年金制度の改正で受給開始時期の選択肢が拡大。年金は何歳から受け取るべきかが変わるかも

年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立、公布されました。

これにより厚生年金、国民年金、iDeCoなど様々な変更が生じます。

今回は令和2年の年金制度改正法のうち多くの方に影響のある受給開始時期の選択肢が広がった件、について見ていきます。

今回の改正により年金を何歳から受け取るべきなのかというのが、人によっては今までと変わってきてしまうケースもあるでしょう。

繰り下げが75歳まで可能に

受給開始時期の選択肢の拡大
受給開始時期の選択肢の拡大

出典:厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」より

年金は基本的に65歳からもらうことができます。

しかし、ライフスタイルによって早くもらいたい人、遅くても良い人がいますのでそのあたりは柔軟に変更できるように設計されています。

早くもらう場合を繰り上げ、遅く受け取る場合を繰り下げといいます。

その繰り下げが今までは最も遅くても70歳までだったのですが、75歳まで可能になると拡大されたのです。

75歳まで繰り下げの対象者

なお、今回のルールが適用されるのは令和4年4月からとなっており、以下の条件を満たした方が対象となります。

●令和4年4月1日以降に70歳に到達する方(昭和27年4月2日以降に生まれた方)が対象

令和4年4月1日までに70歳になっている方は対象外ってことですね。

繰り下げでの増額が最大84%に

繰り下げ制度はメリットもあります。

遅くもらうことになりますので、1回あたりの年金がもらえる金額が繰り下げした期間に応じて月0.7%増額されるようになっているのです。

今回、75歳まで繰り下げが利用できるようになりましたのでその増額分も延長されることになりました。

今までは

70歳までの繰り下げの場合には42%の増額(月0.7%✕60ヶ月)

が最高の増額でした。それが

75歳までの繰り下げの場合には84%の増額(月0.7%✕120ヶ月)
と大きく増えたのです。
年金をもらうタイミングを遅らせることで1回あたりの年金を増やせるのです。
ただし、これ判断が難しいところなんですよ。



75歳まで繰下げた場合の損益分岐点は約12年(税金考慮なし)

例えば月に10万円年金がもらえる予定の方が上限まで繰り下げした場合には、1回にもらえる金額は18.4万円です。

このケースの場合は75歳ともらう時期を10年遅らせています。

仮に65歳で繰り下げせず受給していれば10年間で1,200万円の年金を受け取れました。

単純計算で繰下げで増えた金額が受給しなかった分を超えるのが75歳で受給した場合は約12年とちょっと。

75歳から12年受給すると87歳ですから87歳以上生きるなら得となります。

ちなみに標準生命表によると65歳男性の平均余命は19.53歳です。

つまり、84.53歳まで生きるのが平均となります。

ですから男性の場合には75歳まで繰り下げは損になる可能性がそれなりに高そうです。

また65歳女性の平均余命は24.27歳です。

つまり、89.27歳まで生きるのが平均となります。

多くの方は損益分岐点の年齢を超えることになります。

女性の場合は、繰り下げが得になる方も多くなりそうです。

繰り下げは受取時の税金がネック

ただし、上記のシュミレーションは所得税などの税金等を考慮していません。

当然、繰り下げれば一年間にもらえる税金が増えますのでその分だけ所得税などが増える可能性が高いのです。

所得税は受け取るときの税金のルールがどうなっているのか、その他の収入、控除がどうなっているのかによって大きく変わってきます。

特に受け取るときのルールや状況がどうなっているのかは今から読むことは困難ですからちょっとした賭けになってしまう点もあるんですよね。

なお、現在のルールだと公的年金控除があるのでの1,100,000円までの場合は、所得金額はゼロとなります。(令和2年分以降)

ちなみに繰り上げは不安に思う方が多いようであまり利用している方は多くないのが現状ですね。

繰り上げが使いやすく

繰り下げが75歳まで適用対象になったのは大きく報道されていますが、もう一つ地味に変更になった点があります。

それは65歳よりも早く年金をもらう「繰り上げ」のデメリットが少し減り利用しやすくなったことでしょう。

繰り上げ制度は繰り上げと比較して多くの方が利用されているんですよ。

繰り上げの減額率が0.5%→0.4%に

具体的には繰り上げの減額率が0.5%だったのが0.4%に改定されることになります。

繰り上げは65歳より早く年金をもらう制度です。

早くもらうことになりますから少し減額されて支給されているのです。

今まではそれが月0.5%でした。

60歳からもらうとなると30%(0.5%✕60ヶ月)とかなりの減額幅だったんですよ。

それが0.4%になったことで減額が最大24%(0.4%✕60ヶ月)となりました。

変更後の主な年齢の減額率は以下のとおりです。

※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。

請求時の年齢60歳61歳62歳63歳64歳
減額率24%19.2%14.4%9.6%4.8%

なお、こちらも令和4年4月からの適用となります。

繰り上げの損益分岐点が76歳8ヶ月→80歳10ヶ月に

60歳に繰り上げする場合の損益分岐点を考えて見ましょう。

こちらは損益分岐点が大きく変わりました。

例えば月に10万円年金がもらえる予定の方が60歳から繰上げした受給場合には、もらえる金額が24%減ります。つまり月に7.6万円もらえるようになるってことです。

これを減額された24%分が超えるところが損益分岐点ですね。

計算してみると80歳10ヶ月が損益分岐点です。

改定前は76歳8ヶ月でしたから繰り上げが得の期間が4年近く伸びた形ですね。

それ以上生きる場合には通常の65歳からもらっておいたほうが得であったということになります。

ただし、特別支給の老齢厚生年金や寡婦年金なんかをもらっている場合にはちょっと損益分岐点が変わります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。




まとめ

今回は「年金制度の改正で受給開始時期の選択肢が拡大。年金は何歳から受け取るべきかが変わるかも」と題して年金の受給開始時期の選択肢が広がったよって話をみてきました。

繰り上げが使いやすくなり、繰り下げも70歳までだったのが75歳までと選択肢が広がった形ですね。

どの年齢でもらうのが得かというのはその人が何歳まで生きるのか、受給時の税金、受給時の収入、控除など様々な要素で変わってきます。

つまり、今から年金受取は何歳がベストであるというのを予想するのは困難です。

ですから自分が何歳まで生きれるのかなどを予想して検討するしかないでしょうね。

ベストではなくベターを狙うという感じがよいかもしれません。

なお、今回の年金制度改正法(令和2年法律第40号)でiDeCoの変更点等はこちらの記事を御覧ください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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