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プロ野球はもう赤字じゃない。親会社の広告費頼みは、過去の話

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プロ野球はもう赤字じゃない。親会社の広告費頼みは、過去の話

プロ野球って、どうせ赤字でしょう。親会社が広告のためにお金を出してるだけ

野球ファンの方なら、一度は聞いたことのある話だと思います。

かつてはこの説明、確かに正しかったんです。

でも、2026年の今、その常識は静かに崩れています。

その象徴的な出来事がありました。

2025年10月、あの「物言う株主」で知られる旧村上ファンド系の投資会社が、横浜DeNAベイスターズの親会社・DeNAの株式を取得したのです。

村上世彰氏の長女・野村絢氏らが約140億円を投じてDeNA株を5.12%取得しました。

物言う株主が来るということは、つまり「この会社、もっと稼げるはずなのに株主に還元していないぞ」と目をつけられたということ。

赤字を垂れ流す球団に、彼らは絶対に近づきません。

今回は、最新の決算公告を読みながら、「プロ野球=赤字」という古い常識がどう変わったのかを、一緒に確認していきましょう。

読み終えるころには、あなたの球団の見え方が少し変わっているはずです。

目次

なぜ球団の決算書は「中身が薄い」のか

本題に入る前に、ひとつだけ前提を共有させてください。

プロ野球の球団は、詳しい決算書をほとんど公開していません。

確認できるのは「決算公告」と呼ばれる、法律で義務づけられた最低限の開示だけです。

ここがポイントなんですが、すべての株式会社は規模や上場の有無にかかわらず、決算公告が義務づけられています。

一般的な企業は貸借対照表(資産と負債の一覧)だけ、大企業は損益計算書(売上と利益)も公告しなければなりません。

つまり多くの球団は貸借対照表しか出していないので、「純利益はわかるけれど、売上はわからない」という状態なんです。

プロ野球球団の売上ランキングを正確に作るのが難しいのは、このためです。

そして読売ジャイアンツと中日ドラゴンズは、官報やWEBに決算公告を出していません

この2社は純利益も分からないんですよ・・・

両球団とも親会社が新聞社なので、おそらく自社の日刊紙などにこっそり掲載しているのでしょう。

一般のファンが数字を追えないのが実情です。

この「見えにくさ」を頭の片隅に置いて、読み進めてください。

コロナ前夜:7球団が赤字だった世界

まず、過去を振り返ります。

新型コロナの観客規制が直撃した2020〜2021年度、球団の決算は悲惨でした。

無観客試合や「上限5,000人」という規制で、入場料収入が消し飛んだからです。

当時の決算公告を見ると、開示している10球団のうち、黒字を確保できたのは横浜DeNAと東北楽天のわずか2球団。

残る7球団が赤字でした。

最大の赤字は福岡ソフトバンクホークスで、純損失は75億円に達していました。

選手年俸という巨額の固定費を抱えながら、売上の柱であるチケット収入が断たれる。

これでは赤字になるのも当然です。

当時の私は「あと1〜2年この規制が続けば、債務超過の球団が出る」と書きました。

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コロナ後:黒字が「当たり前」になった

それが、わずか数年でどうなったか。

結論から言います。

プロ野球の黒字球団は、もはや少数派ではありません。

多数派です。

直近で確認できる決算公告をもとに、各球団の純利益を整理すると、次のようになります。

球団運営会社決算期純利益利益剰余金総資産備考
福岡ソフトバンクホークス2026年2月期57億2000万円▲10億1800万円1037億6300万円売上高509億3800万円
