持続化給付金や家賃支援給付金は スジが悪い政策である理由

持続化給付金や家賃支援給付金はスジが悪い政策である理由

新型コロナウィルスによる経済対策として様々な政策が打ち出されています。

その中でも企業への支援策の目玉が売上が半減した中小企業等に最大200万、個人事業主に100万円を支給する「持続化給付金」と2次補正予算案で出ている業績が悪化した企業に家賃の3分の2を半年分補助する「家賃支援給付金」です。

この2つの制度。大きな金額が給付されますので見栄えはよいですが、経済効果としては微妙としかいいようがありません。

持続化給付金の事業を委託された「一般社団法人 サービスデザイン推進協議会」が電通などに事業をそのまま丸投げしているという問題も露呈していますが、それは関係なく考えて根本的な制度上に大きな問題があるのです。

それは一部の人たちには大きな意味があるけど、そうでない企業にはほとんど意味がないバランスの悪い政策だからです。

つまり、スジが悪い政策といっても良いでしょう。

今回は持続化給付金や家賃支援給付金は経済対策としてスジが悪い政策である理由についてみていきます。

給付額の算定方法が悪い問題

まず、一番の大きな問題は給付額の算定方法です。

売上が半減した中小企業等に最大200万、個人事業主に100万円を支給する「持続化給付金」を例に考えて見ましょう。

持続化給付金の給付額算定方法

持続化給付金の給付額上限は法人200万円、個人事業主100万円です。

ただし、昨年1年間の売上からの減少分が上限となります。

計算式は以下の通り。

前年の総売上(事業収⼊)- (前年同⽉⽐▲50%⽉の売上×12ヶ⽉)
例えば前年3月の売上が200万円で今年の3月が100万円ならば差額が100万
それの12ヶ月分ですから減少分は1,200万円となります。
この場合には法人200万円、個人事業主100万円が支給されます。

給付額のバランスが悪すぎる

一番大きな問題は金額のバランスでしょう。

おそらくこの計算方法では多くの企業が上限の対象となっていると思われます。

しかし、この効果が企業によって大きく異なってしまう仕組みなのです。

昨年の売上1億2000万円の個人

2019年の売上1億2千万円(月1000万円)の個人事業主がいたとしましょう。(このレベルの個人事業主はざらにいます)

2020年3月に新型コロナウィルスの関係で売上半減(月500万円)になった場合は持続化給付金は100万円(上限額)となります。

昨年の売上120万円の個人

次に2019年の売上120万円(月10万円)の副業(事業所得で申告)でやっている白色申告の個人事業主がいたとしましょう。

白色申告の場合は月平均で月間事業収入を算出しますので120万÷12で月に10万円となります。

3月の売上が0であった場合の持続化給付金は100万円(上限額)となります。

売上1億2000万円の人と売上120万円の人で給付額が同じになる

なんと売上1億2千万円の方と売上120万円でもらえる金額が同じとなってしまうんです。

おそらく売上1億2千万円の方は売上が1000万円から500万円に落ちていますので持続化給付金で100万円もらったとしても多少の助けになる程度ですが、売上120万円の方は前年の年間売上の83%近くのお金がそのままもらえることになりますのでとてもありがたい話なのです。

本来ならば本当に助けなければ行けないのは売上1億2千万円の方のはずなのですが・・・実際は副業などで小さくやっている方をかなり優遇するルールとなってしまっているのです。

さらに雑所得や給与所得の人が対象となりますのでよりその部分がおおきくなりそうです。

また、売上1億2千万円の方は利益にもよりますが、おそらく多くの税金を納めていますが、売上120万円の方はそれほど納めていないでしょう。

所得税、消費税、個人事業税、住民税まで考えたらかなりの差のはずです。

それなのに給付される金額が同じというかなりバランスが悪い給付額になってしまっているんですよね。

家賃支援給付金の方は実際に払っている家賃に給付額が比例しますが、上限がありますのでやはりバランスが悪いです。

売上で給付額を算定するのがそもそもおかしい

また、今回の持続化給付金は売上で算定されるのも問題です。

同じ100万円、200万円をもらっても会社の利益の体質(固定費や変動費のバランス)によって効果は大きく異なってしまうのです。

例えば現状売上、利益が同じ企業でも利益の体質によってこれだけ差がつくんですよ。

(持続化給付金の計算上法人と仮定)

