ソフトバンクグループ株式会社が、個人投資家向け社債の募集を開始します。
今回発行されるのは「ソフトバンクグループ株式会社第70回無担保社債」。愛称は、おなじみの「福岡ソフトバンクホークスボンド」です。
驚くのはその規模と利率でしょう。
発行額は1兆円、利率の仮条件は年4.30%~4.90%(税引前)。
国内企業の個人向け社債として過去最大規模と報じられています。
預金金利が上がってきたとはいえ、円建てで年4%台後半はかなり目を引く水準です。
しかし、高い金利はソフトバンクグループからの「ご褒美」ではありません。
信用リスクと7年間の資金拘束に対する「値札」です。
今回は、ソフトバンクグループ第70回無担保社債の条件、税引後にもらえる利息、個人向け国債や定期預金との違い、そして私ならどの水準で購入を検討するのかまで見ていきます。
※本記事は2026年8月24日に公表された情報をもとに作成しています。
最終的な利率は2026年9月4日に決定する予定です。
社債とは
まずは社債とはなにかという点から説明しておきましょう。
社債とは会社が資金調達を目的として、投資家からの金銭の払込みと引き替えに発行する債券のことをいいます。
簡単にいえば企業の「借金」です。
個人投資家からの借り入れと思えばよいでしょう。
社債は普通社債、転換社債、ハイブリッド社債などいろいろな発行方法があります。
その内容によってルールも違いますが、一般的には高めの利率が定められており、その利息をもらいつつ、満期や繰上償還時に額面で償還(買い取り)されます。
つまり、期日になれば元本が返ってくる上に利息がもらえるのでその分がプラスというわけです。
ただし、デメリットがあります。
企業が破綻した場合や経営が悪化した場合です。
その場合には、利息が滞ったり、元本が返ってこない可能性もあります。
また、社債は途中で換金したいと思っても株ほど売買が容易ではありません。
そのリスク分、利回りが高く設定されているんですね。
ソフトバンクグループ株式会社第70回無担保社債(福岡ソフトバンクホークスボンド)の概要
それでは今回発行されるソフトバンクグループの社債の概要を見ておきましょう。
| 商品名 | ソフトバンクグループ株式会社第70回無担保社債(愛称:福岡ソフトバンクホークスボンド) |
|---|---|
| 発行体 | ソフトバンクグループ株式会社 |
| 取得予定格付 | A(JCR:日本格付研究所) |
| 期間 | 7年 |
| 利率(仮条件) | 年4.30%~年4.90%(税引前) ※2026年9月4日決定予定 |
| お申し込み単位(額面) | 100万円以上、100万円単位 |
| 発行価格・償還価格 | 額面金額の100% |
| お申し込み期間(予定) | 2026年9月7日(月)~9月16日(水) |
| 払込期日(発行日) | 2026年9月17日 |
| 満期償還日 | 2033年9月16日 |
| 利払日 | 毎年3月17日および9月17日(年2回) |
| 発行額 | 1兆円 |
| 担保・保証 | なし |
| 財務上の特約 | 担保提供制限条項/担付切換条項/純資産額維持条項 |
| 社債管理者 | 株式会社あおぞら銀行 |
(出典:ソフトバンクグループ「第70回無担保普通社債の発行に関するお知らせ」2026年8月24日)
購入単位は100万円ですから、気軽にお試しで1万円だけ買うような商品ではありません。
また、7年間保有すれば額面100万円で償還されますが、これはソフトバンクグループが予定どおり元利金を支払えることが前提です。
銀行預金のような元本保証や預金保険制度はありません。
発行総額1兆円というインパクト
まず目を引くのが発行総額1兆円という規模です。
第63回が5,500億円、直近の第67回が5,000億円でしたから、いきなり2倍規模になったわけですね。
個人向けの普通社債で1兆円というのは、そうそうお目にかかれる数字ではありません。
なぜこれだけ集める必要があるのか。答えはシンプルで、AI投資にとんでもない額のお金が要るからです。
ソフトバンクグループはOpenAIへの追加出資を進めており、累計出資額は646億ドル、持分比率は約13%になる見込みとされています。ほかにもABBのロボティクス事業やDigitalBridgeの買収も控えています。
つまりこの1兆円は、「AI覇権を取りにいくための軍資金」の一部なんですね。
なお、発行登録目論見書では、調達資金を社債償還、借入金返済、投融資、運転資金に充てる予定としています。
「借金を返すために新しい借金をするのは危ないのでは?」と感じる方もいるでしょう。
