先日、国民年金を払うよりも民間の個人年金保険に入ったほうが得ってホント?という記事を書いたところ、反響が大きく、質問メールを何件もいただきました。
いただいた質問はすべて
○○○年金共済ってどうでしょう?
という商品に関する内容。
ご質問いただいた商品はすべて確認させていただきました。
一つ一つの質問に対しての分析や返答は控えたいと思いますが、まとめて結論を言えばマイナス金利の影響が大きくどれも条件があまりよくありません。
年金共済系は民間の個人年金保険よりはかなりマシですが、積極的に加入をすすめるほどの魅力は感じられませんでした。
個人年金保険という商品の仕組みが少子高齢化、マイナス金利の状況では厳しいのでしょうね。
もし、入るとすれば個人年金保険料控除が半額受けられる上限の年間8万円までがおすすめです。
この条件ならば全額所得控除が受けられる個人型確定拠出年金(iDeCo)や小規模企業共済 (自営業者用)に加入したり、利回りが期待しやすいNISAを利用するのがおすすめですね。
今回、質問をいただいたことで全く存在を知らなかったものも含めていろいろな個人年金保険や共済年金を確認することができました。
そこで気づいたことがあります。
それは各社共通で「予定利率」、「積立利率」、「返戻率」という数字を使って少しでもお得に見せようと頑張っているってことです。
個人年金保険は現行の水準ではお得度がかなり低いですから、数字(言葉)のマジックでも使わないと加入者が増やせないのでしょうね・・・
予定利率や積立利率を投資の「運用利回り」や預金の「金利」と同じ感覚で捉えてしまうのはかなり危険なんですよ。
そこで今回は保険の見分け方のポイントの一つである「予定利率」「積立利率」「返戻率」について解説したいと思います。
予定利率とは
まずは「予定利率」から見ていきましょう。
予定利率とは保険会社が保険の契約者に対して約束をする利率のことです。
基本的に契約時に決められています。
つまり、保険会社が契約者から預かったお金を○%で運用しますよって約束をした数字です。
予定利率が高ければ運用でそれだけ増えるために保険料が安くなります。
逆に予定利率が低ければそれだけ保険料が高くなります。
予定利率の推移
一昔前までは予定利率が5%を超えているのがザラにありました。
しかし、低金利、マイナス金利の影響もあり現在では1%を超えていればかなり高い水準ですね。
ちなみに金融庁が保険会社に対して予定利率の目安として示している標準利率は下記のように推移しています。
現状は過去と比較して標準利率がかなり低い状況なんですよね。
それだけ昔入った保険とこれから入る保険では有利さがぜんぜん違うのです。すでに保険を契約している人は今から考えると予定利率が高いお宝保険である可能性がありますから、保険の乗り換えは慎重にしましょうね。
平成8年4月〜平成11年3月 | 2.75% |
平成11年4月〜平成13年3月 | 2.00% |
平成13年4月〜平成25年3月 | 1.5% |
平成25年4月〜平成29年3月 | 1.0% |
平成29年4月〜令和元年12月 | 0.25% |
令和2年1月〜 | 0% |
さらに2020年(令和2年)1月からは標準利率が0%となっています
予定利率と利回りの違い
ただし、この予定利率かなり曲者の数字なんですよ。
それは保険料として支払った金額がすべて運用に回されるわけではないということです。
保険は保険会社の経費を差し引いたあとの金額が予定利率で運用されるのです。
つまり、予定利率は経費を差し引いたあとの部分で計算される利率となります。
当然といえば当然なのですが、通常の株式投資の配当や預貯金の利息とこの点が大きく違うのです。
なによりも保険の場合には経費率がかなり高いのです。
下記は小規模企業共済が出している資料ですが、だいたいどこの生命保険も10%程度の経費率があります。
出所:中小企業庁「小規模企業共済 給付経理から業務等経理への繰り入れについて」
つまり、保険で支払った資金のうち10%は始めからさっぴかれてそこから予定利率で運用するってことです。
ですから変動型の個人年金保険なんかに加入を考える際には予定利率だけみて高いからこれは良いと考えては駄目で、経費率を考えて実際に保険として払った金額と戻ってくる金額で考える必要があるのです。
実際に外貨建て保険などは経費率が高く設定されているケースが多いですから、表面上の予定利率は高く見えますが、実際の利回りで考えるとかなり悪い。
そもそも儲からないぞこれ・・・ってレベルの商品もたくさんあります。
さらに為替リスクまで背負わされてしまうんですよ。
