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【株で損する人の共通点】アンカーリング効果の罠と「高値覚え」の恐ろしさ

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【株で損する人の共通点】アンカーリング効果の罠と「高値覚え」の恐ろしさ

あなたは「値ごろ感」で株を買ったことはありませんか?

「この株、前は3,000円だったのに今は1,500円。半額だから"お買い得"だ」。こんな判断をしたことがある方は、すでに脳の罠にハマっています。

これが行動経済学でよく言われるアンカーリング効果です。

この記事では、投資で大損する人に共通する「脳のクセ」の正体を解き明かし、日常生活にも潜むアンカーリング効果の具体例と、その対処法をお伝えします。

目次

アンカーリング効果とは?わかりやすく解説

まずは今回の話の前提となるアンカーリング効果についてみていきます。

アンカーリング効果の意味

アンカーリング効果(アンカリング効果)とは、最初に目にした情報や数字が「基準点(アンカー)」として頭に残り、その後の判断がその基準点に引きずられてしまう心理現象のことです。

「アンカー(Anchor)」とは英語で「錨(いかり)」を意味します。

港で船が動かないように錨を下ろすのと同じように、最初に入ってきた情報が脳の中で錨のような役割を果たし、その場から思考が離れられなくなってしまうのです。

行動経済学では「認知バイアス」の一つとして分類されています。

認知バイアスとは、人間が無意識のうちに合理的でない判断をしてしまう思考の偏りのことです。

ここで重要なのは、アンカーリング効果は「知識がある人」でも避けられないという点です。

なんとなく「自分は大丈夫」と思っている方こそ、実は最も危険だったりします。

カーネマンとトヴェルスキーの有名な実験

アンカーリング効果を世に広めたのは、2002年にノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者ダニエル・カーネマンと、心理学者エイモス・トヴェルスキーです。

1974年に発表された彼らの論文「不確実性下の判断:ヒューリスティクスとバイアス」に、非常に興味深い実験が記録されています。

実験の内容はこうです。

まず、参加者の目の前で「ルーレット」を回します。このルーレットは仕掛けがしてあり、必ず「10」か「65」のどちらかで止まるようになっていました。ルーレットが止まった後、参加者にこう質問します。

