金融庁が定期的に発表している「資産運用業高度化プログレスレポート」
その2023年版は例年より更に踏み込んで資産運用会社の問題に対してメスが入っている感じです。
資産所得倍増プランを岸田政権が掲げていることも大きいのでしょう。
今回は「資産運用業高度化プログレスレポート2023」の中から私が注目した点を取り上げていきます。
ちなみに2022年版ではこんなことが追求されていました。
日本のファンドは運用者の情報を開示してないぞ
出典:資産運用業高度化プログレスレポート2023
まず、注目したのが日本のファンドは運用担当者の氏名を2%しか開示していないという点です。
アメリカなどはほぼ100%なんですよ。
法令上の定めにより、米国の資産運用会社の目論見書や追加情報書には、運用チームの主 要メンバーの氏名や経歴、担当するファンドの株式保有状況など、こんな感じで詳細な情報が記載されているんですよ。
・ポール氏、タケオ氏、トム氏がファンドの日々の運用の主な責任を担っています。
・ポートフォリオ・マネージャーは、ポートフォリオ管理に関する様々な機能を担い、これには、 例えば、特定の資産クラスへの集中、投資戦略の実行、投資戦略の調査と見直しのための各 ポートフォリオ管理チームメンバーとの調整、より責任が限定されたポートフォリオ管理チー ムのメンバーの監督等が含まれます。
・ポールは 2007 年からシニア・ポートフォリオ・マネージャーとして当社に勤務しています。 それ以前は、2006 年から 2007 年までC社でポートフォリオ・マネージャーを務め、2012 年 より当ファンドのポートフォリオ・マネージャーを務めています。
・タケオは、2006 年からシニア・ポートフォリオ・マネージャーとして当社に勤務しています。 2001 年から 2006 年まで D 社でポートフォリオ・マネージャーを務め、2008 年から当ファン ドのポートフォリオ・マネージャーを務めています。
・トムは、…(略)。
・ファンドの追加情報書類は、ポートフォリオ・マネージャーの報酬、ポートフォリオ・マネー ジャーが管理する他の口座、及びポートフォリオ・マネージャーのファンドの株式所有(ある 場合)に関する追加情報を提供しています。出典:出典:資産運用業高度化プログレスレポート2023
この差はかなり大きいですね。
ひふみ投信など運用者の顔が見えることをウリにするファンドが人気となっているのもわかります。
これだけ名前を出さないのにはいろいろな理由があると思われますが、「資産運用業高度化プログレスレポート2023」でまとめられた内容を読むとだいたい想像がついてしまいます・・・
行間を読み取るとおそらくいいたいことは
駄目なんだよ!!
トップの在任期間が短い
出典:資産運用業高度化プログレスレポート2023
まずはトップの在任期間が世界的にみてかなり短いってことです。
トップがすぐ変わるので名前を発表しにくいのもありそう。
経験年数が短い人がトップに
出典:資産運用業高度化プログレスレポート2023
また、そもそも資産運用会社のトップの資産運用会社経験年数が圧倒的に短いというのもあります。
つまり、素人に毛が生えたような人がトップにいるケースが多いんですよ。
資産運用会社の経験が少ない人がトップで名前を公表すれば投資が集まらない可能性が高いのでこれも公表できない理由でしょうね。
実際にトップの方が直接運用しているわけではないでしょうが・・・
グループ会社から回されてきた方がほとんど
ではなぜこんな事になっているのでしょう・・・
出典:資産運用業高度化プログレスレポート2023
ほとんどが他の部署や他のグループからの転籍みたいなんですよ。世界的な大手は内部昇進がほとんどなのに対して大きな違いですよね。
経験が少ない人がトップになるのはこれが大きな要因となっています。
世界的な大手資産運用会社のトップに収入した理由を以下のとおりですから大きな違いですね
- 「39 年の投資運用経験、全て当社」
- 「サクセッションプランにより、CEO(最高経営責任者)に就任」
- 「共に働いた前社長が述べるところによると、彼は当社の顧客向けサービスに強い情熱を持っ ており、グローバルな視野と業務のあらゆる局面で強いリーダーシップを持っている理想的 な経営トップである」
- 「アジア太平洋、米州、欧州の当社ミューチュアル・ファンド部門を率いてきた」
- 「金融セクターのアナリスト、ポートフォリオ・マネージャー、ファンドの運用・調査部門の 最高責任者(CIO)としての 30 年にわたる経験」
ここからは想像ですが、日本の大手は昔から管理職が多すぎ問題があります。
一度昇進してしまうと下げにくいんですよ。
ですからあぶれた管理職をグループ企業の子会社トップに就任させるとかよくあります。
経験が物を言うはずの資産運用会社のトップですらそんな感じで決められているのでしょう・・・・
つまり、社内人事優先でものごとが決められているということ。
日本のアクティブファンドは投資したくなくなりますね・・・
情報開示も遅えよ
また、今回の「資産運用業高度化プログレスレポート2023」では情報開示も遅いことも暗に指摘してますね。
保有銘柄開示頻度
出典:資産運用業高度化プログレスレポート2023
他国では月次で公開するケースが多いのですが、日本では月次で公開しているファンドはかなり少なくなっています。
多くは年に1度もしくは半年に1度のペースです。
開示までのタイムラグも長い
出典:資産運用業高度化プログレスレポート2023
開示までのタイムラグも102日とかなりおそい部類となります。
さらに資産運用業高度化プログレスレポート2023では「多く PDF であり、データの二次利用が困難な状況」についても指摘しています。
日本のファンドはジリ貧
次の資料も大変興味深いです。
当初設定額が歴代上位 20 位の公募投資信託の純資産額の推移を見ると、その多くは設定以降、 数カ月から1年半以内に純資産額のピークを迎え、その後急速に減少しているんですよ。
つまり、ジリ貧であったってこと。
出典:資産運用業高度化プログレスレポート2023
運用商品の販売現場が、販売手数料獲得型の営業を主流としており、その時々で話題性があり、顧客に販売し易い新規商品の提供を優先してきたこと。
つまり、販売するのが目的となっているので、その時に話題のテーマのファンドをどんどん売りつけるみたいな商売になっているってことなのでしょうね。
1本あたりの運用資産は少ない
また上記の話に絡んでくるところですが。1ファンドあたりの運用資産がかなり少ないんですよ。
アメリカよりもファンド数は多いにも関わらずです。
出典:資産運用業高度化プログレスレポート2023
販売手数料中心の商売だったので新しい商品をどんどん出して・・・みたいな事になっていたのかもしれませんね。
資産運用業高度化プログレスレポート2023では
販売会社においては、資産運用会社が抽出した不芳ファンドの繰上償還に向けて、迅速に対応することが期待される。
と駄目なファンドは繰上償還するべきとも言及しています。
まとめ
今回は「日本の資産運用会社は闇深い??資産運用業高度化プログレスレポート 2023で追求。」と題して資産運用業高度化プログレスレポート 2023で個人的に興味深いトピックスについてみてきました。
今回ご紹介した内容すべて闇深いとしか言いようがありません・・・
インデックスファンドや他の国のファンドが売れるのが分かりますね。
このあたりの改善がないと資産所得倍増プランもうまく行かない気がしますね・・・
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