国保の通知書を見て「こんなに払うの?」と思ったことはありませんか。
維新の会の国保逃れから問題が露呈。
1万1610人が社会保険の資格を失ったという報道。
仕組みや遡及の扱いを確認し、難病になった私の実体験から、取り締まりだけでは解決しない負担の問題を考えます。
国保逃れ1万1610人、取り締まりと負担改革はセット
国保逃れを是正することと、国民健康保険の重い負担を見直すこと。
この両方を進める必要があると、私は考えています。
加入資格のない人が形式的に別の保険へ移る行為は、是正の対象です。
同時に、正しく加入している人が抱く「なぜこんなに高いのか」という疑問にも答えてほしいところ。
保険料を減らしたい気持ちへの共感と、不適切な加入への批判は両立します。
国保加入者に必要なのは、誰かを批判して終わる記事より、自分の負担と制度の境界が分かる情報ですよね。
1万1610人は何を数えた数字なのか
2026年9月14日の報道によると、厚生労働省は同年3月から8月末まで、社会保険料削減ビジネスが疑われる45事業所を調査。
38事業所が指導に応じ、計1万1610人が被保険者資格を失いました。
残る7事業所は調査継続とされています。
この数字は、全国に存在する利用者全体を数えたものではありません。
また、1万1610人全員について、刑事上の責任や過去の精算額が確定したという意味でもない点に注意が必要です。
「国保逃れ」という言葉から、保険料を何も払っていなかった姿を想像するかもしれません。
しかし今回の中心は、勤務などの実態がないのに、負担の小さい社会保険へ加入していた問題です。
保険への入り方が問われています。
なぜ1万人超がグレーな仕組みに乗ってしまったのか?
答えは単純です。
国保の保険料は、高すぎるんですよ。
もっと言えば受け取る医療給付とほとんど連動していないからです。
厚生労働省の保険者比較(令和4年度)によれば、市町村国保の加入者一人当たり平均所得は96万円、保険料負担率は9.5%。協会けんぽは平均所得175万円で負担率7.2%、組合健保は279万円で5.8%です。
所得がいちばん低い集団が、いちばん高い負担率を払っている。
つまり、国民健康保険は仕組みが歪で高すぎるのです。
この構造を放置したまま抜け道だけを塞げば、次の抜け道が生まれます。
今回の記事では、事件の顛末よりも、その構造のほうを丁寧に見ていきます。
国保逃れスキームの仕組みは「保険料の計算の差」
国保逃れの仕組みを理解する入口は、保険料の計算方法の違いです。
市町村国保では、原則として前年の所得などを基に保険料を計算します。
一方、会社の健康保険や厚生年金では、勤務先から受ける報酬を基にした「標準報酬月額」などを使います。
標準報酬月額とは、給与などを一定の幅で区分した計算用の金額です。
この計算の差を利用し、個人事業主などを法人の役員にして、少額の報酬を基に社会保険へ加入させる。
それと引き換えに、加入者から会費などを受け取る。
これが問題となったスキームの典型です。
個人事業の所得が大きくても、それが勤務先からの報酬でなければ、通常は標準報酬月額にそのまま足されません。
そのため、法人からの報酬を小さく設定すると、国保との負担差が生まれるわけです。
ただし、複数の勤務先で加入要件を満たす場合は報酬の合算が必要になります。
ただし、役員として働く実態があり、加入要件も満たしているなら、個人事業を続けながら社会保険に入ること自体が問題になるわけではありません。
境界は「どれだけ安くなるか」では判断できないのです。
法人の肩書きより、仕事と報酬の実態
厚労省の通知では、役員として継続的に経営へ参画しているか、その仕事の対価として継続的に報酬を受けているかが判断の軸になっています。
単なるアンケートへの回答や自己研さんなどでは、原則として必要な実態を認めない扱いです。
| 確認する点 | 実態を確認する材料 | 注意したい説明 |
|---|---|---|
| 仕事 | 担当業務、権限、継続的な活動 | アンケートに答えるだけでよい |
| 報酬 | 業務への対価、支払記録 | 少額を受け取り、会費として戻す |
| 加入資格 | 契約内容と実際の働き方 | 肩書きさえ付ければ加入できる |
この表は、適法性を自動判定するものではありません。
実際には、複数の事情を合わせて判断されます。
きっかけは維新議員の問題でした
この問題が一般に知られたのは、維新の会の議員の国保逃れが週刊誌で報道されたのがきっかけでした。
