親の老後にお金がないかもしれない。
そう気づいた瞬間、多くの人は「毎月いくら仕送りできるか」を考え始めます。
実はこれ、いちばん危険な一手なんです。
この記事では、共倒れを防ぐ支援の正しい順番「親のお金・4つの引き出し」を解説します。
読み終える頃には、今日やることが1つ決まります。
親の老後資金問題は「支援額」ではなく「順番」で決まる
冒頭で結論からお伝えします。
「親の老後にお金がない」と気づいたとき、頭に浮かぶのは毎月の仕送りでしょう。
月3万円なら出せるか。
兄弟姉妹にも同額頼めるか。
施設代まで負担するのか。
しかし、親の老後にお金がない場合、真っ先にやるべきは仕送りでも同居でもありません。
親の家計と使える制度を調べることです。
支援の金額ではなく、支援の順番を間違えて苦しんでいる家庭が多いんですよ。
子の財布を開く前に、親が使える制度を開く。
順番を間違えると共倒れです。
この記事では、支援の順番を「親のお金・4つの引き出し」として整理しました。
- 引き出し①: 親自身の家計改善(収支の見える化)
- 引き出し②: 公的制度の活用(高額療養費・生活保護など)
- 引き出し③: 親の資産の現金化(持ち家・保険など)
- 引き出し④: 子どもからの援助(ルールを決めた上での最終手段)
なぜ仕送りが最後なのか。
理由はシンプルで、①〜③は「使っても子どもの人生が壊れない」引き出しだからです。
逆に④から開けてしまうと、あなた自身の教育費や老後資金が削られ、20〜30年後に同じ問題が次の世代へ引き継がれます。
あなたの家では、どの引き出しから開けようとしていましたか。
順番を確認しながら読み進めてみてください。
「お金のない親」は珍しくない
そもそも、老後資金が足りない親はどれくらいいるのでしょうか。
数字で確認しておきましょう。
まず年金です。
65歳の老齢厚生年金の令和6年度のデータで平均月額は149,862円(基礎年金含む)となっています(出典:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」)。
会社員として長く働いた人でも月15万円前後が平均という水準です。
さらに厳しいのが自営業などで国民年金のみの場合。
老齢基礎年金の平均月額は約5万9千円です。
夫婦とも国民年金だけなら、世帯収入は月12万円に届きません。
貯蓄はどうでしょうか。
70歳代で金融資産を保有していない世帯は19.2%にのぼります(出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」2023年)。
年金だけで暮らせる人は1割程度。

その結果が表れているのが生活保護の統計です。
生活保護を受給する世帯のうち55.4%が高齢者世帯で、しかもその9割以上が一人暮らしの高齢者となっています(出典:厚生労働省「被保護者調査」)。
生活保護は今や、現役世代よりも「年金だけでは暮らせない高齢者」のセーフティネットとして機能しているのが実態です。
さらに今後、寿命が伸びて来る予想もあり、そうなると多くの方がこのラインに入ってくることになるでしょう。

