先日、近々フリーランスとして独立する知人がこんなことを聞いてきました。
※私は社会保険労務士でもあります。
結論から言えば
なんですよ。
実は自営業者やフリーランスが加入する国民年金は結構お得な制度です。
逆に保険会社の個人年金保険は地雷が多くかなり危険な商品も・・・
今回はこのような勘違いを多くの人がしていると思われますのでその誤解を解いていきます。
国民年金はかなりお得な制度
財政検証などで社会保障負担がどんどん増えている厳しい結果がでていることもあり、国民年金は損をすると思い込んで未払いとなっている方が多く見えます。(最近はある程度収入がある人の取り立ては厳しいですが)
しかし、実際は国民年金はかなりお得な制度なんですよ。
マスコミが変な騒ぎ方をするから勘違いしている人が多いのだろ思われます。
まずは多くの方が勘違いしている「払った分だけ返ってこないから損」という勘違いから見ていきましょう。
国民年金は多くの方は元が取れる仕組み
国民年金は終身年金です。
終身年金とは簡単に言えば死ぬまでもらえる年金のことを指します。
長生きすればしただけもらえますが、早死すれば基本的にそこで終わります。(後述する遺族年金はあり)
ある意味、長生きのための保険といった性質があります。
そのため早くに亡くなってしまえば払った分だけ戻らない可能性があります。
ですが、国民年金の場合は元が取れるのが早いため多くの方が元が取れる形となっています。
国民年金の元がいつ取れるかシュミレーション
例えば満期の40年支払った人の例で見てみましょう。
国民年金の支払う保険料は令和元年度(平成31年4月~令和2年3月まで)現在で月額16,410円となっています。
これを上限の40年掛けたと仮定しましょう。(国民年金保険料の金額は毎年改定)
40年間で7,876,800円となります。
年金の受給額は現状の満額の方で年額780,100円(2019年(令和元年)4月〜)となっています。
単純計算で払い込んだ金額7,876,800円を毎年もらえる金額780,100円で割ると約10年1ヶ月くらいとなります。
つまり、10年と1ヶ月受給すれば元が取れるのです。
年金は繰り上げ、繰り下げ等をしなければ65歳から受給ですから75歳1ヶ月で元が取れる計算です。
標準生命表によると65歳男性の平均余命は19.53歳です。
84.53歳まで生きるのが平均となります。
また65歳女性の平均余命は24.27歳です。
89.27歳まで生きるのが平均となります。
つまり、多くの方が元がとれる計算となります。
平均余命まで生きたとすると男性で払い込んだ金額の約倍の保険料を受け取ることができることになります。
当然、この計算は現在の段階の話ですから年金の受給額が下がったり、保険料が上がれば元が取れる計算も変わってくるしょうが、仮に半分の支給しかなくなったとして85歳とちょっとで元が取れます。
その時点でも多くの方が生きているんですよ。
つまり、早死してしまった人は確かに損になるケースもありますが、多くの方は元が取れるまで生きる計算なんです。
終身年金ですから元を取ってしまえばあとは利益です。
払わないのはもったいないんですよね。(そもそも国民年金を支払うのは義務ですが・・・)
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
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さらに国民年金には以下のような保険的な機能も備わっています。
遺族年金や障害年金がある
国民年金は公的年金ですから、払った保険料と受け取る予定の年金額だけの話だけで済まない特徴があります。
それが障害年金や遺族年金の存在です。
障害年金は自分が障害になったとき、遺族年金は自分が亡くなったときにその遺族に支給されます。
これらの存在は一般の生命保険で同レベルの保険に加入しようとするとかなり高い金額になるレベルの補償となっていたりします。
なお、障害年金も遺族年金も加入期間の2/3以上が保険料納付済期間であること必要がありますので未納ではもらえません。
国民年金はある意味、保険が付与された年金制度となります。
つまり、元が取れる可能性はこれらを加味して考えればさらに高くなるのです。
遺族年金、障害年金について詳しくはこちらの記事も御覧ください
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付加年金はさらにお得
また、国民年金加入者が入れる付加年金という制度があります。
