令和4年度税制改正大綱の概要をわかりやすく解説。住宅ローン減税、賃上げ税制など

令和4年度「税制改正大綱」が発表されました。

税制改正大綱とは各省庁から出された要望を元に自民党、公明党の税制調査会を中心に翌年度以降にどのように税制を変えるべきかを話し合い、まとめたものです。

これを元に国会に税制改正法案を提出する形となります。

現在、衆議院・参議院とも与党が過半数となっていますので、この税制改正大綱の方向に来年度の税制が進んでいくと思われる大変重要なものです。

今回は令和4年度税制改正大綱の中で特にこのサイトに訪れる方が興味ありそうなお金に関わりそうな内容を抜粋して見ていきましょう。

平成31年度、令和2年度、令和3年度の税制改正大綱についてはこちらの記事を御覧ください。

ほとんどこの通りに改正されていますね。

住宅ローン減税の改正

まずは住宅ローン減税です。

令和3年度税制改正大綱でも住宅ローン控除は改正されましたので2年連続ですね。

今回の令和4年度税制改正大綱で最も個人への方へ影響が大きい話かもしれません。

住宅ローン控除の改正は大きなポイントが3つあります。

控除率0.7%へ引き下げ

住宅ローン控除は今までローン残高の1%を所得税や住民税から差し引く仕組みとなっていました。

しかし、昨今の低金利の影響で住宅ローン控除の控除率(1%)を下回る借り入れ金利で借りている人も多くいます。

そのため、住宅ローン控除の方が住宅ローンの支払利息額より上回っていることから見直しとなりました。

令和3年度税制改正大綱の時点では支払利息が住宅ローン控除を下回っているようならそちらに合わせる形に変更するということを検討するという話でしたが、事務負担が大きいということで一律で控除率を引き下げる事に。。。

具体的に住宅ローン減税の金額は以下のようになります。

住宅ローン残高の1%→住宅ローン残高の0.7%
0.3%控除が減るということです。
例えば住宅ローンが3,000万円残っている方なら1%なら30万円の控除ですが、0.7%なら21万円と9万円控除が減ることに。
今までの支払利息よりも減税が大きいという逆ザヤになっていた方が多くお得すぎたという部分もありますがかなり大きな変更となりますね。

消費税増税時の13年控除の特例がさらに4年延長

逆に少し有利となる改正もあります。

おそらく前述した控除率引き下げによる住宅市場の冷え込みを防ぐための措置なのでしょう。

住宅ローン控除は本来10年間受けられるものです。

それが消費税が8%から10%に増税される際に住宅需要が大きく落ち込まないように期限付きで消費税増税分に該当する3年間延長して13年間控除が受けられる特例が導入されていました。

その期限は2年延長され令和3年末まででしたが、さらに令和7年12月31日までと4年延長する事になりました。

ただし、環境性能に応じて以下の限度額に条件が入ります。

※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。

居住年借入限度額控除率控除期間
認定住宅令和4年・令和5年5,000万円0.7%13年
令和6年・令和7年4,500万円
ZEH水準省エネ住宅令和4年・令和5年4,500万円
令和6年・令和7年3,500万円
省エネ住宅令和4年・令和5年4,000万円
令和6年・令和7年3,000万円
上記以外令和4年・令和5年3,000万円
令和6年・令和7年2,000万円10年

環境性能が高い住宅を優遇することで利用を促進するという面もありますね。

前述のように控除率は減りますが、3年控除期間が増えますので控除額によっては得となる方も出てきそうです。

中所得者層は控除を受けられる総額が増えるという試算もありますね。

住宅ローン減税の対象者が拡大

住宅ローン減税を受けられるのは所得3,000万円以下という上限がありました。

それが今回改定されます。

所得要件は2,000万円以下となりました。

今まで住宅ローン減税の対象じゃなかった方も対象になるってことですね。



賃上げ税制

次は賃上げ税制です。

今回の令和4年度税制改正大綱の目玉ですね。

岸田政権が掲げる「成長と分配」の肝いり政策となります。

今回の制度を簡単に言えば給料を上げた会社には法人税等を安くしまっせってことです。

もともとあった所得拡大促進税制の拡張版みたいなものですね。

具体的には以下のようなルールとなります。

この制度については愚策としか言いようがなく、愚痴が多くなっていますのでご勘弁ください。

賃上げ税制の仕組み

令和4年4月1日から令和6年3月31日までの期間に開始する事業年度において継続雇用者の給料支給額が3%以上増加すると15%法人税もしくは所得税を控除することができます。

さらに大企業は給料総額を前年比で4%以上増加させると10%加算。教育訓練費を前年比で20%以上増加させると5%控除率が上乗せさせる形となります。

最大で30%控除されるのです。

中小企業は基本が前年比1.5%以上増加で15%税額控除。さらに給料総額を前年比で2.5%以上増加させると15%加算。教育訓練費を前年比で10%以上増加させると10%控除率が上乗せさせる形となります。

こちらは最大で40%控除されます。

まとめるとこんな感じですね。

※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。

大企業中小企業
給料支給総額3%以上増で15%1.5%以上増で15%
給料支給総額4%以上増で10%上乗せ2.5%以上増で15%上乗せ
教育訓練費20%以上増で5%上乗せ10%以上増で10%上乗せ
税額控除最大30%最大40%

