2026年9月11日に東証グロース市場へ上場するKOMPEITO(コンペイトウ・証券コード618A)のIPOに当選しました。
設置型健康社食「OFFICE DE YASAI(オフィスでやさい)」を運営している会社ですね。
オフィスに冷蔵庫を置いてサラダやお惣菜を提供するアレです。
最近増えていますので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
ただし、当選したのはSBI証券。しかも100株だけの申込みで当選しました。
……はい。当ブログの読者さんならお分かりですね。
私にとってこれは、かなり嫌なパターンなんですよ。
過去に私がSBI証券で100株だけ申し込んで当選・補欠当選した銘柄の成績は、それはもう悲惨なものでした。
この経験則を私は勝手に「SBI証券100株当選シグナル」と呼んでいます。
今回もそのシグナルが点灯しているわけです。
とはいえ、シグナルだけで機械的に辞退するのももったいない話。
KOMPEITOという会社自体は、実は事業内容も業績も悪くないのです。
そこで今回は、KOMPEITOのIPOについて、需給・業績・バリュエーションの3方向から分析したうえで、この「100株当選シグナル」をどう扱うべきかを考えていきましょう。
KOMPEITO(618A)のIPO概要
まずは基本情報から確認しておきます。
上場スケジュールと公開価格
2026年9月3日に公開価格が決定しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 銘柄名 | 株式会社KOMPEITO |
| 証券コード | 618A |
| 上場市場 | 東証グロース |
| 上場日 | 2026年9月11日 |
| 想定価格 | 1,560円 |
| 仮条件 | 1,560円~1,600円 |
| 公開価格 | 1,600円(仮条件上限) |
| ブックビルディング | 8月27日~9月2日 |
| 購入申込期間 | 9月4日~9月9日 |
| 主幹事 | SBI証券 |
| 監査法人 | ESネクスト |
公開価格は仮条件の上限である1,600円に決まりました。
ここだけ見れば需要はしっかり集まったということになります。
ただし、そもそも仮条件のレンジが想定価格1,560円に対して1,560円~1,600円と、上振れ幅がわずか2.6%しかないという点は覚えておいてください。
上限決定といっても、レンジの取り方自体が非常に控えめだったのです。
なお、幹事証券にはSBI証券のほか、松井証券、マネックス証券、九州FG証券、静銀ティーエム証券、中銀証券、西日本シティTT証券、八十二証券、ひろぎん証券が並びます。
地方銀行系の証券会社が多いのは、後述するこの会社の営業戦略とも関係しています。
KOMPEITOは「OFFICE DE YASAI」の会社
KOMPEITOは2012年9月設立、代表は渡邉瞬氏。
東京都品川区西五反田に本社を構えています。
主力サービスは設置型健康社食「OFFICE DE YASAI」。
オフィスに冷蔵庫・冷凍庫を設置し、管理栄養士監修のサラダやお惣菜、お弁当を届けるサービスです。
従業員は冷蔵庫から現金やスマホ決済で商品を購入する仕組みですね。
社員食堂を持てない中小企業でも省スペースで導入できるのが特徴で、2025年8月期の連結売上ではこのサービスだけで95.4%を占めています。
ほかに連結子会社が2.8%、その他事業が1.8%という構成です。
数字面を見ていくと、なかなか優秀な指標が並びます。
- 2026年5月末時点の本契約社数:6,644社
- ARR(年間経常収益):89.2億円
- ARPU(1社あたり年間売上):134万円
- 直近12か月平均の月次解約率:1.1%
- 月次サブスク売上:69か月連続で増収
解約率1.1%というのは、サブスクリプションビジネスとしてはかなり優秀な水準です。
契約企業が積み上がれば売上を予測しやすいビジネスです。
しかも69か月、つまり5年半以上ずっと月次売上が増え続けているわけですから、事業モデルとしての強さは本物でしょう。
全国7カ所の拠点と約270社の営業提携先を活用して全国配送に対応しており、地方銀行などを通じて中小企業を開拓しているのが強みです。
契約企業の81%が従業員100人以下で、これまで社食を設置しにくかった中小企業を開拓している点にも伸びしろがあります。
幹事証券に地銀系が多いのも納得ですね。
また、会社側はアプローチ可能な市場規模を約9,000億円と試算しています。
ARR89.2億円ということは浸透率はまだ1%程度。
成長余地は十分ある、というストーリーになります。
さらに、2026年4月から、企業が従業員に支給する食事補助の非課税限度額が月額3,500円から7,500円へ引き上げられました。
42年ぶりの改正であり、福利厚生サービスを扱うKOMPEITOには追い風となりそうです。
ここは私が注目しているポイントで、企業が福利厚生として食事補助を導入しやすくなった制度変更ですから、素直に事業環境はよくなっています。