つまり「うちの親だけお金がない」わけではありません。
恥ずかしいことでも、親を責めることでもないんです。
この認識を親子で共有できるかどうかが、話し合いの成否を分けます。
良かれと思った行動が共倒れを招く
順番の話に入る前に、やってはいけない対応を3つ挙げておきます。
よく見る失敗パターンです。
金額を決めない仕送り
1つ目は、金額を決めない仕送り。
「足りない分は出すよ」という善意の一言が、際限のない援助につながります。
親側も遠慮がなくなり、家計改善のきっかけを失いがちです。
勢いで決める同居
2つ目は、勢いで決める同居。
住宅の住み替えや配偶者との関係、介護の負担まで一気に背負い込むことになります。
後戻りが難しい選択だからこそ、最後の選択肢として慎重に検討すべきものです。
親の借金の肩代わり
3つ目は、親の借金の肩代わり。
感情的には理解できますが、法的にはあなたに親の借金を返す義務はありません。
返済が難しいなら、債務整理という選択肢を親自身が取るのが筋です。
知っておきたい扶養義務の本当の意味
ここで法律の話を1つ。
民法877条は「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めています。
「じゃあ、やっぱり面倒を見なきゃいけないの?」と思いますよね。
安心してください。
この扶養義務は、自分の生活を犠牲にしてまで果たすものではないと解釈されています。
求められるのは、自分と家族の生活を維持した上で、余力の範囲で援助すること。
専門的には「生活扶助義務」と呼ばれ、あなたの生活が優先されるのが大前提です。
親孝行と自己犠牲は別物。
ここを混同しないことが、長期戦になる親の支援では欠かせません。
見える化と公的制度で「支援額」は大きく減らせる
それでは具体的な手順です。
親の家計の見える化
最初に開けるのは引き出し①、親の家計の見える化です。
確認するのは次の4点。
年金収入(年金振込通知書で確認できます)、毎月の支出、貯蓄と保険、借金の有無。
この4点が分かるだけで、「毎月いくら足りないのか」が数字で見えます。
不足額が月2万円なのか10万円なのかで、打ち手はまったく変わってきますよね。
公的制度
次が引き出し②、公的制度です。
高額療養費制度
医療費には高額療養費制度があります。
70歳以上で住民税非課税世帯なら、外来と入院を合わせた自己負担の上限は月2万4,600円(住民税非課税世帯Ⅱの場合)。
どれだけ入院しても、月の医療費負担には天井があるわけです。
介護費にも高額介護サービス費という同様の仕組みがあり、さらに医療と介護の両方がかさむ世帯には、年間の合算負担に上限を設ける高額医療・高額介護合算療養費制度も用意されています。
年金生活者支援給付金
年金が少ない親なら、年金生活者支援給付金(住民税非課税世帯などが対象で月5,000円程度が年金に上乗せされる制度)の対象になっている可能性もあります。
請求しないと受け取れないため、親が制度を知らずに未請求というケースは実際にあります。
生活保護
そして最後の砦が生活保護です。
「親族に迷惑がかかるから」とためらう人が多いのですが、2021年に厚生労働省が運用を見直し、扶養照会(親族への援助可否の問い合わせ)は本人の意向を尊重し、援助が期待できない場合には照会を控える運用となりました。
照会が来ても、援助できない事情を回答すれば足ります。
生活保護の利用は国民の権利であり、子どもが無理な援助で共倒れするより、はるかに健全な選択です。
これらの制度をフル活用すると、子どもが負担すべき金額は当初の想定より大きく減るケースが少なくありません。
援助額の交渉より先に、制度の棚卸し。
これが引き出し②の鉄則です。
親の資産活用と、援助する場合の3つのルール
制度を使っても足りない場合は次の選択肢です。
親自身の資産の現金化
引き出し③、親自身の資産の現金化です。
代表例が持ち家の活用。
自宅を担保にお金を借り、亡くなった後に売却して返済するリバースモーゲージや、自宅を売却して賃貸として住み続けるリースバックという方法があります。
ただし、この2つは注意点も多い商品です。
リバースモーゲージは金利上昇や不動産価格の下落で融資枠が減るリスクがあり、リースバックは売却価格が相場より安くなりがちな上、家賃を払い続ける必要があります。
「自宅に住み続けられます」という営業トークだけで判断せず、複数社の条件比較と、売却・住み替えなど他の選択肢との比較が欠かせません。
悪い面は正直不動産という漫画を見るとすごくわかりやすいのでおすすめ。