企業が満期の異なる社債を継続的に借り換えること自体は珍しくありません。
問題は、新たな投資によって資産価値と収益力を伸ばせるのか、それとも負債だけが膨らむのかです。
そう考えると、この社債を買うということは、単に企業にお金を貸すというより、孫正義さんのAI戦略に7年間付き合うという意味合いが強くなってきます。
今回はハイブリッド社債ではなく普通社債
ソフトバンクグループは、2026年4月と6月にハイブリッド社債も発行しています。

しかし、今回の第70回債はハイブリッド社債ではなく、一般的な無担保普通社債です。
ハイブリッド社債にある劣後特約や利払いを繰り延べる条項はありません。
そのため、同じソフトバンクグループの社債でも、ハイブリッド社債より債権の順位や仕組みはわかりやすくなっています。
それでも「無担保・無保証」です。ソフトバンクグループの信用力そのものを見て購入する商品である点は変わりません。
携帯電話会社のソフトバンクが発行する社債ではない
ここは勘違いしやすいところです。
今回の発行体は、携帯電話事業を営むソフトバンク株式会社ではなく、親会社で投資持株会社のソフトバンクグループ株式会社です。
2026年8月6日時点の長期格付けは、ソフトバンクグループがJCR「A」、S&P「BB+」。
一方、通信事業会社のソフトバンク株式会社はJCR「AA-」です。
「ソフトバンクのスマホ事業は安定しているから大丈夫」とだけ考えるのは少し違います。
今回貸す相手は、ArmやOpenAIなどへの大型投資を進めるソフトバンクグループです。
ソフトバンクグループの財務は大丈夫?
ソフトバンクグループの2026年6月末時点の主な財務指標は以下のとおりです。
| 指標 | 2026年6月末 |
| 保有株式価値 | 83.11兆円 |
| 純負債 | 10.81兆円 |
| NAV | 72.30兆円 |
| LTV | 13.0% |
| 手元流動性 | 2.3兆円 |
同社は通常時のLTVを25%未満に抑え、少なくとも今後2年分の社債償還資金を確保するという財務方針を掲げています。
LTVは2026年3月末の17.0%から6月末には13.0%へ低下しており、この数字だけを見れば十分な余裕があります。
安心材料:売却可能な資産を多く持っている
ソフトバンクグループはArm、ソフトバンク株式会社、国内外の上場株式など、多くの資産を保有しています。
投資会社ですから、必要に応じて保有資産の売却や資産担保融資によって資金を調達できるのは大きな強みです。
JCRの予定格付も「A」で、今回の社債は普通社債です。
直ちに返済が危ういと見るような状況ではありません。
注意材料:資産価値がArmとAI関連投資に偏っている
一方、83.11兆円の保有株式価値のうち、Arm関連は49.91兆円を占めます。
実に約6割です。
Armの株価が大きく下落すれば、NAVやLTVも急速に悪化する可能性があります。
さらに、OpenAIをはじめとする未上場AI企業への投資も増えています。
未上場株の評価額は市場でいつでも換金できる価格とは限りません。
JCRも長期発行体格付を「A」としながら、見通しは「ネガティブ」としています。
OpenAIを中心とする非上場AI関連銘柄の比率上昇によってNAVの変動リスクが高まっている点を注視しています。
長期格付けJCRはA、S&PはBB+という評価差
もう一つ知っておきたいのが、格付会社による評価差です。
ソフトバンクグループが公表する2026年8月6日時点の長期格付けは、JCRが「A」、S&Pが「BB+」です。
JCRのAは投資適格ですが、S&PのBB+は一般に投機的格付けに分類される水準です。
なお、第70回債が取得を予定しているのはJCRのAであり、S&Pがこの社債自体にBB+を付けたという意味ではありません。
格付けは絶対ではありませんが、国内と海外の格付会社で見方が大きく異なる事実は無視しない方がよいでしょう。
日本の格付会社であるJCRの「A」は「債務履行の確実性は高い」という位置づけですから、いきなり危ない水準というわけではありません。
ただし、こういった格付はあまり当てにならない部分もあります。
例えばリーマンショックのきっかけとなり大きな問題になったサブプライムローンとかAAAがついてたりしましたしね……
社債の格付はA(JCR)
なお、ソフトバンクの社債は今回の70回も含めてしばらくJCRのAが格付となっています。
しかし、格付が同じ「A」なのに利率だけがどんどん上がっているという点は、少し引っかかります。
| 発行回 | 期間 | 利率(税引前) | 発行時期 |
