将来のことを考えて「EVコンセントはとりあえず付けておけば安心」。
そう思っていた私が、いざEVを購入して直面したのは「配線が細くて3kWまでしか充電できない」という現実でした。
新築時の"たった数千円"の判断が、将来の充電速度と追加工事費を大きく左右します。
この記事では、私の実体験をもとに「なぜ最初から6kW対応の配線を引くべきなのか」を徹底解説します。
「とりあえずEVコンセント」の落とし穴
新築を建てるとき、ハウスメーカーの担当者からこんな提案を受けることがあります。
EVコンセント、つけておきますか?
将来のためにとりあえず付けておく方が多いですよ
深く考えずにこの言葉に素直に頷いた結果、私は後に後悔することになりました。
問題は「EVコンセントを付けるかどうか」ではなかったのです。
どんな配線を通すのかが最大のポイント
「どんな仕様の配線を通しておくか」だったのです。
ここを見落とすと、数年後にEVを買ったとき「充電に20時間かかる」「6kW充電にしたいけど、壁の中の配線を全部やり直し」という事態になりかねません。
実際、私の自宅はハウスメーカーの提案を受けて
という感じにする配線をあらかじめ引いてもらいました。
※EVコンセント本体は将来自分が乗るEVの規格がわからないためつけていません。
なお、配線は「VVF 2芯×2.6mm+アース線」で施工されていました。
この配線は最大20Aまでしか対応できず、200V×15A=3kW充電が上限です。
6kW充電をしようと思ったら、配線そのものを引き直す大掛かりな工事が必要になります。
テスラのウォールコネクターなんかだと最大9.6 kW / 48 A
ぜんぜん対応できないんですよ。
壁の中を通してきれいに仕上げた配線を、わずか数年で「やり直し」。
想像するだけでため息が出ます。
しかもうちのハウスメーカーの場合は鉄骨でちょっと特殊なのもあり、多くの電気屋さんから断られるという・・・
配線を引き直すとしたらハウスメーカーに頼むしかないんですよ。(かなり高い笑)
そもそもハウスメーカーや工務店の営業担当者は、往々にしてEVの専門家ではありません。
「EVコンセントをつけてほしい」と要望すると、彼らは過去の慣例に従い、日本で一般的なプラグインハイブリッド車(PHEV)に合わせた「20A(3kW)」の配線(多くの場合、VVFケーブルの2.6mm)を標準として見積もりに組み込んでしまうのです。
うちもそうでした。
EVの配線をあらかじめすることは決めていましたが、配線の太さをどうするかという相談もしていないんですよ。
つまり、本当に大事なのは「EV充電器を付けること」ではなく、「6kW対応へ進化できる家を最初から仕込むこと」だったのです。
そもそも3kWと6kWは何が違うのか
EV充電の「3kW」と「6kW」という数字。
ここで一度、きちんと整理しておきましょう。
充電速度の違い
3kWとは「200V×15A=3,000W」の電力で充電すること。
6kWとは「200V×30A=6,000W」の電力で充電することです。
電力が2倍になれば、単純計算で充電時間は半分になります。
具体的な例で見てみましょう。
バッテリー容量40kWhのEV(日産リーフ相当):
3kW充電では約8時間。
6kW充電では約4時間。
バッテリー容量60kWhのEV(リーフe+相当):
3kW充電では約12時間。
6kW充電では約6時間。
帰宅が遅い日や、翌朝早くに長距離を走る予定がある日。
3kW充電では「一晩で足りない」ケースが現実的に発生します。
配線の太さが決定的に違う
ここが本記事の核心です。
3kW充電に必要な配線は単線2.0mm、単線2.6mm、より線5.5mm²。
一方、6kW充電に必要な配線は「より線8mm²」以上です(出典:パナソニック EV充電用コンセント設置ガイドライン)。
この「配線の太さの違い」が、あとからのアップグレードを困難にする最大の要因です。
コンセントやブレーカーの交換は比較的簡単です。
コンセントは数千円、ブレーカーも1〜2万円程度。
電気工事士に頼めば半日もかかりません。
しかし、壁の中を通っている配線の交換は話が違います。
壁を開ける、天井裏を這う、場合によっては外壁に穴を開け直す。
新築時に隠蔽配線できれいに仕上げた家であればあるほど、配線の引き直しは大工事になります。
最近の家は断熱材がいっぱいに詰まっているため、隙間も少なくあとから配線を這わせるのはかなり大変なんですよ。
費用も10万円〜数十万円に跳ね上がることも珍しくありません。
新築時のコスト差はわずか
ところが、新築時であればこの差はほぼありません。
2.6mmの電線も8mm²のCVケーブルも、配線工事そのものの手間は同じです。
材料費の差は、一般的な配線距離(10〜20m程度)であれば数千円程度。
つまり、新築時に6kW対応の配線を選んでも、追加コストは微々たるものです。
