最近、世界中の株価が暴落しています。
そんな中、あるニュース番組で専門家が衝撃の発言がされていました。
「年金の半分は株で運用している」から株価暴落は他人ごとじゃないぞという内容です。
短い内容でしたから具体的に破綻や減額までの話とはなっていませんが、これでは多くの人が誤解や不安を与えてしまう気がしましたね・・・
結論から言えばこの発言はぜんぜん違うんですよ。
正確には間違えてはいませんが、大切な言葉や補足が足らないためにミスリードとなりかねない発言と言えます。
今回はこの誤解を解きたいと思います。
※追記・加筆を加えました。
年金財源全体のうち、積立金からまかなわれるのは約1割
出典:GPIF 「年金積立金は未来の世代のためのお金」より
まず、大前提としてみなさん(現役世代)から集めた年金の大半は現在年金をもらっている人に充てがわれているのです。
現在の日本の年金制度は賦課方式という方法をとっています。
賦課方式を簡単に説明すると年金支給のために必要な財源を、その時々の保険料収入から用意する方式と考えればよいでしょう。
現役世代から年金受給世代への仕送りに近いイメージです。
今の働いている世代が納めた保険料で老後生活をしている受給世代の年金を支えているのです。
さらに年金の給付には税金も使われています。(基礎年金の半分は国庫負担)
運用に回しているのはそこで生じた余剰分の極一部だけなんですよ。
余剰分は将来少子高齢化で年金財源が不足が発生した時に対応するために運用しているのです。
ちなみに年金財源全体のうち、積立金からまかなわれるのは約1割だけとなります。
つまり、まったく「年金の半分は株で運用している」なんてことはないんですよ。
運用されている積立金のうち半分は株で運用しているが正解
それでは「年金の半分は株で運用している」なんて話がでてきたのでしょう?
それは前述のごく一部の運用している積立金のうち半分は株で運用しているというところから来ているのでしょう。
細かく言えば年金は以下の基本ポートフォリオで運用されています。
外国株式 25%
国内債券 25%
外国債券 25%
たしかに国内株式25%と外国株式25%を合わさせれば50%が株となりますので前述の発言は間違えていません。
しかし、実際には年金財源全体のうち積立金でまかなわれるのは約1割、運用しているのも同じ割合だととするとその半分が株ですから全体の5%くらいが株で運用しているというのがざっくりした計算となります。
ぜんぜん比率にすると株で運用している割合は大きくないんですよ。
そのため、「年金の半分は株で運用している」から株価暴落は他人ごとじゃないぞってのはなんともミスリードな発言なのです。
そもそも積立金の運用はうまく行っている
また、マスコミは株価暴落したときだけ年金が消えたと報道しますが、実情は全然違います。
年金積立金の運用はとてもうまく行っています。
最新発表の2024年度第1四半期までの運用状況は以下のとおりです。
収益額+162兆円
運用を開始したのは2001年からですが、いままでに162兆円も増やしてくれているんですよ。
実はみなさんのイメージの逆なんですね。
株に回すことによって年金財源をだいぶ増やしてくれているんですよ。
この間には2008年9月に発生したリーマンショックなども当然含まれています。
株など投資はどうしても波がありますから今回の暴落のように落ちるときもありますけどね。(その時だけマスコミが騒ぎますが・・・)
今回の暴落でどうなる?
それでは今回の暴落で年金の運用はどうなるでしょう?