阪神タイガース2025年3月期22億300万円124億3200万円267億5500万円安定した黒字
横浜DeNAベイスターズ2025年12月期24億6100万円132億500万円194億3500万円球場一体経営が強み
広島東洋カープ2025年12月期6億2800万円86億3800万円172億1400万円親会社なし型の代表例
楽天野球団2025年12月期6432万8000円4億6295万2000円104億587万7000円小幅黒字
西武ライオンズ2025年3月期8億8020万9000円27億6155万1000円92億423万2000円黒字
北海道日本ハムファイターズ2025年12月期▲12億6200万円84億9900万円90億7800万円球場新設
千葉ロッテマリーンズ2025年3月期2943万2000円1億6233万2000円77億9963万7000円黒字転換
オリックス野球プラブ2025年3月期非開示27億7700万円76億5200万円純利益は不明
ヤクルト球団2025年12月期16億2543万2000円29億4118万円68億5454万4000円大幅黒字
読売ジャイアンツ-不明不明不明
中日ドラゴンズ-不明不明不明

(出典:各球団の決算公告。年度・決算期は球団により異なります)

コロナ禍では7球団が赤字でした。

それが今や、純利益が判明している球団のほとんどが黒字。

しかも、かつて最大の赤字だったソフトバンクが、約57億円という最大の黒字に転じています。

数字の左右が、まるごと入れ替わったのです。

なぜ、こんなに変わったのか

ここで「だから何なの?」という問いに答えたいと思います。

表面的な数字の羅列で終わっては、読む意味がありませんから。

球団が黒字化した理由は、大きく3つあると私は見ています。

観客が戻り、しかも単価が上がったこと

コロナ後、ファンは球場に戻ってきました。

それだけでなく、各球団は座席のグレードを細かく分け、高単価のシートやVIPルームを増やしました。

球団によってはさらにダイナミック プライシングといって、試合日程、席種、市況、天候、お客様の嗜好などに関するビッグデータ分析を基に試合ごとの需要予測を行い、需要に応じたチケット価格を変動する仕組みを導入し始めました。

同じ満員でも、稼げる金額が増えたのです。

「球場を自分で持つ」モデルへの転換

次に「球場を自分で持つ」モデルへの転換です。

象徴は北海道日本ハム。

2023年に新球場エスコンフィールドへ移転し、使用料の負担が少なく、札幌ドームではほぼ得られなかった広告料収入や飲食料収入が入るようになりました。

横浜DeNAベイスターズも2016年に横浜球場を買収して大きく黒字に転換しています。

ソフトバンクもそうですね。

球場を借りる側から持つ側へ。

これは飲食店が「テナント賃借」から「自社ビル経営」に変わるようなもので、利益構造が根本から変わります。

営業努力の蓄積

最後は営業努力の蓄積です。

かつて「お荷物」とまで言われたパ・リーグの球団が、地域密着でファンを増やし、グッズやイベントで稼ぐ力をつけてきました。

ソフトバンクに至っては、本拠地で音楽フェスまで主催しています。

「親会社の広告費頼み」は本当だったのか

ここで、多くのファンが信じている「プロ野球は赤字でも、親会社が広告宣伝費として補てんするから問題ない」という話に触れておきます。

これは法律上、確かに事実です。

国税庁には昭和29年8月10日付の「職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について」という個別通達があります。

親会社が、球団の当該事業年度において生じた欠損金(野球事業から生じた欠損金に限る。以下同じ。)を補てんするため支出した金銭は、球団の当該事業年度において生じた欠損金を限度として、当分のうち特に弊害のない限り、一の「広告宣伝費の性質を有するもの」として取り扱うものとすること。

