先日、興味深い投稿がXで回っていました。
中国とアメリカの貿易関連の争いの中心にある「レアアース」の専門家の方が、最近急激に上がっているレアアース銘柄を空売りして担がれて株を引退するという話です。
#東洋エンジニアリングの空売りで引退です。さようなら
ここ数日ご飯が食べられません
レアアースのガチ専門家なのですが利益出る訳ないだろwwwと空売りしました。思惑買いが強すぎます、、、 同じ業界の人が株をやっていたら、少なくとも買いで入る人はいないと思います。
出典:X https://x.com/ma_yo_ebi/status/1982647140091666671
今回はこのツイートにあるような、「なぜ専門家でも株では勝てないのか」を、データと人の心理、そして日本のレアアースをめぐる実例から、噛み砕いて整理します。
似た指摘は他の投稿でも相次いでおり(同趣旨の反応) 現場の“実感”を数字と理屈で検証するのが本稿の目的です。
本当に“プロは指数に勝てない”のか?
投資の世界では、一見すると矛盾する事実が存在します。
株式投資を本業とする専門家やその業界のプロたちが、市場平均に勝つことができないという現実です。
今回のレアアースの専門家の方も、レアアースで利益が出るわけ無いだろと空売りしたわけですが、短気では逆の動きとなってしまったわけです。
15年間で88.4%のアクティブファンドが敗北
わかりやすいのがアクティブ運用のファンドの成績とベンチマークの推移です。
S&Pダウ・ジョーンズのSPIVAスコアカードは、アクティブ運用の大多数が長期でベンチマーク(例:S&P500)に劣後する事実を毎年示しています。
過去5年間でも大型株ファンドの80%以上がS&P500指数を下回り、2024年単年でも大型株ファンドの65%がS&P500に劣後。
これは決して一時的な現象ではありません。
過去15年でみると米国内のアクティブ運用型株式ファンドの88.4%が、ベンチマークを下回る運用成績となっています。
期間を延ばすほど劣後率は上がるのが通例です。
投資を本業とする専門家たちが、これほどまでに市場平均に勝てないという事実は、個人投資家にとって極めて重要な示唆を含んでいます。
どうして数字がこうなるのか(カベは構造にある)
アクティブファンドがインデックスに勝てない理由はある程度説明ができます。
コストと回転率のハンデ
アクティブファンドはインデックスに比べ、信託報酬・売買コスト・税コストが積み上がります。
回転が多いほど摩擦は増え、微差が複利で大差になります。
これが期間を延ばすほど劣後率が上がる理由でしょうね。
勝者総取りの指数構造
また、近年の指数はごく少数の大勝ち銘柄が全体を牽引。
それらを外した瞬間に置いていかれるため、広く持つ指数に構造的な優位が生まれます。
アクティブに銘柄選定をして当たれば大きいですが、ごく少数の大勝ち銘柄から外れると指数になかなか勝てないという話になってくるのです。
名門大学出身者が全力で分析しても勝てない理由
アクティブファンドのマネージャーたちは、一流大学で金融理論を学び、勤務時間のすべてを市場分析に費やしています。
最新の財務データ、経営陣へのヒアリング、業界動向の調査など、個人投資家では到底真似できないレベルの情報収集と分析を行っているのです。
今回のレアアースの方もそうですね。
それでも市場平均を上回れない。この現実が意味することは何でしょうか。
ファンダメンタル分析が意味ないと言われる構造的理由
それではファンダメンタル分析に意味がないといわれるのでしょう?
