米国株のアクティブファンドは「買わない方がよい」?金融庁が投資する意義がほとんど無いことを指摘

金融庁が毎年発表している「資産運用業高度化プログレスレポート」

こちらの2022年版が出ましたのでみてみました。

今回も前回と同じく「大手のアクティブファンドはまずい」というのが分かる結果でしたのでご紹介しましょう。

ちなみに昨年の指摘はこちらの記事でまとめております。合わせて御覧ください。

本記事のYou Tube版はこちらからご覧いただけます。

合わせてごらんください

インデックスファンドを下回るシャープレシオ

まず注目したいのがこちらの資料。

資産運用業高度化プログレスレポート2022インデックスファンドとの比較

出典:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2022」より

上記の図は運用資産の大きい資産運用会社順に、その資産運用会社のアクティブファンドのシャープレシオを集計したものです。

なお、「シャープレシオ」とは投資のリスクに対してどれだけリターンが得られるのかを示した指標で、これが高ければ運用効率が高いことを示します。

これによると

  • アクティブファンドのシャープレシオ平均は0.49
  • インデックスファンドのシャープレシオ平均は0.59

と負けていますね。

さらに注目したいのが大手の成績です。

資産運用規模の大きい会社の成績が悪い

これを見ると一目瞭然。

資産運用の大きい会社のアクティブファンドの方がシャープレシオが低い傾向が見られます

つまり、運用効率が良くないということです。

資料でもこちらのようにしてきしております。

ファンド数が相対的に少ない社に、比較的平均パフォーマンスの良い社が見られる。運 用するファンドが 20 本以下の社ではアクティブファンドの平均シャープレシオ(0.49:赤い線)を上回る社が多く あり、独立系や一部の外資系等を中心にインデックスファンドの平均シャープレシオ(0.59:緑の線)も上回って いる先が見られる。ファンド数が少ない社では、旗艦ファンドに注力しリソースを集中させることで良好なパフォーマン スを実現している傾向が見られる。

一方、100 本以上のファンドを運用する社では良好なパフォーマンスを実現して いるファンドもあるが、シャープレシオがマイナスとなっているファンドも多くみられ(赤点線枠囲み)、顧客利益を最 優先したプロダクトガバナンスの徹底が期待される。

出典:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2022」より

つまり、ファンド数が少ない機関の商品は成績も良好な傾向。

ファンド数が多い機関はその逆のケースが多いってことですね。

アルファが有意にマイナスなアクティブファンドも

アクティブファンドは信託報酬が高い代わりに市場平均等を上回る成績を期待して購入する方が多いでしょう。

その超過リターン(アルファ)の分析もしてくれています。

資産運用業高度化プログレスレポート2022アルファ

出典:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2022」より

約半数(444 本中 219 本)においてアルファの推計値がマイナスとなっているんですよ。

つまり、信託報酬が高いのに期待どうりの成績を残せていないということです。

アルファが統計的に有意にプラスになったのは 444本中35 本しかなかったとのこと。

具体的な商品名はでていませんが、データをみるとアクティブファンドで買う価値があるのはその35本だけということになります。

逆に統計的に有意にマイナスとなったファンド 32 本あります。

これは買ったら駄目なファンドですね。

殆どが大手資産運用会社の商品とのこと。しかも運用期間が長いとのことで買っている方も多いのかもしれません。

大手資産運用会社のファンドが多くを 占め、独立系の資産運用会社のファンドは見られない。また、そのうち約7割(32 本中 23 本)が設定から 20 年以上経過しているファンドであり、約 4 割(32 本中 12 本)が、中長期の運用を前提にしていると考えられる DC(確定拠出年金)向けのファンドであった。

出典:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2022」より

コストを考えると多くのアクティブファンドが・・・

前述のように444本中アルファが統計的に有意にプラスになったのが35本、統計的に有意にマイナスとなったのが32本です。

残りの8割近い商品は統計上は有意にプラスでもマイナスでもないという結果です。

しかし、アクティブファンドは販売手数料が高いですのでその部分を勘案するとさらに厳しい結果に

資産運用業高度化プログレスレポート2022アルファ+コスト

出典:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2022」より

信託報酬水準がアルファの推計値を上回ってしまっていると考えられ るファンドが多数見受けられた(橙の斜め線より左側の点の分布)。なお、この分析では販売手数料が考慮され ていないため、販売手数料も含めたコストがアルファを上回ってしまうファンドは、実際には更に多いと考えられる。

