びっくりする話がでてきました。
後期高齢者の健康保険が金融所得を勘案して決められるようになるというものです。
政府が近く決定する経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案が判明した。75歳以上の後期高齢者を念頭に金融所得を勘案して健康保険料の支払額を決める新たな仕組みを検討する方針を盛りこんだ。
出典:日本経済新聞 後期高齢者の保険料、金融所得も勘案検討 骨太方針原案
ネットを見てもあまり騒がれていませんが、かなり大きな制度変更となります。
このニュース、ちょっと元の制度をしっかり理解していないとわかりにくいのもあるのかもしれませんね。
そこで今回は現状の後期高齢者医療制度について解説していきます。
仕組みをすれば今回の改正案の意味もよく理解できるかと思いますよ。
健康保険の種類
まずは大前提となる健康保険制度について解説しておきましょう。
健康保険は大きく分けて3種類。
さらに運営母体などにより細かく分かれています。
<h3会社員や公務員対象の健康保険(被用者保険)
まずは会社員や公務員が対象となる「健康保険」です。
後述する国民健康保険と区分するために「被用者保険」や「被用者健康保険」と呼ばれることもあります。
さらに運営母体により大企業もしくはそのグループ企業、業界団体などが共同して保険者となって設立された「組合健保」
もう一つが「全国健康保険協会」が運営する「協会けんぽ」です。
こちらの加入者は上記の組合健保に加入していない会社に勤務している会社員とその扶養者の方となります。
もう一つが公務員の方が対象となった「共済組合」です。
健康保険組合ごとにそれぞれ運営していますので、健康保険料率が違ったり、付加給付や福利厚生なんかも組合によりかなり違うんですよ。
また、協会けんぽは都道府県ごとですから、県によって保険料率が違います。
多くの方が想像するよりも違うと思います笑
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
自営業者などの健康保険(国民健康保険)
上記の被用者保険の対象とならない自営業者やそこに勤めている方などが対象の健康保険もあります。
こちらは「国民健康保険」と言います。
国民健康保険も大きく2つの種類があります。
同じ業種や職業の人達ごとに組織される「国民健康保険組合」とそれに加入していない方向けの都道府県が保険者の「国民健康保険」です。
国民健康保険の加入者は「自営業」、「社会保険に加入していない事業所に勤務する労働者」のうち国民健康保険組合に加入していない人、「無職」、「高齢者」となります。
また、こちらも都道府県ごとで保険料がかなり違います。
後期高齢者医療制度
最後は今回の改正の対象になりそうな「後期高齢者医療制度」です。
こちらは75歳以上の方と65歳以上75歳未満で一定の条件を満たした方が加入することになります。
健康保険の種類の見分け方
自分がどの健康保険に加入しているかわからないぞ、って方もお見えかもしれません。
実は健康保険証をみれば一発でわかります。
に書いてあるんですよ。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
後期高齢者医療制度とは
それでは後期高齢者医療制度について詳しく見ていきましょう。
後期高齢者医療制度とはなにか
元々、日本の健康保険は国民健康保険と被用者保険の2本立てで国民皆保険を実現していました。
しかし、所得が高く医療費の低い現役世代は被用者保険に多く加入する一方、退職して所得が下がり医療費が高い高齢期になると国民健康保険に加入するといった構造的な課題があったのです。
そのため、国民健康保険の支えてはかなりの負担を強いられること・・・・
それを解消するために75歳以上については現役世代からの支援金と公費で約9割を賄うとともに、65歳~74歳について保険者間の財政調整を行う仕組みを設けたのです。
それが後期高齢者医療制度です。(後期高齢者とは75歳以上の方のこと)
国民健康保険は被用者保険と比べてそれでも高いんですけどね笑
後期高齢者医療制度の仕組み
後期高齢者医療制度は都道府県ごとに広域連合が設立され、保険料の徴収は市町村が行います。
後期高齢者(75歳以上)の患者の医療費負担は現役世代並みの所得者を除き、窓口負担は原則1割となっています。
さらに自己負担限度額はかなり低く設定されており、低所得者で1月最大8,000円、普通の方でも1月最大14,000円(年間144,000円上限)となっています。
つまり、かなり負担が少なくなっているのです。
保険料はこちらも地区ごとで保険料が異なります。
2022年(令和4年)10月から一部2割負担へ
なお、令和4年10月から一定の所得の有る方は2割負担となります。
全体の2割位の方とのこと。
出典:厚生労働省 後期高齢者医療における窓口負担割合の見直し より
なお、負担割合の判定はややこしいですが、こちらに当てはめればわかります。
出典:厚生労働省 後期高齢者医療における窓口負担割合の見直し より
なお、現役並み所得者の条件は課税所得145万円以上かつ収入額の 合計が、383万円(単身世帯の場合。 複数世帯の場合は、520万円) 以上です。
この場合は3割負担となります。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
現行制度の問題点
現行制度には大きな欠点があります。
それは所得で判断をしていることです。
資産の有無は関係ないんですよ。
貯蓄が多額にあり、働かなくも問題なくて隠居生活を送っている方は所得がありませんので医療費は1割負担となります。
一方、貯蓄もないため、働かざる得なくて働いていると医療費負担は3割もしくは2割になってしまうということです。
住民税非課税世帯の話でも同じ問題がありますが、貯蓄など資産の有無は一切関係ないんですよ。
さらに株の配当で生活していても特定口座で源泉徴収ありの方なら、いくら配当をもらっていようが関係ないんですよ。
また、今の予定では令和6年度分以後から使えなくなりますが、住民税申告不要制度を選択しても同様です。
そこに今回メスを入れようとしているということでしょう。
現状の制度では悠々自適な高齢者ほど1割負担なんですよ。
出典:内閣府 「高齢者の状況」より
金融所得を勘案とは
今回話にでているのは金融所得を勘案という話です。
金融所得を勘案して健康保険料の支払額を決める
このあたり、どう判別するのか、どう線引するのかは今の情報では不明です。
特定口座、源泉徴収ありの場合でも金融所得に含めるのか、NISAはどうなるのか?とかいろいろ疑問があります。
今の時点でも株の譲渡所得や配当等は確定申告をした場合、判定に使われる「合計所得金額」に含まれるんですよ。(住民税申告不要制度を選択しなければ)
金融所得課税全体の見直しをしないとこの辺りは骨抜きになっちゃいそうですしね。
また、金融所得を勘案するだけなら資産の部分は無視するのか。
前述のように貯蓄がたくさんあるから働かなくてもよい人が1割負担となってしまいますからね。
このあたりもちょっと疑問。
資産を反映するのは資産の把握からはじめないといけないのでなかなか難しそうですが・・・
まとめ
今回は「後期高齢者の健康保険が金融所得勘案に?このニュースを理解するために後期高齢者医療制度を解説」と題して後期高齢者医療制度についてみてきました。
あまり騒がれていませんが、実は年金問題より深刻なのが健康保険問題です。
2025年問題といって戦後のいわゆるベビーブームで生まれた世代(約800万人)が75歳の後期高齢者に達すると厳しい状況になるのが目に見えてるんですよ。
それもあっても改正案がでているのでしょう。
働き盛り世代が負担をする仕組みを脱却しようとしているのは評価できます。
ぜひ不公平感がないように改革をすすめてほしいところではありますが・・・
今まで選挙対策もあり高齢者優遇の政策ばかりして、若者は貧乏になって、少子化が進み。
高齢者はより裕福になってしまっているのが今の日本なんですよ。統計データにも出ています。
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