2019 年、金融庁の市場ワーキング・グループがまとめた報告書が 「老後資金 2000 万円問題」 を提起し、大きな反響を呼びました。報告書では高齢夫婦の家計赤字(月約 5 万円)が 30 年続くと仮定し、2000 万円超の資金不足を指摘しています。
しかし 2025 年現在、消費者物価指数(CPI)は前年同月比で +3.6 %(2025 年 3 月)と、高止まりが続いています
このインフレが複利で 20 年続けば、必要資金は 約 4000 万円 に膨らむ計算です。
ポイント
・2000 万円は「2019 年時点の物価」を前提にした数字
・CPI3.6 % 前後のインフレが続けば、将来の生活費は 2 倍近くに上振れする可能性
本記事では「老後資金 4000 万円問題」を正しく理解したうえで、NISA と iDeCo を軸にインフレに負けない資産を準備する方法を具体的に解説します。
老後資金 2000 万円問題をおさらい
まずは、今回の話の前提となる老後資金2000万円問題の概要から確認しておきましょう。
老後資金2000万円問題の概要
簡単に言えば今生きている高齢者が90歳まで生きる割合は46.4%、95歳まで生きる割合は25.3%
その人が年金などで得られる社会保険給付が209,198円。
必要な支出が263,718円で毎月5万円程度赤字となるというところからきています。

出所:金融庁の金融審議会「高齢化社会における資産形成・管理報告書(案)」より
収入(公的年金): 月 209,198 円
支出: 月 263,718 円
毎月赤字: 約 5.5 万円
30 年(65〜95 歳)累計: 約 2000 万円の不足
この試算は「平均的な夫婦世帯」を想定しており、住居費や医療費、介護費の上振れを考慮していません。
実際には +α が必要になる点に注意しましょう。
報告書が伝えた本当のメッセージ
報告書は「2000 万円を貯めろ」ではなく、長寿化・インフレを前提に資産運用を早期に始めるべきだ という警鐘でした。
にもかかわらず「2000 万円」という数字だけが独り歩きし、議論が矮小化された経緯があります。
ちなみに元のレポートでは対策なども記載されています。
興味がある方はこちらの記事を御覧ください。

老後資金4000万円にあがった理由
それでは老後資金が4000万円にあがる理由を見ておきましょう。
簡単に言えばインフレです。
基準年 | 年間生活費(現在価値) | インフレ後(20 年後) |
---|---|---|
2025 年 | 300 万円 | 約 600 万円 |
2025 年 | 400 万円 | 約 800 万円 |
計算式:将来価値=現在価値 × (1+インフレ率)ᵗ インフレ率 3.6 %、期間 20 年で約 2.04 倍
昨今のインフレ状況をみればあながちないとはいえない水準ですね。
複利って活用するとすごいですが、この手の話になるとかなり脅威なんですよ。
ちなみに私はこれからはさらに寿命が長くなるから4000万円でもとても足りないと考えていたりします。
平均寿命は毎年 0.1〜0.2 歳ペースで延びています。90 歳時点の生存確率(男女平均)は 約 46 %、95 歳でも 25 % を超えます。
「ゆとりある生活費 × 35 年」まで視野に入れると、4000 万円でも安心とは言い切れません。

老後資金4000万円問題への対策
インフレで老後に必要な資金が増える。
じゃあどうすればよいのかを考えて見ましょう。
インフレ時代の資産形成 5 つのステップ
今から老後資金に対応するには以下のステップを踏むことをおすすめします。
ステップ | やること | 目的 |
---|---|---|
1 | 生活費 3〜6 か月分を現金で確保 | 短期の流動性確保 |
2 | つみたて投資で 物価連動型の資産を増やす | インフレヘッジ |
3 | NISA/iDeCo をフル活用 | 税制優遇で実質利回りアップ |
4 | 米国株・世界株など 外貨建て 資産を組み入れる | 円安リスクヘッジ |
5 | 年 1 回ポートフォリオをリバランス | リスク管理・複利最大化 |
ワンポイント
預貯金比率が 50 % を超えると、CPI 3 % 時代は 実質資産が年 1.5〜2 % 目減り します。
早めに「投資するお金」と「使うお金」を分けることがカギです。
インフレで増える資産を持とう
詳しく見ていきましょう。
まず、インフレ対策で最も重要なことは投資です。
貯金(預金)だけではインフレにはなかなか追いつかないんですよ。
実質的な資産は目減りをしていくことになります。

NISAとiDeCoを優先してやる
幸い、今の日本は少額投資にかなり有利な制度としてNISAとiDeCo(個人型確定拠出年金)が用意されています。
この2つをやるだけでほとんど老後資金4000万円問題の解決が可能だと考えています。
簡単に解説しておきましょう。
個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)とは
個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)は簡単に言えば自分の老後生活のために老後資金を自分で作るための制度です。
具体的にはこんな感じの流れになっています。
60歳までの間に自分で決めた金額を積み立てをする
↓
その積み立てたお金で投資信託や定期預金、保険などの商品を選択して運用
↓
60歳以降にその運用した資産を受け取ることができる
国民年金や厚生年金と合わせた年金制度の上乗せ部分を自分で運用できる制度として考えると良いでしょう。
最大のメリットは掛けた金額が全額所得控除の対象となり、掛ければ掛けるだけ所得税と住民税の節税効果があるところです。(種別により掛けられる上限があり)
また、運用で利益がでてもその部分について非課税となります。
つまり、税金面でかなり優遇された制度ってことですね。
個人型確定拠出年金(iDeCo)について詳しくは下記の記事を御覧ください。

