「独身税が始まるらしい」
「子無し税が始まるらしい」
そんなSNSの投稿を見て、不安になった方も多いのではないでしょうか。
結論から言えば、「独身税」「子無し税」という名前の税金は存在しません。
しかし、「独身税はデマ」で片付けてしまうのも違うんですよ。
今回は最近とても問い合わせが多い「独身税」「子無し税」について考えてみたいと思います。
「独身税」「子無し税」とは何か?正式名称「子ども・子育て支援金制度」
「独身税」や「子無し税」「DINKs税」という言葉が独り歩きしていますが、これは俗称であり、「独身税」「子無し税」という名前の税金は存在しません。
正式名称は「子ども・子育て支援金制度」。
これは、こども家庭庁が所管する新しい社会保障制度で、医療保険料に上乗せして徴収される「保険料」の一種です。税金ではありません。
では、なぜ「独身税」「子無し税」「DINKs税」と呼ばれるようになったのでしょうか。
それは、制度の構造に理由があります。
この支援金は、健康保険に加入する「すべての人」が負担する一方で、恩恵を受けるのは子育て世帯です。
つまり、独身の方や子どものいない夫婦は「負担だけあって、給付はない」状態になるからです。
この構造的な不公平感が、「独身税」という俗称を生みました。

「独身税はデマ」は半分正しく、半分誤り
たしかに、「独身者や子無し夫婦だけが課税される税金」という意味では独身税はデマです。
既婚者も子育て世帯も、全員が負担します。
しかし、「独身者にとって負担だけが増える制度」という意味では、実質的に正しい側面があります。
子育て世帯は児童手当の拡充などで給付を受ける一方、独身者や子どもがいない世帯は負担のみ。
この構造を「独身税」「子無し税」と感じるのは、自然な感情でしょう。
独身税の対象者は誰?何歳から?
「独身税は何歳からかかるの?」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。
結論から言えば、年齢による制限はありません。
公的医療保険に加入している「すべての人」が対象です。
具体的には、以下の方々が対象となります。
- 会社員・公務員:協会けんぽや健康保険組合に加入。給与から天引き(労使折半)
- 自営業者・フリーランス:国民健康保険に上乗せ(全額自己負担)
- 75歳以上の高齢者:後期高齢者医療制度に上乗せ
- 無職の方:国民健康保険に加入していれば対象
つまり、独身か既婚か、子どもがいるかいないかに関係なく、健康保険に加入している人全員が対象です。
日本は国民皆保険制度ですから、事実上「ほぼ全国民」が負担者になります。
「子育て終わった」人も対象なの?
「子育てが終わったのにまだ払うの?」という声も多く聞かれます。
残念ながら、答えは「はい、対象です」。
子育てを終えた世帯も、健康保険に加入している限り支援金の負担対象です。
政府の説明は「かつて子育てをした世代も、今は医療や介護など社会保障の恩恵を受ける側。世代を超えた支え合い」というものです。
ただし、この論理に納得できない方が多いのも理解できます。
子育てを終えた人は「自分の時代は支援がなかったのに」という不満を抱くのは自然なことです。
年収別の負担額はいくら?
実際にどのくらい負担が増えるのか、こども家庭庁の試算に基づいて見ていきましょう。
全制度平均の負担額(月額)
| 2026年度 | 2027年度 | 2028年度 | |
|---|---|---|---|
| 全制度平均 | 約250円 | 約350円 | 約450円 |
| 被用者保険 | 約300円 | 約400円 | 約500円 |
| 国民健康保険 | 約200円 | 約300円 | 約400円 |
| 後期高齢者 | 約150円 | 約250円 | 約350円 |
(出典:こども家庭庁)
年収別負担額(被用者保険・本人負担分)
2028年度(制度完全実施時)の年収別目安は以下のとおりです。
| 年収 | 2026年度 | 2027年度 | 2028年度 | 年額目安(2028) |
|---|---|---|---|---|
| 200万円 | 約150円 | 約200円 | 約250円 | 約3,000円 |