「国連に加盟しているアフリカの国の割合は、今のルーレットの数字より大きいですか? 小さいですか? そして、実際の割合は何パーセントだと思いますか?」

結果はどうなったか。

ルーレットが「10」で止まったグループの平均回答は25%。「65」で止まったグループの平均回答は45%でした。

ルーレットの数字は完全にランダムであり、アフリカの国連加盟割合とは何の関係もありません。

にもかかわらず、最初に見た数字が「錨」となって、回答を大きく左右してしまったのです。

もう一つ、印象的な実験があります。

参加者を2つのグループに分け、5秒以内に次の計算の答えを推定してもらいました。

グループA:1×2×3×4×5×6×7×8 グループB:8×7×6×5×4×3×2×1

掛け算の順番が違うだけで、答えは同じ40,320です。

しかし、グループAの中央値は512、グループBの中央値は2,250でした。

最初に目にした数字が小さいか大きいかで、推定値が4倍以上も違ったのです。

この実験が示しているのは、人間の脳は「最初の情報」に驚くほど引っ張られるということ。

しかも、その情報が判断対象とまったく無関係であっても、影響を受けてしまうのです。

なぜアンカーリング効果は起こるのか

では、なぜ人間の脳はこれほど最初の情報に縛られるのでしょうか。

カーネマンとトヴェルスキーは「不十分な調整」説を提唱しました。

人は最初の情報(アンカー)を起点にして、そこから「このくらいだろう」と調整していくのですが、その調整が不十分なまま止まってしまうというのです。

その後の研究では、「選択的アクセシビリティ」説も提唱されています。

これは、アンカーに近い情報が脳内で活性化され、アンカーを肯定するような情報ばかりが思い出されやすくなるという考え方です。

どちらの説が正しいにせよ、結論は同じです。

アンカーリング効果は、人間の脳に組み込まれたクセであり、意識するだけでは簡単には逃れられません。

アンカーリング効果と株式投資:「高値覚え」「安値覚え」の罠

ここからが、投資家にとって最も重要なパートです。

投資の世界では、アンカーになる数字が山ほどあります。

買値、年初来高値、過去最高値、アナリスト予想、目標株価、PERの数字、SNSで見た「この銘柄は本来○○円」という断定。

こうした数字は、本来は参考情報の一つにすぎません。

ところが頭の中では、それがいつの間にか「正しい価格」のように扱われます。

値ごろ感で株を買う危険性

株式投資の世界でとくに顕著なのが、アンカーリング効果が「高値覚え」「安値覚え」という形で現れるケースです。

これは証券業界で古くから使われている用語ですが、行動経済学的に見ると、まさにアンカーリング効果そのものなのです。

「高値覚え」とは、過去につけた高値が頭から離れず、「あの水準まで戻るはずだ」と考えてしまうことです。

例えば、かつて株価が5,000円をつけた銘柄が3,000円に下がったとき、「5,000円まで戻るだろう」と根拠なく信じてしまう。

逆に「安値覚え」とは、暴落時の安値が記憶に焼きつき、「また下がるかもしれない」という恐怖から買えなくなることです。

どちらも、過去の株価が「錨」として脳に刺さり、現在のファンダメンタルズ(企業の業績や将来性)ではなく、過去の数字を基準に判断してしまっている状態です。

具体例で考える

少し具体的に考えてみましょう。

あなたの目の前に2つの銘柄があります。

銘柄A:過去12カ月間、株価が上昇し続けている

銘柄B:過去12カ月間、株価が下降し続けている

どちらを買いたいですか?

多くの方が銘柄Aを選ぶのではないでしょうか。

しかし、冷静に考えてみてください。

過去に上がり続けたからといって、明日も上がる保証はどこにもありません。

むしろ、上昇が続いた銘柄は割高になっている可能性が高く、下降が続いた銘柄のほうが割安で反転上昇する余地があるかもしれません。

にもかかわらず「上がってきた」という過去の値動きがアンカーとなり、「今後も上がるだろう」と判断してしまう。

これが株式投資におけるアンカーリング効果の恐ろしさです。

私自身も、以前ある銘柄を値ごろ感で購入して痛い目に遭った経験があります。

「前は○○円だったから、今の価格は安い」。そう思って買ったものの、企業のファンダメンタルズが変化していたことに気づかず、株価はさらに下落していきました。

過去の株価は「今の企業価値」を反映していません。

にもかかわらず、過去の数字が錨として頭にこびりつき、客観的な判断を妨げてしまうのです。

投資でアンカーリング効果に負けないための3つの対策

では、投資家はどうすればアンカーリング効果に打ち勝てるのでしょうか。

過去の株価チャートを「参考」ではなく「参考程度」にする

株価チャートは相場の流れを掴むために有用ですが、それはあくまで過去のデータです。

投資判断の基準は、企業の業績、将来の成長性、業界の動向といったファンダメンタルに置くべきです。

チャートを見るときは、「この数字は自分の判断を歪めるかもしれない」と意識するだけでも、効果は違います。

投資ルールを事前に決めておく

「株価が取得価格から20%下落したら損切りする」「PERが○倍以上なら買わない」など、感情に左右されない定量的なルールを事前に設定しておくことが有効です。

アンカーリング効果は「なんとなく」の判断に忍び込みます。ルールがあれば、脳のクセに抵抗できます。

「なぜ買うのか」を言語化する

銘柄を買う前に、「なぜこの銘柄を買うのか」を紙に書き出してみてください。

その理由に「以前は○○円だったから」「ここまで下がったから」といった過去の価格に基づく根拠が入っていたら要注意。それはアンカーリング効果にハマっている証拠です。

投資における意思決定は、メンタルのコンディションに大きく左右されます。

知識があっても、心理的な罠にハマれば負けてしまう。

だからこそ、自分の脳のクセを知っておくことが、投資の最大の武器になるのです。

手帳なんかに残しておくのも良いでしょう

日常生活に潜むアンカーリング効果の具体例

アンカーリング効果は、投資の世界だけの話ではありません。

私たちの日常生活のあらゆる場面に、この「脳の錨」は潜んでいます。

買い物でのアンカーリング効果

最もわかりやすい例が、買い物です。

スーパーで「通常価格3,000円 → 今だけ1,500円!」という値札を見たとき、思わず「お得だ」と感じませんか?

