証券会社や銀行などが販売するファンドラップの人気が高まっています。しかし、結論から言えばファンドラップ買っては駄目な商品なのです。表面の説明を効くと良さげに見える方もいると思いますが・・・・
今まではファンドラップの全貌は加入者にしかわかりにくかったです・・・そんな状況だったのですが最近、金融庁が投資信託を販売する銀行・証券会社に対して比較可能な共通KPIと考えられる3つの指標を公表することを求めました。それに応じた形で先日はネット証券大手4社が投資信託の統計情報を発表。それに続いて三菱UFJ銀行などメガバンクなど銀行もぞくぞく共通KPIやそれに付随したデータを出し始めたのです。中にはファンドラップについての記載を自主的に行う金融機関もあり全貌がだいぶみえてきました。
今回はそんなファンドラップについて考えていきます。
ファンドラップとは
ファンドラップとは、投資家が証券会社や銀行などにある程度のまとまった資金を預け、資産管理・運用を行うための「ラップ口座の一形態」のことを言います。
簡単に言えば証券会社や銀行に資産運用を丸投げ(一任)する方法です。
手数料は金融機関によりますが、かなり高めで基本的には資産残高に対してのパーセンテージで払うことになります。
また、金融機関によってはさらに成功報酬が発生するケースもあります。
代表的なファンドラップ概要、比較
対面販売を行っている証券会社や銀行は多くでこのファンドラップを扱っています。簡単に比較してみましょう。
※なお、運用方針によって手数料が変わるファンドラップの場合にはリスクが真ん中(バランス型)での手数料としています。また、投資資金によって手数料が変わるファンドラップは最低金額での手数料としています。
楽天証券は固定報酬型と成功報酬型の選択となります。そのためどちらかしか掛かりません。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。
野村ファンドラップ | 日興ファンドラップ | ダイワファンドラップ | SMBCファンドラップ | みずほファンドラップ | 楽ラップ | |
申込先 | 野村證券 | SMBC日興証券 | 大和証券 | 三井住友銀行 | みずほ証券 | 楽天証券 |
手数料:固定報酬 | 1.7064% | 1.296% | 1.512% | 1.512% | 1.62% | 0.702% |
手数料:成功報酬(運用益に対して発生) | 10.8% | – | – | 10.8% | 10.8% | 0.594%+5.4% |
手数料:運用管理料 | 1.5012% | – | – | 1.188% | 1.296% | – |
手数料:信託報酬 | 最大で1.35%±0.70% | 平均0.85%程度 | 0.77〜1.41% | 0.4644~1.1772% | 最大0.7128% | 最大0.288% |
信託財産留保額 | 最大0.5% | – | – | – | – | – |
投資対象 | 投資信託 | 投資信託 | 投資信託 | 投資信託と日興MRF | 投資信託 | 投資信託 |
これを見て問題点がわかる方はそもそもファンドラップを買おうと思わないでしょう。
手数料が馬鹿高いのです。詳しく見ていきましょう。
ファンドラップが駄目な理由
成功報酬を考えなくても、手数料が低めの金融機関でも年3%近く、高いと年4%を超えます。(楽ラップは除く)国民年金などを運用するGPIFの運用開始以来の成績が年率3.12%ですから手数料でその分が飛んでしまうことになりますね。これで勝てといってもかなり無理があるのです。また、成功報酬が取られるということはそれだけ利益が減りますし、複利効果が低下するのです。
しかもほとんどの投資は投資信託を買っているだけ。しかも信託報酬が高い商品を買っているのです。これでは勝てる可能性は限りなく低いと言わざるえません。
ファンドラップを運用するために掛かる固定報酬
利益が出たときに取られる成功報酬(ないものもあり)
運用管理手数料(ないものもあり)
さらに通常の投資信託の信託報酬や信託財産留保額
自分で投資信託を買えば信託報酬(商品によっては信託財産留保額)しかとられませんが、ファンドラップでは固定報酬や成功報酬、運用管理手数料がさらに取られるのです。これだけでも年3%超掛かるのです。さらにファンドラップで買う投資信託は自分で選択できるわけではありませんので信託報酬が高い商品が選ばれているケースも多いようです。実際各社の信託報酬率をみていただければ今人気となっているインデックスファンドと比較してかなり高いのがわかるでしょう。
投資初心者の方は下手に自分で運用するよりも年3%超の手数料払ってでもプロにお願いしたほうがよいと考える人も多いでしょう。そう考えるのも無理はないでしょうが、相場の世界はプロが勝つとは限らないのです。
投資家なら一度は読んでおきたい本にウォール街のランダムウォーカーというのがあります。その本の一節にプロが勝つとは限らないことを表す有名なフレーズがありますのでご紹介しておきましょう。
目隠しをしたサルに相場欄めかげてダーツを投げさせ、それで選んだ銘柄でポートフォリオを組んでも、プロの専門家と変わらぬ運用成果を上げられる
プロが時間を掛けて運用しても猿が目隠しししてダーツを投げても成績は変わらないといっているのです。世界一の投資家と名高いウォーレンバフェット氏も同じようなことを言っています。「助っ人に金を払う価値はない」です。助っ人とは銀行や証券会社、アナリストなどのことです。つまり、相場の世界はプロが有利というわけでもないのです。そのような状況なのに毎年確実に3%ずつ取られる。かなり分が悪いことがわかると思います。