「SBI証券100株当選シグナル」が点灯
さて、ここからが本題です。
なぜ100株当選が危険信号なのか
SBI証券のIPO抽選は資金比例方式を採用しています。
多くの証券会社が「1人1単位」の完全平等抽選なのに対し、SBI証券はたくさんの資金を入れた人ほど当選しやすくなる仕組みなんですね。
裏を返せば、100株だけの申込みで当選してしまうということは、それだけ申込みが集まらなかった=人気がなかったということを意味します。
本当に人気のある銘柄なら、数千万円、数億円を投じても当選しないのが普通ですから。
つまりSBI証券の抽選結果は、その銘柄の人気度を測るバロメーターとして機能するのです。
過去の「100株当選」銘柄の成績を振り返る
以前まとめた、私がSBI証券で100株だけ申し込んで当選・補欠当選した銘柄の結果がこちらです。
※2023年9月に下記ブログを書いた時点まで。その後のものは集計しておりません
| 銘柄 | 抽選結果 | 公募価格 | 初値 | 損益(1単位) |
|---|---|---|---|---|
| ライズ・コンサルティング・グループ | 当選 | 850円 | 850円 | 0円 |
| GENDA | 補欠当選 | 1,770円 | 1,637円 | △13,300円 |
| 雪国まいたけ | 補欠当選 | 2,200円 | 2,100円 | △10,000円 |
| フォーラムエンジニアリング | 補欠当選 | 1,310円 | 1,030円 | △28,000円 |
| エスコンジャパンリート投資法人 | 当選 | 101,000円 | 97,200円 | △3,800円 |
| ステムリム | 補欠当選 | 1,000円 | 930円 | △7,000円 |
| BASE | 補欠当選 | 1,300円 | 1,210円 | △9,000円 |
| ソフトバンク | 当選 | 1,500円 | 1,463円 | △3,700円 |
| SBIインシュアランスグループ | 補欠当選 | 2,160円 | 2,160円 | 0円 |
9銘柄中、初値がプラスだったものはゼロ。7銘柄が公募割れ、2銘柄が同値スタートです。
これはもう偶然では片付けられない水準でしょう。
詳しくは過去記事をご覧ください。

そして今回のKOMPEITOも、まったく同じパターンでの当選です。
シグナルとしては赤信号が灯っている、と考えるのが自然ですね。
需給面を4項目でチェックすると、かなり重い
では、この「100株当選シグナル」は今回も正しいのでしょうか。
需給面を客観的な数字で検証してみましょう。
私がIPOの需給を見るときに必ず確認する4項目です。
吸収金額:77億円は東証グロースでは重量級
公開株数は4,817,500株。公開価格1,600円で計算すると吸収金額は約77.1億円になります。
東証グロースのIPOとしてはかなりの大型案件です。
この規模を個人投資家中心の需要で消化するのは、率直に言って荷が重い。
オファリングレシオ:48.7%と高すぎる
上場時の発行済株式数は9,898,300株。そのうち4,817,500株が市場に放出されますから、オファリングレシオは約48.7%です。
会社の株式の半分近くが一気に市場に出てくる計算ですね。
一般的にオファリングレシオは20~30%程度に収まることが多いので、これはかなり高い部類に入ります。
公募と売出の比率:ほぼ全部が「売出」
ここが最大の問題点です。
- 公募株数:50,000株
- 売出株数:4,139,300株
- オーバーアロットメント:628,200株
公募はたったの5万株。会社が調達する資金は手取概算でわずか6,176万円です。
上場によって会社に入るお金がこれだけしかない、ということは、このIPOの実質的な目的は資金調達ではなく既存株主の換金(エグジット)であるということになります。
ちなみにその6,176万円の使途は、「OFFICE DE YASAI」の導入拠点拡大に向けた広告宣伝費に全額充当する予定とされています。
VC比率とロックアップ条件:66%と1.5倍解除
上位株主を見てみましょう。
| 株主名 | 比率 |
|---|---|
| 渡邉瞬(代表) | 21.85% |
| JICベンチャー・グロース・ファンド1号 | 9.97% |
| IF Growth Opportunity Fund I, L.P. | 8.52% |
| ニッセイ・キャピタル7号 | 8.33% |
| ニッセイ・キャピタル11号 | 7.07% |
| ニッセイ・キャピタル9号 | 6.14% |
| インキュベイトファンド2号 | 5.24% |
| キユーピー(株) | 3.88% |
| あおぞらHYBRID3号 | 2.90% |
| 鈴与(株) | 2.51% |
上場前の発行済株式のうち、約66%をVCなどの投資ファンドが保有しています。
ニッセイ・キャピタルだけで3ファンド、合計21.5%ですね。