日本維新の会は2026年1月7日、党所属の地方議員4人が国民健康保険料の支払いを逃れるため、一般社団法人の理事に就いて国保より負担の軽い社会保険に加入していたと公表しています。
同党は1月15日、兵庫県内の議員4人を含む6人を除名処分としました。

従業員型にも通知
| 通知 | 日付 | 内容 |
|---|---|---|
| 保保発0318第1号 | 2026年3月18日 | 法人の役員である個人事業主等の被保険者資格の取扱いを明確化 |
| 保保発0914第1号 | 2026年9月14日 | 上記の一部改正。会費を報酬より安くする回避策などを封じる |
| 保保発0914第2号 | 2026年9月14日 | 新設。勤務時間が極端に短い正規型労働者として雇う型を規制 |
維新の問題が露呈して行われた3月の通知は、役員報酬を上回る会費を法人に納めている場合や、業務がアンケート回答や勉強会参加にとどまる場合を、被保険者に当たらないとみなす基準として示しました。
9月14日の新通知では、勤務時間が短い正規型の労働者として加入する個人事業主等についても、取扱いが示されました。
役員ではなく従業員という名前に変えれば安心、とはなりません。
同日の役員向け通知の改正でも、会費の名目や金額だけで判断しない考え方が補強されています。
会費を報酬以下にした場合でも、仕事や資金の流れの実態から判断される可能性があります。
一方、短時間勤務という理由だけで、すべての人が対象外になるわけでもありません。
契約書の名称だけでなく、実際の労務と加入要件を確認する話です。
「手続きが通った」「資格情報が登録された」という説明は、実態の適正さを将来まで保証するものではありません。
加入後も説明できる仕事なのか。ここが確認の出発点になります。
国保逃れは遡及される?
多くの方が疑問に感じただろう「国保逃れが見つかった人は、過去の分まで請求されるの?」という疑問には厚生労働省が以下の回答をしています。
厚労省は、個人事業主に対し国保と国民年金の保険料をさかのぼって請求する方針です。
出典:共同通信
ただし、下記のとおり時効もありますので、今回の対象者全員に国保逃れ期間すべての請求が決まったわけではないとは思いますが・・・
いつから資格がないのか
今後の資格を失うことと、過去に取得した資格を取り消すことでは、影響する期間が変わります。
まず必要なのは、資格が認められない日付と理由の確認です。
過去の資格が否定されれば、その期間に加入すべきだった医療保険や年金の整理につながります。
ただし、支払済みの社会保険料、国保側で決める保険料、医療費の精算は、それぞれ別の処理。
単純に「国保との差額を払って終了」とは限りません。
時効がある
自治体によって、国保の負担を「保険料」として徴収する場合と、「保険税」として徴収する場合があります。
国保料は、原則として年度の最初の納期の翌日などから2年を過ぎると、賦課決定や変更ができなくなります。
賦課決定とは、行政が支払額を決めることです。「今日から過去24か月だけ」という単純な数え方ではありません。
国保税を遡って課税する期間は原則3年で、偽りその他不正の行為がある場合には7年という規定があります。
本件にどの規定が適用されるかは個別確認が必要です。
この期間は、資格そのものをいつまでさかのぼって確認できるか、既に決まった保険料をいつまで徴収できるか、という話とも区別します。
医療費も、最終的な全額自己負担とは限らない
資格のない期間に以前の健康保険を使っていれば、保険者が負担した医療費の返還も確認すべき事項です。
ただし、受診日に別の保険の資格があれば、療養費の申請や、保険者同士で精算する「保険者間調整」を利用できる場合があります。
適用条件や期限があり、差額負担が生じることもある仕組みです。
加入中の人が確認したいのは、資格の日付、保険料の精算、医療費の精算という順番。
年金記録の扱いも含め、加入先の保険者・年金事務所と市区町村へ確認する必要があります。
かなり大掛かりの遡及なんですよ。
根本原因は国民健康保険料の歪さ
ここからが本題です。
今回の件は、国保逃れを企画した会社、団体、加入した人が悪いのは当然です。
しかし、根本原因は国民健康保険料にいびつな部分があることなんですよ。
「国民健康保険が高すぎる」のは、気のせいではないのです。
加入者平均年齢
まず年齢
市町村国保の加入者平均年齢は54.2歳、協会けんぽは38.9歳、組合健保は35.9歳。
国民健康保険は加入者年齢がかなり高いのです。
働き盛りの加入者がかなり少ないのがわかるでしょう。

加入者一人当たり医療費
