国策に売りなし。令和3年度税制改正大綱から今後の有望な業界、投資先を検討してみる

先日、令和3年度「税制改正大綱」が発表されました。

税制改正大綱をみれば今後の税制面の政府の考えがわかるんですよ。

投資格言で「国策に売りなし」という言葉があります。

国の政策に関連した業種や銘柄は値上がりしやすいという意味の相場格言ですが、税制改正大綱をみればそんな国策が見えてくるものです。

今回は投資先を考える上で税制改正大綱を見てみましょう。

なお、個人のお金に関する税制改正大綱の中身についてはこちらで解説していますので御覧ください。

中小企業の再編業界

それでは今回発表された令和3年度「税制改正大綱」からみる国策となりそうな業界、分野を考えて見ましょう。

まず今回目立ったのが「中小企業再編」の考えが強く出ていることです。

菅首相の経済ブレーンの一人「アトキンソン」氏が成長戦略会議のメンバー入りしたことでそのことに拍車がかかった気がします。

なお、「アトキンソン」氏の考え等はこちらの記事を御覧ください。

中小企業の経営資源集約化税制

具体的には中小企業再編を促進する「中小企業の経営資源集約化税制」というものが創設されています。
この制度の目的は以下の通り。

ウィズコロナ/ポストコロナ社会においては、「新たな日常」に対応してい くことが必要であり、業態転換を含めて大胆なビジネスモデルの変革が重要。 この点、単一又は少数の事業を営んでいる中小企業にとって、経営資源を集約化等(統合・再編等)させることによって、新規事業拡大や多角化等を行い、生産性を向上させることが可能。 このため、ウィズコロナ/ポストコロナ社会に向けて、地域経済・雇用を担おうとする中小企業による経営資源の集約化等を支援するため、必要な税制措置を創設する。

出典:経済産業省中小企業庁事業環境部財務課より

簡単にいえば中小企業を再編を促すということなのです。
具体的には以下の税制措置が施されます。
  • 「経営資源集約化措置(仮称)」が記載された中小企業等経営力強化法の経営力向上計画の認定を受ける
  • 認定後、認定を受けた計画に従って、他の法人の株式等の取得→その株式等の取得価額の70%以下の金額を「中小企業事業再編投資損失準備金」として積み立てたとき、その金額を、その事業年度において、損金算入
  • 「中小企業事業再編投資損失準備金」は、その株式等の全部又は一部を有しなくなった場合、その株式等の帳簿価額を減額した場合等において取り崩すほか、その積み立てた事業年度終了日の翌日から5年を経過した日を含む事業年度から5年間でその経過した準備金残高の均等額を取り崩して、益金算入

ややこしいですが、かなり簡単に言えば認定を受けた中小企業が他の企業を買収したら取得価格の70%まで損失とできるよってことです。ただし、その株を売っちゃったりしたら5年間で均等に益金に算入してねって感じですね。(税金計算上の利益としてね)

これかなり大きな政策なんですよ。

税金対策として企業買収が使えちゃう感じになりますから、節税で小さい会社買おうか?ってのが増えてくる可能性が高いのです。

中小企業の節税対策で中古車を買うとかいう話はよくありますが、今後は会社買おうとなるかもしれません。

株対価のM&A特例

さらに中小企業再編でもう一つ制度が創設されます。

株を交付してM&Aをした際に、株式交付親会社の株式等の交付を受けた場合には、その譲渡した株式の譲渡損益の計上を繰り延べることができるようになります。

こちらもちょっとややこしいですが、かなり簡単に言えばこんな感じです。

M&Aをする際に株を交付して買収すると相手先はお金ははいってこないのに利益(譲渡益)だけが計上されて税金が高くなります。

そうなると結局お金が必要となってM&Aの障害になってしまいます。

そこで譲渡したときまで課税を繰り延べるようにしたのです。

これでM&Aを活性化しようとしているのです。

M&A企業や株式投資型クラウドファンディング?

2つの政策とも中小企業の再編(M&A)を活発化させようとしている感じですね。

つまり、中小企業のM&A分野の企業がかなり国策となるでしょう。

中小企業向けのM&Aを提供している会社はもちろんですが、他にも個人向けのスモールM&Aを提供している会社、株式投資型のクラウドファンディング企業なんかも注目されるかもしれません。

このあたりの分野の銘柄は注目となります。

デジタルトランスフォーメーション業界

次は最近よく聞くデジタルトランスフォーメーション(DX)です。

DXの定義は以下のとおり。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

IT化と似たようなものですが、もう一歩少し進めたものというイメージで捉えればよいでしょう。

こちらも今回国策となりそうです。

デジタルトランスフォーメーション投資促進税制

具体的には「デジタルトランスフォーメーション投資促進税制」というものが創設されています。
こちらは簡単な仕組みとなります。
  • 認定を受ける
  • 計画に沿って実施されたソフトウェア取得費用は取得価額の30%の特別償却と、取得価額の3%税額控除が選択可能

つまり、デジタルトランスフォーメーション関連のソフトウェアを購入すると税制面で有利(税金が安くなりますよ)ってことです。

これでデジタルトランスフォーメーションの投資を促進しようとしているのです。

すでにIPOや小型株などではデジタルトランスフォーメーション関連の銘柄は高騰する傾向がありますが、これでさらにその傾向が強くなる可能性がありますね。

カーボンニュートラル業界

次はカーボンニュートラルです。

カーボンニュートラルは聞き慣れないことばかもしれませんが、環境用語で

何かを生産したり、一連の人為的活動を行った際に、排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量であるという考え方

です。

つまり、二酸化炭素の排出削減や再生可能エネルギーなんかの関係となります。

こちらも今回国策となりそうです。

カーボンニュートラル投資促進税制

具体的には「カーボンニュートラル投資促進税制」というものが創設されています。
こちらもデジタルトランスフォーメーション投資促進税制とほぼにた仕組みです。
  • 認定を受ける
  • 計画に沿って実施された生産設備等の取得費用は取得価額の50%の特別償却と、取得価額の5%税額控除が選択可能

つまり、カーボンニュートラル関連の設備を購入すると税制面で有利(税金が安くなりますよ)ってことです。

これでカーボンニュートラルの投資を促進しようとしているのです。

まとめ

今回は「国策に売りなし。令和3年度税制改正大綱から今後の有望な業界、投資先を検討してみる」と題して税制改正大綱から読み取れる国策についてみてきました。

まとめると令和3年度税制改正大綱では以下の3つの業界・会社が追い風となりそうです。

  • 中小企業再編
  • デジタルトランスフォーメーション
  • カーボンニュートラル

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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