新型コロナウィルス対策の目玉の一つで売上が半減した中小企業等に最大200万、個人事業主に100万円を支給する「持続化給付金」。
申請後2週間程度と案内していたのに入金が遅れてネットが炎上などトラブルも出ていますが、すでに100万件を超える申請があるなど利用者も増えています。
そんな持続化給付金ですが、対象から外れて申請できない方も多く見えました。
それを救済するために6月中旬を目処に対象者を大幅に拡充すると梶山弘志経済産業相は5月22日の記者会見で発表。
今回はその持続化給付金の拡充内容を解説していきます。
もともとの持続化給付金の対象者
持続化給付金の給付対象となるのは以下の条件を満たした方でした。
- 新型コロナウィルス感染症の影響によりひと月の売上が前年同月比で50%以上減少している事業者
- 2019年以前から事業による事業収入(売上)を得ており、今後も事業を継続する意思がある事業者
- 法人の場合、資本の額または出資の額が10億円未満または上記の定めがない場合、常時使用する従業員の数が2,000人以下である事業者
特に引っかかってしまった方が多かったのは「2019年以前から」という部分と「事業収入(売上)を得ており」という部分です。
2020年創業者は対象外だった
まず「2019年以前から」という部分です。
この持続化給付金の趣旨が「新型コロナウィルス感染症の影響を受けている方の事業の継続を支える」というものでした。
ですから2020年に創業した方の場合は新型コロナウィルス感染症の影響なのか、そもそも創業したビジネスがうまく行っていないのかの判断が難しい(というか無理)ため対象外とされていたのでしょう。
また、2020年創業した人を対象にしてしまうと、持続化給付金欲しさに開業したことにするなどして詐称しようとする方が増えてしまう可能性も指摘されていました。
雑所得、給与所得で確定申告した人たちが対象外
また、「事業収入(売上)を得ており」という部分で引っかかってしまった人も多く見えました。
業種や働き方によっては実質は事業収入なのに税務署の指導で雑所得として確定申告した方、また、実質は業務委託なのに、先方都合で給与として報酬が支払われた方なのが対象外となっていました。
この部分についてはこのようなケースがあるとは政府側もあまり承知していなかったのでしょう。
本来、事業収入として計上すべき話ではありますので・・・
拡充される持続化給付金の対象者
それでは今回拡充される内容を見ていきましょう。
結論から言えば上記2つのパターンが対象となることになります。
2020年創業者も要件を満たせば持続化給付金の対象
まずは2020年創業者です。
こちらについては以下のとおり、条件を満たせば対象となります。
20年1~3月に創業したスタートアップ企業について、新型コロナウイルスの感染拡大後の任意のひと月の事業収入が、1~3月の平均と比べて5割以上減少したと証明できれば、最大200万円を給付する。
出所:日経新聞 2020/5/22
計算の仕方は1~3月の平均をとってその後の任意の1月が50%以上減少という条件となっています。
ただし、これ難しいのが2月、3月も業種によっては新型コロナウィルスの影響を受けていますがその部分を平均しなければ行けない点でしょうね。(救済するための制度設計は難しいと思いますが・・・)
この計算となりますので4月以降の創業者は今回の拡充でも対象外となりそうです。どこかで線引しなくていけませんから仕方ない部分でしょうけどね。
金額は法人200万円が上限、個人事業主は100万円が上限と通常の持続化給付金と同様になる模様。
対象となる例
例えばこんな感じになるのではないでしょうか。
1月売上 | 100万円 |
2月売上 | 50万円 |
3月売上 | 30万円 |
平均 | 60万円 |
4月売上 | 20万円 |
このケースの場合には1月から3月の売上平均は60万円。
4月の売上は20万円ですから50%以上下落しています。
つまり、持続化給付金の対象となります。
証明方法
まだ確定申告もしていないだろう2020年創業者の方ですから、持続化給付金の対象となる売上か否かをどう証明するのかも大きな問題となりえます。
売上台帳等だけなら申請する方が自分の意思でいかようにもなりますからね。
このあたりは第三者の署名付き書類が必要となりそうです。
政府は、毎月の収入を証明する資料を税理士など第三者の署名付きで用意するように求める考えだ。
出所:日経新聞 2020/5/22
証明してくれるのは税理士「など」となっています。「など」はどのような機関や専門家が対象となるのでしょう。
考えられるのは、弁護士、公認会計士、中小企業診断士、認定支援機関などでしょう。
普段から税理士などに掛かっている方は良いでしょうが、そうででもない方は別途報酬等が発生してきそうです。
