先日、金融広報中央委員会よりかなり面白い調査が発表されました。
「金融リテラシー調査 2022年」です。
これは2022年2月25日(金)~3月14日(月)に全国の18~79歳の個人(日本全体の人口構成とほぼ同一の )30,000人のデータに行った調査となります。
今回はその調査の中でも特に注目すべき項目についてみていきます。
この調査2019年にも行われており、紹介したことがありますが結果は多少変わっていますね。
日本人の金融リテラシーは低下傾向
まずは日本人の金融リテラシーの状況から見ていきましょう。
こちらは金融知識・判断力を問う設問、行動特性・考え方等を問う設問を元に金融リテラシーを確認したものとなります。
結論から言えば2019年の調査より低下していますね。
出典:金融広報中央委員会 金融リテラシー調査 2022年
全体の正答率は55.7%、2019年のときは56.6%でしたから正答率が落ちている形ですね。
問題はある程度金融知識が有る方にとってはそれほどい難しくありません。
例題としてでているのがこんな感じのものです。
アメリカとの比較
比較可能な正誤問題の正答率は、日本 47%でした、
米国 50%と負けていますね。
出典:金融広報中央委員会 金融リテラシー調査 2022年
とくに複利について日本人が43%に対して、アメリカ人は72%とかなり大きな差があるのが分かります。
また、短大・専門学校・大学・大学院などの高等教育を受けているはずの人たちがアメリカと比べて負けていますね。
OECD参加国との比較
アメリカ以外の国と比較するとどうでしょう?
OECD参加国との比較では以下の通り。
出典:金融広報中央委員会 金融リテラシー調査 2022年
全体平均にも負けていますね。
香港やオーストリアの方はかなり高くなっています。
特に知識で他国と比べて劣っていますね。
比較可能な正誤問題の正答率(知識面)では「インフ レ」、「分散投資」が、行動面では「お金への注意」が見劣りしています。
50%の確率で 2 万円の益、1 万円の損の商品は投資する?
前回もご紹介しましたが、今回もこちらの調査がありました。
みなさんもこの選択を考えてみてください。
自分の考えがまとまってから続きを読みましょう。
大数の法則
結論を言えばこの勝負は何回もできるならやったほうが有利な勝負です。
プラスになる確率とマイナスとなる確率は半々で、それぞれ2万円得するのか1万円損するのかという勝負です。
計算をすると期待収益率は5%となります。
つまり、何回もこの勝負を繰り返せば最終的には5%プラスに収束するって予想となるのです。
5%が高いか低いかはおいておいても何回も勝負すればプラスになる確率の方が高い勝負ですからやったほう得なんです。
投資の基本は期待値が高い取引(期待値が高い商品)を損切りと利食いをしっかり行いながら大数の法則に従って売買することです。
大数の法則とは、コイン投げを数多く繰り返すことによって表の出る回数が1/2に近くなど、数多くの試行を重ねることにより事象の出現回数が理論上の値に近づく定理のことをいいます。
つまり、たくさんの勝負をすることで期待値に近づけるってことですね。期待値が高い勝負を繰り返せば高い確率でプラスになるってことなのです。
今回の質問の内容は期待値が高くなっていますから勝負するほうが優位なのです。
日本人の選択
前述の勝負。
日本人は25.9%の方がが投資をすると判断。
74.2%の方が投資をしないと判断しています。
出典:金融広報中央委員会 金融リテラシー調査 2022年
過去の調査よりは投資をする方が増えていますがまだまだ少ないですよ。
おそらく投資をしないを選択した方は損を出すのが許容できない人なのでしょう。
ちなみに男女別、年齢別でもかなり差があります(投資しない人の割合)
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。
男性 | 女性 | 合計 | |
18歳から29歳 | 58.7% | 80.3% | 69.4% |
30歳代 | 55.7% | 80.7% | 68% |
40歳代 | 61% | 83.8% | 72.2% |
50歳代 | 68.2% | 86.9% | 77.6% |
60歳代 | 69.7% | 86.7% | 78.4% |
70歳代 | 70.9% | 83.9% | 77.9% |
合計 | 64.2% | 83.9% | 74.2% |
出典:金融広報中央委員会 金融リテラシー調査 2022年
女性の方が男性よりも損失回避傾向が強いですね。
また、高齢者になればなるほど損失回避傾向は強くなっています。