|---|---|---|---|
| 第63回 無担保社債 | 7年 | 2.65%~3.25%(仮条件) | 2024年6月 |
| 第67回 無担保社債 | 7年 | 3.98% | 2025年12月 |
| 第8回 ハイブリッド社債 | 35年 | 4.97% | 2026年4月 |
| 第9回 ハイブリッド社債 | 35年 | 5.12% | 2026年6月 |
| 第70回 無担保社債 | 7年 | 4.30%~4.90%(仮条件) | 2026年9月 |
注目してほしいのは、普通社債である第70回の上限4.90%が、劣後特約付きのハイブリッド社債(第9回・5.12%)にかなり近づいていることです。
ハイブリッド社債は利払繰延条項や劣後特約が付いた、普通社債よりリスクの高い商品です。そのハイブリッド債と2割程度しか利率が変わらない。
もちろん日銀の利上げ(2026年6月に政策金利1.00%へ)で世の中の金利全体が上がっている影響が大きいのですが、それだけでは説明しきれない部分もあります。
市場がソフトバンクグループから資金を集めるコストを、着実に高く見積もり始めているとも読めるわけですね。
それでも押さえておきたい5つのリスク
今回のソフトバンクの社債はリスクもそれなりにあります。
その点も見ていきましょう。
信用リスク:数字は良いが依存度は高い
2026年3月末時点のLTV(純有利子負債÷保有株式価値)は17%程度で、同社の運用目標「平時25%未満」を下回っています。手元流動性も3.5兆円と厚い。純利益は5兆円超で日本企業として過去最高でした。
数字だけ見れば「盤石」に見えます。
ただし、この保有株式価値の中身はArmやOpenAIといったAI関連の評価額に大きく依存しています。
AI相場が調整すれば保有株式価値は下がり、LTVは一気に悪化します。分母が株価で動く指標は、平時は良く見えて有事に急変するという性質があることは押さえておきたいところです。
孫さん次第という属人リスク
ソフトバンクは日本でも有数の規模の企業ですが、有利子負債の金額も日本有数の企業です。
かなりレバレッジを効かせたアグレッシブな経営をしていますのでリスクは高めなのです。
さらに7年という期間を考えるとソフトバンクグループの代表の孫正義さんの後任がどうかという点も気になります。
孫さんは1957年生まれですから、この社債が償還される2033年には76歳になっている計算です。
個人的には孫正義さんが陣頭指揮を執っているうちは大丈夫だと思いますが、それ以降はなんともわからないのがソフトバンクですね。
投資判断が孫さん個人の力量に依存しているという指摘は社内からも出ているようで、後継者問題は格付会社が見通しを慎重にしている理由の一つでもあります。
7年間、100万円が動かせない
購入単位が100万円というのも地味に効いてきます。
途中で売却することは一応できますが、債券は株式のように「板」があるわけではなく、証券会社の提示する時価での売却になります。
しかもその価格には見えない手数料(スプレッド)が含まれています。額面100万円で買ったものが、途中売却では95万円にしかならないということも普通に起こります。
「7年間、この100万円単位で投資したものは無いものとして生活できるか」
ここは購入前に必ず確認してください。
教育費、車の買い替え、住宅購入の頭金などが7年以内に控えているなら、その分は外しておくべきです。
7年間の金利上昇リスク
日銀は2026年6月に政策金利を1.00%へ引き上げました。今後さらに利上げが進む可能性もあります。
そうなると、この社債より条件の良い商品が後から出てくるわけです。
固定金利で7年間縛られるということは、その間の金利上昇の恩恵を受けられないということでもあります。
そう予想するなら「今回は見送って、次回(第71回)を待つ」という判断も十分にありえますね。
集中リスクに注意
最後の点は意外と見落とされがちです。
SBG株を持っている人がSBG社債を買うと、ソフトバンクグループという1社に資産が集中することになります。
株と債券で商品性は違いますが、破綻したら両方まとめてダメージを受けるという意味では同じリスクなんですね。
キャンペーンも
この社債にはプレゼントも付いています。
本社債をお申込期間中にご購入いただいた方全員に「お父さん応援隊長 サイドポケットトートバッグ」がもれなくプレゼントされます。
発送は2027年2月下旬頃を予定。ご購入の金額にかかわらず、おひとり様1点限りとのことです。
100万円出してトートバッグ1個……と考えるとなんともいえませんが、まあおまけですからね。
どこで買えるの?