NISAとは
NISAは簡単に言えば少額からの投資を支援するための非課税制度です。
もともとあった一般NISAとつみたてNISAが2024年からは下記のように合体してより使いやすくなりました。

出典:金融庁 新しいNISA より
通常、投資信託や株を売買して利益がでれば税金が20.315%(所得税15.315%+住民税5% 所得税に復興特別税を含む)発生します。
例えば10万円儲けても20,315円税金で持っていかれる計算となります。
それがNISA内での売買の場合で利益がでても税金が掛からないのです。
これはかなり大きいですよね。
個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)に似た部分もありますが、大きく違うのは途中で解約が可能という点でしょう。
また、もう一つ大きな特徴として積立投資枠は投資できる対象となる商品を金融庁が選別してくれている点があります。
金融機関等は顧客の利益よりも自社の利益を優先する傾向があり、地雷と呼ばれる悪徳商品を売りつける事案が多数発生していました。
それを防ぐ意味もあり、金融庁が厳しい条件の元に長期、積立、分散投資に適した商品を選んでくれているのです。
かなり初心者にもやさしい投資制度なんですね。

上限が老後資金2000万円問題くらいの水準
なお、iDeCoとNISAは上限が決まっています。
iDeCoは月額上限がその人の属性によって異なりますが、月額12,000〜68,000円。
NISAはつみたて投資枠120万、成長投資枠240万円トータルで年間360万円。
総枠は1,800万円です。(成長投資枠は1,200万円まで)
ですから上限までやるともともとの年金だけでは老後資金2000万円足りない問題くらいのお金になるんですよ。
もしかしたら政府はこの数字を意識して上限を設定しているのかと思うくらいです。
それを複利で運用していけば今回の老後資金4000万円問題の水準になりますね。
優先順位
優先順位としては以下の順番が良いでしょう。
まとめ
今回は「インフレにより老後に必要資金は2000万円から4000万円に増えてしまう件」と題して老後資金4000万円問題について考えてみました。
まとめると
CPI 3〜4 % が常態化 すると、老後資金 2000 万円では心許ない
インフレ複利で 20 年後の必要額は 4000 万円超 になる可能性
NISA と iDeCo を上限まで活用すれば、課税口座より 実質利回り+20 %
投資元本 1800 万円+運用益で 4000 万円到達も視野
まずは 毎月のキャッシュフローを可視化 し、生活防衛資金、長期投資資金、近未来(5 年以内)支出を仕分けるところから始めよう。
老後資金が足りないと感じている方は最低限イデコ、NISAをやるようにしましょうね。
個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)に加入するならこの3社から選ぼう
個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)を始めるならまずは金融機関を決める必要があります。
しかし、たくさんあってどこにしたらよいのかわからない方も多いでしょう。
簡単に決めてしまう方もおおいかもしれませんが、個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)の場合、金融機関ごとの違いがとても大きいですから慎重に選びたいところです。
私が今もし、新たに加入するならSBI証券、マネックス証券、松井証券の3択の中から決めます。
(※私が加入しているのはSBI証券です)
この3つの金融機関は運営管理機関手数料が無料です。※国民年金基金連合会の手数料等は各社共通で掛かります。
また、運用商品もインデックスファンドを中心に信託報酬が低い投資信託が充実しているんですよ。
順番に見ていきましょう。
SBI証券
まずイチオシはSBI証券「個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)」です。
SBI証券は信託報酬も最安値水準のeMAXIS Slimシリーズを始めとしたインデックスファンドから雪だるま全世界株式、ひふみ年金、NYダウ、グローバル中小株、ジェイリバイブといった特徴ある投資信託をたくさん揃えているところが最大の魅力です。
選択の楽しさがありますよね。
また、確定拠出年金を会社員に解禁される前から長年手掛けている老舗である安心感も大きいですね。
マネックス証券
次点はマネックス証券 iDeCoです。
こちらも後発ながらかなりiDeCoに力をいれていますね。
iDeCo初でiFreeNEXT NASDAQ100 インデックスを取扱い開始したのに興味をひかれる人も多いでしょう。
松井証券
松井証券のiDeCoは35本制限まで余裕があるというのは後発の強みですね。
その35本制限までの余裕を生かして他社で人気となっている対象投資信託を一気に採用して話題になっていますね。
こちらも有力候補の一つですね。
さらに2024年8月1日(木)より投資信託の保有でポイントが貯まるようになり、現在の条件なら本命といっても良いでしょう。
総合して考えるとこの3つの金融機関に加入すれば大きな後悔はないかなと思います。
他の運営管理機関もぜひがんばってほしいところですが・・・
最後まで読んでいただきありがとうございました。