こちらは更にお得なんですよ。
毎月の国民年金に400円プラスして払うだけなのですが、老後に200円×付加年金を納付した月数分を終身でもらうことが出来ます。
つまり、2年付加年金をもらえば元が取れてしまうんですよ。
かなりお得なんですよね。
これに入るのにも国民年金の加入は必須です。
付加年金について詳しくはこちらを御覧ください。
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国民年金は所得控除
また、国民年金の保険料は所得控除対象(社会保険料控除)となります。
つまり、払った分だけ所得税・住民税の節税効果があるのです。
後述する民間の個人年金保険も個人年金保険料控除の対象となりますが、全額が対象となるわけではありません。
しかし、国民年金の支払いは全額が所得控除対象です。
この違いも地味に大きいですね。
民間保険会社の個人年金保険はお得度が低い
対して民間保険会社の個人年金保険はどうでしょう。
結論から言えば多くの個人年金保険は国民年金と比較するとかなりお得度は低くなっています。
といっても個人年金保険はかなり種類があります。
タイプ別の特徴も合わせて押さえておきましょう。
確定年金タイプ
まず、一番メジャーな確定年金タイプです。
名前の通り、将来もらえる年金受取り金額がはじめから確定しているタイプになります。
特徴としては年金受取り総額が決まっているので、利益が見込みやすいという点にでしょう。
また、個人年金保険は個人年金保険料控除が受けられます。全額が控除とはなりませんが、所得税と住民税の節税効果が見込むことが出来ます。
個人年金保険控除の控除額は以下のとおりです。
年間の支払保険料 | 所得控除額 |
---|---|
2万円以下 | 支払保険料の全額 |
2万円超~4万円以下 | 支払保険料×1/2+1万円 |
4万円超~8万円以下 | 支払保険料×1/4+2万円 |
8万円超 | 4万円 |
ただし、確定年金もデメリットがあるんですよ。
確定年金のデメリット1:儲かる金額が少ない
最大のデメリットはそもそも仕組み的に儲かる金額がかなり少ないことです。
人気の個人年金保険である日本生命の「みらいのカタチ年金保険」
例えばご提案例は以下のとおりとなっています。
月額19,022円 満期60歳、年金開始60歳
受け取り年金額72万円となります。
つまり、30年間月額19,022円払うと60歳から10年間72万円もらえる計算となります。
払込金額は30年総額で6,847,920円となります。
もらえる年金は10年間で7,200,000円です。
単純計算で105%くらいです。
つまり、30年間で5%増えただけなんですね・・・
もちろん前述の保険料控除が別途ありますがちょっと物足りない感じですね。
確定年金のデメリット2:インフレ未対応
また、確定年金はあらかじめもらえる金額が決まっています。
そのためインフレに対応できません。
インフレとは貨幣の価値が変わることです。
例えば今72万円で買えるものと30年後に72万円で買えるものが同じかどうかってことです。
もし倍払わないと買えない状態であれば実質的にもらった金額は半分の価値しかないってことになります。
国民年金はもらえる金額についてインフレ対応していますからここは大きな差となりますね。
終身年金タイプ
次は国民年金と同じく終身年金対応です。
つまり、生きている間一生涯年金がもらえるものです。トンチン年金など一部の個人年金保険がこちらになります。
なお、種類により期間保証がついているもの、ついていないもの、遺族への支給があるものないものがあります。
終身年金タイプのメリットは長生きすればするだけ得をするってことでしょう。
つまり、長生きリスクに備えることができるのです。
また、個人年金保険料控除が受けられるタイプがほとんどです。
終身年金のデメリット1:元が取れるまでかなり長い
多くの終身年金は元を取るまで生きるのは結構な長生きをしないと元がとれないかなり厳しい設計になっていたりします。
例えばある商品だと90歳まで生きてようやく元が取れたりします(支払った金額を回収できる)。
また、早くに亡くなると損する可能性があります。
中には早くに亡くなるとⅠ円も出ないものもありますのでその場合は完全な掛け損になります。
期間保証や遺族への支給があるタイプもありますが、その分掛け金が割高です。
国民年金は半分の財源は国なんですよ。
すべて民間の個人年金保険の終身年金ですべて賄おうとするとどうしてもこういう設計となってしまうんでしょう。