これが「新築時に6kW対応の配線を通しておくべき」と強くおすすめする最大の理由です。
ちなみにLANケーブルのカテゴリーも同様ですね。
将来を見越してCAT.6A以上にしておくのがおすすめです。
「今はEVに乗る予定がない」という方へ
「でも、うちは当分ガソリン車だし……」
そう考える方も多いでしょう。
私もそう考えていたので、EVの配線をする内容を決めるときに深く調べもしなかったんですよ。
実際、日本国内のEV・PHEV新車販売比率は2026年2月時点で約3.4%にとどまっています。
「まだまだ先の話でしょ」と感じるのは自然なことです。
しかし、ここで一つ重要な視点をお伝えしたいのです。
「家」と「車」の時間軸は違う
新築住宅の耐用年数は30〜50年です。
一方、車の買い替えサイクルは5〜10年程度。
つまり、今建てる家には3〜5回の車の買い替えが訪れます。
日本政府は2035年までに新車販売を100%電動車(EV・PHEV・HEV・FCV)にする目標を掲げています。
2030年時点でのEV・PHEV比率の目標は20〜30%です。
メーカー各社もこの方針に沿って開発を加速しており、トヨタは2026年までにEV10モデル投入・年間150万台販売を目指し、日産も2030年までにEV19車種を含む電動車27モデルの投入を計画しています。
つまり、今建てる家が建っている間に、あなたやご家族がEVを「選ぶ」可能性は、かなり高いと言えるのです。
私も調べているうちにEVの魅力に気づいて、予想以上に早くEV車に乗ることを決めてしまいました。
ノルウェーの教訓
「それは日本の話でしょ?」と思われた方に、ノルウェーの事例をご紹介します。
ノルウェーでは2025年7月にBEV(純粋な電気自動車)のシェアが97.2%に達しました。
ほぼすべての新車がEVになったのです。数年前まではここまで急激な変化を予測する声は少数派でした。
もちろん、日本とノルウェーでは市場環境が異なります。
しかし、「変化は来ないだろう」という楽観的な見通しが覆された事例として、参考になるのではないでしょうか。
家を建てるときに「壁の中の配線」を将来に対応させておく。
これは「保険」ではなく「投資」です。
しかも、新築時なら追加コスト数千円の投資です。
新築時にやるべき「4つの具体策」
では、具体的に何をすればよいのか。
ハウスメーカーとの打ち合わせで伝えるべきポイントを整理します。
配線は「8mm²以上」を指定する
最重要ポイントです。
分電盤からEVコンセント設置予定場所まで、CVケーブル8mm²(またはそれ以上)で配線してもらいましょう。
3kW充電しか当面使わないとしても、配線だけは6kW対応にしておく。
これにより、将来6kWにアップグレードする際は、ブレーカーとコンセント(または充電器本体)の交換だけで済みます。
なお、配線距離が長い場合(25m以上など)は、電圧降下も考慮する必要があります。
電気工事業者に相談し、適切な太さを確認してください。14mm²を選択する方もいます。
分電盤のスペースを確保する
6kW充電用のブレーカーは40Aが必要です。
分電盤の空き回路を確認し、将来40Aのブレーカーが追加できるスペースを確保しておきましょう。
また、2025年の内線規程改訂により、外付け分岐回路盤方式など、6kW充電設備の施工方法が新たに規定されました。
分電盤内に空きがない場合でも、外部にEV専用の分岐回路盤を設置する方法も選択肢に入ります。
この点もハウスメーカーや電気工事業者に伝えておくとよいでしょう。
電力契約を意識しておく
6kW充電は200V×30Aで動作します。
これは100V換算で60Aに相当します。家庭内の他の電気使用と合わせて、ブレーカーが落ちない契約容量が必要です。
ただし、IHクッキングヒーターも最大6kWですし、オール電化の住宅では8kVA以上の契約が一般的。
6kW充電が「特別に大きな電力」というわけではありません。
新築時であれば、電力契約の設計段階でEV充電分を織り込んでもらうことが可能です。
後からの契約変更は手続きが面倒になることもあるため、最初から余裕を持った設計をおすすめします。
コンセント位置と設置高さを計画する
駐車スペースのどこに給電ポートが来るかを考え、コンセント位置を決めましょう。
車種によって給電ポートの位置(前方・後方・側面)は異なります。
設置高さについては、地上約160cmの「目の高さ」に設置すると、プラグの抜き差しが楽になります。
低すぎると腰をかがめる動作が毎日のストレスになりかねません。
また、家の壁面から駐車位置が離れている場合は、EVコンセント用にポール設置も検討してください。
外構を整える前であれば、配線の埋設工事も容易です。
芝やコンクリートを敷いた後では、大掛かりな工事になります。
「とりあえず3kWコンセント」でも大丈夫?