また、加入者一人当たり医療費は国保が40.6万円に対し、協会けんぽ20.4万円、組合健保18.4万円です。
平均年齢が高いこともあり、国民健康保険料の一人あたりの医療費も倍くらい高いのです。
国保は、退職した人、非正規で働く人、年金生活の人を受け止める最後の受け皿になっています。
年齢が高く医療費がかかる集団を、所得のいちばん低い集団の保険料で支える。
設計としては最初から無理があります。
非正規労働者や年金生活者等の無職者が7割を占める
健康保険組合連合会の分析によれば、国民皆保険が達成されて間もない昭和40年度時点では、世帯主の職業が農林水産業とその他の自営業を合わせて約7割を占め、無職は6.4%にすぎませんでした。
平成24年度になると、農林水産業と自営業の合計は17.5%、被用者が35.2%、無職が43.4%に変わっています。
厚生労働省自身の資料も、昭和30年代は農林水産業者・自営業者が中心だった市町村国保が、現在は非正規労働者や年金生活者等の無職者が7割を占める制度に変わったと記しています。
つまり、所得がない、もしくは少ない人がかなり含まれているってことです。
実際に厚生労働省の保険者比較(令和4年度)によれば、市町村国保の加入者一人当たり平均所得は96万円。協会けんぽは平均所得175万円、組合健保は279万円です。
所得だけでは決まらない仕組み
また、国民健康保険は自身の所得だけで決まりません。
均等割という仕組みも効いています。
国保には扶養という概念がなく、赤ちゃんを含めて加入者一人ごとに定額の均等割がかかります。
子どもが多い世帯ほど保険料が増える。
所得に対して逆進的に働く部分です。
また、自治体の料率なども関わります。
地域によってもかなり違うんですよ。

国民健康保険料を分解してみると・・・
保険料が高いと感じるとき、私たちは総額しか見ていません。
分解すると、見え方が変わります。
| 区分 | 令和8年度の上限額 | 構成比 | 宛先 |
|---|---|---|---|
| 医療分 | 67万円 | 約59% | 国保加入者自身の医療給付 |
| 後期高齢者支援金分 | 26万円 | 約23% | 75歳以上の医療制度への拠出 |
| 介護納付金分 | 17万円 | 約15% | 介護保険への拠出 |
| 子ども・子育て支援納付金分 | 3万円 | 約3% | 子ども・子育て支援の財源 |
上限に張り付く世帯の場合、保険料の約41%、金額にして46万円は、自分が加入している保険の給付とは別の宛先へ向かいます。
もちろん、支え合いの仕組みとして説明は成り立ちます。
介護も高齢者医療も、誰かが負担しなければ回りません。
ただ、通知書には「医療保険料」としか書かれていない。
中身の4割が別の宛先だと知らされないまま請求だけが届くから、納得感が育たないわけです。
国保はもう保険ではなく、宛先の4割が自分の保険の外へ出ていく仕組みになっている。
「保険なのに高い」という怒りの正体は、ここにあります。
保険だと思って払っているのに、実質は目的税に近い。
その違和感を放置したまま、抜け道だけを塞いだのが今回の一件でした。
難病になった私でも、医療費より国保料が高いという事実
私自身、国保に加入していて、国指定の難病「潰瘍性大腸炎」になりました。
病気になると、負担の見え方が変わるものですね。
そして、私が現時点で把握している支出では、国保に払った金額の方が、受けた治療の医療費を全額自己負担したと考えた額より高い状況です。
病院や薬局の窓口で払った額だけとの比較ではありません。
保険が負担した分を含む医療費と比べても、という意味です。
難病になったのに、それでも払った保険料の方が高い。
その感覚には、やはり引っかかるものがあります。
ただ、この体験は私個人の支出についての話です。
病名だけで治療費は決まりませんし、同じ病気の人にも違う経過があります。
ここから、すべての国保加入者の損得を判断することはできません。
家計を厳密に比較する場合は、集計期間をそろえ、世帯全体の保険料と個人の医療費を混ぜない確認も必要です。
私の負担感と、条件をそろえた収支の検証は区別して考えています。

保険料は、使った医療の代金だけではない
保険の役割には、今後発生するかもしれない大きな医療費への備えがあります。
自分が治療を受けない時期にも、必要な人の医療を支える仕組みです。
火災保険を、今年の修理代と保険料だけで評価できないのと似ています。
国保にも、医療費の自己負担が高額になった場合に支給される高額療養費があります。
保険診療の医療費総額と、無保険で自由診療を受けた場合の請求額も、必ずしも一致しません。