なお、上限は法人税額の20%までとのこと。

例えば1,000万円総額が増えれば大企業で300万円まで法人税から引けるようになるということです。

つまり、給料をあげたり、教育訓練を行う企業を優遇するインセンティブになるような制度となっているわけです。

ただし、個人的にこの制度ほとんど意味がないだろうな、現場しらないだろうなってレベルの酷いものと感じています。

それは以下のような理由からです。

賃上げ税制はそもそも効果が薄かった

この賃上げ税制の元となる制度は2013年位からあります。

しかし、ほとんど効果を示せてないんですよ。

そこでさらに2年間限定で人参を増やしたのでしょうがそれで企業が動くとは到底思えません。

ですから効果がでるのは疑問しかありません。

法人税や所得税の減税は黒字企業にしか効果がない

そもそも根本的な問題として法人税や所得税の減税をしたところで影響のあるのは黒字企業だけという部分があります。

法人税や所得税を減税してもそもそもほとんど払っていない赤字企業にはまったく意味をなさない政策なんですよ。

ちなみに現在の赤字企業の割合は65.4%と半分以上なのです。

つまり、今回の賃上げ税制で利用する可能性があるのは黒字である34.6%だけです。

 国税庁が2021年3月26日に公表した「国税庁統計法人税表」(2019年度)によると、赤字法人(欠損法人)は181万2,332社だった。全国の普通法人276万7,336社のうち、赤字法人率は65.4%

出典:東京商工リサーチ

さらに黒字でもおまけ程度に黒字にしている企業も多く、法人税や所得税を減税されても微々たるものでインセンティブが働かない企業も多くあります。

ですから法人税や所得税の減税というのが人参というのが無理あるのです。

また、たとえ黒字幅が大きくても最大控除を受けようとすると大企業なら給料支給総額4%、教育訓練費20%以上増加させる必要があります。

それだけの費用を増やしてまで法人税等を30%控除させることでのインセンティブとして足りているのかと言われると企業によりますが微妙な感じなんですよ。

格差是正には繋がらない

また、この制度当初の話では基本給での判断とのことでした。

しかし、基本給は一度あげたら下げるのは困難ということで反発が多く、給料総額ということになり、賞与も含んだ総額で判断される形となっています。

ですから一時的な賞与アップでもクリアが可能なんですよ。

岸田総理は過去の発言をみてると賃上げ税制で格差の是正がやりたかったようです。

しかし、この仕組みだと優秀な辞めてほしくない社員にだけたくさん賞与積むということも可能となり格差是正には繋がらないでしょう。

むしろ、この賃上げ税制を利用しようと考える経営者は格差を拡大する方向にシフトするはずです。

また、そもそも前述のように赤字企業に勤めている方には影響が及びません。

赤字企業の方が当然給料も低い傾向にあるでしょうからね・・・

つまり、格差是正が目的とするとこの賃上げ税制の制度設計がそもそも間違えているとしか言いようがありません。

この賃上げ税制では賃上げに繋がらないですし、格差是正には繋がらないでしょうね・・・

減資する企業が増えるかも

さらに最近増加傾向にありますが減資する企業が増えてしまうリスクもあります。

減資とは資本金を減少させることで、それで中小企業とみなされればいろいろなメリットがあるんですよ。

今回の賃上げ税制でも中小企業となるだけで控除が大きくなりますからね。

詳しくはこちらを御覧ください。




その他の目についた点

今回の目玉は前述した2つの改正でしょうね。

他にも細かい改正や将来への考え方が明記されています。

個人的に目についたのは以下の3つをご紹介しておきましょう。

電子帳簿保存法関連

まずは電子帳簿保存法関連です。

これあまり話題になっていませんでしたが、経理担当者などにはかなり大きな影響を与えるものだったんですよ。

電子データで受け取った書面保存ができなくなるという改正が加わっていたのです。

詳しくはこちらをご覧ください。

ただし、2022年1月からと急な話なのもあり、事業者の対応が間に合わないため、2年間の宥恕措置が設けられることになりました。

上場株式の配当金の扱い

今まで上場株式の配当金は住民税と所得税で違う方式を選択することができました。

特定口座で配当金を受け取るときに所得税は総合課税を選択して、住民税は特定口座のままという手段をとることで節税が可能だったのです。

しかし、今回の改正で以下のような文言が追加されています。

個人事業主において、特定配当等及び特定株主等譲渡所得金額に係る所得の課税方式を所得税と一致させることとする

つまり、住民税と所得税で同じ計算方式を取りなさいってことです。

今までの抜け道のようなルールがおかしかったとはいえ大きな影響を与えそうです。

なお、この改正は令和6年度分以後の個人住民税から適用されるとのこと。

公平な税制のあり方

公平な税制としてちょっと怖い文言がいくつか並んでいます。

私的年金や退職給付のあり方は、個人の生活設計にも密接に関係することなどを十分に踏まえながら、拠出・運用・給付の各段階を通じた適正かつ公平な税負担を北保できる包括的な見直しに向け・・・

これはiDeCoなどを指しているのでしょう。

よい方向に改正されれば良いのですが。。。

また、金融課税の強化についても名言されています。

高所得者層において、所得に占める金融所得等の割合が高いことにより、所得税負担率が低下する状況が見られるため、これを是正し、税負担の公平性を確保する観点から、金融所得に対する課税のあり方について検討する必要がある

所得に占める金融所得等の割合が高いことというのは1億円の壁の話でしょうね。

詳しくはこちらの記事を御覧ください。

令和3年の税制改正大綱でも住宅ローン減税の逆ザヤ問題が取り上げられて令和4年で改正が入りましたのでちょっと怖いところですね。




まとめ

今回は「令和4年度税制改正大綱の概要をわかりやすく解説。住宅ローン減税、賃上げ税制など」と題して令和4年度税制改正大綱を見てきました。

個人的には今回の令和4年度税制改正大綱はかなりひどいな・・・って感じています。

といっても決まってしまうでしょうから受け入れるしか無いでしょうね。

こういった制度改正は知っているか知っていないかで大きな差となりますのでぜひ頭の片隅においておいてくださいね。

なお、元資料はこちらからお読みいただけます。

>>令和4年度税制改正大綱

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