構造的な理由があります。
市場は既に情報を織り込んでいる
ファンダメンタル分析が意味ないと言われる最大の理由は、効率的市場仮説にあります。
株価には既にあらゆる公開情報が反映されており、優れた企業であることは既に株価に織り込まれているのです。
例えば、ある企業の決算が予想を上回る好業績だったとします。
しかし、株価が上がるかどうかは「市場の期待を上回ったか」で決まります。
どれほど優良な企業でも、市場の期待値が高ければ好決算でも株価は下落することがあります。
プロ同士の競争が生み出す矛盾
投資のプロたちは、同じような教育を受け、同じようなツールを使い、同じような情報源にアクセスしています。
全員が「割安な株」を探し、全員が「成長企業」を狙っています。
この状況下では、誰かが市場平均を上回れば、必ず誰かが下回ります。
しかも、アクティブファンドには運用報酬というコストが発生します。
仮に全てのプロが同じ能力だったとしても、コスト分だけ市場平均を下回る結果となるのです。
短期は需給、長期は価値(時間軸を分ける)
ファンダメンタル(業績・財務・競争力)は価値の芯ですが、短期の株価は需給に大きく振られます。
良い決算でも下がる/悪い決算でも上がるのはそのせいです。
したがって、「ファンダメンタルは意味ない」という感覚は短期の体験としては正しく、中長期の評価では誤りになりがちです。
今回のレアアースの専門家の方も完全にこれにハマってしまった形ですね。
専門家の方は中長期的な話でレアアースは業績に寄与するものではないと考えている。
しかし、市場はそこまで判断できないので話題性で需給がかなり高まっていたという・・・
実務のインセンティブが“ファンダ無力感”を強める
また、実務のインセンティブの影響も大きいです。
評価期間の短さとベンチマークの呪縛
運用者は四半期・年次の相対評価に晒され、指数から大きく外すと説明責任が重い。
結果、指数に似る(クローゼット・インデックス)→コスト負けが起きやすい。
資金流出入の逆風
上がってから資金流入→高値掴み/下がってから解約→安値売りというフローに縛られ、望む行動と逆を強いられがちです(“投資家リターン”と“ファンドの公表リターン”の乖離の一因)。
それでも個別株投資に魅力がある理由
前述のようにプロでも指数に勝てないわけですから、ほとんどの人は低コストインデックス・ファンドを購入するのが最適解なのは過去のデータからも明らかです。
それでも個別株投資にはインデックス投資にはない魅力があります。
それらも含めて資産配分を考えるのが良いでしょう。
5倍、10倍、100倍のリターンを生む可能性
全ての個別株投資が無意味というわけではありません。
投資コンサルティング会社の分析によれば、ポートフォリオの中で5倍、10倍、100倍のリターンをもたらす銘柄をいくつか選べれば、市場平均を上回ることは可能です。
よくネットで話題になる数百万円から億り人になった人なんかは個別株投資。
しかもかなりの集中投資の方が多いですね。
50万円を50億円にした「たーちゃん」は造船株にかなりの資産を入れて大勝ちした形ですね。
一気に資産を増やそうとするとその方法しか難しいのです。
ただし、どの銘柄がそうなるかを事前に予測することが極めて困難だという点が問題です。
ここ数年の日本株でいえば電線御三家の「フジクラ」が象徴的ですね。
電線という地味な分野のフジクラがここまでおお化けすると数年前に予想できた人は数少ないでしょう。
私も一時期持っていましたが、そこそこの儲けで売っちゃったんですよ。
ちょうど第二種電気工事士の勉強を始めたころに、実技試験の練習で使う「電線」が不足しているから早く注文したほうがよいとの話を聞いて「フジクラ」株を買ったんですよ。
まさかここまで高騰するとは全く予想できませんでした・・・

リスク管理としての分散投資
私自身、資産の9割以上はインデックスファンドで運用していますが、1割未満の範囲で個別株にも投資しています。
これは、大きなリターンを狙う「攻め」の部分と、安定したリターンを確保する「守り」の部分を分けるという考え方です。
個別株で大きな損失が出ても、資産全体への影響は限定的です。
一方で、優れた銘柄を選べた場合は、資産全体のリターンを押し上げる効果があります。
レアアース関連など特定テーマ投資の注意点
レアアースなど特定のテーマに投資をする場合の注意点も見ておきましょう。
日本のレアアース戦略と投資リスク
レアアースは日本の産業にとって極めて重要な資源です。
電気自動車、風力発電、精密機器など、日本が強みを持つ産業の多くがレアアースに依存しています。
しかし、レアアース関連株への投資は、企業の技術力だけでなく、中国の資源政策、国際的な供給網の変化、代替技術の開発動向など、予測困難な要因に大きく影響されます。
それだけ予想するのが難しいんですよ。
テーマ投資の流行と衰退
特定のテーマやトレンドに乗った投資は、一時的に大きなリターンを生むことがあります。
しかし、そのブームが去れば株価は急落します。
ITブーム、バイオブーム、仮想通貨ブームなど、過去にも多くのテーマ投資がありましたが、ブームの頂点で投資した人の多くは損失を被っています。
ファンダメンタル分析以前に、投資家心理に振り回されることのリスクを認識すべきです。
まとめ
今回は「レアアースの専門家が空売りで株引退の教訓|専門家が株に勝てない本当の理由。ファンダメンタルは意味ない?」と題して専門家が株で勝てない理由について考えてみました。
プロ投資家の88%以上が市場平均に負けるという事実は、投資の本質を教えてくれます。
それは、投資の目的は「市場に勝つこと」ではなく、「自分の人生設計に必要な資産を形成すること」だということです。
レアアース関連など特定のテーマや個別企業への投資も、資産全体の一部として楽しむ分には良いでしょう。
しかし、老後資金など重要な資産については、プロでさえ勝てない市場に無理に挑戦するのではなく、市場平均に連動する堅実な投資戦略を選ぶことをお勧めします。
投資の世界に絶対はありません。
しかし、データが示す事実と、自分の限界を認識した上で、長期的な視点を持って投資に取り組むことが、個人投資家にとって最も賢明な選択かもしれません。
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