2025年11月28日、みずほ銀行産業調査部から「みずほ産業調査79号」が公開されました。
このレポートは、向こう5年間(2026年〜2030年)の日本産業の需給動向と、企業に求められる事業戦略を包括的に分析したものです。
正直に言いますが、このレポートを読まずに今後5年の日本株を触るのは、「海図を持たずに航海に出る」のと同じくらいリスクが高いです。
なぜなら、メガバンクの産業調査部は、我々個人投資家が到底アクセスできない膨大な企業データとヒアリングに基づいた「一次情報」の塊だからです。
SNSの煽り屋さんの言葉ではなく、重厚なデータに基づいた未来予測を、チェックしておきましょう。
ただし、膨大な資料で読むのが大変なので、日本株投資家が押さえておくべきポイントを整理して解説していきます。
みずほ産業調査とは?レポートの位置づけ
みずほ銀行の「みずほ産業調査」は、個別企業ではなく「業界全体」を俯瞰し、構造変化やビジネスモデルの変化をまとめたレポートシリーズです。
業界の将来像や提言まで含めて整理されているため、企業の経営者だけでなく、中長期の日本株投資にも参考になる情報が詰まっています。
今回のテーマである最新版「日本産業の中期見通し」は、向こう5年(2026~2030年)の需要動向と企業に求められる事業戦略をまとめた号(みずほ産業調査79号)です。
なぜ今、「みずほ産業調査」を読むべきなのか
投資の世界では「木を見て森を見ず」になりがちです。
個別の決算書(木)も大事ですが、産業全体の潮流(森)を見誤ると、どんなに良い銘柄でもセクターごと沈んでしまいます。
みずほ銀行の産業調査部が出すレポート、特に「日本産業の中期見通し(向こう5年の需給動向)」は、銀行が融資判断の基礎にするレベルの信頼性があります。
証券会社のアナリストレポート(=株を売買させるための資料)とは違い、「産業の実態」をドライに分析している点が特徴です。
ここで語られている「不都合な真実」と「希望の光」を理解することが、資産を守り、増やすための第一歩となります。
みずほレポート「日本産業の中期見通し」が示す骨子
まず、レポート全体を貫くマクロの視点を押さえましょう。
ここを理解していないと、ポジショニングを間違えます。
米国関税政策の影響
レポートでは、短期的(2025年)なリスク要因として「米国関税政策」を挙げています。
トランプ政権などの保護主義的な動きにより、輸出産業には逆風が吹く可能性があります。
特に自動車や一般機械など、これまで日本株を牽引してきたセクターは、単純な「円安恩恵」だけでは語れない難しい局面に入りそうです。
また、それに伴う国際情勢の緊張化や不安定化もあります。
各国の自国産業保護や地政学リスク低減に向けた動きが加速。
みずほの見通しでは、同志国を軸とした経済のブロック化・地産地消化が進み、財の貿易が鈍化すると予測されています。
脱炭素化・環境対応の揺らぎ
脱炭素化に向けた各国の環境政策は足並みが乱れつつあります。
電化の進展やデータセンターの増加により拡大する電力需要への対応も求められており、世界的な環境対応は難局を迎えています。
日本国内では、排出量取引制度(2026年)、化石燃料賦課金(2028年)、発電事業者への排出枠の有償オークション(2033年)などの導入が予定されており、GHG排出の負担が段階的に増加していきます。
企業の対応コストは増える一方、GX投資の拡大はビジネスチャンスにもなり得ます。
中期的な構造変化:労働供給の減少と「人手不足」
これは以前からのテーマですが、より深刻化しています。
2030年に向けて労働供給(生産年齢人口)の減少ペースが加速します。
国内では人手不足が深刻化し、供給面からのインフレ圧力は解消されない見込みです。モノ・サービスの価格は持続的に上昇するとみずほは予測しています
さらに、製造大国を目指す中国の競争力がますます拡大しており、日本企業は厳しい競争環境に直面することになります。
国内人口は全体として減少するものの、高齢者数は増加します。
この構造変化は、ヘルスケア産業の成長を後押しする一方、多くの産業で内需縮小圧力となります。
人手不足への対応として、ロボットやAIなどの省人化・省力化投資が拡大する見込みです。
みずほはこれを「非製造業の2.6次産業化」と表現しています。
みずほ見通しから読む日本株の今後と成長テーマ
ここからが本題。
レポート(Vol.1079)の細部から読み取れる、具体的な投資アイデアを掘り下げます。
半導体・AI・デジタルインフラ
みずほレポートでは、デジタル化の進展とAI投資の本格化により、半導体、電子部品、データセンター(DC)、ソフトウェア、システムインテグレーション(SI)、電力・通信の需要拡大が強調されています。
個人投資家の視点では、
- 半導体製造装置・材料
- 高性能電子部品
- DC向け電力設備・送配電インフラ
- セキュリティ・クラウドを含むソフトウェア・ITサービス
といった分野が、「世界需要を取りに行ける日本企業が多い領域」として中期的に注目しやすいところです。
PCやスマホの買い替えサイクル
また、PCやスマートフォンにおける「Edge AI(エッジAI)」の進展も言及されています。