ソフトバンクグループ株式会社第70回無担保社債は以下の証券会社で買うことができます(引受会社)。
- 野村證券
- 大和証券
- SMBC日興証券
- みずほ証券
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
- SBI証券
- 岡三証券
- 岩井コスモ証券
- 東海東京証券
- 水戸証券
- 西日本シティTT証券
このほか、楽天証券も取扱いを公表しています。
債券はどこで買っても基本は同じですが、一部キャンペーンが実施されるケースがあり、その部分が差となりますね。
例えばSBI証券は2026年9月7日10時から先着順で販売する予定です。
対象債券をインターネットで購入し、エントリーなどの条件を満たした方の中から、抽選で200名に現金5,000円が当たるキャンペーンも実施しています。
SBI証券のこの手のキャンペーンは比較的当たりやすいんですよ。
私も何度か当選したことがあります。
なお、今回は1兆円という大型発行とはいえ先着順です。
人気化すれば早期に完売する可能性もありますので、購入を検討している方は口座開設と入金を先に済ませておきましょう。
買うべき人・見送るべき人
私なりに整理するとこうなります。
検討してもよい人
- 7年間まったく使う予定のない余裕資金が100万円以上ある
- 資産全体のなかで社債の比率が高くなりすぎない
- ソフトバンクグループのAI戦略に一定の納得感がある
- すでに他社の社債や国債も持っていて、分散ができている
見送ったほうがよい人
- 生活防衛資金や近く使う予定のあるお金しかない
- 「元本保証だと思っていた」という認識の方(社債は元本保証ではありません)
- 資産のほとんどをこの1本に集中させてしまう方
- ソフトバンクグループの株や関連ファンドをすでに大量に持っている方(同じリスクの二重取りになります)
よくある質問
- ソフトバンクグループ第70回無担保社債の最終利率はいつ決まりますか?
-
2026年9月4日に決定する予定です。現時点の年4.30%~4.90%は仮条件であり、購入前に最終利率を確認してください。
- 元本保証はありますか?
-
ありません。満期まで保有した場合は額面で償還される条件ですが、発行体が予定どおり支払えることが前提です。
銀行預金のような預金保険制度の対象でもありません。
- 満期前に売却できますか?
-
証券会社を通じて途中売却できる場合があります。
ただし時価での売却となるため、市場金利の上昇や格下げなどによって元本割れする可能性があります。
- ハイブリッド社債との違いは何ですか?
-
第70回債は通常の無担保普通社債です。ハイブリッド社債のような劣後特約や利払繰延条項はありません。
ただし無担保・無保証であり、信用リスクはあります。
まとめ
今回は「年4.9%も?ソフトバンクグループ第70回無担保社債(福岡ソフトバンクホークスボンド)は買い?」と題して、ソフトバンクグループの社債について見てきました。
- 発行総額1兆円、期間7年、仮条件は年4.30%~4.90%(税引前)
- 格付はA(JCR)、正式な利率は2026年9月4日に決定予定
- 申込期間は2026年9月7日~9月16日、発行日は9月17日
- 国債の2倍以上の利率だが、その差は「信用リスクの対価」
- ハイブリッド社債の利率に接近している点は要注意
- 7年間資金が拘束される。途中売却は時価+見えないスプレッド
年4.30%~4.90%(税引前)という比較的高めの利率が付きますので、「7年間使わないお金の置き場所」として検討する価値はあると思います。
ただし、くれぐれも「元本保証の定期預金の親戚」のような感覚では買わないようにしてください。これはあくまでソフトバンクグループという1社の信用力に、7年間ベットする商品です。
正式な利率は9月4日に決定されます。仮条件の下限(4.30%)に近い水準で決まるのか、上限(4.90%)に張り付くのか。ここも判断材料になりますので、確定を待ってから決めるのもよいでしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

