「高額療養費制度があるから、民間の医療保険なんて無駄の極みだ」。
そんなインフルエンサーたちの言葉を信じ、医療保険を解約して安心していませんか?
もしそうなら、この記事はあなたの未来の命を救うかもしれません。
なぜなら2026年、国の医療制度は歴史的な大転換を迎え、「お金がない人は治療を諦めるしかない」時代が本格的に幕を開けるからです。
今回は、耳障りの良い「医療保険不要論」の罠を暴き、あなたの資産と家族を守るための真の自己防衛術をお伝えします。
そもそも高額療養費制度とは何か
まずは今回の話の前提である高額療養費制度について詳しく見ていきましょう。
医療費の「青天井」を防ぐ最強の盾
高額療養費制度とは、同じ月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が一定の限度額を超えた場合に、超えた分が後から払い戻される制度です。
たとえば、入院して医療費の総額が100万円かかったとします。
窓口での自己負担は3割で30万円。
しかし、年収約370万〜770万円の方であれば、高額療養費制度により最終的な自己負担は約8万7,430円で済みます(2025年時点の計算)。
差額の約21万円は、後から健康保険から払い戻されるのです。
ここで重要なのは、この制度は健康保険に加入していれば誰でも使えるということ。
会社員の方は健康保険組合や協会けんぽ、自営業の方は国民健康保険など、加入している保険の種類を問いません。
入院するとどのくらいお金がかかるのか
「制度があるから安心」と言われても、実際にどれくらいお金がかかるのか気になりますよね。
生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(2022年度)によると、入院時の自己負担費用の平均は約19.8万円。
入院日数の平均は約17.7日となっています。
ただし、この金額には治療費だけでなく、食事代の自己負担分、差額ベッド代、日用品、交通費なども含まれています。
高額療養費制度でカバーされるのは「保険適用の医療費」だけですので、差額ベッド代や入院中の食事代(1食490円の自己負担)、先進医療の費用などは対象外です。
つまり、高額療養費制度があっても、実際の入院費用はゼロにはならないということ。
この「制度でカバーされない部分」をどう備えるかが、後述する医療保険の議論につながります。
高額療養費制度の自己負担限度額を正しく理解する
具体的な金額をもう少し詳しく見ていきましょう。
70歳未満の方の自己負担限度額
自己負担限度額は年齢と所得によって異なります。
まずは70歳未満の方の区分を確認しましょう(2025年時点の現行制度)。
| 区分 | 年収の目安 | 自己負担限度額(月額) | 多数回該当 |
|---|---|---|---|
| ア | 約1,160万円〜 | 252,600円+(総医療費−842,000円)×1% | 140,100円 |
| イ | 約770万〜約1,160万円 | 167,400円+(総医療費−558,000円)×1% | 93,000円 |
| ウ | 約370万〜約770万円 | 80,100円+(総医療費−267,000円)×1% | 44,400円 |
| エ | 〜約370万円 | 57,600円 | 44,400円 |
| オ | 住民税非課税者 | 35,400円 | 24,600円 |
(出典:全国健康保険協会「高額な医療費を支払ったとき」)
計算式を具体例で理解する
多くの方が該当する「区分ウ」(年収約370万〜770万円)で考えてみましょう。
医療費の総額が100万円の場合: 80,100円+(1,000,000円−267,000円)×1%=80,100円+7,330円=87,430円 3割負担で窓口で30万円支払ったとしても、最終的な自己負担はこの87,430円になるわけです。
「多数回該当」で4回目からはさらに安くなる
同じ方が直近12ヶ月間に3回以上、高額療養費の上限に達した場合、4回目からは「多数回該当」となり、さらに限度額が下がります。
区分ウであれば、4回目以降は月額44,400円が上限。長期入院や慢性疾患で継続的に医療費がかかる方にとっては、非常に心強い仕組みです。
世帯合算も活用できる
同じ健康保険に加入している家族であれば、同じ月の医療費を合算して申請することもできます。
ただし70歳未満の場合、合算できるのは1件あたり21,000円以上の自己負担に限られます。
たとえば、ご主人が入院して15万円、奥様が外来で3万円の自己負担があった月。それぞれ21,000円以上なので合算対象となり、世帯としての自己負担を限度額まで下げることができます。
限度額適用認定証で窓口での立て替えを防ぐ
