未婚男性の場合は多くの場合、年金を繰り上げ(早くもらったほう)が得というデータをご紹介しました。
年金の繰り上げ、繰り下げ制度とは
まずは今回の話の前提となる年金の繰り上げ。繰り下げ制度についてみておきましょう。
繰り上げは年金を早くもらうことができる制度
年金の繰り上げとは簡単に言えば年金を早くもらう事ができる制度です。
年金は通常であれば65歳からもらうことができます。
しかし、繰り上げの手続きをすると60歳から受け取りを開始することができるように。
そのかわりに1回で受給できる金額が減ることになります。
繰り上げするとどれだけ年金が減るのか?
繰り上げは下記の計算式に当てはめて計算します。
簡単に言えば1月に0.5%減額するってことになります。
60歳から受け取りを開始すれば1回の受給を30%減額したものがうけとれるようになるということです。
例えば10万円受け取れる方ならば7万に減額されるってことですね。
その分早く受け取れるのでどちらが得なのかは人によって異なってきます。
繰り上げ制度について詳しくはこちらの記事を御覧ください。
法改正で繰り上げ時の減少幅が縮小
なお、繰り上げのルールは令和4年4月から少し変更となっています。
今まで繰り上げをすると減額率0.5%だったものが0.4%となったのです。
これにより60歳からに繰り下げた場合には1回の受給が24%の減額と6%ほど減少幅が少なくなる計算となります。
変更後の主な年齢の減額率は以下のとおりです。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。
請求時の年齢 | 60歳 | 61歳 | 62歳 | 63歳 | 64歳 |
減額率 | 24% | 19.2% | 14.4% | 9.6% | 4.8% |
法律改正の詳細はこちらの記事を御覧ください。
繰り下げは年金をもらうのを遅らせる制度
次に繰り下げをみていきましょう。
繰下げとは年金をもらうのを遅らせることで一回あたりの年金額を増やす制度です。
繰り下げは繰り上げの逆ですね。
ただし、あまり選択している人は多くないんですけどね。
繰下げするとどれだけ年金が増えるのか
年金の繰り下げによる効果は下記の計算式でわかります。
簡単に言えば1月遅らせると0.7%増額するってことになります。
1年遅らせれば8.4%増えます。1年で8.4%増える金融商品は普通の商品ではありませんので、長生きさえできるならかなり美味しい制度ということになります。
請求時の年齢 | 増額率 |
---|---|
66歳0ヵ月~66歳11ヵ月 | 8.4%~16.1% |
67歳0ヵ月~67歳11ヵ月 | 16.8%~24.5% |
68歳0ヵ月~68歳11ヵ月 | 25.2%~32.9% |
69歳0ヵ月~69歳11ヵ月 | 33.6%~41.3% |
70歳0ヵ月~ | 42.0% |
出所:日本年金機構「老齢年金の繰下げ受給」繰下げ請求と増減率より抜粋
追記:さらに令和4年4月か75歳まで繰り下げができるようになりました。
増額率は同じですから75歳まで繰り下げると84%まで増額することになります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください
結婚している男性の寿命と損益分岐点
それでは結婚している男性は繰り上げ、繰り下げどちらをしたほうが得なのかどうなのでしょう。
まず考えなくてはならないのが繰り上げをした場合の損益分岐点と寿命です。
なお、この話における損益分岐点とは繰り上げした場合や繰り下げした場合と、そのままどちらが得なのかの基準となる年齢と思ってください。
繰り上げした場合の損益分岐点は80歳10ヶ月
令和4年4月以降の0.4%減額を基準に繰り上げの損益分岐点を考えて見ましょう。
例えば月に10万円年金がもらえる予定の方が60歳から繰上げした受給場合には、もらえる金額が24%減ります。つまり月に7.6万円もらえるようになるってことです。
これを減額された24%分が超えるところが損益分岐点ですね。
計算してみると80歳10ヶ月が損益分岐点です。
繰り下げした場合の損益分岐点は81歳10ヶ月
次に繰り下げを見てみましょう。
なお、繰り下げは70歳で計算しています。75歳まで繰り下げると男性の場合は多くの場合損をします。
月に10万円年金がもらえる予定の方が上限まで繰り下げした場合には、もらえる金額が42%増え月に14.2万円もらえるようになるってことです。
このケースの場合は年金の受給は5年間遅らせています。仮にそのまま受給していれば5年間で600万円の年金を受け取れました。
繰下げで増えた金額がこの600万円の差を超えるのが11年と10ヶ月です。
つまり、満額繰下げした場合の損益分岐点は81歳10ヶ月ということです。
結婚している男性は80歳〜84歳が寿命の中央値
それでは結婚している男性の寿命はどのくらいなのでしょう?