病院によっては、健康保険がない場合に別の単価を設定しています。
私の比較は、制度から離れた場合の請求額を確定させるものではないのです。
だから、支払った額を取り戻せるかだけでは、保険の価値を測れません。
この点は、制度を論じる側として押さえておきたいと思っています。
ちなみに高額療養費制度は改悪が予定されていますけどね・・・

問い直したいのは「払える負担」と「働けないときの保障」
そのうえで私が気になるのは、病気のときの生活を含め、負担と保障が納得できる組み合わせになっているかです。
会社員の健康保険には、条件を満たした病気休業に対する傷病手当金があります。
一方、国保の傷病手当金は法律上の任意給付で、全国一律に必ず支給される制度ではありません。
自営業者の暮らしを考えると、治療費だけでなく、働けない間の収入や事業の固定費も問題になります。
医療を受けられることと、仕事を休めることは、別々に確認する必要があるわけです。
「保険料を払っているから、病気になっても暮らし全体が守られる」。
そんな思い込みがあれば、どこまで保障されるのかを確認しておきたいところ。
私が制度の見直しを考えたいのは、医療を支える必要性を実感しているからです。
支える側も、病気になった側も、払い続けられる設計を求めたいと思います。
よくある質問
- 自分で作ったマイクロ法人も、今回の規制の対象になりますか。
-
今回の通知が対象としているのは、社会保険料の削減をうたって個人事業主を形式的な役員や短時間労働者にし、報酬を上回る会費等を支払わせている事業所です。
自分で設立し代表を務め、売上・取引・帳簿の実態がある法人は射程外
ただし、実態がないと判断されれば同様な扱いを受けたり、今後新たな通知が交付される可能性はあります。
- 「会費」ではなく「広告費」や「業務委託料」という名目なら大丈夫ですか。
-
大丈夫ではありません。通知は会費等の範囲について、勉強費・広告費・掲載料・参加料・コンサルタント料・協力金・委託費など名称を問わないとしています。
関連法人へ支払わせている場合も、役員就任の実質的な条件になっていれば同一の法人として扱われます。
- 医療費より国保料が高いなら、国保をやめられますか?
-
自分の医療費と比べて割高でも、それを理由に任意で国保をやめることはできません。
他の公的医療保険に加入するなどの事情がなければ、原則として加入対象です。
保険の価値には将来の大きな医療費への備えも含まれ、負担が厳しい場合は軽減・減免を確認します
- 個人事業主が社会保険に加入すると、国保逃れになりますか?
-
個人事業主でも、法人役員や従業員として実際に働き、加入要件を満たせば社会保険に加入できます。
問題になるのは、働く実態がないなど、要件を満たさない加入です。
肩書きや契約書の名称だけでなく、仕事と報酬の実態を確認します。
まとめ
ここからは、私の制度に対する意見です。
まず、実態のない加入を防ぎ、調査や資格整理の結果を分かりやすく示すこと。
そのうえで、働き方による負担算定の違い、病気や所得減少への対応、休業時の保障を一緒に検討してほしいと思います。
特に個人事業で稼いで、どこかの役員として少しだけ報酬をもらい社会保険に加入すると、社会保険料が安くなるという仕組みです。
同程度の負担能力がある人でも、加入先によって算定の対象が違えば、不公平だという感覚が生まれます。
ただし、対象所得を広げてそろえる案なら、別の人の負担が増える可能性もある。
公平化と値下げは、必ずしも同じ方向ではありません。
保険料を税財源で補うなら、その税を誰が負担するのか。
給付を減らすなら、治療が必要な人への影響はどれほどか。改革案は、減る金額と増える負担を組にして示してほしいところです。
国保逃れの是正にも、正しい負担を回復する意義があります。
ただ、人数だけでは財政への効果を計算できません。
利用者の所得や加入期間、医療給付などが分からなければ、国保料がいくら下がるかは判断できないからです。
抜け道を塞ぐだけでは、国保の納得感は戻らない。
私たちが求めたいのは、正しく加入し、必要な医療を受けながら、暮らしを維持できる制度です。
「払うのがつらい」という声も、制度改善の材料として受け止めてほしいと思います。
私も、国保を払う一人です。
難病になった当事者として、負担の苦しさと医療に支えられる安心の両方を、これからも言葉にしていきたいと思っています。
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