高額療養費制度には一つ大きな弱点があります。
それは、原則として「いったん窓口で全額(3割負担分)を支払い、後から差額が戻ってくる」という仕組みであること。
先ほどの例でいえば、いったん30万円を支払い、後日約21万円が返ってくるわけですが、払い戻しには診療月から3ヶ月以上かかるのが通常です。
一時的とはいえ、30万円の出費は家計にとって大きな負担になります。
この問題を解決してくれるのが「限度額適用認定証」です。 事前に加入している健康保険に申請し、この認定証を入院時に医療機関の窓口で提示すると、最初から自己負担限度額までの支払いで済みます。
つまり、区分ウの方であれば、窓口での支払いが最初から約8万7,000円程度に抑えられるのです。
30万円を立て替える必要がないので、資金繰りの面でも精神的にも大きな安心感があります。
マイナ保険証を利用していると手続きも簡単なんですよ。
詳しい手続き等はこちらの記事で解説しております。

【2026年8月】高額療養費制度の改正で何が変わるのか
しかし、そんな高額療養費制度は2026年8月から大きく見直されることが決まりました。
ネット上の一部では「2025年8月の引き上げは見送られた」という古い情報が散見されますが、それは一時的な世論の反発による「一時停止」に過ぎませんでした。
高市政権に変わって、2025年12月24日及び26日の閣議決定。(出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」)。
その後の選挙でも自民党が大勝したことから、政府は虎視眈々と準備を進め、2026年8月からの実施を強行しようとしています。
なぜ制度を見直しするのか?
見直しの背景にあるのは、医療費の急激な増大です。
高齢化の進展に加え、高額な新薬の開発・普及により、高額療養費の給付総額は年々増加。
その結果、現役世代の保険料負担が重くなっているという構造的な問題があります。
政府は当初2025年8月からの引き上げを予定していましたが、がん患者団体をはじめとする多くの当事者から強い反対の声があがり、一度全面凍結。
その後、高市政権に変わって状況が一変。
2026年8月からの段階的引き上げが決定されました。
具体的に何がどう変わるのか
改正は2段階で実施されます。
第1段階:2026年8月〜
現行の所得区分(4区分+非課税)はそのまま維持しつつ、全区分で自己負担限度額を一律7%程度引き上げます。
たとえば、最も多くの方が該当する区分ウ(年収約370万〜770万円)の場合:
| 時期 | 月額上限の目安 |
|---|---|
| 現行 | 約80,100円+(総医療費-267,000円)×1% |
| 2026年8月〜 | 約85,800円+α(約5,700円増) |
(出典:FNNプライムオンライン/時事通信, 2025年12月24日報道)
同時に、新たに「年間上限額」が導入されます。
年収約370万〜770万円の方の場合、年間53万円が上限となります。
これは、長期にわたって治療を続ける方の負担が過度に増えないよう配慮する措置です。
第2段階:2027年8月〜
所得区分が現行の4区分から12区分に大幅に細分化されます。
これにより、同じ「区分ウ」の中でも、年収370万円の方と年収750万円の方では異なる限度額が適用されるようになります。
年収約650万〜770万円の方の場合、月額上限が約11万円程度まで引き上げられる見込みです。
現行の約8万円と比較すると、約3万円の増加となります。
多数回該当は据え置き
今回の改正で特に注目すべきは、多数回該当の限度額が現行水準で据え置かれたことです。
がん治療や難病など、長期にわたって継続的に医療費がかかる方にとって、多数回該当は生活を支える命綱。
この据え置きは、患者団体の粘り強い訴えが反映された結果と言えるでしょう。
ただし、ここに落とし穴があります。
通常の限度額が引き上げられることで、これまで限度額に達していた治療費が「達しなくなる」ケースが出てきます。
その場合、多数回該当のカウント対象から外れ、結果的に負担が増える可能性があるのです。
保険料軽減効果は一人当たり月116円。
この改正による保険料の軽減効果はどの程度なのでしょうか。
厚生労働省が2025年12月25日の医療保険部会で示した資料によると、加入者1人あたりの保険料軽減効果は年間約1,400円。
月額にしてわずか約116円です(出典:全国保険医団体連合会 2025年12月25日報道)。
一方で、制度利用者の約8割にあたる約660万人が負担増の対象となります。
受診抑制による医療費削減効果(いわゆる長瀬効果)を約1,070億円見込んでおり、これは削減全体の約44%にあたります。
つまり、月116円の保険料軽減のために、病気と闘う方々の自己負担が増えるという構図。
