読者様からご質問をいただきました。今回はこの件を考えてみましょう。
iDeCo(イデコ)は節税の仕組みがややこしい
イデコの節税は友人が言われていたように課税を先送りにしている仕組みであることは事実です。
しかし、受け取るときにも優遇が受けられますので節税が嘘ではないのです。
実際、節税効果があるんですよ。
ちょっとややこしいので順番に解説しておきましょう。
掛けたときに所得税・住民税の節税効果
まず、イデコは掛け金を拠出(払った時)に掛け金全額が所得控除となります(小規模企業共済等掛金控除)
所得控除とは税金計算するときにその金額を控除して税金計算できるようになるってことです。
つまり、所得を減らしたことと同じ効果が得られます。
その結果、所得税及び住民税が減るのです。
具体的に見てみましょう。
例えば課税所得金額が650万のサラリーマンの場合でみてみましょう。
すると年間で60,000円の掛け金です。
それがそのまま全額所得控除となり18,000円もの節税となります。
(6万円✕30%)所得税率20%、住民税10%で計算
年間60,000円積み立てると所得税と住民税で18,000円(所得税20%の場合)の節税効果が生まれます。
率にすると30%もの利回りが節税効果だけで得られるのです。
この効果は税率により異なりますので給料や所得が大きい人ほど効果があるんですよ。
給料の少ない方でも所得税は5%、住民税は10%くらいかかっている方が多いはずですからそれでも15%節税効果があるのです。
節税効果について詳しくはこちらの記事も御覧ください。
運用で得た利益が非課税
もう一つある節税が、イデコ内での運用について売却益や分配金が出た場合でも全額非課税となることです。
通常、投資信託や株などに投資をして売却益や配当が出た場合や定期預金の利息をもらった場合には税金が20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)が掛かります。
それが個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)の中で運用すればそれらの税金が掛からないのですからこれもかなり大きいですね。
年利3%で運用した場合
例えば30歳から月5,000円積み立て、かなり固く運用して平均年3%の運用をしたとしましょう。
するとこれだけの運用益を得る計算となります。
運用益1,113,684円
合計金額2,913,684円
受け取る際に課税されるが税制優遇がある
前述のようにイデコは掛けたときに所得控除。
運用時は非課税
ですが、受け取るときに税金が発生する仕組みです。
しかし、受け取るときも税制優遇があるのです。
友人の話はここの部分の認識が微妙な感じなんですよ。
具体的には運用で得たお金と元本を引き出すときに一時金として受け取れば「退職所得控除」が受けられます。
また、年金として何回かに分けて受け取る場合も「公的年金控除」が受けられます。
退職所得控除を使えばかなりお得に受け取れる
とくに退職所得控除はかなりオトクなルールとなっています。
計算方法は下記のとおりです。
20年を超える場合: 退職所得控除額=800万円+70万円×(勤続年数-20年)
※イデコの場合、掛金を拠出していた期間を勤続年数と考えます。
つまり、長く掛ければ掛けるほど税金が少なくて済むということです。
少額で掛けている場合には退職所得控除内で収まるケースが多いと思います。
退職金控除内でおさまってしまえば税金は掛かりませんから、掛け金を拠出した時の所得控除、運用時の非課税を丸々受けられてお得しかない状況になるのです。
ただし、勤めている会社から多額な退職金がでるなどそうならない場合は注意が必要なんですよ。
会社から退職金が出る場合にはちょっと工夫が必要
会社から受け取る退職金もイデコと同じ枠で計算されるからです。
ですから会社からたくさんの退職金が出る場合にはそちらで退職所得控除の枠を使ってしまってイデコに残されていないという場合は一時金で受け取れば丸々税金がかかってしまうってことになるんですね。
しかし、こちらも回避が可能な話です。
下記の2つの条件で受け取るならば退職所得控除の計算を重複して使うことができるんですよ。
2.退職一時金よりも個人型確定拠出年金(iDeCo)を後で受け取る場合、最後に受け取った退職一時金等から15年以降
たとえば1であれば60歳で個人型確定拠出年金(iDeCo)を受け取り。
会社を65歳で退職し退職金を受け取るならば重複している期間も含めて退職所得控除の勤続年数として計算できます。かなり有利に受け取ることができるのですね。
このあたり知っているかどうかでかなり税金がかわりますから押さえておきたいところ。
退職所得控除と公的年金等控除の併用も
また、金融機関により受け取る時に退職所得控除と公的年金控除の併用が可能な場合があります。
この場合には退職所得控除内で収まるギリギリまで一時金として受け取り、残った分を年金として分割で受け取ると支払う税金がすくなくなります。
このあたりも知ってるか知ってないかで差が出てくる話ですね。
ちなみに楽天証券やマネックス証券ははじめからこちらの併用が可能でしたし、SBI証券も2020年3月から併用が可能となっています。
退職金控除が縮小されるのが怖い
あとは怖いのが退職金控除の縮小ですね。
すでに岸田政権下の新しい資本主義でその手の話はでていますので心配ではあります。
「新しい資本主義の グランドデザイン及び実行計画 2023改訂版」では以下のように触れているます。
退職所得課税については、勤続20年を境に、勤続1年当たりの控除額が40万円か ら70万円に増額されるところ、これが自らの選択による労働移動の円滑化を阻害しているとの指摘がある。制度変更に伴う影響に留意しつつ、本税制の見直しを行う。
ただし、政府としても反対意見が多くなかなか実施するのは勇気がいることかもしれません。
実際にどれだけ節税できるのかシュミレーションしてみた
それではどれだけ実際に節税できるのでしょうか?
