NTTの完全子会社になるNTTドコモの株をTOBに参加せず持ち続けることはできるの?

最近、立て続けにNTTの完全子会社化するためにTOBして上場廃止するNTTドコモの株価が上がっている理由やTOBに参加せず持ち続けた場合について質問されました。

上場廃止するのに株価が上がっている理由やTOBの仕組みがイマイチ理解できない方が多いようです。

そこで今回はNTTドコモの株価が上がっている理由とTOBに参加せず株をもと続けることについてをわかりやすく解説していきます。

NTTドコモがNTTの完全子会社化で上場廃止って?

まずは今回の話の前提となるNTTドコモをNTTが完全子会社化する話を解説しておきましょう。

報道は以下のようになっています。

NTT<9432.T>は29日、NTTドコモ<9437.T>の完全子会社化に向け、株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表した。買い付け価格は1株3900円で、総額4兆2540億円。ドコモ株は上場廃止となる見込み

出典:ロイター 9月29日

前提知識がないとちょっとわかりにくいですね。

順番に見ていきましょう。

NTTドコモをNTTが完全子会社化とは

まず、NTTドコモをNTTが完全子会社化するとはどういうことかについて見ていきましょう。

一言で言えば100%株式をNTTが保有を目指すってことです。

NTTドコモはもともとNTTの一部門でしたが、携帯電話部門を分社化して出来た会社です。

もともとは一つの会社だったんですよ。

なお、分社化をして別会社になったといってもNTTドコモは名前に「NTT」と名前についているとおり、現在もNTTが66.21%の株を保有している子会社です。

その後、皆さんご存知の通りNTTドコモはかなり成長を遂げていきます。

そのため、時価総額ではNTTよりもNTTドコモが上というちょっと歪な状態となっているんですよ。

そんな歪な状況の解消や菅総理になって携帯電話料金の引き下げ圧力が強くなったことや、ドコモ口座の不正利用の問題もあったのでしょう。

NTTがNTTドコモの完全子会社化することにしたのです。

どうしても少数株主がいると配当や株主優待などいらないお金がかかりますし、意思決定も迅速に行えませんからね・・・

完全子会社とは発行する株の100%を保有する子会社のことを指します。

つまり、NTTドコモをNTTが完全子会社化するにはまだ保有していないNTTドコモ株の残り分33.79%を取得を目指すことになるのです。

携帯電話料金の引き下げ圧力の件はこちらの記事を御覧ください。

株式公開買い付け(TOB)とは

前述のようにNTTがNTTドコモを完全子会社化するためにはNTT以外の株主がもっている株をゲットする必要があります。

NTTドコモは個人投資家にも人気でしたからかなりの方に株が回っているんですよ(個人株主25万人超とのこと)

そこでその株を集める作業を今回は株式公開買い付け(TOB)という方法で行われることになりました。

TOBとはTake-Over Bidの略で価格・株式数、期間などを公告してその上で株主から証券取引所を通さずに株を売ってもらう方法です。

ちなみに今回提示されたTOBの条件は以下のとおりです。

  • TOB期間:9月30日~11月16日
  • 買付価格:1株3,900円
  • 株式数:NTT保有以外すべて

NTTドコモの上場廃止

今回NTTドコモの株をすべてNTTが集めることになりますので上場廃止となります。(上場基準を満たしませんし、そもそもNTTが株を売らないですから売買できませんからね)

ちなみにNTTドコモは日経平均株価TOPIX Core30の採用銘柄ですからそこにも影響が生じます。

すでにNTTドコモの代わりになると予想される企業の株価は上がり気味ですね。

NTTドコモの株価が上がっている理由

それではなぜNTTドコモの株価が上がっているのでしょう?

TOB価格が高いことを予想したもの

答えは簡単なんですよ。

今回のNTTドコモはTOBで1株3,900円で買い取ってもらえることが確定しています。

つまり、それより安く株を買えれば基本的に儲かるのです。

TOBに応募すれば3,900円で買い取ってもらえますからね。

ちなみにNTTドコモの株価は9月28日の時点では2,775円でした。

それが3,900円で買い取ってもらえるわけですから当然上がりますよね。

ちなみにNTTが今回のTOBを正式発表してTOB価格を発表したのは29日の株式相場が終わった後ですが、29日の株価はストップ高となっていました。

これはTOB価格が高いことを予想してのものとなります。

過去のTOBでもそうですが、株を少しでも集めたいがために現在の株価より高い金額を提示するのが通例だからです。

つまり、NTTドコモの株価が上がるのは当然ということになります。

ただし、3,900円以上の株価になるとなるとそれはマネーゲームですね。

TOBに参加せず持ち続けることはできるの?

それでは今回のNTTがNTTドコモを完全子会社するとNTTドコモの株主はどうなるのでしょう?

