このサイトで何度もご紹介しています大変お得な制度である個人型確定拠出年金(iDeCo/ イデコ)。
そんなiDeCoを巡って2020年10月6日付けの日経新聞に興味深い記事が出ていましたのでご紹介します。
老後資産形成への関心が高まるなか、個人型確定拠出年金(イデコ)の加入者が増えている。2年後には全会社員が加入できるようになり一段の普及が見込まれる。ただ自営業者らと異なり、退職金の手厚い会社員は思わぬ税負担が将来生じる可能性があることはあまり知られていない。イデコは税優遇が人気の理由だけに周知が課題になる。
出典:日経新聞 2020年10月6日
「退職金の手厚い会社員は思わぬ税負担が将来生じる可能性がある」ことがあまり知られていないというのです。
今回はそうならないようにiDeCo(イデコ)と退職金の関係についてわかりやすく解説していきます。
なお、iDeCoってなに?方は以下の記事をご覧ください。
この記事をみれば「iDeCo(個人型確定拠出年金)制度」から「つみたてNISAとの違い」、「おすすめ金融機関」、「おすすめ商品」、「いくら積み立てればよいのか」などを網羅的に確認することができますよ
iDeCo(イデコ)の受取り方は3つのやり方がある
個人型確定拠出年金(iDeCo/ イデコ)は原則として通算加入者等期間が10年以上あれば60歳になるとそれまでに積立てて運用した資産を受け取ることができるようになります。
iDeCoの受取りは比較的自由度が高く設計されおり、自分でどのように受け取るのかを選択することが出来ます。
逆に言えば自己責任なんですね。
この受取金のことを「老齢給付金」といいます。
老齢給付金の受取り方は主に3パターンあります。
○老齢年金:5年以上20年以下の有期年金として分割で受け取る
○併用:老齢一時金と老齢年金を併用する
どのパターンがよいのかはその人の退職金の額や生活によって大きく変わってきます。
また、受け取り方法によって税金の扱いも変わってきますので慎重に検討する必要があるのです。
今回の日経新聞で問題になっているのが「退職金の手厚い会社員は思わぬ税負担が将来生じる可能性がある」という点。
つまり。老齢一時金で受け取る場合です。
実は知識さえあれば「退職金の手厚い会社員は思わぬ税負担が将来生じる」というのは回避が可能なんですよ。
詳しく見ていきましょう。
老齢一時金として受け取る場合の控除の仕組み
iDeCoは基本的に支払った(掛けた)時に節税効果があり、受け取る時に課税される仕組みです。
しかし、受け取るときにも税制優遇がありうまく受け取れば税金を余り払わずに受け取ることが可能となった仕組み。
今回、問題となっているのは退職金が多い方だとその利点をうまく使えず多額の税金を払う必要があるという点なのです。
そうならないためにまず知っておきたいのが老齢一時金として受け取る場合の税金。
老齢一時金は扱いが退職金と同じ
老齢一時金として受け取った場合は税務上の扱いは退職金と同じ扱いとなります。
つまり、受け取ったお金は退職所得の扱いとなります。
退職金は税制面で優遇があり、「退職所得控除」の対象。
同じ枠を利用することになります。
iDeCoの老齢一時金も同じなのですが、会社からの退職金でその枠を使い切っていると活かせないということなんですね。
退職所得の計算
それではまず退職所得の計算は退職金の税金計算をみておきましょう。
(収入金額 - 退職所得控除額) × 1 / 2 = 退職所得の金額
退職所得金額×所得税率=所得税額
つまり、退職所得控除額からはみ出たぶんについては半分が課税対象となるってことですね。
逆に言えば退職所得控除額内で収まれば非課税ということです。
会社から退職金がたくさん出てすでに退職所得控除額を使い切ってしまえばiDeCo分については退職所得控除額がないというじょうきょうとなるのです。
退職所得控除額の計算方法
次に退職所得控除はどのように計算されるのでしょう?