当然、国内株式 25%、外国株式 25%と半分が株となっていますのでそれなりのマイナスとなるでしょう。
しかし、過去のプラス分を食いつぶすほどのマイナスとなることはかなり想定しにくいです。
また、GPIFはある意味、理想的なインデックス投資を行っているんですよ。
ですから長期的な目で分散投資をすれば理論上はプラスになる可能性が極めて高いのです。
金融庁が年金だけでは2000万円足りないとのレポートが9月ころに話題になりましたが、その際に金融庁が出した資料で分散、長期、積立投資の優位性が分かりやすいものがありましたのでご紹介しましょう
出所:金融庁「高齢化社会における資産形成・管理報告書」より
あくまでも過去のデータではありますが・・・
他国と比較しても株割合は少ない
また、積立金の半分を株で運用していますので、株の比率が多すぎると批判する方も見えます。
しかし、他の国と比較しても日本がもともと株式の比率が異様に少なかっただけで今が普通なんですよ。
例えばアメリカで代表的な年金CalPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金)は株式で54%運用しているんですよ。
債券20%、株式54%、その他資産26%
また、カナダのCPPIB(カナダ年金制度投資委員会)は以下の通り82.5%が株で運用しています。
債券17.5%、株式82.5%
日本の株比率はむしろ少ないくらいなんですよね。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
破綻は考えにくい
また、株が暴落したことで年金が今にも破綻するんじゃないか?と心配される方も多いです。
これもマスコミの責任が非常に大きいですが、そんなことは想定しにくい仕組みとなっています。
そもそも前述のように株の影響があるのは5%程度に過ぎませんしね(笑)
仕組み的にもそうならないように構築されています。
具体的には日本の公的年金にはマクロ経済スライドという仕組みが導入されているのです。
マクロ経済スライドとはそのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。
簡単に言えば年金制度を無理なく継続するために年金の給付額を調整する仕組みってことです。
この仕組みと賦課方式があるため基本的に年金制度が破綻することはないのです。
破綻する可能性があるとすれば国がそもそも破綻するか年金の法律を大きく変えるときだけでしょう。
100年安心というのはこの意味合いなんですよ。
そもそも年金だけで暮らせる水準を維持するなんてだれもいっていないのです。
ただし、制度としては破綻しないけど実際にもらえる金額が納めた金額より少ないということが起こり得るのが現在の年金制度ではあります。
詳しくはこちらの記事も御覧ください。
年金は払った分だけ戻ってこないのは本当か?
次によく年金は払った分だけ戻ってこないから損と言われる方もみえます。
これは本当なのでしょうか?
結論から言えばこれは一部正解といったところでしょう。
ただし、その面だけを捉えてしまうのは危険なのが年金です。
厚生年金・国民年金は終身年金
国民年金や厚生年金は終身年金です。
終身年金とは簡単に言えば死ぬまでもらえる年金のことです。
長生きすればしただけもらえますが、早死すればそこで年金はストップします。(例外あり)
つまり、ある意味、長生きのための保険といった性質があります。
そのため早くに亡くなってしまえば払った分だけ戻らない可能性があるのです。
現在の水準なら国民年金満額の方なら11年受給すると元が取れる計算なので実は多くの方が元が取れる仕組みなんですよ。(厚生年金は会社負担分まで考えるともう少し厳しい)
少子高齢化で支える人が少ないですからこの元が取れる年数は徐々に長くなっていってしまうとは思いますが・・・
障害年金や遺族年金という存在がある
どうしても年金も金融商品のように損得で払った保険料と受け取る予定の年金額だけの話だけを考えがちです。
しかし、済まない特徴があります。
それが障害年金や遺族年金の存在です。
障害年金は自分が障害になったとき、遺族年金は自分が亡くなったときにその遺族に支給されます。
これらの存在は一般の生命保険で同レベルの保険に加入しようとするとかなり高い金額になるレベルの補償となっていたりします。
つまり、厚生年金や国民年金は保険付きの年金制度なのです。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
まとめ
今回は「世界の株価暴落で国民年金や厚生年金が破綻したり、減額されるって本当??」と題してニュース番組でのひどい発言にスポットをあててみました。
このようにテレビで専門家が語っていることでも実際は全然違ったり、捉え方を間違えやすいケースが多いですからお気をつけくださいね。
株が暴落したからといってすぐに年金に影響があるような仕組みにはなっていません。
また、年金が不安の方はiDeCo(個人型確定拠出年金)や付加年金なんかも検討するとよいでしょう。
iDeCo、付加年金について詳しくはこちらの記事を御覧ください。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。