IT企業の「サイバーエージェント」が新入社員の初任給を42万円にすると発表して大きな話題となっています。
他社の新卒初任給と比べてかなり高いインパクトのある水準となっています。
IT系は人材獲得競争が激しくなっていることから実施されたものと思われます。
しかし、募集要項をしっかり読んでみるとそこまで高くないことが判明したんですよ。
今回はサイバーエージェントの初任給42万円のカラクリを解説していきます。
本記事のYou Tube版はこちら。合わせて御覧ください。
サイバーエージェントの初任給42万円を他社と比較
まずはサイバーエージェントの初任給42万がどれだけ高いかについて他社と比較してしましょう。
サイバーエージェントの新卒採用募集要項
まずは募集要項からサイバーエージェントの新卒採用募集要項について詳しく見ていきましょう。
【ビジネスコース】
・42万円/月(*年俸制504万円)【 エンジニアコース】
1:能力別給与体系(最低年俸504万円~/個々人の能力別に当社独自の基準で評価)
2:エキスパート認定(最低年俸720万円~/高度な技術や実績、成果をお持ちの方が対象)【クリエイターコース 】
・42万円/月(*年俸制504万円)出典:サイバーエージェント 新卒採用募集要項
確かに月42万円の初任給となっています。(エンジニアコースのエキスパート認定の方はさらに高い)
これを額面どうり受け取ればかなり他社と比較して高いことが分かります。
参考までに日本最大の企業のトヨタ自動車の新卒採用募集要項と比較してみましょう。
トヨタ自動車の新卒採用募集要項
トヨタ自動車の新卒採用募集要項は以下のとおりとなっています。
事務職・技術職(総合職)
学部卒業相当:月給20万8000円
修士修了相当:月給23万円
博士修了相当:月給26万4000円
高専卒業:月給18万1000円
専攻科卒業:月給20万8000円一般職
大学卒業:月給18万6,000円
短期大学・専門学校(2年制)卒業:月給16万6,000円出典:トヨタ自動車 募集要項
日本で一般的な初任給のイメージにありそうな数字が並んでいますね。
ソフトバンクの新卒採用募集要項
サイバーエージェントと同じIT企業のソフトバンクではどうでしょう?
総合職
高専卒(本科):月給237,000円~
大 卒・高専卒(専攻科):月給247,000円~
修士了:月給268,200円〜
博士了:月給278,800円~アソシエイト職
月給209,000円販売職(ソフトバンク クルー)
月給210,000円出典;ソフトバンク 募集要項
多少トヨタ自動車より高くはなっていますが、そこまで高いわけではなさそうです。
サイバーエージェントの初任給42万円のカラクリ
個人的にはサイバーエージェントの初任給42万円は見せ方がうまいな・・・っていうだけであまり高いと感じないんですよ。
2つのカラクリがあるのです。
詳しく見てみましょう。
年俸制であること(賞与が含まれる)
まずサイバーエージェントの初任給42万円となっていますが、年俸制なんですよ。
募集要項にも「年俸制504万円」と書いてありますよね。
年棒制とは従業員に支払う賃金を年単位で決定する給与体系のことで、年で支払う金額を決めているのです。
実際に504万円を12ヶ月で割るとちょうど42万円です。
つまり、42万円は年俸制の1ヶ月分なんですよ。
年俸制は一般的に賞与が含まれた金額です。
ですから一年間で貰えるのが504万円ってこと。
つまり、初任給42万円には賞与も含まれているということですね。
一方、トヨタ自動車やソフトバンクは年俸制の表記ではありませんので別途賞与がでます。
例えばトヨタ自動車の賞与は2022年で6.9カ月分予定となっています。(新卒の方は満額はでないと思いますが・・・)
その部分が含まれていないんですよ。
ですから単純比較できないところがあります。
それでもサイバーエージェントは高めだとは思いますが、他社に圧倒的な差をつけているわけではないのです。
固定残業代が含まれる
もう一つ見落としがちな要素があります。
それはサイバーエージェントが固定残業代を採用しているという点です。
固定残業代とは一定時間の残業を想定し、あらかじめ月給に残業代を固定で記載し、残業時間を計算せずとも固定分の残業代を支払うという制度のこと。
つまり、初任給42万円には残業代も含まれているということになります。
具体的には月々の給料には以下の残業代と見込まれています。
固定残業代の相当時間:時間外80.0時間/月、深夜46.0時間/月
出典:サイバーエージェント 新卒採用募集要項
これを超えれば別途残業代は支給されますが、それ以内だと残業代は支給されないということですね。
一方、トヨタ自動車の初任給には残業代は含まれていませんので、残業をすれば別途支給されます。
ちなみに残業代は
- 時間外労働:割増率1.25倍以上
- 休日:割増率1.35倍以上
- 深夜残業:割増率1.5倍以上
- 休日+深夜残業:割増率1.6倍以上
と定められており、通常に働いた時間よりも割増で支払われるんですよ。
ですからこちらの面でも単純比較できないところがあります。
サイバーエージェントの形式のほうがわかりやすいといえばそうですけどね。
まとめ
今回は「サイバーエージェントの初任給42万円。実はそこまですごくない件。カラクリを解説」と題してサイバーエージェントの初任給42万円のカラクリを見てきました。
明瞭な給料になっていますので個人的には良いと思いますが、単純に他社と比較できないという話です。
海外ではサイバーエージェントのような年俸制の企業も増えていますし、IT系は特に人材争奪戦がすごいと聞きます。
今後はこういう形式の給料の見せ方が多くなってくるかもしれませんね。
カラクリと書きましたが、サイバーエージェントの取り組みはとても賛同できるものです。
さらに家賃補助制度「2駅ルール」や「どこでもルール」など表面上の給料に含まれない福利厚生も充実していますしね。
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