計算式は以下の通りです。
勤続年数(=A) | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円✕A(80万円に満たない場合には、80万円) |
20年超 | 800万円+70万円✕(Aー20年) |
ちょっとわかりにくいと思いますので実際の例で解説していきます。
ちなみにiDeCoの場合の勤続年数は加入年数です。
つまり、早く入れば入るほど控除も大きくなるということです。
30年掛けた方の例
iDeCoを30年掛けた人の例で考えて見ましょう。
この場合、退職所得控除の額の計算は800+70万円×(30-20)で1,500万円となります。
つまり、30年で積立てた金額(運用益も含め)が1,500万円以内ならば非課税となります。
ですから退職所得控除の枠内で収まるならば一時金でもらうのがお得です。
では1,500万円を超えていたらどうなるのでしょうか?
2,000万円だった場合
積立てた金額(運用益も含め)が2,000万円だった場合を例に考えてみましょう。
この場合、(収入金額- 退職所得控除額) × 1 / 2 = 退職所得の金額の式にあてはめると
(2,000万円-1,500万円)× 1 /2 となります。ですから250万円分に対して税金が掛かることになります。
仮に税率20%の人ならば、250万の20%ですから50万円の税金・・・
かなり大きいですね。
会社から多額の退職金が出る場合
会社員で会社から退職金が出る場合や企業年金の一時金がもらえる場合や、自営業者で小規模企業共済に加入している方は要注意です
前述のようにiDeCoと退職所得控除の枠をシェアすることになるのです。
なお、イデコと勤務期間の重複期間がある場合には、イデコの加入年数と会社の勤務期間の長い方で控除を計算します。
例えば30年会社に勤めた方は前述と同様に1,500万円の控除枠があります。
もし、会社から1,500万円退職金がもらえるとすると、すでに退職所得控除枠はありませんのでiDeCo分については半分に税金がかかってくることになってしまうのです。
その場合は税金面でかなり損をしてしまうことになりますので、年金など他の受け取り方法を選択しましょう。
また、受け取り時期をズラすこともおすすめです。
受け取り時期をずらす方法
個人型確定拠出年金(iDeCo/ イデコ)の大きなメリットが払ったときの節税効果ですが、受け取るときに税金を払っていたらその分でメリットが低減してしまいますね。
特に今回の日経新聞の記事にあるように退職金がたくさん出る会社員の方は死活問題となります。
そこで裏技があるのです。
それは退職金などとイデコの受け取る時期をズラすという方法です。
そうすることで退職金とiDeCoの両方で退職金控除を使って受け取ることが可能となります。
使える条件は以下のとおりです。
2.退職一時金よりもiDeCoを後で受け取る場合、最後に受け取った退職一時金等から15年以降
ちょっとややこしいのでもう少し分かりやすく説明しましょう。
iDeCoが先で退職金が後(5年ルール)
先にiDeCoを受取りあとから退職金をもらう場合は1に該当します。
この場合には最後に受け取ったものから5年以降ならば再度退職金控除を使えるのです。
例えば60歳でiDeCoを受取り、会社の退職金の受取は65歳ならば両方の制度で退職金控除が利用できることになります。
これは自営業者の小規模企業共済も同じ扱いとなります。
ただし、会社の退職金の支給時期は会社の退職金規定等で決まっていて自分たちでどうこうできる問題ではないケースが多いでしょう。
もし、退職金がiDeCo受け取りから5年よりも早くに支給されてしまうケースの場合は、年金で受け取るか退職金控除内は一時金、残りは年金など他の受け取り方法を選択するのが良いでしょう。
なお、年金や併用での受け取りの際の控除額や注意点等はこちらの記事を御覧ください。
退職金が先でiDeCoが後(15年ルール)
退職金よりもiDeCoを後で受け取る場合には、最後に受け取った退職一時金等から15年以降ならば再度退職金控除を使えます。
こちらのパターンだと15年空けないといけないんですね。
だいぶ前に退職した会社からもらった退職金は計算から外せるってことですね。
ちなみにiDeCoは受け取り時期は任意となっており、今の所「60歳から70歳での間」となっています。
なお、2022年4月からは75歳までに延長するという話もあります。
この制度変更を利用すれば60歳ちょっと前に退職金を受け取り、75歳でiDeCoの老齢給付金を受け取り、ギリギリ15年ルールの適用するということもできなくはないという感じでしょうか。。。
まとめ
今回は「iDeCo(イデコ)と退職金の関係を知っておこう。控除枠を活用する上手な受け取り方、ずらす方法をご紹介」と題してiDeCoと退職金の関係について見てきました。
特に多くの退職金がもらえる予定となっている人はあらかじめこのあたりの話もシュミレーションしておきたいですね。
まとめると以下の通り。
- 老齢一時金で受け取りは退職金と控除枠が同じ(退職金控除)
- iDeCoを先、退職金を後にもらう場合は5年ルールが適用