そしてロックアップは90日(2026年12月9日)、180日(2027年3月9日)、360日(2027年9月5日)の3種類。問題は90日のロックアップに「公開価格の1.5倍」で解除される条項が付いていることです。
1,600円の1.5倍は2,400円。
つまり株価が2,400円に到達したら、90日を待たずにロックアップが外れて売り圧力が発生する可能性があるということです。
これは実質的に2,400円が上値の天井として意識されることを意味します。
上がっても2,400円で頭を押さえられる、と市場参加者が考えてしまうわけですね。
4項目すべてが「重い」判定。「100株当選シグナル」の裏付けとしては、残念ながら十分な材料が揃ってしまっています。
業績とバリュエーションは決して悪くない
一方で、需給が重いからといって会社が悪いわけではありません。
むしろ業績はしっかりしています。
売上高は急拡大、そして黒字転換
| 決算期 | 売上高 | 経常利益 | 当期純利益 |
|---|---|---|---|
| 2023年8月期(単体) | 16.96億円 | △4.33億円 | △4.35億円 |
| 2024年8月期(連結) | 31.01億円 | △4.61億円 | △4.67億円 |
| 2025年8月期(連結) | 57.37億円 | △2.46億円 | △1.61億円 |
| 2026年8月期3Q累計(連結) | 70.48億円 | 6.66億円 | 5.55億円 |
| 2026年8月期会社予想 | 98.71億円 | 8.77億円 | 11.26億円 |
2025年8月期の売上高は前期比85.0%増。
そして2026年8月期は第3四半期累計で営業利益6.71億円、営業利益率9.5%と、ついに黒字転換を果たしました。
2026年8月期は売上高が前期比72.0%増となる見通しです。
赤字だった経常損益も8.77億円の黒字へ転換する予想です。
達成すれば前期比68%増ですね。
これまでの赤字は広告宣伝費や人員採用などの先行投資によるもので、足元では投資を続けながらも利益が出る水準まで収益性が高まった、というのが会社側の説明です。
PSR1.6倍、PERは実質25倍程度か
公開価格1,600円ベースの時価総額は約158.4億円です。
通期売上目標96.45億円で計算するとPSRは約1.64倍。
SaaS企業なら割安に見える水準ですが、KOMPEITOは生鮮食品を実際に配送する事業ですから、資産効率の高いSaaSと同じ倍率で評価すべきではありません。
この業態としては妥当なところでしょう。
PERについては、ここで元・経理責任者として一言注意喚起しておきます。
公開価格1,600円と会社予想EPS113.76円から計算すると、予想PERは約14.1倍です。
一見すると、売上高が72%も伸びる企業としては割安に見えます。
しかし、ここには罠があります。
過去の繰越欠損金などによる税負担の軽減があり、今期のEPSには税効果という特殊要因が含まれているのです。
仮に2026年8月期会社予想の経常利益8.77億円へ30%程度の税負担を置く、ごく粗い正常化をすると、純利益は約6.14億円、EPSは約62円です。
この場合、公開価格のPERは約25.8倍となります。
これは正式な会社予想ではなく、あくまで税効果をならすための簡易試算です。
それでも、見かけのPER14.1倍だけを理由に「かなり割安」と判断するのは避けたいところです。
決して割高ではありませんが、飛びつくほど割安でもない。
「そこそこ妥当な値付け」というのが率直な印象です。
事業リスクも押さえておく
- 売上の95%超が「OFFICE DE YASAI」1本に依存している
- 生鮮食品を扱うため、原材料価格・配送費・人件費の上昇が利益率を直撃する
- 食品事故や物流網の確保といった、実物を扱うビジネス特有のリスクがある
- 米国子会社(KOMPEITO USA)やM&Aによる先行投資負担
サブスクという言葉の響きからSaaSのようなイメージを持ってしまいがちですが、実態は食品の製造・配送を伴う労働集約的な事業です。
インフレ局面では利益率が圧迫されやすい構造であることは、きちんと認識しておくべきでしょう。
各社の初値予想は真っ二つに割れている
IPO情報サイト各社の初値予想を並べてみると、見事にバラバラです。
- 強気派:1,760円~2,090円
- 中立派:1,600円~1,800円
- 慎重派:1,580円(公募割れリスクあり)
コンセンサスとしては「公開価格~プラス15%程度」あたりに収れんしている印象ですが、公募割れを警戒する声も明確に存在します。
100株(投資額16万円)での初値売り想定損益はこうなります。
| 初値 | 損益 |
|---|---|
| 2,000円 | +40,000円 |
| 1,800円 | +20,000円 |
| 1,700円 | +10,000円 |
| 1,600円(同値) | 0円 |
| 1,500円 | △10,000円 |
| 1,400円 | △20,000円 |