出典:国税庁 職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について より

とされています

つまり、球団が出した赤字を親会社が穴埋めしても、それは寄付ではなく「広告費」として経費に認められる。

だから親会社は税務上のペナルティなく、堂々と球団を支えられるわけです。

たしかに、球団名には親会社名が入ります。

ユニフォーム、球場、ニュース、新聞、テレビ、ネット、SNSで企業名が繰り返し露出します。

これは通常の広告とは比べものにならないほど長期間、広範囲に効く広告です。

だから、親会社が球団を持つ意味はあります。

ですが、ここに大きな誤解があります。

この仕組みは「赤字を前提」にしたものです。

利益が出ていれば、補てんする赤字そのものが存在しません。

つまり、黒字球団が増えた今、この「広告費頼み」の構図は、もはや多くの球団に当てはまらなくなっているのです。

球団は親会社のお荷物ではなく、自分で稼ぐ独立した事業になりつつある。

これが、コロナ後に起きた最大の変化だと私は考えています。

プロ野球 売上ランキングはなぜ作りにくいのか

多くの方が気になるのが、プロ野球 売上ランキングでしょう。

どの球団が一番儲かっているのか。

どの球団の売上が大きいのか。

これはとても気になりますよね。

しかし、厳密な「プロ野球球団 売上ランキング」を作るのはかなり難しいです。

理由は簡単です。

多くの球団が売上高を決算公告で開示していないからです。

たとえば、福岡ソフトバンクホークスは売上高を確認できます。

2026年2月期で509億3800万円です。

一方、阪神タイガース、横浜DeNAベイスターズ、広島東洋カープ、ヤクルト球団などは、決算公告上で純利益や総資産は確認できても、売上高までは横並びで確認できないケースがあります。

つまり、検索で見かける「球団売上ランキング」は、推計、親会社のセグメント情報、過去資料、観客動員数、報道情報などを組み合わせていることが多いのです。

ここには注意が必要です。

売上ランキング風に見えても、実は次のような数字が混ざっていることがあります。

区分具体例注意点
球団単体売上球団運営会社の売上高開示球団が限られる
親会社セグメント売上スポーツ事業、エンタメ事業など球団以外の事業が含まれることがある
観客動員数主催試合の入場者数客単価や球場収益は反映されない
推計売上チケット単価などから推計前提次第で大きく変わる
報道ベースメディアや関係者発言年度や範囲の確認が必要

ですから、現時点で最も誠実な言い方はこうです。

「プロ野球球団の売上ランキングは、公式に完全な横並びで作れる状態ではありません」

ただし、見える範囲で言えば、福岡ソフトバンクホークスの売上規模は突出して大きい可能性があります。

また、横浜DeNAベイスターズ、阪神タイガース、読売ジャイアンツなども、観客動員、ブランド力、スポンサー力、球場関連収益を考えれば、かなり大きな事業規模であることは想像できます。

観客動員数だけでは売上は分からない

では、売上高が見えないなら、観客動員数で見ればよいのでしょうか。

半分正解で、半分間違いです。

NPBの2025年公式戦入場者数を見ると、両リーグ合計で2704万286人、1試合平均3万1515人です。

実数発表以降で見ても、かなり高い水準です。

球団別では、2025年は次のようになっています。

球団2025年入場者数1試合平均
阪神296万2268人4万1722人
読売282万3050人3万9761人
福岡ソフトバンク271万7929人3万8281人
中日252万832人3万5012人
横浜DeNA236万411人3万3245人
北海道日本ハム223万2364人3万1442人
オリックス205万7077人2万8571人
広島東洋204万1638人2万8356人
東京ヤクルト201万1972人2万7944人
千葉ロッテ187万3323人2万6018人
埼玉西武173万2073人2万4395人
東北楽天170万7349人2万3713人

出典:NPB 2025年 セ・パ公式戦 入場者数

この数字を見ると、阪神、読売、ソフトバンクの集客力はやはり圧倒的です。

しかし、観客動員数イコール売上ではありません。

なぜなら、球団の売上は以下の掛け算で決まるからです。

チケット売上:入場者数 × 平均単価
グッズ売上:ファン数 × 購買率 × 客単価
飲食売上:入場者数 × 球場飲食の利用率 × 客単価
スポンサー売上:ブランド力 × 露出量 × 地域経済との結びつき
放映権、配信、デジタル収益:コンテンツ価値 × 視聴者数 × 契約条件
球場関連収益:球団と球場の関係性 × テナント、広告、イベント活用