掛け捨てでない生命保険があるなら、解約返戻金や契約者貸付も選択肢になります。
葬儀費用として残したい気持ちと、目の前の生活費のどちらを優先するか。
ここは親の意向を聞きながら決めましょう。
子どもからの援助
①〜③をすべて開けて、それでも足りない。
そこで初めて引き出し④、子どもからの援助です。
援助する場合は3つのルールを決めてください。
- 金額と期限を区切る(例: 月3万円を2年間、以降は再協議)
- 兄弟姉妹で分担を話し合う(1人で抱えない)
- 自分の積立(NISA・iDeCo)は止めない
3つ目に違和感があるかもしれません。
親が苦しいのに自分は投資を続けるのか、と。でも考えてみてください。
あなたの積立を止めた結果、30年後にあなたの子どもが同じ検索をすることになったら。
負の連鎖を断ち切ることこそ、最大の親孝行だと私は考えています。
「親の老後資金」の不安につけ込む業者に気をつけて
もう1つ、どうしても書いておきたいことがあります。
親の老後資金に悩む人の不安は、一部の業者にとって格好の商売のタネだという現実です。
ちなみに「老後2000万円」という数字自体、2019年の金融審議会の報告書で、高齢夫婦無職世帯の平均収支が月約5.5万円の赤字という当時の統計を30年分積み上げた試算にすぎません。
前提が変われば数字も変わる、モデルケースの一つです。
この数字だけを切り取って恐怖を煽る相手は、まず疑ってかかってください。
怪しいセミナーや情報商材を見分けるチェックポイントは3つ。
- 不安を煽るだけで、高額療養費など公的制度の話が出てこない
- 「必ず儲かる」「元本保証で高利回り」など断定的な表現を使う
- その場で契約や高額講座の申込みを迫り、考える時間を与えない
1つでも当てはまったら、その場で契約せず持ち帰りましょう。
相談するなら、商品販売とセットになっていない、金融機関から独立した専門家がおすすめです。

よくある質問
- お金がない親の面倒を見るのは法律上の義務ですか?
-
民法877条により直系血族には扶養義務がありますが、自分と家族の生活を維持した上で、余力の範囲で援助すれば足りると解釈されています。
自分の生活を犠牲にした仕送りや借金の肩代わりまでは求められません。
- 親の老後資金の話は何歳頃までにすべきですか?
-
早いほど有利です。判断能力が低下すると預金の解約や自宅売却が事実上できなくなり、選択肢が減ります。親が70代前半で元気なうちに、年金額と保険・貯蓄の所在だけでも共有しておくと、いざという時の対応がまったく変わります
- 親がお金の話を拒むときはどうしますか?
-
最初から貯金総額を聞かず、「急な入院で慌てたくない」と目的を伝えます。
年金振込通知書など一つの書類だけ確認し、15分で終了。
滞納や受診断念がある場合は、地域包括支援センターや福祉事務所へ早めに相談します。
- 親の老後資金は2000万円では少ないですか?
-
一律には決まりません。
2025年平均の夫婦高齢無職世帯では月の差額は4万2,434円ですが、賃貸、年金額、介護、生活水準で変わります。
親の手取り収入と支出、臨時費用、金融資産から個別に計算してください。
まとめ
最後に、この記事から持ち帰ってほしい行動を1つだけ。
親に「年金振込通知書、見せてもらえる?」と聞いてみてください。
なぜこの一言なのか。
親とお金の話を先送りした家庭ほど、後で何倍も苦労するという事実だからです。
親が元気なうちなら、通帳の場所も保険の内容も本人の口から聞けます。
ところが認知症や急な入院の後では、資産の把握だけで数ヶ月かかることも珍しくありません。
判断能力が低下すると、親名義の定期預金の解約や自宅の売却が事実上できなくなり、選択肢そのものが消えていきます。
とはいえ、いきなり「貯金いくらあるの?」は聞きにくいですよね。
おすすめの切り出し方は「自分の年金を調べてたら、そっちはどうなのか気になって」という自分事からの導入です。
帰省やお盆のタイミングは絶好の機会。

この記事を「こんな記事があったよ」と共有するところから始めても構いません。
親の老後資金の問題は、放置すれば介護・相続とセットで、より複雑になって返ってきます。
逆に早く着手すれば、4つの引き出しを順番に開けるだけの、対処可能な課題です。
私自身、お金の話をタブーにしない家庭が一番強い、と信じてこのブログを書き続けています。
まずは今日、親に一本連絡してみませんか。3分で終わる、最初の一歩です。
また、自分が親側の方は早めに老後貧乏を解消できるように動きましょう。

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