これまでスマホやPCの市場は成熟し、買い替えサイクルが長期化して伸び悩んできました。
しかし、端末側でAIを処理する「Edge AI」の搭載により、強制的な「性能アップデート」が必要になります。
これにより、買い替えサイクルの短期化が見込まれています。
ここでも半導体への追い風ですね。
私もアップルインテリジェンスが導入されたときにiPhoneを買い替えましたね。
期待外れでしたが笑
電力・エネルギーと脱炭素
AIやデータセンターの拡大により、各国で電力需要が増加し、脱炭素と安定供給を両立させることが重要な課題になっている点もレポートで指摘されています。
日本国内では、電源の確保や老朽化した送配電網の更新、再エネ・蓄電の導入など、電力・ガス・エネルギー関連投資が増えざるを得ない状況です。
みずほ見通しでも、電力・都市ガス・石油などについて、供給体制の再構築や海外事業を含む投資戦略の重要性が示されています。
投資家としては、
- 電力・ガスのインフラ企業
- 再エネ・送配電設備・省エネ関連メーカー
- データセンター向けの電源設備や冷却技術
といった領域を、日本株のなかの「インフラ×成長」のテーマとして捉えるイメージです。
ヘルスケア・介護・個人サービス
A高齢化と医療の高度化に伴い、医薬品・医療機器・介護・ヘルスケアサービスなどの需要が、世界的にも日本国内でも増え続ける見通しとされています。
レポートでは、社会課題解決先進国をめざす中で、ヘルスケアや業務インフラにAI・ロボットを組み合わせる動きも想定されています。
この分野は、
- 高齢化が進む日本国内の「守り」と
- アジアを含む海外市場への展開という「攻め」
の両方を兼ね備えたテーマです。
個別株だけでなく、ヘルスケア関連の投資信託やETFで中期的に組み込む方法も検討しやすい領域だと思います。
建設・機械産業
建設機械などのセクターでは、単に機械を売るだけでなく、「高付加価値ソリューション」への転換が勝ち筋とされています。
現場の人手不足を解消するための自動化建機や、遠隔操作システムなど、ハードウェアにソフトウェアを組み合わせられる企業が評価されます。
フィジカルAIなんかはその典型例ですね。

逆に言えば、単なる部品メーカーや、価格競争に巻き込まれている機械メーカーは、原材料高と人件費増で利益率が圧迫される「負け組」になるリスクがあります。
国内需要が縮小するセクター
逆に逆風になるセクターも確認しておきましょう。
鉄鋼
国内需要は2026年をピークに減少基調に転じ、2030年には52.7百万トン(年率▲0.7%)と減少が予測されています。
建設業向け需要の減少が主因です。
輸出も各国の保護主義強化により減少が見込まれ、国内生産は2030年に73.7百万トン(年率▲1.7%)とさらなる減少が予想されています。
石油(燃料油)
国内燃料油需要は、人口動態の変化や燃費改善などの要因により減少トレンドが続いています。
ガソリン、軽油、重油を中心に燃料転換が進み、2030年にかけて年率▲1.6%の減少が見込まれています。
ただし、バイオエタノールなど低炭素燃料への転換は成長機会となり得ます。
不動産(新設住宅)
新設住宅着工戸数は人口減少の影響を受け、縮小傾向が続く見込みです。
大手建設会社などはすでに海外に軸足を移しているところも多いですね。
ただし、デジタル技術の活用による不動産価値向上など、新たな付加価値創出の余地はあります。
化学(エチレン関連)
国内のエチレン換算内需は、人口減少や人手不足に伴う需要産業の成長率低下、プラスチック使用量削減対応の進展などから、低迷が継続する見通しです。
2026年以降のエチレンプラント3基停止により、市況低迷の中での採算性改善を図る動きが進んでいます。
まとめ
みずほ産業調査「日本産業の中期見通し」の投資家にとって重要なポイントを整理すると以下のようになります。
まず、外部環境の変化として、トランプ関税に端を発した国際情勢の緊張、脱炭素化の揺らぎ、供給制約の高まり、人口動態の変化、という要因が日本産業に大きな影響を与えます。
また、半導体・エレクトロニクス、ヘルスケア、情報サービスなどはグローバル需要の拡大が期待される一方、化学、鉄鋼、石油などの素材産業は構造的な内需縮小に直面するということです。
日本株の今後を考えるうえで大事なのは、
- 短期の株価予想に振り回されないこと
- 産業構造の変化と企業の戦略を、自分の言葉で説明できるようにしておくこと
- 自分のリスク許容度と投資期間に合った「中期戦略」を決めておくこと
だと私は考えています。
みずほレポートのような一次情報を丁寧に読み解きながら、「日本株を買う・買わない」の二択ではなく、「日本株のどの部分に、どのくらいの期間、どの程度のリスクをとって参加するのか」を考えていけると、ブレにくい投資判断につながるはずです。
この記事は特定銘柄の推奨ではありませんが、日本株の中期スタンスを考えるきっかけとして、みずほ産業調査を一度じっくり読み込んでみるのも良いと思います。
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