つまり、同じ200万人の観客動員でも、売上は大きく変わります。

チケット価格を高く設定できる球団。
球場内飲食の取り分が大きい球団。
球場と一体経営している球団。
グッズ販売が強い球団。
スポンサー営業が強い球団。

これらは、観客動員数だけでは見えません。

野球でいえば、観客動員数は打率のようなものです。

分かりやすいですが、それだけで打者の価値は決まりません。

出塁率、長打率、守備、走塁、年俸、年齢まで見て初めて選手の価値が見えてきます。

球団経営も同じです。

だから、DeNAは狙われた

ここまで読んでいただければ、冒頭の話がつながってくるはずです。

横浜DeNAは、純利益約24億6100万円、利益剰余金は132億500万円超(球団単体)。

親会社のDeNAも、2026年3月期は売上収益1477億円、営業利益186億円と、前年の「ポケポケ」ヒットの反動で減益にはなっていますが、好決算となっています。

稼ぐ力があり、内部にお金を貯め込んでいる会社。

これは物言う株主にとって、これ以上ないほど魅力的な標的です。

「これだけ儲けているなら、もっと株主に還元すべきだ」と主張する余地が大きいからです。

赤字球団なら、誰も見向きもしません。

「儲かりすぎて狙われた」という逆説こそ、プロ野球の経営が変わった何よりの証拠なのです。

ただし、手放しで喜べない理由

ここで、誠実に「注意点」もお伝えしておきます。

良い面ばかり書くのは、フェアではありませんから。

ひとつ。球団単体の黒字と、親会社の体力は別物です。

たとえば球団が黒字でも、親会社が別事業で苦しんでいるケースはあります。

本当の安定性を見るには、親会社まで含めて見る必要があります。

ふたつ。利益剰余金(過去の利益の蓄積)がまだ薄い球団もあります。

楽天やロッテは黒字とはいえ、蓄積が数億円規模。

これは「ようやくプラスに転じたばかり」という段階で、不況やケガ人続出による不振が直撃すれば、再び赤字に沈むリスクは残っています。

みっつ。決算公告だけでは、わからないことが多すぎます。

売上が非開示の球団が大半で、巨人と中日に至っては公告すら追えません。

私たちが見ているのは、氷山の一角にすぎないのです。

「黒字だから安泰」と単純に結びつけるのは、決算書の読み方としては危険です。

数字は、慎重に、複眼で読む。これは球団でも一般企業でも同じです。

まとめ:数字は「物語」を語っている

今回は「プロ野球の決算書」を切り口に、コロナ前後の劇的な変化を見てきました。

ポイントを整理します。

コロナ禍では7球団が赤字でしたが、今や黒字が多数派になりました。

背景には、観客単価の上昇、球場を自前で持つモデルへの転換、そして地道な営業努力があります。

「親会社の広告費頼み」という古い常識は、黒字球団には当てはまりません。

そして、稼ぐ力をつけたDeNAが物言う株主に狙われたことこそ、その変化を象徴しています。

私が決算書を読むのが好きなのは、そこに「物語」が刻まれているからです。

たった数行の貸借対照表からでも、その組織が何と戦い、どう生き延びてきたかが透けて見える。

あなたが応援している球団の決算公告を、一度のぞいてみてください。

きっと、いつもの試合が少し違って見えるはずです。

決算書の基本的な読み方を知りたい方は、当ブログの過去記事もあわせてどうぞ。

「数字が読める」ようになると、投資でも仕事でも、世界の解像度が一段上がりますよ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

豊かに生きていく上で必須なのがお金の知識です。
しかし、日本では「お金」が汚いものという認識が根強く、あまり勉強されてきませんでした。そのため今後は老後破産が増えてしまうなんて話もありますね。
そんな世の中を少しでも変えたいという強い信念を元に「お金に生きる」を立ち上げました。
投資歴15年以上、社会保険労務士、中小企業診断士、簿記1級、1級販売士、ファイナンシャルプランナー2級、年金アドバイザー3級持ちの私が「お金」についてどこよりもわかりやすくお伝えることを目指していきます。
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