なお、プラス材料としては約1か月ぶりのIPO案件(前回は8月4日のエブリー)であること。
久しぶりの案件は資金が集中して過熱しやすい傾向があります。
9月相場の口火を切る銘柄という点は、多少の追い風にはなるでしょう。
で、結局買うのか辞退するのか
ここまでの分析を整理します。
買い材料
- 解約率1.1%、69か月連続増収という良質なストックビジネス
- 黒字転換のタイミングでの上場
- 食事補助の非課税限度額引き上げという制度的追い風
- 市場浸透率まだ1%で成長余地が大きい
- PSR1.6倍と割高ではないバリュエーション
- 約1か月ぶりのIPOで資金が集まりやすい
売り材料(=辞退材料)
- 吸収77億円は東証グロースでは重量級
- オファリングレシオ48.7%と高い
- 公募5万株に対し売出413.9万株、実質はVCのエグジット案件
- ファンド保有比率66%、90日1.5倍でロックアップ解除
- SBI証券100株当選という過去9戦0勝のシグナル
- 実質PERは25~30倍で、割安感による下値支えは期待しにくい
私の見立てとしては、事業は良いがIPOとしての妙味は薄い、というのが結論です。
需給の重さは数字ではっきり出ていますし、そこに「100株当選シグナル」が重なっています。
この2つが同じ方向を指しているときは、素直に従うのが過去の経験則です。
そしてもう一つ大事な視点。
初値が公募価格割れするなら、わざわざIPOで買わなくても上場後に買えばいいという話なんですよ。
KOMPEITOの事業モデルは私も評価しています。
であればこそ、12月9日の90日ロックアップ解除でVCの売りが出て需給が悪化した局面を拾うほうが、よほど合理的なのではないでしょうか。
100株で当選して公募割れしたBASEも、上場後しばらくしてから大きく化けていますからね。
私の結論
私の結論は、今回当選した100株は購入します。
個人的な評価は100点満点で60点ほどです。
- 予想初値の中心:1,650円~1,700円
- 想定レンジ:1,450円~2,100円
- 公募割れリスク:30%前後。ただし「100株当選センサー」を重く見るなら、40%近くまで警戒
- 基本戦略:100株だけ購入。ロックアップ解除付近までは様子見
初値で大きな利益を狙えるIPOはないでしょう。
むしろ公募割れの危険性もある。
しかし、公開価格が仮条件の上限で決まるなど機関投資家などの需要が極端に弱かったわけではないこと。
ARR89.2億円、月次解約率1.1%、月間サブスク売上69か月連続増加という実績は魅力的。
従業員に支給する食事補助の非課税限度額の改正という単なるテーマ先行ではなく、事業の成長を確認できること。
大株主の創業者は今回株式を売り出さず、上場後も約230万株を保有すること
これらを合わせて考えると、公募割れの危険はあるものの、損してもしれている。
ロックアップ解除付近までは持っても問題ないと判断しました。
ただし、1万円前後の損失も受け入れたくない人なら、購入辞退も十分に合理的です。
「当選したから買う」のではなく、損失許容度で決める銘柄だと思います。
まとめ
今回は「【IPO】KOMPEITO(618A)に当選。またもSBI証券『100株当選』の嫌なパターンです」と題して、KOMPEITOのIPOを需給・業績・バリュエーションの3方向から分析してきました。
ポイントを整理しておきましょう。
- 公開価格は仮条件上限の1,600円、上場は9月11日、東証グロース
- 事業(OFFICE DE YASAI)は解約率1.1%・69か月連続増収の優良ストックビジネス
- 2026年8月期3Q累計で黒字転換、通期売上目標は96.45億円
- ただし公募5万株に対して売出413.9万株、実質はVCのエグジット案件
- 吸収77億円、オファリングレシオ48.7%、ファンド保有66%と需給は重い
- 90日ロックアップは公開価格1.5倍(2,400円)で解除、上値の天井になりやすい
- 繰越欠損金の影響を除いた実質PERは25~30倍程度
「良い会社」と「良いIPO」は別物です。
KOMPEITOはまさにその典型例だと思います。
IPOは当選すること自体が目的になりがちですが、当選した瞬間から始まるのは「買うか辞退か」という投資判断です。
当選=買い、ではありません。
せっかく当たったのだからと安易に飛びつかず、需給と価格をきちんと確認する習慣をつけたいものですね。
SBI証券は資金力のある人ほど有利な資金比例方式ですが、外れれば外れるほど貯まるIPOチャレンジポイントという、資金の少ない方にも優しい仕組みも用意されています。
IPOに挑戦するなら押さえておきたい証券会社であることは間違いありません。
※本記事は公開情報をもとにした個人的な分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
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