FA(フリーエージェント)やドラフトで多額の契約金がはいってきたプロ野球選手などのスポーツ選手、いきなり大ヒット作が生まれた漫画家、作曲家、作家の方など急激に所得が増えてしまったため節税対策もままならないケースは多くあります。
日本の所得税は所得が増えれば増えるほど税金が高くなる超過累進課税となっており、最大で45%となります。
さらに住民税、個人事業税なども掛かりますから半分以上が税金で持っていかれる形となってしまうんですね。
もしこれが一時的に増えただけの所得だとしてもです。
しかし、このような方を救済する目的で「平均課税制度」というルールがあるのをご存知でしょうか?
これを適用できるなら税金の負担が軽減できる可能性があるのです。
平均課税制度はあまり知られてないこともあり、適用できるのにそのまま確定申告しちゃう方ってかなり多いらしいんですよ。
税務署も通常のやり方で申告した人に平均課税制度の方が税金安くなりますよって教えてはくれないでしょうしね。
今回はそんな「平均課税制度」について解説していきます。
平均課税制度とは
平均課税制度とは、変動所得や臨時所得で収入の変動が激しい方の税金を緩和する制度です。
ただし、平均課税制度の適用を受けるには結構厳しい条件があります。
平均課税制度が受けられれない場合(超過累進課税)
平均課税制度を受けられない、もしくは適用しない場合の所得税の計算は以下の通りです。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
出所:国税庁「所得税の税率」より
最高は45%もの税率となるんですよ。
例えば年間1億円課税される所得金額がある場合には以下の金額となります。
所得税以外にも・・・
さらに復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)や住民税、個人事業税が掛かります。
ちなみに住民税率は住んでいる地区により多少違いますが概ね10%、個人事業税は業種によって異なり0%〜5%となります。
ですから多くの稼ぎがある方は所得税、住民税、個人事業税などを合計すれば50%以上となり、所得の半分以上が持っていかれる計算となります。
さらにそれにプラスして健康保険料や国民年金なども別途かかります。
なお、健康保険料は加入団体や地域によって金額が大きく異なっていますね。
このようにある程度稼いでいくと税負担がかなり重くなりますから節税対策に個人事務所を立ち上げる人が多いのです。
平均課税制度を適用できる条件
それでは平均課税制度を適用するための条件を見ていきましょう。
結構厳しい条件が課せされているんですよ。
- 変動所得もしくは臨時所得があること
- 本年の変動所得と臨時所得の合計額がその年の総所得金額の20%以上であること
- 前々年、前年に変動所得がなかった方、もしくは前々年、前年に変動所得があった方は、その年の変動所得が前々年、前年の平均を超えること
出典:税務署 「変動所得・臨時所得の説明書」より
ちょっとわかりにくいですね。
前提となる変動所得、臨時所得についても解説しておきましょう。
変動所得とは
変動所得とは事業所得や雑所得のうち以下のような所得を指します。
具体的に例示されているんですよ。
- 漁獲やのりの採取による所得
- はまち、まだい、ひらめ、かき、うなぎ、ほたて貝、真珠、真珠貝の養殖による所得
- 印税や原稿料、作曲料などによる所得 など
なお、基準はよくわかりませんが、のりの採取は変動所得の対象ですが、こんぶやわかめなどの水産植物の採集による所得は対象外です。
また、えび、こい、ますなどの繁殖による所得も対象外とのこと。
変動を受けやすいか受けにくいのかなんかというのがあるのかもしれませんね。
臨時所得とは
臨時所得は事業所得、不動産所得、雑所得のうち以下のような所得を指します。
こちらも具体的に例示されているんですよ。
- 土地や家屋、特許権などの権利を3年以上貸し付ける場合の権利金や頭金
- 公共事業の施行などにより受ける補償金
- 鉱害の補償金
- プロ野球選手が一時的に受ける契約金など
プロ野球選手の入団時やFA時に受ける契約金なんかは一時的に受ける契約金に該当するのでしょう。
また、不動産屋さんの受ける礼金なんがこれに該当することになりますね。
なお、例示されていないものでも該当となるケースもありますので、もしかして自分の所得も臨時所得に該当するかもという方は税務署に相談に行ってみるとよいでしょう。
平均課税制度適用になると税金はどうなる?
それでは平均課税制度を適用された場合の税金がどうなるのか考えてみましょう。
平均課税制度の計算はちょっとややこしいです。
簡単に言えば
それを超過累進税率に当てはめて税額を計算。
その税額を5倍にする
20%(5分の1)にして5倍にしたら同じじゃんと思う方も多いと思います。
しかし、超過累進税率の計算方法をみていただければわかりますが、課税される所得金額により税率がかなり違うんですよ。
ですからまず20%にすることで税率が下がれば通常に申告するよりも税金が安くなる可能性があるんです。
例えば1,000万円の所得の場合で平均課税制度利用しない場合と利用する場合で税額を考えて見ましょう。
平均課税制度利用なし
平均課税制度を利用しない場合は前述の所得税税率表にあてはめると以下のようになります。
所得税は1,764,000円ですね。
平均課税制度利用あり
次に平均課税制度を利用する場合です。
この場合はまず、所得に20%掛けます。
それを前述の所得税税率表にあてはめて税額を計算。
さらにその金額を5倍します。
102,500✕5=512,500
平均課税制度の必要経費
なお、平均課税制度を利用する場合は必要経費もちょっと複雑な考え方となります。
平均しているわけですから経費もそのままでは利用できません。
ですから基本的には経費ごとに按分するというやり方になります。
平均課税制度の手続き方法
平均課税制度を利用する手続方法も見ておきましょう。
確定申告をする際に「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」を添付して提出します。
なお、平均課税制度は対象となる条件も計算方法もちょっと複雑なので適用する際は税務署や税理士などに相談するのがおすすめですね。
詳しくは税務署が発行している変動所得・臨時所得の説明書を御覧ください。
まとめ
今回は「急激に所得が増えた方は平均課税制度が使えないのかを検討してみよう。」と題して平均課税制度についてみてきました。
平均課税制度はあまり知られていません。
そのため、本来は適用対象になるのにそのまま確定申告してしまう方が多いと言われています。
平均課税制度が適用できる場合は所得税を大きく下げることが出来る可能性がありますので、急激に所得が増えた方は対象となるのか検討してみてくださいね。
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