国内で初めて、日本円と1:1で連動する「円建てステーブルコイン」の発行主体が公的に登録されました。
登録主体はJPYC株式会社。
フィンテック企業のJPYC(東京・千代田)が、円建てステーブルコイン「JPYC」の発行を早ければ9月にも始める。発行に必要な資金移動業者登録を済ませており、日本で第1号の事例となる見通しだ。
ステーブルコインとは、円やドルなど法定通貨と価値が連動するように設計されたデジタル通貨のことだ。JPYCのような発行者はステーブルコインを発行する際、その価値が保たれるように裏付け資産として預金や国債などを保有する。
出典:日経ビジネス
この「第一号」はニュース性が強いだけでなく、投資家にとっても重要な意味を持ちます。
なぜなら、日本のステーブルコインは暗号資産(仮想通貨)とは別建ての厳格な制度のもと、裏付け資産や償還のルールが定められているからです。
制度の整備は2023年に施行された改正資金決済法が起点で、発行主体・仲介者の規律が明確化。
本記事では、「ステーブルコイン 日本」の制度と実態、「JPYCとは」何か、「JPYC どこで買える」のか、そして投資の観点からの将来性・リスク・関連銘柄までわかりやすく整理していきます。
JPYCとは:日本初の円建てステーブルコイン発行主体
JPYC(ジェイピーワイシー)は、2019年創業のスタートアップ。
従来は「前払式支払手段」ベースのJPYCプリペイドを発行していたが、今回資金移動業者に登録されたことで、電子決済手段=ステーブルコイン型のJPYCを日本で初めて発行可能になりました。
発行はイーサリアム/アバランチ/ポリゴンから開始予定で、裏付け資産は円の預貯金や国債で保全され、1JPYC=1円での償還が前提とされるとのこと。
開始は秋予定
同社は今秋、公式発行・償還窓口「JPYC EX」を立ち上げ、数週間以内の開始を見込むとしています。
初期は公式経由での発行・償還(購入・払い戻し)が中心で、その他の取引所での取り扱いは順次の案内となる見通しとのこと。
重要ポイント
・法令上は「暗号資産」ではなく電子決済手段
・1=1円で償還される仕組み(円や国債での裏付け)
・まずは公式窓口での発行・償還からスタート見込み
「ステーブルコイン」の制度基礎(投資家向けに超要点)
次にステーブルコインの制度についての基礎的な話をみておきましょう。
定義と枠組み
ステーブルコインは円やドルなど法定通貨等に価値を連動させたデジタル通貨のこと。
改正資金決済法でステーブルコインは暗号資産ではなく「電子決済手段」と定義されています。
発行主体(銀行・信託会社等・資金移動業者)と仲介者のライセンス体系、裏付け資産の保全、償還ルール、AML/CFTが規定されています。
最大のポイントは発行主体(資金移動業者など)はステーブルコイン発行残高と同額以上の通貨や国債などを保全することが義務付けられていることです。
それにより価格変動を抑える形になっています。
発行主体の区分
今回のJPYCは資金移動業型で、円建て残高の保全が義務付け。
つまり、なにかあっても大丈夫なような設計にはなっています。
それが価格の保障になっている感じですね。
2025年の法改正では、信託型(特定信託受益権)の運用柔軟性なども整理が進んでいます。
実務イメージ
投資家サイドは「1=1で償還」の前提・保全スキーム・発行体の信用・運用方針(国債等)を確認し、発行・償還・送金の手数料、上限額、KYCの有無など、運用コストと実務制約を見極める必要があるでしょう。
JPYCはどこで買えるのか?