出典:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2022」より

つまり、手数料を勘案すると買う価値がないファンドってことですね。

さらにやばい実態も・・・

さらにやばい実態も暴露されています。

投資家向け資料にはコスト控除後のパフォーマンスを基準価額の推移として掲載しているが、社内の組織的な商品管理の目的では、コスト控除後のパフォーマンス指標が算出、共有されておらず、検証もされていない

出典:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2022」より

そもそも検証していないというのはやばいですね。売れれば良いという考えなんでしょうね。

ポートフォリオの約 30%をバリュー株でアクティブ運用するファンドにおいて、残りの 70%はパッシブ運用にも 関わらず、ポートフォリオの 100%をアクティブ運用する他社のファンドに準じた信託報酬水準を設定。商品 組成時の信託報酬設定の考え方が不合理であり、結果的に設定来のコスト控除後の超過リターンは大 きくマイナスとなっているが、信託報酬水準の見直しの検討が行われていない事例。

出典:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2022」より

手数料が高すぎるってことなんでしょうね。

長期に運用を継続するファンドの一つである日本株アクティブファンドの社内でのパフォーマンス評価にあたり、 分配金再投資の基準価額を TOPIX の配当抜き指数と比較しており、その不合理に気づかないまま、10 年以上の長期にわたり「超過リターンが出ている」と誤認していた事例。

出典:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2022」より

これはさらにやばいです。そもそも間違えた比較をしていたという事例・・・

なかなか一般の投資家側からだとこのあたりの実態は見えませんからこの指摘はありがたいところ。

アメリカ株のアクティブファンドはさらにやばい・・・

最近はアメリカ株が人気となっていますが、アメリカ株のアクティブファンドはさらにやばい事になっています。

資産運用業高度化プログレスレポート2022米国株アルファ+コスト

出典:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2022」より

アルファが統計上有意にプラスとなったファンドは1本もなかった。また、参考として、米国株インデックスファンドのうち長期の実績があるファンドのアルファを推計したところ、 ほとんどの米国株アクティブファンドのアルファがこのインデックスファンドの結果を下回った。これは、統計的な観点から は、米国株についてはパッシブファンドに替えてアクティブファンドに投資する意義がほとんど無いことを示している

出典:金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2022」より

1本もアルファが統計上プラスとなっていないというのです。

しかもほとんどがインデックスファンドを下回っているという・・・

つまり、このデータだけみるとアメリカ株のアクティブファンドを選択する意味は殆どないってことになりますね。

日本の場合は35本は有意がでていますのでそれらは選ぶ意味はありますが・・・



まとめ

今回は「米国株のアクティブファンドは「買わない方がよい」?金融庁が投資する意義がほとんど無いことを指摘」と題して「資産運用業高度化プログレスレポート」についてみてきました。

アクティブファンド=悪とは思いませんが、どうしても地雷と言われる投資信託のほとんどがアクティブファンドです。

その見極めが必要ですが、過去の例をみてもそれを金融機関に期待するのは難しい・・・。

銀行や証券会社も商売ですし、ノルマがありますから儲かる商品(手数料が高い投資信託)を売るのを責めるのは酷ですしね。
自分の資産は自分で守るしかありません。

自分で見極めれない方ははじめから低い信託報酬のインデックスファンドを買うのが正解でしょうね。

独立系の資産運用会社のようにがんばっているところもありますが・・・

とくにアメリカ株を対象としたアクティブファンドは1本もアルファが統計上プラスとなっていないというのはかなり衝撃的ですね。

このあたりをしっかり認識した上で購入を検討してみてください。

また、同じ資産運用業高度化プログレスレポートの中から仕組債や企業型確定拠出年金についての内容はこちらの記事でまとめております。

合わせてご覧ください

お知らせ:You Tubeはじめました。

You Tube「お金に生きるチャンネル」をはじめました。

You Tubeでも少しでも皆様のお役に立てる動画を定期的に発信していきますのでチャンネル登録をぜひよろしくお願いいたします。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

「シェア」、「いいね」、「フォロー」してくれるとうれしいです

大手のアクティブファンドを買わない方が良い理由を金融庁が説明してくれている件
最新情報をチェックしよう!