| 400万円 | 約350円 | 約450円 | 約600円 | 約7,200円 |
| 600万円 | 約575円 | 約750円 | 約1,000円 | 約12,000円 |
| 800万円 | 約750円 | 約1,000円 | 約1,350円 | 約16,200円 |
| 1,000万円 | 約950円 | 約1,250円 | 約1,650円 | 約19,800円 |
※被用者保険の場合、上記は労使折半後の本人負担分です。
企業も同額を負担します。
※国民健康保険の場合は全額自己負担で、市町村ごとに率が異なります。
「実質負担なし」はカラクリ
政府は「歳出改革と賃上げにより、実質的な負担はない」と説明しています。
これは「社会保障負担率(社会保険料負担÷国民所得)」が上昇しないよう設計しているという意味です。
しかし、これはあくまで「マクロで見た比率」の話。
個人の給与明細では、確実に天引き額が増えます。
賃上げの恩恵を受けられない方にとっては、「手取りが減った」という実感だけが残る可能性があります。
集めたお金は何に使われるのか
「取られるだけ取られて、結局何に使われるかわからない」。そう感じる方も多いでしょう。
具体的な使い道を整理します。
支援金は、国の「こども未来戦略」に基づく「加速化プラン」の財源に充てられます。
約3.6兆円規模の支援額のうち、約1兆円をこの支援金で賄う計画です。
- 児童手当の拡充:所得制限の撤廃、支給対象の高校生まで延長、第三子以降は月額3万円に増額
- 妊婦のための支援給付:妊娠届出時に5万円、出産後に子の人数×5万円を支給
- こども誰でも通園制度:親の就労に関係なく、月10時間まで保育施設を利用可能に
- 育児休業給付の拡充:手取り収入の100%保障を目指す新たな給付制度の創設
- 出産費用の保険適用:2026年度をめどに正常分娩の保険適用も検討中
子ども1人あたりで見ると、高校生までの支援総額は平均約146万円増加し、児童手当と合わせると約352万円の給付が見込まれています(出典:こども家庭庁)。
独身税の評判が悪い5つの理由
しかし、独身税はとても評判が悪いです。
その理由について考えてみましょう。
負担と給付の「非対称性」
想像してみてください。
あなたは毎月、自分が絶対に利用しないスポーツジムの会費を、給料から天引きされ続けています。
どう感じますか?
独身者にとって、子ども・子育て支援金はまさにこれと同じ構造です。
児童手当の増額、出産祝い金、こども誰でも通園制度……
集められたお金(2028年度には約1兆円規模)の使い道は、当然ながら「子育て世帯」に100%限定されています。
現在独身であり、将来的に子どもを持つ予定がない人にとって、この支援金は「リターンが完全にゼロの出費」です。
人間は、自分が得られないものに対してお金を払うことに強い苦痛を感じます(損失回避性)。
「社会の未来のため」という綺麗な言葉では、個人の財布から生じる痛みを和らげることはできません。
だからこそ、「自分たちばかりが搾取されている」という感情が「独身税」という皮肉なネーミングを生み出したのです。
「実質負担なし」という政府説明への不信
前述のとおり、政府は「実質的な負担なし」と繰り返していますが、個人の給与明細では天引きが増えます。
この説明と実感の乖離が、政府への不信感を助長しています。
少子化対策としての効果に疑問
根本的な疑問として、「お金を配るだけで少子化は解消するのか?」という声があります。
少子化の原因は経済的な問題だけでなく、若者の雇用不安、住居費の高騰、結婚に対する価値観の変化など多岐にわたります。
「生まれた後」の支援だけでなく、「生まれる前」の環境整備が必要との指摘もあります。
「社会保険で徴収」という手法への疑念
「なぜ税金ではなく社会保険料なのか」という点も議論の対象です。
もし「子育て税」という新しい税金でも作ろうものなら、国会で厳しい審議が必要となり、国民の猛反発を受け、選挙で大敗するリスクがあります。
しかし、社会保険料の引き上げであれば、税金ほどの強い抵抗を受けずに、給与明細から「しれっと」天引き額を増やすことができます。
読者の皆様、ご自身の給与明細を毎月隅々まで確認していますか?