今の10万円と1年後の11万円
次は行動経済学でいうところの双曲割引や現在志向バイアスの話です。
今回の調査では近視眼的行動とされていますね。
お金を必ずもらえるとの前提で以下のどちらを選ぶか
○今10万円 をもらう
○1年後に11万円をもらう
みなさんもこの選択を考えてみてください。
自分の考えがまとまってから続きを読んでいきましょう。
多くは近視眼的
こちらは普通に考えれば1年後にもらえる11万円の方が有利な選択肢です。
1年でノーリスクで10%もらえるわけですからね。
しかし、アンケートでは以下の結果となっております。
今10万円をもらうを選択するを選択するか否か
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。
あてはまる | そこそこあてはまる | どちらともいえない | あまりあてはまらない | あてはまらない |
32.1 | 14.3 | 16.5 | 12 | 25.2 |
出典:金融広報中央委員会 金融リテラシー調査 2022年
5段階になっていますのでちょっと分かりにくいですが、今もらえる10万円を選択する方が多いってことがわかります。
つまり、合理的な判断ができていない人が半数近くいるということになります。
ちなみにこの割合は年齢が高くなるほど多くなる傾向があります。
これはもしかしたら1年後だと自分が亡くなってもらい損ねてしまうという心理が働いているのかもしれません。
損をする方が多いのに年金の繰り上げを選択する方が多く、繰り下げを選択する方が少ないとか、とてもお得なのにiDeCoがいまいち普及しきれていないのはこんなところも影響してそうです。
また、男女別でもかなり違いがあります。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。
男性 | 女性 | 合計 | |
18歳から29歳 | 42.5% | 43.6% | 43.1% |
30歳代 | 41.1% | 39.5% | 40.3% |
40歳代 | 42.8% | 38.3% | 40.6% |
50歳代 | 46.9% | 40.2% | 43.6% |
60歳代 | 54.6% | 47.1% | 50.7% |
70歳代 | 64.2% | 55.0% | 59.3% |
合計 | 48.6% | 44.1% | 46.4% |
出典:金融広報中央委員会 金融リテラシー調査 2022年
先程の調査結果とは逆で男性の方が目の前の10万円に弱いという傾向がわかりますね。
目の前の10万円に釣られる人は金融トラブルに巻き込まれやすい
また、このようなデータもありました。
※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。
金融トラブル経験者 | 消費者ローンを借りている | お金を借りすぎていると感じている | |
全体平均 | 7.3% | 4.8% | 11.6% |
今の10万円を選択した人 | 9.3% | 6.8% | 17% |
出典:金融広報中央委員会 金融リテラシー調査 2022年
目の前の10万円を選択された方は金融トラブル経験者の割合、消費者ローンを借りている割合、お金を借りすぎていると感じている割合とも全体平均よりも多いのです。
この辺りも金融教育が不足しており、合理的な判断ができていないというところに影響しているのかもしれませんね。
まとめ
今回は「今もらえる10万円と1年後もらえる11万円。どちらを選択する?金融リテラシー調査2022の結果。」と題して「金融リテラシー調査 2022年」から特に行動経済学に関連する内容をご紹介しました。
基本的に日本人は金融教育が足りていないな・・・ってのが結論です。
老後生活年金だけでは足りない問題とかが露呈して大きな騒ぎになってしまっているのもこういうところが影響しているのでしょうね。
また、お金と行動経済学は切っても切り離せない内容ですからまずはここから勉強してみるのもよいでしょう。
行動経済学おすすめ本はこちらを御覧ください。
行動経済学ってあまり聞き慣れないと思いますが、お金を考える上でとても重要な理論になります。これを知っているだけでお金持ちになる第一歩が開かれたといっても過言ではないです。行動経済学の歴史は浅く2002年にダニエル・カーネマン[…]
金融リテラシー調査 2022年には他にも注目の調査結果があります。
こちらの記事も合わせて御覧ください。
なお、元の調査結果はこちらから御覧いただけます。
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