SBI証券に出ているモデルケースを例に月に上限の23,000円イデコを30歳から30年間、年率3%で運用した場合で考えてみましょう。
拠出時の節税
まずは拠出時です。
このモデルケースでは年間276,000円積み立てます。
出典:SBI証券 イデコ Model caseより
所得税20.42%、住民税10%の場合、合計で83,959円の節税となります。
つまり、1年間の節税効果は83,959円。
所得税や住民税が変わらなければ、これが30年ありますので累計の節税効果は2,518,770円となりますね。
運用時の非課税分
次は運用時です。
月に23,000円30年積立をして年3%で運用すると以下のように13,402,948円となります。
出典;楽天証券 積立かんたんシュミレーションより
掛けた金額は8,280,000円ですから利益は5,122,948円です。
受取時の税制優遇
拠出時の節税効果が2,518,770円、運用時の節税効果が1,040,726円で合計3,558,496円が受け取る前までの節税金額です。
ここからはその人の受け取り方により節税効果が異なります。
一時金で受け取る場合
一時金で受け取り、他に退職金控除がなかったり、ずらしている場合は以下の退職金控除が得られます。
このシュミレーションのケースでは30年掛けていますので式に当てはめると
となります。計算すると1,500万円。
つまり、1,500万円の退職金控除があるのです。
イデコの金額は13,402,948円でしたから、当然退職金控除内で収まります。
ですからこのケースでは受取時も税金は掛からないのです。
会社からの退職金が出たケースでも合計して1,500万円以内におさまるなら税金は掛かりませんね。
もし、はみ出たとしても後述する年金と併用することで税金は減らすことが可能です。
年金として受け取る場合
年金として受け取る場合は公的年金控除が受けられます。
公的年金に係る税金は以下のとおりで計算されます。
出典:国税庁 公的年金控除より
例えば65歳以上であれば110万円までは控除が受けられるということですね。
イデコは10年間に分けて年金として受け取ることが可能ですので、このシュミレーションケースだと全額年金としたら1,340,294円ずつ受け取ることになります。
控除は超えてしまいますので多少税金はでて来る形ですね。
どれくらいの税金がかかるのかは他の年金や所得と合わせてとなりますし、控除の状況によりますので金額はその人によって異なりますが、年金受取でも丸々受取額に税金が掛かるわけではないのです。
つまり、節税効果を事前に受けていることを考えればこの場合でもプラスとなります。
まとめ
今回は「個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)で節税は「嘘」って本当なの?」と題してイデコの節税について見てきました。
友人の方が言っている課税の先送りという部分も確かにありますが、受け取る際の税制優遇を考えれば節税効果の方が大きいですし、受け取り方によっては丸々節税になることがわかっていただけたと思います。
もちろんその人の所得や老後の働き方によっても変わってきますので一概には言えませんのでまずは自分に当てはめて考えてみてください。
イデコは多くの方にとってお得な制度であることがわかっていただけると思います。
ただし、イデコはデメリットもあり、人を選ぶ部分もありますのでそのあたりも含んで検討してください。
個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)に加入するならこの3社から選ぼう
個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)を始めるならまずは金融機関を決める必要があります。
しかし、たくさんあってどこにしたらよいのかわからない方も多いでしょう。
簡単に決めてしまう方もおおいかもしれませんが、個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)の場合、金融機関ごとの違いがとても大きいですから慎重に選びたいところです。
私が今もし、新たに加入するならSBI証券、マネックス証券、松井証券の3択の中から決めます。
(※私が加入しているのはSBI証券です)
この3つの金融機関は運営管理機関手数料が無料です。※国民年金基金連合会の手数料等は各社共通で掛かります。
また、運用商品もインデックスファンドを中心に信託報酬が低い投資信託が充実しているんですよ。
順番に見ていきましょう。
SBI証券
まずイチオシはSBI証券「個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)」です。
SBI証券は信託報酬も最安値水準のeMAXIS Slimシリーズを始めとしたインデックスファンドから雪だるま全世界株式、ひふみ年金、NYダウ、グローバル中小株、ジェイリバイブといった特徴ある投資信託をたくさん揃えているところが最大の魅力です。
選択の楽しさがありますよね。
また、確定拠出年金を会社員に解禁される前から長年手掛けている老舗である安心感も大きいですね。
SBI証券は運営管理手数料が無条件で0円ですし、なにより運用商品が豊富で選択の幅が広いです。現状最強のラインナップを誇ることになります。
また、他の証券会社に先んじて確定拠出年金の取扱をはじめてますから安心感が強いですね。
マネックス証券
次点はマネックス証券 iDeCoです。
こちらも後発ながらかなりiDeCoに力をいれていますね。
iDeCo初でiFreeNEXT NASDAQ100 インデックスを取扱い開始したのに興味をひかれる人も多いでしょう。
マネックス証券はeMAXIS Slimを多く取り扱っており、信託報酬がほとんど最安値水準でスキがありません。また、iDeCoでいち早くiFreeNEXT NASDAQ100 インデックスの取り扱いをはじめたところも大きなポイントになりますね。
松井証券
松井証券のiDeCoは35本制限まで余裕があるというのは後発の強みですね。
その35本制限までの余裕を生かして他社で人気となっている対象投資信託を一気に採用して話題になっていますね。
こちらも有力候補の一つですね。
2020年10月18日から取り扱い商品が大幅拡充されました。
人気となっているeMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)や楽天・全世界株式インデックス・ファンドなども採用され最強ラインナップといっても過言ではない充実ぶりですね。
総合して考えるとこの3つの金融機関に加入すれば大きな後悔はないかなと思います。
他の運営管理機関もぜひがんばってほしいところですが・・・
お知らせ:You Tubeはじめました。
You Tube「お金に生きるチャンネル」をはじめました。
You Tubeでも少しでも皆様のお役に立てる動画を定期的に発信していきますのでチャンネル登録をぜひよろしくお願いいたします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。