なお、変動費とは材料費など売上に応じて変動する経費のことで、固定費は人件費や家賃など売上など関わらず変わらず掛かってくる経費のことです。

変動費率30%の会社

まずは平常時の月の売上が1000万円で変動費300万円、固定費600万円、利益100万円の事業です。

この会社の売上が半減すれば売上500万円、変動費150万円、固定費600万円で損失が250万円となります。

この場合、持続化給付金は200万円もらえますので実質的なマイナスは50万となります。

変動費率60%の事業

次に平常時の月の売上が1000万円で変動費600万円、固定費300万円、利益100万円の事業の場合です

この会社の売上が半減すれば売上500万円、変動費300万円、固定費300万円でマイナス100万円です。

この場合も持続化給付金は200万円もらえますので実質的にプラス100万円となります。

変動費率80%の会社

最後は平常時の月の売上が1000万円で変動費800万円、固定費100万円、利益100万円の会社があったとしましょう。

この会社の売上が半減すれば売上500万円、変動費400万円、固定費100万円で利益は0円です。

この場合も持続化給付金は200万円もらえますので実質的にプラス200万円となります。

このように売上で算定される持続化給付金はその企業の利益体質を一切考えていませんので企業によって給付額のバランスがなんとも悪くなっているんですよ。

特に固定費が少ない企業にとってはとても美味しい給付金といえるのです。

対象者の選別方法が・・・

前述の売上で算定している話に絡んでもう一つ問題があります。

対象者の線引です。

持続化給付金ならば売上が前年比50%減という対象となっています。

そのため、ギリギリのラインの方は50%減になるように調整をしているという話もあります。

また、後述する審査の問題や不正の問題に絡んで入金のタイミングを調整したりなどをして対象となるようにしているとの話もあります。

このような自社で調整が簡単にできてしまう内容で本当に線引してよいのでしょうか?

全うに商売していて売上40%減で対象にならないけど、100万円もらえるなら仕事休もうって考える人が対象となるって制度の仕組み自体に大きな問題があります。

法人と個人事業主との差

給付額算定のもう1つの問題点は法人と個人事業主で差をつける点でしょう。

計算ルールは同じなのになぜか差をつけているのです。

おそらく法人は大規模、個人事業主は小規模というイメージから決めている話なのでしょうが、法人でも一人法人はたくさんありますし、個人でも一部業種では従業員を多く抱えて大規模でやっているところがあります。

それなのこの差を事業区分でつけるのは微妙としか言いようがありません。

実際に、多くのトンネル会社をもっている社長は持続化給付金でかなり儲けたそうですね。

法人と個人事業主で差をつけるべきではなかったと思います。

前述のように計算方法に問題があるので差をつけざる得なかったのでしょうが・・・

家賃支援給付金も持続化給付金と同様の法人と個人事業主の間で差をつけていますね。


不正が簡単にできすぎる問題

また、前述の計算方法に問題があることも大きな理由ですが、不正が多発しているそうです。

実際にツイッターなんかを見ていると不正を誘発するような内容や具体的な不正方法まで書いている人が多数います。

前述のように前年の売上がある程度あれば上限の100万円もらえるので、いままで確定申告をしたことがないような方がこのために利益0になるように申告をして持続化給付金の申請もおこなっているようなのです。

ただし、以下のように罰則も厳しいですから絶対不正はやめましょうね。

不正受給時の罰則

提出された証拠書類等について、不審な点が見られる場合、調査を行うことがあります。調査の結果によって不正受給と判断された場合、以下の措置を講じます。

①給付金の全額に、不正受給の日の翌日から返還の日まで、年3%の割合で算定した延滞金を加え、これらの合計額にその2割に相当する額を加えた額の返還請求

申請者の法人名、屋号・雅号等を公表。不正の内容が悪質な場合には刑事告発

出所:経済産業省「持続化給付金説明資料」より

不正受給時の罰則について詳しくはこちらの記事を御覧ください。

新型コロナウィルスの騒動も収束しかけていますのでしっかりこのような不正は摘発していただきたいものです。

まだ、始まっていませんのでわかりませんが、家賃支援給付金も契約書の偽造や後付けなどでなんとでも不正ができそうな仕組みです。

このあたりの対策をちゃんとしてほしいところですね・・・


審査がうまく進んでいない問題

また、持続化給付金でもっとも大きな話題となっているのが入金遅れです。

当初は2週間程度で給付と発表されていたのに実際は多くの方が2週間以内に給付されませんでした。

予想以上に応募が殺到したというのもあるでしょうが、根本は審査している方が素人だからというのが大きいでしょう。

持続化給付金の審査に必要な知識

今回の持続化給付金の仕組みを考えると審査するには最低限、確定申告書類や決算書、売上台帳が読めること、青色申告、白色申告の内容を把握していること、現金主義、実現主義、発生主義を理解している必要があります。