署名をするってことは不正等が発覚した場合、その専門家も連帯責任を受ける可能性まであります。
実際、雇用調整助成金は署名した社会保険労務士が連帯責任を受けるので、一見さんの手続きは断るケースが多くなっているという問題もでています。
このあたりがあるため、なかなか署名してくれる人を探すのも大変な可能性があります。
商工会議所や商工会、市役所、よろず支援拠点などの公的機関も対象となれば無料で証明してもらえる可能性もありそうですが・・・
雑所得、給与所得で確定申告した人も条件を満たせば対象
次は雑所得、給与所得で確定申告した人たちです。
この方たちも条件を満たせば持続化給付金の対象となります。
フリーランスを含む個人事業主はこれまで、主な収入を事業所得として確定申告している場合しか申請できなかった。雑所得や給与所得で申告している場合にも、業務の委託元が発行した支払い調書などを確認できれば給付できるようにする
出所:日経新聞 2020/5/22
こちらは事業なのを証明できれば通常の申請者と同様に任意の月が50%以上減少していれば対象となります。
証明方法
こちらは証明方法として業務の委託元が発行した支払い調書などを確認するとしています。
考えられるのは以下の書類でしょう。
- 契約書
- 支払明細
- 支払調書
- 源泉徴収票
これ結構難しい要件なんですよ。
源泉徴収票なんかは通常の給与とどう判別するかの問題もあります。
支払調書は本人に渡すかは任意の書類です。ですからくれないところも多いんですよ。(特に中小企業)
また、契約書を結んでいないケースも多いでしょうし、支払明細なんて出していないところが大半です。
請求書など自分の作成する書類だと簡単に不正申請ができるでしょうから難しいでしょうしね。。。
ですのでそれら書類がない場合はこちらも第三者の証明が必要になるのかもしれません。
※追記
具体的な必要書類が発表されました。下記記事で解説しております。
懸念材料
また、懸念材料があります。
雑所得、給与所得と事業所得では税務上の扱いが異なる点です。
持続化給付金の申請では事業所得として認めるとおかしな不公平感が生まれる可能性があるのです。
例えば給与所得には事業所得における経費部分の代わりとして給与所得控除というかなり優遇された制度があります。
また、事業所得では下記のとおり、殆どの業種で個人事業税が課せられますが、雑所得、給与所得だとその課税はありません。
これらの部分をどう考えるのかが難しいところになりそうです。
持続化給付金の拡充時期
それでは持続化給付金の拡充はいつからなのでしょう?
こちらは2020年度第二次補正予算に計上される制度です。そのため、条件は2020年度第二次補正予算の成立となります。
今の所、2020年度第二次補正予算は5月下旬に成立。
システム改定等を行い6月中旬くらいから受付開始。
6月下旬から7月上旬に支給という流れになりそうです。
ただし、現状の持続化給付金では早くに申請した人が必ずしも早く入金されるわけではありません。
特に初日は混雑してサーバーが不安定になることも予想されますので避けるのが無難かもしれません。
それまでに書類等をしっかり準備しておきましょうね、
なお、持続化給付金は簡単な申請ではありますが、いくつか申請時に引っかりやすいポイントなどもあります。詳しくは下記記事を御覧ください。
まとめ
今回は「持続化給付金の対象者が大幅拡充。雑所得、給与所得、2020年創業者が対象に」と題して持続化給付金の拡充についてみてきました。
制度から溢れてしまった人を救済することはとてもよいことですね。
ただし、現状出てる案だとかなり不正が横行しそうな予感しかしません。
このあたりの対策をがんばってほしいところもあります。
今回ご紹介した持続化給付金以外にも新型コロナウィルス対策として様々な制度が始まっています。
これらをうまく使ってこの難局を乗り切りたいですね。
●売上が半減した中小企業等に最大200万、個人事業主に100万円を支給する「持続化給付金」
●休業している方を失業とみなして失業保険を支払う「みなし失業」
●家賃の3分の2を半年分補助「特別家賃支援給付金」
●原則3ヶ月、最大9ヶ月、 家賃相当額を自治体から家主さんに支給する「住宅確保給付金」
●住民税の全部または一部の納付を免除してくれる制度です。「住民税の減免制度」
●国民健康保険を安くすることが出来る「国民健康保険の減免制度」
●国民年金を免除することが出来る「国民年金保険料免除制度」
●税金や社会保険の支払いを遅くすることが出来る「税金等の納税猶予制度」
●学生に最大20万円を給付する「学生支援緊急給付金」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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