2つのパターンが考えられます。

まずはTOBへの応募です。

多くの方はそちらを選択するでしょう。

4割近いプレミアムが付いていますしね。

TOBに応募すれば当然NTTドコモの株はNTTに渡り、代わりにTOBに価格の1株3,900円がもらえることになります。

つまり、1株3,900円で買い取ってもらえるということになります。

なお、応募株数が下限の0.45%に満たない場合はTOBが不成立となるそうですが、なかなか想像しづらい事態ですね。

TOBに参加しないこともできるが・・・

NTTドコモは配当も高いことから個人投資家から人気の銘柄でした。

そのため、上場廃止になっても配当を受け取りたいから今後も保有したいと考えてTOBに参加しないという選択をする方も見えるかもしれません。

知り合いの方も持ち続けたいと考えていました。

上場廃止になっても株主の権利は生きていますから配当がでれば当然もらえますからね。

ちなみに私もライブドアが上場廃止するときは株をそのまま持っていました。(上場廃止直前に購入)

ただし、今回のNTTドコモのTOB及び上場廃止は完全子会社化を目指すものですから既存株主がそのまま株を持ち続けるというのは容易でないかもしれません。

二段階買収に関する事項がある

それは今回のTOBは完全子会社化を目指すもので2段階買収に関する事項が示されているからです。

100%の株を取得するのが目的ですから応募してくれなかった方に対して以下の手続きをすると公表しているのです。

簡単に言えばTOBに応募してくれなくても法律に則って買取諦めませんよってことです。

しかも、ほぼ強制的に買取する形となりますから、よほど多くの株を持っていない限り戦うのは難しいと思われます。

株式売渡請求

まず行われるだろうというのが株式売渡請求です。

今回のTOBでNTTが保有するNTTドコモの議決権の数が90%以上になれば発動されます。

株式売渡請求とは簡単に言えば90%以上の議決権を有する株主が、対象会社が承認した場合に他の株主が有する対象会社の株式等の全部を強制的に取得できる権利のことです。

株式売渡請求においては、対象者株式1株当たりの対価として、本公開買付価格と同額の金銭を売渡株主に対して交付することを定める予定です。この場合、公開買付者は、その旨を、対象者に通知し、対象者に対し株式売渡請求の承認を求めます。対象者がその取締役会の決議により株式売渡請求を承認した場合には、関係法令の定める 手続に従い、売渡株主の個別の承諾を要することなく、公開買付者は、株式売渡請求において定めた取得日をもっ て、売渡株主が所有する対象者株式の全てを取得します。公開買付者は、売渡株主の所有していた対象者株式の対価として、各売渡株主に対し、対象者株式1株当たり本公開買付価格と同額の金銭を交付する予定です。

出典:NTT「NTTドコモ株式等(証券コード 9437)に対する 公開買付けの開始及び資金の借入れに関するお知らせ 」より

つまり、強引に買い取りまっせってことなんですよ。

価格はTOB価格と同水準にする予定とのこと。

つまり、粘ってもあまり得しないのです。

なお、株主が裁判所に対して価格決定の申立をする場合は裁判所が売買価格を判断することになります。

株式併合

TOBが成立したものの、公開買付者の所有する対象者の議決権の合計数が対象者の総株主の議決権の数の 90%未満である場合には、公開買付者は、会社法第 180 条に基づき対象者株式の併合を行うことも明記されています。

株式併合をすることにより株式の数に1株に満たない端数が生じるときは、対象者の株主に対して、会社法第 235 条その他の関係法令の定める手続に従い、当該端数の合計数(合計した数に1株に満たない端数がある場合に は、当該端数は切捨てられます。以下同じです。)に相当する対象者株式を対象者又は公開買付者に売却すること等によって得られる金銭が交付されることになります

出典:NTT「NTTドコモ株式等(証券コード 9437)に対する 公開買付けの開始及び資金の借入れに関するお知らせ 」より

株式併合とは複数の株を1株に統合することです。

100株を1株に併合するとなれば100株持っている人は1株扱いとなります。

株式併合はよく少数株主を排除するために行われていますね。

例えば10,000株を1株に併合するとすれば10,000株を持っていない人は1株に満たない端株扱いとなります。

端株となれば上記の通り、お金で払われる形ですね。

つまり、こちらも強制的に買取が進められることになります。

まとめ

今回は「NTTの完全子会社になるNTTドコモの株をTOBに参加せず持ち続けることはできるの?」と題してNTTドコモの株価が上がっている理由とTOBに参加せず株をもと続けることについてみてきました。

結論としては以下の通り

  • 株価が上がったのはTOB価格が現在の株価より高いことを予想したもの
  • TOBに参加しないことも可能だが、現実的にNTTドコモ株を持ち続けるのはかなり困難

また、NISAでNTTドコモ株を持っている方は要注意です。

ちなみにNISAで保有している銘柄が上場廃止になった際の扱いは以下のとおりです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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