この数字をどう評価するかは、読者のみなさん一人ひとりが考えるべき問題です。
政府は「受診抑制」の効果を見込んでいる
さらに恐ろしいのはここからです。
政府は、この負担増による「受診抑制」の効果を約1,070億円と見積もっています。
「受診抑制」とは、行政用語でオブラートに包まれていますが、要するに「お金が高くて払えないから、病院に行くのを我慢する」「最適な治療法を諦める」という現象のことです。
月々100円ちょっとの保険料を下げるという名目の裏で、国は「1,000億円分、国民が治療を諦めるだろう」と冷酷に計算し、それを予算に組み込んでいるのです。
2026年2月には、著名人を含む25万筆以上の「引き上げ撤回」を求める署名が厚生労働省に提出されました。
「今の制度でも支払いが限界なのに、これ以上上がったら治療を続けられない」「乳がんの治療費が払えず、命を諦めるしかない」。
悲痛な叫びが上がっていますが、国の歯車は止まろうとしていません。
これが現実です。
「国があなたを守ってくれる」という幻想は、2026年をもって完全に崩壊するのです。
高額療養費制度だけでは足りない?「医療保険不要論」を考える
今回の一番話したい内容はこちらです。
今までYouTubeやSNSで溢れ返る「高額療養費制度があるから医療保険は不要。その分をインデックス投資に回せ」という言説。
これは確かに一理あります。
月8万円程度の自己負担を貯蓄でまかなえるなら、毎月の保険料を払い続けるより合理的かもしれません。
しかし、2026年の制度改正を踏まえると、この判断はもう少し慎重に行う必要があります。
いちばん大事なのは「病気という想定外の悲劇が起きた時、自分と家族の生活、そして尊厳をどうやって守り抜くか」という部分です。
今回はあえて医療保険不要論で考えなくてはならない点をみておきましょう。
投資資産は「必要な時に引き出せる」とは限らない
まず、あなたが大病を患うタイミングと、株式市場が暴落するタイミングが重なったらどうなるでしょうか?
がんの告知を受け、明日からの治療費100万円が必要な時に、あなたの証券口座の資産が「〇〇ショック」で半値になっていたとします。
その大底のタイミングで、治療費のために株を泣く泣く損切りできるでしょうか。
人間には「損失回避性(プロスペクト理論)」があり、損を確定させる行動には強烈な心理的苦痛を伴います。
結果として、治療費の支払いをためらい、命を縮めることになりかねません。

「差額ベッド代」と「先進医療」のリアル
高額療養費制度の対象となるのは、あくまで「保険適用される診療」のみです。
入院した際の食事代、そして大部屋に入れず個室などに入った場合の「差額ベッド代」は全額自己負担です。
差額ベッド代は1日あたり数千円から、都市部の病院では1万円以上かかることも珍しくありません。
1か月の入院で30万円以上の請求が来ることもあります。
さらに、最新のがん治療などに用いられる「先進医療」の技術料も、高額療養費制度の対象外です。
数百万円かかる治療費を、あなたはポンと現金で支払えるでしょうか?
「先進医療なんて受ける確率は低い」という意見もあります。
確かに確率は低いでしょう。
しかし、いざ家族ががんになった時、「1,000万円あれば助かる可能性が上がる最新の治療法がありますが、どうしますか?」と医師に問われ、「お金がないから諦めます」と本人の前で言えるでしょうか。
高額療養費の対象外となる主な費用をまとめると以下のとおりです。
| 項目 | 目安金額 |
|---|---|
| 差額ベッド代 | 1日平均約6,000円〜(個室は数万円も) |
| 入院中の食事代(自己負担分) | 1食490円(1日3食で1,470円) |
| 先進医療の技術料 | 数十万〜数千万円(治療内容による) |
| 入院中の日用品・衣類 | 数千円〜 |
| 通院の交通費 | 状況による |
これらの費用は、いくら高額になっても高額療養費制度では軽減されません。
闘病中の「収入減」という見えない恐怖
入院や療養で最も影響が大きいのは、実は「出ていくお金」だけではありません。
「入ってこなくなるお金」、つまり収入の減少も大きな問題です。
傷病手当金という制度があり、会社員であれば給与のおよそ3分の2が最長1年6か月支給されます。
しかし、逆に言えば「収入が3分の1減る」ということです。
国民健康保険の自営業やフリーランスであれば、傷病手当金すらなく、収入は一気にゼロになります。
入院費用の自己負担は高額療養費でカバーされても、収入が途絶えれば家賃やローン、生活費が払えなくなる。
これが入院時の本当のリスクです。
この「負のトリプルパンチ」に耐えられる現金(生活防衛資金)を、あなたは今すぐ用意できるでしょうか?