現時点の発表ベースでは、公式の発行・償還サービス「JPYC EX」が入口になるとのこと。
- 手順イメージ:①KYC(本人確認)→②銀行振込等で円入金→③ブロックチェーン上でJPYCが発行(自分のウォレットへ)→④必要に応じて償還申請で円へ戻す。
- 対応チェーン:Ethereum/Avalanche/Polygonから開始予定。
- 留意点:当面は公式窓口中心。国内取引所での売買は今後アナウンスされる(未定/順次)。手数料や1日上限等の運用条件は、開始時の正式仕様を確認。
ステーブルコインとビットコインの違い
暗号資産といえばビットコインを思い浮かべる方が多いと思いますが、ステーブルコインとビットコインは何が違うのでしょう?
主な違いは以下の部分です。
観点 | ステーブルコイン(JPYC等) | ビットコイン |
---|---|---|
価格 | 法定通貨に連動(1≒1)を目標 | 市場需給で大きく変動 |
法的位置付け | 日本では「電子決済手段」等(資金決済法) | 日本では「暗号資産」(金商法等の枠外) |
裏付け | 円預貯金・国債等の保全資産 | 裏付け資産なし(プロトコル希少性) |
主用途 | 送金・決済・価値の保存・トレードのベース通貨 | 投機・長期価値保存(デジタルゴールド) |
主リスク | 発行体・保全・償還・法規制・スマコン | 価格変動・規制・カストディ・流動性 |
一番大きな違いは価格の変動でしょう。
「価格安定」を狙うステーブルコインは、投資リターンの源泉が値上がり益ではなく、利便性・運用金利・裁定などにある点が本質的に異なる感じですね。
つまり、ステーブルコインは本質的に投資や投機対象ではなく、実用向きの暗号資産(電子決済手段)と捉えれば良いかもしれません。
ステーブルコイン一覧(世界/日本)
ステーブルコインは今回話題のJPYCだけではありません。
世界主要銘柄
ステーブルコインは世界各国にあります。主なものは以下です。
- USDT(Tether)/USDC(Circle):ドル建て市場の主役。取引高・対応チェーン・対応取引所が圧倒的。
- DAI(MakerDAO)/FRAX:担保付きやハイブリッド設計。
- PYUSD(PayPal):米巨大プラットフォーム系の決済志向。
中国でもCNHTというのが出ていますね。
日本の主要動向(2025年時点)
日本でもJPYC以外に動いているものがあります。
- JPYC:国内資金移動業者の第一号として、円建てステーブルコイン発行へ。公式「JPYC EX」での発行・償還を起点に展開予定。
- DCJPY(ディーカレットDCP系):銀行発行型デジタル通貨の実証や決済トライアルが継続。用途特化の実装が進む。
- Progmat Coin(MUFG信託系の発行基盤):複数発行体が参加可能な信託型ステーブルコイン基盤。各社が発行・ユースケース拡大を模索。
今の時点ではどれが覇権を握るのか全くわかりません。
ポイント:各案件の「円1=1償還の実装方法・保全方法・適用法令」は異なります。投資観点では、発行体の信用・保全資産・監査/開示が肝ですね。
JPYCの将来性(投資視点での評価ポイント)
それではJPYCの将来性について考えてみましょう。
日本市場特有の追い風
- 制度の安定性:ステーブルコインを電子決済手段として定義し、発行・仲介のルールを先んじて整備。企業・自治体・金融機関が導入しやすい。
- 国内決済・送金の効率化:即時・低コスト送金は国際送金・B2B決済・Web3サービスの基盤になり得そう。JPYCはまず国内での実装→越境の順で広がる可能性。
収益モデルとスケール
- 裏付け資産の国債・預貯金による運用が許容される範囲で、金利収入がビジネスの柱になりえる(世界の先行事例と同構造)。
- 発行・送金の低手数料化が期待でき、残高増=収益増のスケールが効く可能性も。
競合・補完
- 銀行・信託・他基盤(DCJPY/Progmat Coinなど)との「競争と共存」が基本線。
- 用途・規模・統合容易性で棲み分けが起こるえる。
マクロ環境