所得税や住民税の額は気にしていても、「健康保険料」の料率が少しだけ上がったことに気づく人は少数派です。
この「気づかれにくい痛み」を利用して国民から資金を吸い上げる手法こそが、現代のステルス増税です。
「独身税」の本質は、税金という名目すら与えられず、社会保険の影に隠れて行われる巧妙な資産の移転なのです。
こども家庭庁への不信
こども家庭庁の2026年度概算要求は約7.4兆円規模。
SNSでは「こども家庭庁を廃止すればその分減税できる」、「こども家庭庁の予算7兆円は無駄遣いだ」「Jリーグとのコラボイベントや、誰も使わないアプリ開発に何億円も使っている」という主張も拡散されています。
自分が苦労して稼いだお金が、得体の知れない役所の「無駄な事業」に浪費されていると感じれば、支援金を払いたくないと思うのは当然の心理です。
「こども家庭庁の無駄」という声は、ざっくり3種類に分かれます。
1つ目は、広報や調査、システムなど“見えやすい支出”への不満です。
たとえば概算要求の資料には、若者調査、居場所づくり、Jリーグとコラボなど、本当に少子化対策として有効なのか疑問を持たれる個別事業が並びます。
2つ目は、そもそも子ども・子育て政策全体の規模が膨らんでいることへの不安です。
財務省資料では、国の「こども・子育て関係予算(一般会計と特別会計の合計)」が増加している整理も示されています。
ただし、ここで注意点があります。
7兆円の内訳は、保育所や放課後児童クラブの運営費に約2.5兆円、児童手当に約2.2兆円、育休給付に約1.1兆円など、大半はもともと他の省庁が担っていた事業です。
こども家庭庁を廃止しても、元の省庁に戻るだけで、予算が浮くわけではありません。
3つ目は「効果が見えない」という国民の苛立ちです。
こども家庭庁設立から2年以上が経過しても出生数の減少が加速しているのは事実。
政策の効果検証と透明性の確保が急務です。
「独身税」の先にある本質的な問い
ここまで制度の中身を見てきましたが、少し視点を変えて考えてみましょう。
「独身税」への反発の根底には、実は「月数百円の負担が嫌」という以上に、もっと深い感情があるのではないでしょうか。
それは、「自分の人生の選択を、社会から否定されているように感じる」ということです。
結婚しない選択、子どもを持たない選択。
それは個人の自由であるはずなのに、「子どもを産まない人は社会に貢献していない」と暗に言われているような。
そんな息苦しさです。
もちろん、少子化が日本社会にとって深刻な問題であることは間違いありません。
将来の働き手が減れば、年金も医療も介護も維持できなくなる。
その意味で、子育て支援は「他人事」ではなく、社会全体の問題です。
しかし、「だからといって無条件に負担を受け入れろ」というのは乱暴でしょう。
重要なのは、負担する価値があると納得できるだけの「透明性」と「効果検証」です。
それが欠けているからこそ、これほどの反発が生まれるのです。
搾取される側から「ルールを利用する側」へ
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
事実を突きつけるような厳しい表現もあったかもしれませんが、それはあなたに「茹でガエル」になってほしくないからです。
制度に文句を言っても、2026年4月に「子ども・子育て支援金制度」は予定通り始まります。
法律で決まった以上、給与からの天引きを拒否することは不可能です。
では、私たちにできることは何もないのでしょうか?
いいえ、たった一つだけあります。
それは、「ルールの被害者」でいることをやめ、「ルールを合法的にハックする側」に回ることです。
合法的な防衛策:手取りの減少は「仕組み」で取り返す
毎月数百円、年間数千円〜数万円が国に吸い取られるのであれば、国の用意した別の制度を使って、同額以上の税金を取り返せばいいのです。
国は、「投資をして自分で老後資金を作る人」に対しては、驚くほど手厚い優遇税制を用意しています。
- iDeCo(個人型確定拠出年金): 掛け金が全額「所得控除」になります。つまり、投資した金額に応じて、あなたの所得税と住民税が確実に安くなります。支援金で取られる額など、一瞬で相殺できるほどの節税効果があります。
- 新NISA: 投資で得た利益が非課税になります。銀行に預けてインフレで資産が目減りするのを防ぎ、お金に働いてもらう仕組みです。
- ふるさと納税: 独身者にとっては防衛策です。実質2,000円の自己負担で、日用品や食料品をもらい、翌年の住民税を前払いする仕組みです。生活費を劇的に下げることができます。
「独身税」に怒るエネルギーがあるなら、そのエネルギーを今すぐ「iDeCoの口座開設」や「NISAでのインデックス投資の選定」に向けてください。

まとめ
まとめます。
- 「独身税」という税金は存在しない。正式名称は「子ども・子育て支援金制度」で、社会保険料の一部
- 対象は独身者だけでなく、全医療保険加入者。年齢や子どもの有無は関係なし
- 負担額は月数百円~千数百円。2026年度から2028年度にかけて段階的に引き上げ
- 使い道は児童手当拡充、育休給付強化など。子育て世帯が主な受益者
- 「独身税はデマ」は半分正しく、半分誤り。制度の構造を正確に理解することが大切
「独身税」という言葉に振り回されるのではなく、制度の中身を正確に理解した上で、自分の家計への影響を把握し、備える。
それが、この制度に対する最も賢い向き合い方だと考えます。
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