KSK2で税務調査が変わると聞くと、申告が不安になりますよね。
今回は、国税庁の資料から実際の変更とAIの誤解を整理します。
備えるべきは「見つからない方法」ではなく、お金の動きを説明できる記録。
その違いと、今日できる点検方法を解説します。
KSK2で税務調査が変わる。本当の備えは「説明できる資産」
KSK2への対応で、投資家が最初にすべきことは「税務署に見つからない方法」を探すことではありません。
お金の動き、税金の扱い、その根拠資料をつなげておくことです。
国税庁は、2026年9月24日に国税システムを更改しました。
これから導入される話ではなく、すでに切り替わった話なんですよ。(出典:国税庁「国税システムの更改について」)
ただし、システム更新と税制改正は別物。
KSK2への移行を理由に、NISAの非課税対象の利益が課税されるわけではありません。
NISAの要件を満たす利益は非課税、という制度との区別が出発点です。
では、何が変わるのでしょうか。
国税庁が示した方向は、紙中心の処理をデータ中心に変え、税目ごとに分かれた仕組みを統合すること。
私が着目するのは「税務署が情報を持っているか」だけでなく、「持っている情報を照合しやすくなる」という点です。
「正しく処理した」と「すぐ説明できる」は違う
たとえば、数年前の投資について確認されたとします。
「きちんと処理したはず」と思っていても、購入記録や計算の根拠が見つからなければ、確認に時間がかかりますよね。
反対に、どの取引について、どの制度を使い、何を根拠に申告したのかが一緒に残っていれば、説明の出発点ができます。
これは、データを税務署に合わせて作り替える話ではありません。
実際の取引を確かめ、誤りがあれば直すという話。
資料がそろっていても、間違った税務処理が正当化されるわけではないのです。
投資では、利回りや手数料には敏感になります。
しかし、過去の取引を説明する手間や、納税のために資産を売る負担まで考えているでしょうか。
私がKSK2をきっかけに見直したいのは、この「資産を持ち続けるための管理」です。
狙うべきは調査の完全回避ではなく、確認があっても事実に基づいて対応できる状態。
その備えは、日々の損益管理にも役立つはずです。
KSK2とは?いつから始まり、何が変わったのか
次にKSK2とはなにかかわらみていきましょう。
KSK2とは、国税庁の基幹システムである「国税総合管理システム」の次世代版です。
更改日は2026年9月24日です。
主な概要は以下の通り。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 稼働日 | 2026年9月24日 |
| 刷新の規模 | 約25年ぶりの全面刷新 |
| 開発の柱 | 紙からデータへ/縦割りの解消/メインフレーム(大型汎用機)からの脱却 |
| 紙の申告書 | AI-OCR(AIによる文字読み取り)でデータ化 |
| 納税者側の操作 | e-Taxの使い方が全面的に変わるわけではない |
KSK2は「AIの名前」ではない
従来のKSKも、全国の国税局と税務署をネットワークで結び、申告・納税に関する情報などを管理していました。
「以前は税務署同士で情報がつながらず、KSK2で初めて全国共有になった」という理解ではありません。
従来からの情報管理を、よりデータ活用に適した形へ刷新するものです。
開発時に示された柱は、次の3つでした。
| 見直す部分 | 従来の課題・構成 | KSK2の開発方針 |
|---|---|---|
| 事務処理 | 紙を中心とした処理 | データを中心とした処理へ |
| データと業務ソフト | 税目などで分かれた仕組み | データベースや業務ソフトを統合 |
| コンピューター基盤 | 独自の大型コンピューター中心 | 汎用的な技術を使う仕組みへ刷新 |
イメージとしては、部署ごとの書類棚を整理し、共通の台帳から必要な情報を確認しやすくするようなもの。
ただし、この比喩から「全国民の全取引が無条件で流れ込む」と考えるのは飛躍です。
KSK2の身近な変更点
投資家にも関係しやすい実務上の変更として、一部の申告書などの様式変更があります。
紙で提出する場合は、最新の様式を確認したいところです。
処分通知等の電子交付も対象が拡大しました。
同意方法は原則として、その都度の同意から事前の一括同意へ変更。
以前から電子交付を使う人も確認が必要ですが、国税還付金振込通知書など一部は別の取扱いです。
「調査が厳しくなる」という話ばかり気になりますが、通知の受け取り方も見直しましたか。
また、税務署からの通知等には、13桁の「お問い合わせ番号」が印字されます。
これは通知等を特定し、問い合わせをスムーズにする番号。新しい国民共通の個人番号ができた、という説明とは区別しましょう
投資家がKSK2そのものを契約したり、操作を覚えたりする話ではありません。
まず確認するのは、自分が提出・受領する書類や通知への影響です。
申告漏れを100%検出は本当か?
KSK2が始まると申告漏れ100%検出という話もあります。
それは本当でしょうか?