終身年金のデメリット2:インフレ未対応
終身年金も確定年金と同じくインフレ対応はしておりません。
ですからインフレになったらかなり損をしてしまう可能性すらあります。
変動年金タイプ
次は変動年金タイプです。
変動年金とは株式や債券などの資産の運用結果によってもらえる年金が変わってくるタイプです。
変動年金の最大のメリットはインフレに対応していることでしょう。
現在日本はインフレターゲット2%が設定されています。
インフレになればお金の価値がかわりますが、変動年金の場合はそれに応じて受け取れる可能性が高いです。
また、運用がうまくいけばそれだけ多く受け取れることも大きなメリットですね。
また、こちらも個人年金保険料控除が受けられるタイプがほとんどです。
変動年金のデメリット:実質的な手数料がバカ高い
変動年金の最大のデメリットは手数料の高さです。
特に保険会社が提供している変動年金の多くが保険会社の手数料が10%と近くとかなり高くなっており注意が必要なんです。
下記は小規模企業共済が出している資料ですが、だいたいどこの生命保険も10%程度の経費率があります。
つまり、投資した資金のうち10%は始めからさっぴかれてそこから運用するってことです。
出所:中小企業庁「小規模企業共済 給付経理から業務等経理への繰り入れについて」
これだけ手数料が高ければ運用も期待できませんよね・・・・
投資信託で手数料が0.01%下がったと騒いでいるのが馬鹿らしくなる水準です。
外貨建て年金タイプ
最後は外貨建て年金です。
こちらは基本的に確定年金と仕組みは似ていますが、外貨で運用して受け取りも外貨になるという点が大きな違いです。
ぱっと見の条件は結構よかったりすのですが気をつけないければならない点が多かったりします。
外貨建て年金の最大のメリットは円ではなく外貨で運用するため利率が高いケースが多くより多く年金がもらえる可能性があることです。
また、確定年金と同様に個人年金保険料控除の対象となり所得税や住民税の節税効果があることはメリットですね。
外貨建て年金のデメリット:為替リスク・手数料が高い
外貨建て年金の最大のデメリットは為替変動の大きなリスクが有ることです。
もちろん逆にプラスに働くこともありますが、利率がよい国というのはそれだけリスクがあるということも押さえておきたいところです。
また、外貨預金と同様に日本円に換算する際の手数料が掛かります。
これがかなり割高に設定されていますから、前述の変動年金と同様なかなか難しい商品なのです。
国民年金と個人年金比較まとめ
今回は「国民年金を払うよりも民間の個人年金保険に入ったほうが得ってホント?」と題して国民年金と民間保険会社などが出している個人年金保険との比較を見てきました。
結論としては以下のとおりです。
つまり、個人年金はお得度が国民年金はよりかなり下がりますのでまずは国民年金優先しましょうってことです。
また、保険を選ぶときに積立利率、予定利率、返戻率の意味をしっかり理解したいところですね。
先日、国民年金を払うよりも民間の個人年金保険に入ったほうが得ってホント?という記事を書いたところ、反響が大きく、質問メールを何件もいただきました。いただいた質問はすべて○○○って個人年金保険はどうでしょう?○○○年金共済って[…]
私のおすすめ
私のおすすめとしては、まず国民年金と付加年金を優先します。
それで余裕があれば個人型確定拠出年金(iDeCo)、自営業者ならばiDeCoにプラスして小規模企業共済を検討。
iDeCoと小規模企業共済を満額加入してもさらに余裕があれば個人年金保険を個人年金保険控除が有効に活かせる金額(年間8万円以内)だけ加入するって感じがおすすめですね。
加入するとしたらリスクが小さく元が取りやすい確定年金タイプが良いでしょう。
「明治安田生命のじぶん積立」などは少額入るならおすすめですね。
いつでも100%以上の受取率・返戻率なのが特徴となります。
例えばじぶん積立を最低掛金の5,000円を5年積み立てると10年後に309,000円戻ってきます。
5000円を5年払うと払込保険料は合計で300,000円ですので9,000円儲かったことになります。
率にすると3%ですからそれほど大きいわけではありませんが、年間35,000円の保険料控除が受けれますので所得税と住民税の節税効果も見込むことが出来ます。
iDeCoと小規模企業共済を全額加入してもまだ余裕がある人は検討してみてもよいでしょう。
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