下記は婚姻の有無での死亡年齢を層別で表したグラフです。
出典:人口動態調査 15歳以上の死亡数、年齢・性・配偶関係別(2019年調査)を元にお金に生きるでグラフ作成
緑色の線が未婚、青色の線が有配偶者、元々は結婚していたけど離別した方は黄色、死別した人の線がその区分の男性の死亡年齢割合です。
かなり、婚姻の有無で差があるのがわかるでしょう。
結婚している男性のの死亡年齢のピーク(最頻値)、中央値(ちょうど真ん中)とも80歳から84歳となっています。
実際の数字としては未婚男性全体の21.58%がこの年齢区分でお亡くなりになっています。
- 65歳〜69歳:7.09% 累計14.63%
- 70歳〜74歳:11.87% 累計26.50%
- 75歳〜79歳:17.12% 累計43.62%
- 80歳〜84歳:21.58% 累計65.20%
- 85歳〜89歳:21.15% 累計86.35%
出典:人口動態調査 15歳以上の死亡数、年齢・性・配偶関係別(2019年調査)を元にお金に生きるで計算
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
結婚しているは繰り下げがお得?
前述のように繰り上げした場合とそのまま65歳でもらった場合の損益分岐点は80歳と10ヶ月。
繰り下げの場合の損益分岐点は81歳10ヶ月です。
結婚している男性のうち79歳までに亡くなる方は43.62%。
つまり、繰り上げすると半分以上の方が損をするという結果になっています。
逆に繰り下げの損益分岐点を超える方も半数以上いそうなデータとなります。
つまり、以下の結論となります。
繰り上げしないほうが得である確率が高い。
むしろ繰り下げしたほうが得かも
離別している場合は繰り上げがお得か?
次に結婚はしたけど離別(離婚)した独身男性のデータです。
こちらは死亡年齢のピークは70歳から74歳となっています。
- 60歳〜64歳:9.08% 累計24.34%
- 65歳〜69歳:15.12% 累計39.55%
- 70歳〜74歳:19.35% 累計58.90%
- 75歳〜79歳:17.88% 累計76.78%
出典:人口動態調査 15歳以上の死亡数、年齢・性・配偶関係別(2019年調査)を元にお金に生きるで計算
未婚男性よりは後になっていますが、少し早めの寿命ですね。
実際の数字としては未婚男性全体の19.35%がこの年齢区分でお亡くなりになっています。
前述のように繰り上げした場合とそのまま65歳でもらった場合の損益分岐点は80歳と10ヶ月です。
離別した男性のうち76.78%は79歳までに亡くなっています。
多くの方は損益分岐点に達する前に亡くなってしまうのです。
つまり、以下の結論となります。
繰り上げしたほうがお得の方が多い
死別の場合
最も死亡年齢のピークがあとになっているのは結婚はしたけど配偶者が先になくなった(死別)独身男性です。
- 75歳〜79歳:8.73% 累計15.72%
- 80歳〜84歳:16.50% 累計32.22%
- 85歳〜89歳:27.07% 累計59.29%
- 90歳〜94歳:27.14% 累計86.43%
出典:人口動態調査 15歳以上の死亡数、年齢・性・配偶関係別(2019年調査)を元にお金に生きるで計算
中央値は85歳〜89歳。
最も多い(最頻値)は90歳〜94歳とかなり遅くなっていますね。
これは集計上の問題で、有配偶者の中で先に配偶者が亡くなった方だけの集計となりますのでどうしても遅くなる形となります。
ですからこのデータでどうこう言える話ではないかもしれません。
まとめ
今回は「結婚している男性の年金は繰り上げ、繰り下げどちらがお得?」と題して結婚している男性の年金繰上げ、繰り下げの話を見てきました。
あくまでも下記のデータの話ですが、結婚している男性は繰り下げをしたほうが得をする方が多そうです。
このあたりのデータも含めて考えてみてくださいね。
お知らせ:You Tubeはじめました。
You Tube「お金に生きるチャンネル」をはじめました。
You Tubeでも少しでも皆様のお役に立てる動画を定期的に発信していきますのでチャンネル登録をぜひよろしくお願いいたします。