個人的には本当にそれだけの精度があるなら、各人が確定申告をするのではなくバルト三国のエストニアのように、税務署があなたの税金はこれだけですよ。って自動で計算してくれて納付書を送ってくれるのが、国からしても国民からしても一番メリットがあると思うんですよね・・・
AIが決めるのは「どこを調べるか」
KSK2というとAIのイメージがありますが、AIの活用は、KSK2の稼働より前からすでに始まっています。
国税庁は「予測AI」を使い、過去の申告や調査のデータから、申告漏れの可能性が高い納税者を抽出。
法人調査では、調査の必要度を判定するだけでなく、「売上」「経費」「原価」など不正が疑われる項目まで示します。
実際の事例も公表されています。
AIが「原価」を指摘した法人を調べると、外注費が年々増えていました。
実地調査で外注費を重点的に確認したところ、取引の実態がない外注費が見つかっています。
ここが本質です。
AIは調査官の代わりに調べるのではありません。
「この会社の、この数字」と、調査官の目線を一点に集める道具なんです。
数字にも、はっきりその傾向が出ています。
| 指標(令和6事務年度) | 数値 |
|---|---|
| 法人税等の実地調査件数 | 約5万4千件(前年比7.4%減) |
| 法人税等の追徴税額 | 3,407億円(前年比6.6%増) |
| 所得税等の追徴税額 | 1,431億円(過去最高) |
| 海外投資等を行う個人の1件当たり追徴税額 | 866万円(所得税の実地調査全体の2.9倍) |
法人では実地調査の件数が前年比7.4%減の5万4千件だった一方、追徴税額の総額は3,407億円と6.6%増えました。
個人も同じ流れです。
所得税等の調査による追徴税額は1,431億円(前事務年度1,398億円)となり、国税庁は選定にAIを活用するなど効率的に調査を行った結果だとしています。
調査の件数は増えていないのに、追徴される金額は増えている。
これは「当てずっぽうの調査」が減り、「狙い撃ちの調査」が増えたことを示しています。
投資家として特に注目したいのは、海外投資の数字です。
海外投資等を行っている個人に対する調査の1件当たり追徴税額は866万円で、所得税の実地調査全体の299万円と比べて2.9倍となっています。
暗号資産についても、暗号資産取引の調査では1件当たりの追徴税額が約750万円と報じられています。
KSK2は、このAIによる選定に「税目横断で統合されたデータ」という燃料を注ぎ込む存在です。
精度の高いエンジンに、質の良いガソリンが入る。
そう考えるとイメージしやすいのではないでしょうか。
KSK2で調査件数や検出率がどこまで増えるかは未知数
ただし、KSK2だけの効果で調査件数や検出率がどれだけ変わるかは、稼働後の実績を待って評価する必要があります。
導入目的を、そのまま達成済みの成果として読まないようにしましょう。
脱税で潰れた企業を見て感じた、投資家にも共通する怖さ
私は、脱税をしていて、税務調査をきっかけに潰れてしまった企業を見たことがあります。
ここで伝えたいのは、「調査に入られると企業は潰れる」という話ではありません。
脱税という問題を抱えたまま事業を続け、その後、事業を続けられなくなった企業を実際に見た、という経験です。
その経験から、私は税金の問題を「今年いくら手元に残せるか」だけで考えないようになりました。
目先のお金と引き換えに、将来も仕事や投資を続ける土台を傷つけていないか。その視点が欠かせないと感じています。
この経験をKSK2の効果と結び付けるつもりはありません。
むしろ、システムが変わる前から、脱税のリスクは事業の存続に及び得ると感じた出来事でした。
投資家に置き換えるなら、追加納税に備える現金まで、相場に投入していないでしょうか。
「資産がある」と「税金を払える」は違う
次は、先ほどの企業とは別の仮定の話です。
申告が必要な利益を得た後、その資金を別の投資へ回したとします。
後日、申告漏れに気付き、追加納税が必要になった。一方で、投資先は値下がりしている。
この場合、資産を持っていても、納税のために不本意な売却を迫られる可能性があります。
私なら、税金を払うためのお金を、値動きのある運用資金とは分けて管理します。
実際、修正申告で新たに納める税金は、修正申告書の提出日が納期限です。
延滞税の負担も考える必要があります。申告の修正と現金の準備は、切り離せない問題なんですよ。
税務調査に強い資産は、説明できる資産だ。
もちろん、説明資料は納税資金の代わりにはなりません。
「正しい処理」「説明できる記録」「支払える現金」をそろえて、初めて備えになります。
誤りに気付いたときは、放置しない
期限後に未申告が分かった場合は期限後申告、申告済みの税額が少なかった場合は修正申告で対応します。
税務調査の事前通知前に自主的に修正申告した場合は、過少申告加算税はかかりません。
ただし、本税や延滞税までなくなるわけではなく、当初から期限後申告だった場合などは扱いが異なります。
怖くなって数字を作り直すのではなく、元の資料から事実を確かめること。
判断が難しい取引や複数年の漏れは、税理士に個別確認する領域です。
書類の量より、取引と根拠がつながっているか