- 退職金が先、iDeCoが後に受け取る場合は15年ルールが適用
- 退職金控除の枠がうまく活用出来ないなら年金受取や併用を検討しよう
個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)に加入するならこの5社から選ぼう
個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)を始めるならまずは金融機関を決める必要があります。
しかし、たくさんあってどこにしたらよいのかわからない方も多いでしょう。
簡単に決めてしまう方もおおいかもしれませんが、個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)の場合、金融機関ごとの違いがとても大きいですから慎重に選びたいところです。
私が今もし、新たに加入するならSBI証券、マネックス証券、松井証券、大和証券、楽天証券の5択の中から決めます。
(※私が加入しているのはSBI証券です)
この5つの金融機関は運営管理機関手数料が無料です。※国民年金基金連合会の手数料等は各社共通で掛かります。
また、運用商品もインデックスファンドを中心に信託報酬が低い投資信託が充実しているんですよ。
順番に見ていきましょう。
SBI証券
まずイチオシはSBI証券「個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)」です。
SBI証券は信託報酬も最安値水準のeMAXIS Slimシリーズを始めとしたインデックスファンドから雪だるま全世界株式、ひふみ年金、NYダウ、グローバル中小株、ジェイリバイブといった特徴ある投資信託をたくさん揃えているところが最大の魅力です。
選択の楽しさがありますよね。
また、確定拠出年金を会社員に解禁される前から長年手掛けている老舗である安心感も大きいですね。
SBI証券は運営管理手数料が無条件で0円ですし、なにより運用商品が豊富で選択の幅が広いです。現状最強のラインナップを誇ることになります。
また、他の証券会社に先んじて確定拠出年金の取扱をはじめてますから安心感が強いですね。
マネックス証券
次点はマネックス証券 iDeCoです。
こちらも後発ながらかなりiDeCoに力をいれていますね。
iDeCo初でiFreeNEXT NASDAQ100 インデックスを取扱い開始したのに興味をひかれる人も多いでしょう。
マネックス証券はeMAXIS Slimを多く取り扱っており、信託報酬がほとんど最安値水準でスキがありません。また、iDeCoでいち早くiFreeNEXT NASDAQ100 インデックスの取り扱いをはじめたところも大きなポイントになりますね。
松井証券
松井証券のiDeCoは35本制限まで余裕があるというのは後発の強みですね。
その35本制限までの余裕を生かして他社で人気となっている対象投資信託を一気に採用して話題になっていますね。
こちらも有力候補の一つですね。
2020年10月18日から取り扱い商品が大幅拡充されました。
人気となっているeMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)や楽天・全世界株式インデックス・ファンドなども採用され最強ラインナップといっても過言ではない充実ぶりですね。
大和証券
大和証券 iDeCoは大手証券会社でありながら、個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)にもかなり力を入れています。
他のネット証券と違い店舗が全国各地にたくさんあります。そこに魅力を感じる方にはおすすめできますね。
また、取扱商品もダイワつみたてインデックスシリーズなど信託報酬が安めの商品を取り揃えています。
運営管理機関手数料が無条件で無料ですし、商品も充実したことで選択肢となりえる金融機関になりましたね。中国株、ロシア株、ブラジル株のファンドへ投資できるなど特徴的な商品があるのが他との差別化要因かな。あとはiFreeシリーズ、とくに米国株さえ入れば十分に他と競争できると思いますので期待したいところです。
楽天証券
楽天証券は楽天・全世界株式インデックス・ファンドや楽天・全米株式インデックス・ファンドといった自社の人気商品の取扱が大きなポイントとなっています。
この2つのファンドは人気ですね。
楽天証券は楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド、楽天・S&P500インデックス・ファンド、楽天・全世界株式インデックス・ファンド、楽天・全米株式インデックス・ファンドといった楽天ブランドの人気商品の取扱が大きなポイントとなっています。今後は楽天SPUの対象になったりしたらかなり面白い存在ですね。
総合して考えるとこの5つの金融機関に加入すれば大きな後悔はないかなと思います。
他の運営管理機関もぜひがんばってほしいところですが・・・
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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