詳しくは下記の本を御覧ください。投資初心者こそ読んでほしい本です。
みずほファイナンシャルグループのファンドラップ状況
みずほファイナンシャルグループは今回金融庁が要望した共通KPIだけでなく様々な資料を提供しています。その中にファンドラップの項目がありましたので見てみましょう。2018年3月時点で残高のある顧客のうち利益がでているのは48%、損失がでているのは51%と半数以上が損失状態となっています。前述のように手数料が本当に高いですから妥当な線といっても良いかもしれませんね。
出所:株式会社みずほファイナンシャルグループ「フィデュシャリー・デューティーに関する2017年度アクションプランの取組状況および2018年度アクションプランの公表について」より
ファンドラップの成績は問題外としても、金融庁が支持した資料しか出していない銀行や証券会社が多い中で、成績が振るわない正直出したくない資料を公開したことについてみずほファイナンシャルグループの姿勢は評価に値しますね。今後に期待したいところです。
SMBCグループ(三井住友銀行、SMBC日興証券など)のファンドラップ状況
SMBCグループはみずほファイナンシャルグループよりも更に細かいデータを出してくれています。
販売商品比率
まずは販売商品比率から見ていきましょう。
三井住友銀行
ファンドラップ(バランスファンド・外貨預金を含む)の販売割合が急激にのびているのがわかると思います。バランスファンドや外貨預金が混じっているので単純にはいえませんが・・・
出所:SMBCグループリテール事業部門における「お客様本位の業務運営に関する取組方針」より
SMBC日興証券
SMBC日興証券はそこまで多くはありませんが20%近くはファンドラップとバランスファンドとなっています。
出所:SMBCグループリテール事業部門における「お客様本位の業務運営に関する取組方針」より
ファンドラップの販売・解約額
銀行、証券を合わせたSMBCグループとしてのファンドラップの販売金額も6000億円近くとかなり多くなっていますね。
出所:SMBCグループリテール事業部門における「お客様本位の業務運営に関する取組方針」より
2018年3月末時点でのファンドラップ成績
次に2018年3月末時点でのファンドラップ成績をみてみましょう。
三井住友銀行
まずは三井住友銀行です。これは意外な結果でした。8割くらいの方がプラスとなっているのです。同社が販売している投資信託の同時点と比較しても良い数字になっていますね。三井住友銀行のファンドラップも他と同じように手数料は高く年3%超えの成功報酬10.8%ありですから、もしかしたら運用しているSMBCファンドラップ運用担当者(ポートフォリオ・マネージャー)が優秀なのかもしれません。ただ、このような投資は長期的に見ないとわかりませんのでなんとも言えませんが・・・
出所:SMBCグループリテール事業部門における「お客様本位の業務運営に関する取組方針」より
SMBC日興証券
SMBC日興証券も条件は三井住友銀行と基本的に同じですから成績はよいですね。7割近くの方はプラスです。
出所:SMBCグループリテール事業部門における「お客様本位の業務運営に関する取組方針」より
楽天証券のファンドラップ状況
多少毛色は違いますが楽天証券の楽ラップも成績を出していますので比較してみましょう。楽ラップでプラス割合は53.9%でした。ちょっと成績が振るわない感じですね。
出所:楽天証券「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPI」公開のお知らせ
まとめ
今回は「ファンドラップを買っては駄目絶対!!手数料が高く儲けるのはかなり困難・・・。」と題してファンドラップについて考えてみました。この記事を読んで分かっていただきたいのはファンドラップは手数料がかなり高いってことです。そしてこの手数料で儲けを出すのはかなり困難であることをおさえておいてください。
SMBCグループのファンドラップは3月までのところそれなりの成績を残してはいるようですけどね。
金融庁が共通KPIを要求したことにより各社「お客様一番」「お客様本位」と謳い始めましたが本当にそうならファンドラップはどうなんだろうと思わざる得ません。ちょっと厳しい言い方をすればファンドラップという商品は証券会社や銀行を儲けさせることを目的とした商品としか思えないってことです。
それでももし、自分で投資先を考えたりするのが嫌!お任せして運用したい!と考えるならAIを使ったロボアドバイザーをおすすめします。こちらも手数料は掛かりますが、ファンドラップと比べればだいぶ安いですし人間が運用するファンドラップより期待値は高そうです。
ロボアド業界の中でも特に人気が高いのがWealth Navi(ウェルスナビ)とTHEOですね。
詳しくは下記の記事を御覧ください。
ロボアドバイザーに流行の兆し最近ロボアドバイザーなる投資信託の自動運用システムが流行っています。下記記事でも書きましたが人が投資に勝てない最大の理由は人の心理による影響です。その影響がないロボアドバイザーはおすすめできる[…]
あとは今のところ成績は奮っていませんが手数料の安い楽天証券の楽ラップですかね。
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