- 世界ではドル建てSCが主流で、政策も前進(EUのMiCA、米の安定通貨法など)。
- 円建ての存在感はまだ小さいからこそ、国内ユースケースの地固め→国際連携が価値を持つ可能性も。
投資としてどう扱う?(現金同等物的な役割+α)
ステーブルコインに値上がり益の期待は基本的に薄いです。
日本円と1:1で連動するように設計されていますから、むしろインフレ化では投資対象としては厳しいかもしれません。
そもそもの目的がそれじゃないですからね。
投資家の主眼は以下の通り。
- キャッシュ・マネジメント:取引用の待機資金、為替リスクを抑えた円建てのオンチェーン現金相当としての活用。
- 裁定/金利:SC同士・市場間のスプレッドや、裏付け運用から来る金利メリットの一部還元(還元設計が導入される場合)。
- DeFi連携:海外DeFiと接続する場合のブリッジ/スマートコントラクトリスクを必ず加味。日本居住者の利用可否や税務の取り扱いは個別確認必須。
まとめると、JPYCは「投機」よりも「利便性・運用効率」を取りにいくプロダクトです。
資産配分では流動性バッファの一部を置き換える、あるいは円のオンチェーン化で業務や投資の回転効率を上げる——という使い方が中心になるでしょう。
ステーブルコイン関連銘柄を狙う手も
ステーブルコインやJPYC関連の株はテーマ株としての物色はすでに観測。
最近では、アステリア(3853)/インタートレード(3747)/電算システム(4072)/イオレ(2334)/アクセルマーク(3624)/デジタルプラス(3691)/ビーマップ(4316)/フーバーブレイン(3927)などの名が挙がっていますね。
かなり高騰した銘柄もあります。
一方で、日々の思惑に左右されやすいので、バリュエーションや実需連携の有無の見極めが不可欠となります。
なお、銀行/証券/信託/通信/決済基盤などのインフラ企業も、実需の広がり次第で業務面の影響が出る可能性があります。個別の材料は公式発表を必ず一次確認をおすすめします。
リスクと注意点
なお、ステーブルコインにも当然リスクはあります。
事前に知っておきましょう。
発行体・保全資産リスク
発行体のガバナンス、保全資産の信頼性の部分がリスクとなり得ます。
また、裏付け資産と償還スキームが前提だが、極端なストレス時に二次市場で1=1円が乖離する可能性はゼロではないとのこと。
保全・開示・運用ルールを注視、チェックするのが必須となりそうです。
償還停止リスク
極端な市場・規制環境で償還遅延/停止の可能性。
上限額・KYC要件も日々の実務制約となり得ます。
規制変更リスク
制度は前進しているが、AML/CFTや外為などの観点で運用ルールが追加・変更され得ることはリスクです。
税務面(所得税)
現時点ではステーブルコインの税務上の取り扱いについては金融庁や税務署から具体的な指針は示されていません。
そもそも値上がりを期待するものではないですが、暗号資産と同様の扱いになると確定申告が必要になり手間暇が多くなり、利便性がかなり落ちることになりかねません。
市場流動性
当初は公式窓口中心で、取引所・二次流通の厚みが時間をかけて形成されるとのこと。
市場流通性がよくないことで本来の目的として使いにくくなる可能性もあります。
スプレッドや約定コストも実装初期ほど要注意。
まとめ:JPYCは「投機」ではなく「基盤」
今回は「国内初の円建てステーブルコイン「JPYC」は投資対象になりうるのか?」と題してステーブルコインについて見ていきました。
結論としては投資対象としては価格上昇益を狙うビットコインとは、役割もリスクも根本から違うので、投資(投機)対象と考えないほうが無難ってことですね。
円に投資します、ドルに投資しますって言ってるようなもんなんですよ。
ただし、現金同等のオンチェーン化という武器にはなり得ますし、ビジネスとしては大きな動きが出てくる可能性もありますので関連銘柄を狙うのはアリな戦略となりそうです。

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