しかし冷静に考えると、その商品が本当に3,000円の価値があるかどうかは別問題です。

「通常価格3,000円」という数字がアンカーとして機能し、1,500円が割安に感じられているだけかもしれません。

テレビショッピングはこの効果を巧みに利用しています。

「通常39,800円のところ、今回限り19,800円!」と聞くと、20,000円も得をした気分になります。

しかし、そもそも「通常39,800円」という価格設定が妥当なのかどうかを検証する人は、ほとんどいません。

ちなみに、こうした二重価格表示については、景品表示法で規制されています。

実際には販売実績のない高い「通常価格」を表示して割安に見せかける手法は、不当表示として違反になる可能性があります。

消費者としても、「割引率」だけでなく「割引後の価格そのもの」が妥当かどうかを考える習慣を持ちたいものです

待ち合わせでのアンカーリング効果

もう少し身近な例を挙げましょう。

友人との待ち合わせに1時間遅刻しそうな状況を想像してください。

このとき「1時間遅れます」と正直に伝えた場合と、「1時間半遅れるかもしれません」と少し長めに伝えた場合では、到着したときの相手の印象がまったく違います。

「1時間半遅れる」と聞いていた相手は、1時間で到着したあなたに対して「急いで来てくれたんだ」と好意的な印象を持ちます。

一方、「1時間遅れる」と聞いていた相手にとっては、1時間後に到着しても「やっぱり遅れたか」という印象にしかなりません。

事実としては同じ「1時間の遅刻」なのに、最初に提示された数字(アンカー)によって、受け取り方が大きく変わるのです。

レストランのメニューでのアンカーリング効果

レストランのメニューも、実はアンカーリング効果が計算し尽くされています。

メニューの一番上に15,000円のコースが掲載され、その下に8,000円のコース、さらに5,000円のコースが並んでいたとします。

多くの人は8,000円のコースを選びがちです。

これは、15,000円というアンカーがあるからこそ、8,000円が「ちょうどいい」と感じられるためです。

もし5,000円と8,000円の2択だったら、5,000円を選ぶ人がもっと多かったかもしれません。

この「極端回避性」(松竹梅の法則)とアンカーリング効果の組み合わせは、飲食業界やサービス業界で広く活用されています。

アンカーリング効果と恋愛

意外に思われるかもしれませんが、アンカーリング効果は恋愛にも大きな影響を与えています。

第一印象がすべてを左右する

初めてのデートで相手に好印象を持ってもらえたとします。

すると、その後多少の失敗があっても「あの素敵な人だから」とポジティブに解釈されやすくなります。

逆に、初対面で悪い印象を持たれると、その後どんなに努力しても、最初のネガティブなアンカーを覆すのは非常に難しくなります。

つまり、恋愛における第一印象は、まさに「最初に下ろされた錨」。その後の関係性の方向を、大きく左右するのです。

「前の恋人」がアンカーになる

もう一つ、恋愛で起こりがちなアンカーリング効果があります。

それは「前の恋人」がアンカーになるケースです。

例えば、前のパートナーが非常に優しい人だった場合、新しい出会いの相手を「前の人と比べて」評価してしまうことがあります。

客観的に見れば十分魅力的な人なのに、「前の人の方が…」というアンカーが邪魔をして、新しい関係に踏み出せない。

これは株式投資の「高値覚え」とまったく同じ構造です。

過去の「最高値」がアンカーとなり、目の前の現実を正しく評価できなくなっている状態なのです。

恋愛でのアンカーリング効果を活かす方法

逆に、アンカーリング効果をポジティブに活用することもできます。

例えば、気になる相手を食事に誘いたいとき。いきなり「2人でディナーに行きませんか?」と言うとハードルが高いかもしれません。

そこで、まず「友人が"3回食事に行った相手とは付き合ったも同然"と言っていたけど、さすがにそれは言い過ぎだよね」と話題にしておきます。