しかし、実際に審査しているのは持続化給付金のために急遽集められた方たちです。また、ネットで出回っている採用案内を見ると採用の条件に簿記等はなく経理処理の素人が多く含まれていると考えられるのです。

つまり、持続化給付金は素人の方がちょっと研修を受けて審査しているのです。

いくら研修を少し受けたとしても企業によって違う帳簿の内容を理解できるとは思えません・・・

せめて、審査担当の採用条件を簿記2級にするとか東京都の協力金のように公認会計士、税理士、中小企業診断士などがあらかじめ確認する仕組みを構築するとかしておけばよかったのでは・・・っと思いますね。

あまり詳しいことは書けませんが、多くの補助金はちゃんと資格等をもった専門家が審査しているんですよ。

>>持続化給付金の入金が遅れている理由。いつ入金されるのか

まだ、始まっていませんのでどのような流れになるかわかりませんが、家賃支援給付金も契約書等が絡んできますので全くの素人には審査が難しいと思います。

このあたりの対策をちゃんとしてほしいところですが・・・



課税対象になる問題

もう一つの問題は課税対象になるという点でしょう。

これは賛否が分かれるところになると思われます。

持続化給付金は下記の通り課税対象です。正確な話はでていませんが、家賃支援給付金も同じ考えで課税対象でしょう。

持続化給付金は、極めて厳しい経営環境にある事業者の事業継続を支援するため、使途に成約のない資金を給付するものです。これは税務上、益金(個人事業主の場合は、総収入金額)に算入されるものですが、損金(個人事業主の場合は必要経費)の方が多ければ、課税所得は生じず、結果的に課税対象となりません。

出所:経済産業省 持続化給付金に関するよくあるお問い合わせ

これは考え方としては妥当な気もしますが、ちょっと気になる点があります。

それは法人、個人事業主(事業所得)、雑所得、給与所得の人を同じに考えている点です。

このあたりに関しては再考が必要な気がしますけどね・・・

>>持続化給付金など新型コロナウィルス関連の給付金・助成金等の課税・非課税の取り扱いを分かりやすく解説

法人と個人事業主(事業所得)の違い

まずは法人と個人事業主(事業所得)の違いです。

大きな部分として社長や役員の給料が経費になる(役員報酬)という点があります。

対して、個人事業主は役員報酬という考え方がなく残った利益に税金が課せされます。

今回の持続化給付金が課税対象となるのは利益が出れば課税、赤字なら非課税となるから問題ないという意見も多いです。

しかし、法人で赤字の場合と個人事業主が赤字の場合では自身の給料が経費にならない個人事業主と役員報酬として計上できる法人では大きな差となるのです。

ですから課税扱いとなると個人事業主的にはかなり大きな話となるのです。

個人事業主(事業所得)と雑所得、給与所得の違い

また、雑所得、給与所得と事業所得では税務上の扱いが異なる点も気になります。

持続化給付金の申請では事業所得として認めるとおかしな不公平感が生まれる可能性があるのです。

例えば給与所得には事業所得における経費部分の代わりとして給与所得控除というかなり優遇された制度があります。

また、事業所得では下記のとおり、殆どの業種で個人事業税が課せられますが、雑所得、給与所得だとその課税はありません。

>>確定申告するなら知っておきたい「個人事業税」についてわかりやすく解説

これらの部分をどう考えるのかが難しいところになりそうです。

一緒くたに考えられないんですよ。


まとめ

今回は「持続化給付金や家賃支援給付金はスジが悪い政策である理由」と題して両制度の問題点についてみてきました。

急ごしらえで作った制度ですから仕方ない部分もあると思いますが、個人的にもう少しなんとかなっただろう・・・って思います。

まだ始まっていない家賃支援給付金も含めて再度見直ししていくことも必要だと思いますね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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