2025年6月、財務省が公募する個人向け国債(変動10年・固定5年)の利率が“年1.00%”に引き上げられました。
ゼロ金利時代を知る投資家にとって、ついに「1%の壁」を超えたことは大きな転機です
今回は個人向け国債の解説及び、利率1%を超えた国債は買いなのか?という話を見ていきます。
個人向け国債とは?3つのタイプをサクッと理解
まずは今回の話の前提となる個人向け国債について見てきまいましょう。
そもそも国債とは
国債とは国の発行する債券のことで、簡単に言えば「国にお金を貸す」ということです。
貸した相手は日本国ですからよほどのことがない限り返ってきます。
当然ながら為替等の影響も受けません。
ですから安定した投資先として人気があるのです。
個人向け国債とはその個人向けのタイプのことを指します。
個人向け国債の概要
一概に個人向け国債といっても3つのタイプがあります。
満期が10年で金利が変動するタイプの「変動金利型10年満期」、満期が5年で固定金利の「固定金利型5年満期」、満期が3年で固定金利の「固定金利型3年満期」です。
タイプ | 満期 | 利率の決まり方 | 最低利率 | 半年ごと見直し | 早期換金可 |
---|---|---|---|---|---|
変動金利型10年満期 | 10年 | 基準金利 × 0.66 | 0.05% | ◯ | 発行1年後〜 |
固定金利型5年満期 | 5年 | 基準金利 − 0.05% | 0.05% | ✕ | 発行1年後〜 |
固定金利型3年満期 | 3年 | 基準金利 − 0.03% | 0.05% | ✕ | 発行1年後〜 |
それぞれ毎月発行されています。
発行日から原則、6ヵ月後に第1回目の支払いが、その後は、満期まで6ヵ月毎に支払われます。
なお、10年や5年、3年が満期となっていますが、1年経過すれば中途換金も可能です。(直前2階分の利子は差し引かれます)
国が発行しているものですから、元本や半年毎の利子の支払いは日本国政府が責任をもって行います。
そのため安全性はかなり高いですね。
その代わりに他の債券と比較して利率は低くなっています。
なお、変動金利型10年満期は金利が半年ごとに見直しされます。
今後、金利が上昇すればその恩恵を受けられるのが変動金利型。
固定金利は今の時点の金利がそのままずっと維持される形です。
また、個人向け国債以外にも新窓販国債という商品もあります。(もともとは郵便局専用商品だったもの)
こちらも10年、5年、2年の固定タイプが発売されていますね。
とうとう利率が1%。最新利率(2025年6月募集)
それではとうとう1%となった最新の利率を御覧ください。(2025年6月募集)
募集回 | タイプ | 年利率(税引前) | 募集期間 | 発行日 |
---|---|---|---|---|
第183回 | 変動10年 | 1.00 % | 2025/6/5 〜 6/30 | 2025/7/15 |
第171回 | 固定5年 | 1.00 % | 2025/6/5 〜 6/30 | 2025/7/15 |
第181回 | 固定3年 | 0.79 % | 2025/6/5 〜 6/30 | 2025/7/15 |
1%となったのは変動10年と固定5年分ですね。
ちなみに国債の金利は長い期間、個人向け国債は金利下限の年利率0.05%で張り付いていました。
しかし、実質利上げ等があったくらいから徐々にあがって数年で1%までに
個人向け国債のメリット:安全・元本保証・低コストでインフレに備える
個人向け国債のメリットを見ていきましょう。
元本保証 & 政府信用
国債の発行元は日本国。
個人向け国債は基本的に額面100%で償還されます。
つまり、国が破綻しない限り損はしないってことですね。
変動10年はインフレに追随
変動金利型10年満期のタイプは半年ごとに利率見直しとなります。
現在のように金利上昇局面では今後の金利上昇分も織り込んでいきます。
途中解約も可能
国債は発行から1年を経てば解約も可能です。
ただし、直前2回分の利子(税引前)相当額×0.79685のペナルティがあります。
国債は年2回利子がもらえますので1年以上持てば元本割れ無しで解約が可能となるってことです。
流動性も他の債券と違って高いのでその点も心配いりません。
デメリット:途中換金ペナルティとインフレ負けリスク
それではデメリットはないのでしょうか?
金利上昇のタイムラグ
変動10年でも市場金利が上がってから反映まで半年待ちとなります。
固定は金利上昇の恩恵を受けることはできません。
早期換金のコスト
メリットで途中解約ができると書きましたが、ペナルティ分はデメリットとも言えるでしょう。
実質利回りがマイナス化する恐れ
金利上昇が2%が維持されるような状況では、1%利率でも実質は目減りしているということです。
このあたりは預金に比べればマシですが、他の資産と比べるとデメリットになりますね。
外貨建て債券よりリターンが低い
米国10年債は4%台。
為替リスクはありますが、リターンだけ比較すればかなり見劣りします。
他の金融商品・他国債との比較
それでは他の金融商品と比較してみましょう。
商品 | 表面利率 | 期間 | 主なリスク |
---|---|---|---|
個人向け変動10年 | 1.00% | 10年 | 政府信用/金利 |
日本5年定期預金 | 0.25%前後 | 5年 | 銀行信用 |
AA格5年社債 | 1.5〜2.0% | 5年 | 信用/流動性 |
米10年国債(ヘッジなし) | 4.4% | 10年 | 為替 |
国内高配当株ETF | 利回り3%前後 | 無期限 | 価格変動 |
国債は低リスク・低リターンといった感じですね。
証券会社のキャッシュバックキャンペーンを活用しよう
正直、国債はどこで買っても基本的に同じです。
違いは各社が実施するキャンペーンです。
定期的にキャンペーンが実施されていますのでそれを狙っていくのが良いでしょう。
まとめ:目的と資産配分で“買い時”は変わる
国債利率が1%台になったことで、個人向け国債は「安全×実質利回り1%」を確保できる有力な円建て資産になりました。
キャッシュバックキャンペーンを活用すれば、実質利回りは1.2〜2.0%
それなりに投資対象となりえるレベルになってきましたね。
ただしインフレが2%を超え続けるシナリオでは“実質マイナス”の可能性も。目的別にリスクと期間を見極めて活用しましょう。

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