改正後に考えるべき3つのポイント
医療保険不要論は確かに合理的ではあります。
しかし、今まで見てきたような問題もあり、万人に使えるものではないんですよ。
さらに今回の改正で考え直す必要が出てくる人も多くなると思われます。
ポイントは3つ。
自己負担限度額が上がる
今回の改正で区分ウの方でも月約5,700円、年間で約68,400円の負担増。
これが毎年続くと考えると、長期治療の場合はかなりの金額になります。
さらに2027年8月以降は所得区分が細分化され、収入によってはさらに大きな増額も。
対象外費用は変わらず自己負担
差額ベッド代、食事代、先進医療費など、高額療養費でカバーされない費用は制度改正後も自己負担のまま。
むしろ、高額療養費の上限が上がることで「自分で備えるべき総額」は増えます。
将来のさらなる引き上げの可能性
今回の改正は「第一歩」に過ぎない可能性があります。
厚労省の専門委員会でも、高額療養費の在り方は「今後とも継続的に検討していくべき課題」と明記されています。
高額薬剤の開発・普及が続く限り、自己負担限度額の引き上げ圧力は続くでしょう。
結論:「必要か不要か」ではなく「何に備えるか」で考える
医療保険の要否は、「制度がカバーしてくれるか」ではなく「自分のリスクは何か」で考えるべきです。
医療保険が不要な可能性が高い方
十分な貯蓄(目安として1,000万円以上の流動性資金)があり、会社員で傷病手当金の対象となり、健保組合の付加給付が充実している方。
この条件がそろっているなら、高額療養費+貯蓄で十分対応できるかもしれません。
ポイントは以下の3つの穴を充分に賄えるかです。
穴1:窓口での一時的な支払い(立替)
穴2:高額療養費の自己負担額+保険外負担(差額ベッド代、食事、交通費、家族の諸費用など)
穴3:収入減(働けない期間の手当不足)
医療保険を検討すべき方
自営業やフリーランスで傷病手当金がない方、貯蓄が少ない方、住宅ローンなど固定費が大きい方、がんの家族歴がある方、先進医療を選択肢に入れたい方。
これらに該当する場合は、医療保険(特にがん保険や就業不能保険)で「公的制度のスキマ」を埋める意義があります。
大切なのは、「医療保険に入るか入らないか」という二者択一ではなく、「公的制度+貯蓄+保険」のバランスをどう設計するかという視点です。
まとめ
高額療養費制度は、日本の医療保険制度が世界に誇るセーフティネットです。
しかし2026年8月から、その網目が少し広がります。
改正のポイントをまとめると
(1)2026年8月から自己負担限度額が全区分で7%程度引き上げ
(2)年間上限額が新設(区分ウは年間53万円)
(3)2027年8月に所得区分が4区分から12区分に細分化
(4)多数回該当の限度額は据え置き
大切なのは、こうした知識を「知っている」だけで終わらせないことです。
今すぐできることがあります。
自分の所得区分を確認して、現行と改正後の限度額を把握する。
マイナ保険証の利用登録がまだなら設定する。
そして、「高額療養費でカバーされない部分」に対して、貯蓄で備えるのか、保険で備えるのか、自分なりの方針を決めておく。
病気やケガは誰にでも起こりえます。
しかし、制度を知り、準備をしておけば、イザというときの不安は確実に減らせます。
この記事が、あなたの「安心の備え」を考えるきっかけになれば幸いです。
制度の詳細や個別のご相談は、お住まいの地域の社会保険労務士や、加入している健康保険の窓口にお問い合わせください。
※本記事の情報は2026年2月時点のものです。制度の詳細や具体的な金額は、今後の法改正や政省令の公布により変更される可能性があります。最新情報は厚生労働省のホームページでご確認ください。
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