ここまで読んで、「でも、3kWで十分じゃないの?」と感じる方もいるでしょう。
3kWでも「使えない」わけではありません。
日常の走行距離から逆算してみましょう。
EVの電費(燃費に相当するもの)の平均は約6km/kWhとされています。
1日の走行距離が30kmなら、消費する電力量は5kWh。3kW充電なら約1.7時間で補充できます。
これなら十分です。
問題は「想定外」が起きたときです。
週末に遠出した帰り、翌朝も早くに出発しなければならない。
家族がもう1台EVを持つことになった。
バッテリー容量が大きい車に買い替えた。
こうした「ライフスタイルの変化」に対応できるかどうか。
3kWと6kWの差は、まさにこの「余裕」の差なのです。
繰り返しますが、コンセントやブレーカーは後から交換できます。
しかし、壁の中の配線は簡単には変えられません。
だからこそ、新築時に「配線だけは」6kW対応にしておくことを強くおすすめします。
V2H(Vehicle to Home)を見据えた選択
もう一つ、将来を見据えて知っておいていただきたいのが「V2H」です。
V2Hとは、EVのバッテリーに蓄えた電気を自宅に供給するシステムのこと。
停電時の非常用電源として、また電気料金の安い深夜にEVに充電し、昼間にEVから家に電気を供給することで電気代を節約する使い方ができます。
V2HはEVの急速充電ポート(CHAdeMO)を使用するため、普通充電用のコンセント配線とは別系統の配線が必要になります。
しかし、V2H導入を将来的に検討する場合でも、分電盤周りのスペース確保や、外壁への配線導入口の位置検討は、新築時にしておくと後が楽です。
つまり「EVコンセント」と「V2H」は別物ですが、どちらの将来にも対応できるよう、新築時に電気系統全体を俯瞰して設計することが重要なのです。
6kW充電の注意点と限界
6kW対応を推奨してきましたが、公平を期すために注意点もお伝えします。
車側の対応が必要
6kW充電は、車側も対応している必要があります。
たとえば日産リーフの40kWhモデルでは、6kW充電はメーカーオプション扱いです。
しかもメーカーオプションのため後付けはできません。
新車注文時に指定する必要があります。
ただし、最近のEVの多くは6kW充電を標準装備する傾向にあります。
テスラは全車種が6kW以上に対応しており、日産アリアやリーフe+も標準対応です。
今後発売される車種ではさらにこの傾向が強まるでしょう。
電気代の基本料金が上がる可能性
6kW充電に対応するために電力契約容量を上げると、基本料金が高くなる場合があります。
ただし、オール電化住宅であれば元々大きな契約容量になっているため、追加の影響は小さいことが多いです。
電力会社のプランによっても異なりますので、新築時に電力会社やハウスメーカーに確認することをおすすめします。
6kW充電器本体はコンセントより高額
3kW充電はEVコンセント(数千円〜)に車載ケーブルを接続するシンプルな構成です。
一方、6kW充電は壁掛け式の専用充電器(20万〜30万円程度)の設置が一般的です。
ただし、これは充電器本体の話であって、配線の話ではありません。
配線を6kW対応にしておけば、当面は3kWコンセントで安価に運用し、必要になったときに充電器を購入して取り付ける、という段階的なアプローチが可能です。
まとめ:新築の「見えない部分」にこそ投資する
住宅は「30年以上使う耐久消費財」です。
間取りやキッチンの設備には時間をかけて検討するのに、壁の中を通る電気の配線については「お任せ」にしてしまう方が少なくありません。
しかし、この「見えない部分」こそが、10年後、20年後の生活の自由度を大きく左右します。
私自身、2.6mm配線で新築してしまったがゆえに、6kW充電への対応には配線の引き直しという大工事が必要になってしまいました。
そのため、とりあえず3kwで妥協せざるえなく・・・
新築時に数千円の追加でできたことが、後からでは10万円以上かかる。
この差を実感しているからこそ、これから家を建てる方には強くお伝えしたいのです。
新築時にやるべきことは、たった一つ。「分電盤からEVコンセント予定地まで、8mm²以上の配線を通しておく」。これだけです。
コンセントの種類や充電器の選定は、実際にEVを買うときに考えれば十分です。
しかし、配線だけは「家を建てるとき」にしかスマートに対応できません。
ハウスメーカーとの次回の打ち合わせで、ぜひこう伝えてください。
「EVコンセント用の配線は、6kW対応の太さでお願いします」
この一言が、あなたの未来の充電ライフを大きく変えるはずです。
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