お金に生きるの読者様は投資家の方が多いので、投資家向けに書くとお金・申告・証拠の三点照合がとても重要です。
| 照合するもの | 自分に問いかけること | 確認する資料の例 |
|---|---|---|
| お金・取引 | 何を買い、売り、交換し、移動したか | 取引履歴、入出金明細 |
| 申告・税務処理 | 課税・非課税・申告不要のどれか。理由は何か | 申告書、年間取引報告書、適用制度の説明 |
| 証拠・計算根拠 | 金額と判断を第三者にたどってもらえるか | 取得時の記録、契約書、計算過程 |
たとえば、自分の銀行口座から自分の証券口座へお金を移したケース。
「入金額」と「投資利益」を混同せず、資金移動の記録を対応させます。
一方、暗号資産の交換のように、銀行への入金がなくても所得計算が必要な取引があります。
だから、入出金明細だけを見ても点検は完結しません。
三点照合は、3つの金額を無理に同額にする方法ではないのです。
元本、手数料、取引時期などによる違いを、根拠をもって説明できるかを見ます。
あなたの記録は、未来の自分が見返しても意味が分かる状態でしょうか。
自分用のメモは、元資料の代わりにはならない
保存する際は、「年分・口座・取引の種類」で整理し、元のデータと計算用のファイルを分けると追いやすくなります。
数字を転記した表だけでなく、その数字の出どころを残す発想です。
ただし、この整理方法は、法令上の保存要件を満たすと保証するものではありません。
事業の帳簿や電子取引データなどは、該当する保存方法・期間を別途確認してください。
また、税務署から連絡が来たら、まず何についての連絡かを確認します。
国税庁は、具体的な手続に入る前に「調査」か「行政指導」かを明示することとしています。
電話だから軽い話、書面だから脱税認定、と決め付けないようにしましょう。
AIに関する見出しより、いま求められている事実と資料に集中する。そのほうが、対応を整理しやすくなります。
投資家のための「KSK2つながりマップ」
「説明できる記録」と言われても、全部の取引を完璧に管理するのは現実的ではありませんよね。
そこで、力を入れる場所を絞るための考え方を用意しました。
名付けて「KSK2つながりマップ」です。
判断の軸は2つだけです。
- 軸1:その取引の情報は、第三者(金融機関や業者、外国の税務当局など)から国税に届いているか
- 軸2:あなた自身が申告する必要があるか
| ゾーン | 国税に情報が届くか | 自分で申告が必要か | 主な例 | 危険度と対策 |
|---|---|---|---|---|
| A:おまかせゾーン | 届く | 原則不要 | NISA、特定口座(源泉徴収あり) | 低い。取引記録の保存だけでよい |
| B:即バレゾーン | 届く | 必要 | 海外口座(CRS情報)、国外送金、国内FX、不動産収入 | 最も高い。申告漏れは突合ですぐ見つかる |
| C:時間差ゾーン | 届きにくい | 必要 | 海外取引所の暗号資産、DeFi、個人間の売買 | 高い。今は見えなくても後からつながる |
| D:家族マネーゾーン | あいまい | ケースによる | 親からの援助、配偶者や子ども名義の口座 | 中程度。相続のときに一気に表に出る |
ゾーンBがなぜ最も危ないのかを説明します。
国税がすでに「答え」を持っているからです。
個人の海外投資に対する調査は、国外送金等調書やCRS情報(各国の税務当局が口座情報を自動交換する仕組み)などを活用して行われています。
国税の手元にある資料と申告書が合わなければ、それだけで調査の候補になってしまいます。
ゾーンCは「今バレていないから大丈夫」が一番危ない場所です。
国税庁はインターネット上の発信やSNS投稿も確認しているとされ、暗号資産で利益を得たとする投稿と申告データを照合する動きが強まる可能性があると報じられています。
「億り人になりました」という投稿と、無申告という事実。
この2つが並んだときに何が起きるかは、想像がつきますよね。
ゾーンDは、若い世代ほど軽く見がちです。
親から「投資の足しに」と受け取ったお金や、子ども名義で積み立てている口座のことです。
今すぐ問題にならなくても、相続のタイミングで「これは誰のお金だったのか」を問われます。
譲渡所得だけで見ても、所得税の譲渡所得に係る調査等による申告漏れ所得金額は1,541億円に上っています。
資産を動かすときほど見られている、という前提で考えたいところです。
このマップの使い方はシンプルです。
自分の資産をA〜Dに振り分けてみて、B・C・Dに入る取引だけを重点的に記録します。
Aの取引まで神経質になる必要はありません。
まとめ
KSK2は、投資を怖がってやめる理由ではありません。
自分の資産の管理を、他人にも説明できる形へ整えるきっかけにしたいところ。
私は、目先の節税額だけでなく、投資や仕事を長く続けられることを重視しています。
脱税で事業を続けられなくなった企業を見たからこそ、「増やす知恵」と同じくらい「失わない準備」を伝えていきたいのです。
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