すると、「一緒にご飯に行く」こと自体のハードルが下がり、食事の誘いを受けてもらいやすくなる可能性があります。

ただし、こうしたテクニックに頼りすぎるのは禁物です。

最終的に大切なのは、相手に対する誠実さであることは言うまでもありません。

アンカーリング効果への対処法:脳の錨から自由になるために

ここまで読んで、「アンカーリング効果って怖いな」と感じた方も多いのではないでしょうか。

しかし、怖がる必要はありません。

アンカーリング効果は「知っている」だけで、その影響を軽減できることがわかっています。

対処法1:「自分は今、何にアンカーされているか」を自問する

判断を下す前に、一呼吸置いて「自分は何かの数字や情報に引っ張られていないか?」と問いかけてみてください。

買い物のとき、投資のとき、交渉のとき。意識するだけで、脳の自動操縦モードにブレーキをかけることができます。

対処法2:複数の情報源を比較する

一つの情報だけを基準にしない。

これがアンカーリング効果への最もシンプルな対策です。

株を買うなら複数の指標(PER、PBR、ROEなど)を確認する。

商品を買うなら、他の店やネットで相場を調べる。

一つのアンカーだけに依存しなければ、判断はずっと合理的になります。

対処法3:「逆の立場」で考える

自分がアンカーを設定される側ではなく、設定する側だったらどうするかを考えてみましょう。

「なぜこの数字が最初に提示されているのか」「相手はどんな印象を持たせたいのか」と考えることで、アンカーの影響力を客観的に見ることができます。

対処法4:意思決定前に時間を置く

衝動的な判断は、アンカーリング効果の格好の餌食です。

大きな買い物や投資の判断は、最初に情報を得てから最低でも一晩は寝かせましょう。

時間を置くことで、アンカーの影響力は薄まっていきます。

まとめ:脳のクセを知ることが、最強の投資スキルになる

アンカーリング効果は、1974年にカーネマンとトヴェルスキーによって提唱されて以来、行動経済学において最も再現性の高い認知バイアスの一つとして、数多くの研究で確認されてきました。

その影響範囲は驚くほど広く、株式投資の「高値覚え」「安値覚え」から、日々の買い物、レストラン選び、待ち合わせの遅刻連絡、そして恋愛における第一印象まで、私たちの意思決定のあらゆる場面に入り込んでいます。

特に株式投資においては、「値ごろ感」で判断する習慣は非常に危険です。

過去の株価はあくまで過去の情報であり、今の企業価値や将来性を反映しているとは限りません。

「高値覚え」で売り時を逃し、「安値覚え」で買い時を逃す。どちらも、脳に刺さった「錨」が原因です。

しかし、悲観する必要はありません。

アンカーリング効果の存在を知り、自分が今「何にアンカーされているか」を意識するだけで、判断の精度は格段に上がります。

投資の世界で本当に強いのは、相場の動きを予測できる人ではなく、自分の脳のクセを知り、それをコントロールできる人です。

この記事が、あなたの投資判断と日常の意思決定を見直すきっかけになれば嬉しく思います。

まずは次に買い物をするとき、「この"通常価格"は本当か?」と一度立ち止まることから始めてみてください。

小さな一歩が、脳の錨から自由になる第一歩になるはずです。

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この記事を書いた人

豊かに生きていく上で必須なのがお金の知識です。
しかし、日本では「お金」が汚いものという認識が根強く、あまり勉強されてきませんでした。そのため今後は老後破産が増えてしまうなんて話もありますね。
そんな世の中を少しでも変えたいという強い信念を元に「お金に生きる」を立ち上げました。
投資歴15年以上、社会保険労務士、中小企業診断士、簿記1級、1級販売士、ファイナンシャルプランナー2級、年金アドバイザー3級持ちの私が「お金」についてどこよりもわかりやすくお伝えることを目指していきます。
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