>>【外貨建て保険】を買ってはいけない理由。損をするためにあるような商品
利回りとは
利回りとは投資した金額に対する年間収益の割合のことを指します。
保険で言えば経費を差し引く前の払い込んだ金額と収益の割合を求めることですね。
つまり、予定利率と利回りでは分母が違いますからパーセントだけで比較しても意味がないのです。
投資信託の場合
例えば投資信託なども信託報酬率という差し引かれる手数料があります。
しかし、最近の投資信託でインデックスタイプのものならばかなり低い信託報酬率のものが多くなっています。
例えば、先日発売された「SBI・バンガード・S&P500インデックスファンド」というアメリカを代表する企業の株式指標であるS&P500をベンチマークとした投資信託の場合には年0.0938%程度の手数料となっています。
保険とは比較にならないんですよね・・・
ですから予定利率3%の保険と、利回り3%の投資信託があった場合に、表面上は同じ数字に見えますが、当然に投資信託の方が資産が増えることになります。
手数料の影響をシュミレーション
それでは手数料による影響はどれくらいあるのかを考えてみましょう。
例えば同じ金額を経費10%で1%の予定利率の保険と金利0.1%(楽天銀行の普通預金金利)の預金に預けた場合の1年後の残高で違いを見てみましょう
スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。
金額 | 経費 | 予定利率/金利 | 計算式 | 1年後の残高 |
1,000,000円 | 100,000円 | 1% | (1,000,000-100,000)×101 | 909,000円 |
1,000,000円 | – | 0.1% | 1,000,000×1.001 | 1,001,000円 |
経費部分の存在が大きく、上記の条件ならば保険よりも普通預金のほうが条件は良いんですよ。(保険には保障部分があるケースもあるので一概には比較できません)
私も預貯金の金利と予定利率や積立利率を比較してお得でしょ?なんて保険の勧誘を受けたことがありますが、全然別物の話を数字(言葉)のマジックで誤魔化しているだけなんですよ。
預貯金の金利や投資商品の利回りと予定利率や積立利率は全然違うものですから混同して単純な比較しないようにしましょう。
積立利率とは
予定利率と同じような言葉で「積立利率」というものもあります。
予定利率とわかりにくいですが内容は少し違います。
積立利率とは契約者が支払った保険料の中で積立て部分に適用される利率のことです。
(予定利率は払った保険料から経費を差し引いて計算した利率)
保険料として集められたお金はすべて積立部分に回るわけではありません。
以下の3つに分けられます。
責任準備金
積立て部分
返戻率とは
もう一つ個人年金保険に多い表現があります。
それが「返戻率」です。
返戻率は払い込んだ保険料に対してどれだけ保険金が戻ってくるのか示した割合です。
例えば返礼率105%ならば100万円払い込んだものに対して105万円返ってくることになります。
返戻率98%ならば98万円しか戻ってこないことになります。
つまり、マイナスですね。
返戻率は直接の儲け、損がわかります。
ですから保険をチェックするときはぱっと損得が分かりにくい予定利率や積立利率で確認するよりも返戻率で確認したほうが良いでしょう。
利回りで考えて見る
ただし、この返戻率には時間の部分がまったく反映されていません。
例えば105%が返戻率でも20年積立てた場合なんてこともよくあります。
5%増えたと聞くと大きい感じがしますが、20年で5%増えたとなるとかなり少なく感じるでしょう。
多くの貯蓄型の保険の場合には途中で解約すると元本割れするようになっています。
そうなるとその期間を他で運用した場合と比較して見る必要があるのです。
ですから時間の概念も含めて保険を検討しましょう。
まとめ
今回は「騙されるな!!保険の「予定利率」や「積立利率」と投資の「利回り」は別物である件」と題して予定利率・積立利率・返戻率と利回りの違いについてご紹介しました。
まとめると以下です。
○積立利率とは契約者が支払った保険料の中で積立て部分に適用される利率のこと
○返戻率は払い込んだ保険料に対してどれだけ保険金が戻ってくるのか示した割合のこと
特に保険はこのように分かりにくい言葉や数字をつかったマジックのような売り方がされています。
騙されないためにもしっかり事前に把握しておきたいところですね。
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