちなんですよ。
セルインメイには続きがある
セルインメイはもともとイギリスの相場格言で「Sell in May 」の部分だけがクローズアップされていますので5月に株が下がると勘違いしている方が多いですが実は続きがあるのです。
続きを読むと結構意味合いが結構違うんです。
Sell in May and go away, don’t come back until St.Leger day.
日本語に訳すと「5月に売ってセント・レジャー・デーまで戻って来るな」という意味となります。
セント・レジャー・デーとはイギリスで有名な競馬レースの「セントレジャーステークス」が開催される日のことです。
「セントレジャーステークス」は毎年9月の第2土曜日に行われます。
つまり、「5月に売って9月の第2土曜日まで相場に戻ってくるな」という意味になります。
5月に株が下がるというよりも5月から9月の第2土曜日までは軟調になるぞってことなんですね。
セルインメイを理屈的に考えると・・・
一応後付ではセルインメイに関していろいろ言われています。
5月はもともとアメリカのヘッジファンドのルールに45日ルールというのがあり、それに伴い売られやすい時期であること。(すでにないルール)
ヘッジファンドは5月末が中間期末であるから決算を前に利益確定しやすいこと。
アメリカの税還付が5月まであること。(それまではその影響で上がりやすい)
年末に買った信用取引の決済期限があること。
などなどが言われています。
さらに欧米では夏は長期に休む傾向が強いため、相場は夏枯れしやすく(売買が少なくなる)なります。
後付ではありますが、いろいろな様相が重なって5月から9月中旬くらいまでは弱い相場になりやすい傾向にあるということなのでしょう。
個人的に一番大きいのは「セルインメイ」の格言がとても有名ですからそれを意識する投資家が世界中に多いからということかと思ってます。
9月に株を買って5月に株を売るを過去で検証
「5月に売ってセント・レジャー・デーまで戻って来るな」は本当にあたっているのでしょうか?
「5月に売ってセント・レジャー・デーまで戻って来るな」ということですから9月中旬に株を買って5月に売る場合で過去のNYダウで検証してみましょう。
なお、検証は9月の第2土曜日の次の営業日に購入して5月の始めの営業日で売るとします。価格は終値とします。
2023年〜2024年
まずは直近の2023年9月16日に買って2024年5月1日に売った場合から見ていきましょう。
ちなみに2024年9月16日は41,622.08でした。
そこで買っていたら今の時点でかなりのマイナスですね・・・
5月から9月までの上げも取れなかったですし・・・・
2022年〜2023年
次は2022年9月16日に買って2023年5月1日に売った場合から見ていきましょう。
2021年〜2022年
まずは直近の2021年9月16日に買って2022年5月1日に売った場合から見ていきましょう。
2020年〜2021年
次は2020年9月16日に買って2020年5月1日に売った場合から見ていきましょう。
2019年〜2020年
次は2010年9月16日に買って2020年5月1日に売った場合から見ていきましょう。
2018年〜2019年
まずは直近の2018年9月10日に買って2019年5月1日に売った場合から見ていきましょう。
2017年〜2018年
次は2017年9月11日に買って2018年5月1日に売った場合から見ていきましょう。
2016年〜2017年
次は2016年9月12日に買って2017年5月1日に売った場合から見ていきましょう。
2015年〜2016年
次は2015年9月11日に買って2017年5月2日に売った場合から見ていきましょう。
ずっと持ち続けた場合との比較
9月中旬に株を買って5月に売る場合についてプラスの年が多かったです。
なら9月中旬に株を買って5月に売る方がいいじゃないか?と考える方も多いでしょう。
それではずっと持ち続けていた場合と比較してどうでしょう?
今回の検証データで一番古い2015年9月14日ではNYダウが16,370.96でした。
それが今回の最新データ2024年5月1日で38,686.32です。
その間の上げ幅22,315.36となります。
過去9年で9月中旬に株を買って5月に売るというやり方の場合は15,257.53のプラスです。
つまり、9月中旬に株を買って5月に売るよりもずっと持ち続けていたケースのほうが成績が良いという結果となりました。
NYダウはこの間結構な上げ相場でしたから言える結果なのかもしれませんが・・・
2023年から2024年だけを抜き取ると・・・
ちなみに2023年から2024年だけだとNYダウだと多少9月買い、5月売りが良い成績S&P500だとほぼ同じ成績となっていたりします。
戦略 | 期間 | ダウ | S&P500 |
---|---|---|---|
9月買い、5月売り | 8.5 か月 | +11.8% | +18.6% |
全期間保有(23-09-15→25-04-21) | 19 か月 | +10.3% | +18.6% |
投資家はどう考えるべきか
今まで見てきたように実はずっと持ち続けたパターンのほうが過去の成績はかなり良くなっています。
ですから過去成績だけを考えればセルインメイはあまり意識しないでよいという事になります。
NISAなどの非課税枠
NISAのような非課税枠の場合には年間の上限がありますのであまり回転売買はおすすめできません。
iDeCoの場合はスイッチングができますのでありでしょうが・・・
ただし、投資信託の場合には解約することで手数料が取られるケースがありますのでご注意ください。

まとめ
今回は「有名な投資格言「セル・イン・メイ(株は5月に売れ)」に続きがあるってご存知ですか?アノマリーをしっかり理解しよう。」と題してセルインメイについて考えてみました。
今回検証したところ明確な優位性は感じられませんでした。
しかし、昨今の金融不安やインフレなど様々な懸念材料もあります。アノマリーも少し頭の片隅においておくと良いかもしれませんね。
アノマリーを勉強するならこの本がおすすめですよ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
なお、こちらの記事の動画版はこちらからご覧いただけます。合わせて御覧ください。