初めてのお給料、嬉しいですよね。
でも、2回目の給料明細を見て「あれ、手取りが減ってる……?」と焦った経験、実は多くの先輩社会人が通ってきた道です。
その正体は「社会保険料」。
この記事では、中でも金額が大きい国民年金と厚生年金の違いを、社会保険労務士の視点からわかりやすくお伝えします。
将来いくらもらえるかまでわかれば、引かれているお金の「意味」が変わりますよ。
給料から引かれるものは何がある?
新入社員として最初に驚くのが、「額面と手取りの差」ではないでしょうか。
額面25万円の給料なのに、口座に振り込まれたのは20万円ほど。
約5万円はどこに消えたの?
そう思った方、安心してください。それはちゃんと理由があるお金です。
給料から引かれるものは大きく分けて「税金」と「社会保険料」の2種類があります。
税金として引かれるもの
所得税は国に納める税金で、毎月の給料からおおまかな金額が差し引かれます(源泉徴収)。
最終的な金額は、年末に「年末調整」という計算を経て確定します。
住民税は都道府県と市区町村に納める税金ですが、これは「前年の所得」に対してかかるもの。
つまり、前年にアルバイト等で一定以上の収入がなければ、新入社員の1年目は住民税がかかりません。
2年目の6月から給料天引きが始まりますので、来年の手取り減少にも備えておきましょう。
社会保険料として引かれるもの
社会保険料は、いざという時に私たちを守る「公的な保険」の掛け金です。
厚生年金保険料は今回の記事の主役です。
老後の年金のための保険料で、給料に応じた金額を会社と本人が半分ずつ負担します。
後ほどくわしく解説します。
健康保険料は、病院で医療費が原則3割負担で済む制度を維持するための保険料です。
大企業やグループ企業は「組合健保」、中小企業は「協会けんぽ」に加入するのが一般的で、こちらも会社と本人が折半します。
介護保険料は40歳以上になると健康保険料に上乗せして徴収されます。
新入社員の方はまだ関係ありませんが、将来のために知っておいてください。
雇用保険料は、失業した時に給付を受けるための保険料です。
保険料率は給料の0.55%程度(労働者負担分、令和7年度)です。
なお、労災保険という制度もありますが、こちらは全額会社負担のため、給料からは引かれません。
要注意!初任給と5月給料の「ギャップ」
ここで一つ、覚えておいてほしいことがあります。
初任給(4月分)で引かれるのは、多くの会社の場合、所得税と雇用保険料だけです。
厚生年金や健康保険は、原則として「翌月徴収」。
つまり、4月分の保険料は5月の給料から差し引かれるのです。
だから5月の給料を見ると、手取りがガクッと下がります。
これは制度上の仕組みなので、「何かの間違いでは?」と焦る必要はありません。
ただ、心の準備だけはしておきましょう。
国民年金と厚生年金の違い。そもそも両方払うの?
「国民年金と厚生年金、自分はどっちに入ってるんだろう?」
「まさか両方払ってる?」
新入社員の方からよく聞く質問です。
結論から言うと、会社員は「厚生年金保険料」を払っていて、その中に国民年金の保険料が含まれています。
つまり、両方に加入しているけれど、お財布から出ていくのは厚生年金保険料だけ、というのが正解です。
「2階建て構造」を理解すれば、すべてがスッキリする
日本の公的年金制度は「2階建て」にたとえられます。
1階部分が「国民年金(基礎年金)」。日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する、いわば全国民共通の土台です。
2階部分が「厚生年金」。会社員や公務員が、国民年金の上に積み増す形で加入する、いわば"上乗せ年金"です。
さらに、会社によっては企業年金(確定拠出年金や確定給付企業年金)という3階部分が用意されていることもあります。
自分の会社に制度があるかどうか、入社時の書類やイントラネットで確認してみてください。
国民年金と厚生年金の主な違い
両者の違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 国民年金 | 厚生年金 |
|---|---|---|
| 加入する人 | 自営業者、学生、フリーランスなど(第1号被保険者) | 会社員、公務員(第2号被保険者) |
| 保険料の決まり方 | 定額(令和7年度:月額17,510円) | 給料に応じた定率(本人負担は報酬の約9.15%) |
| 会社負担 | なし(全額自己負担) | あり(会社が半額を負担) |
| 将来の年金 | 老齢基礎年金のみ(1階部分) | 老齢基礎年金+老齢厚生年金(1階+2階部分) |
| 扶養の仕組み | なし | 配偶者を第3号被保険者にできる |
(出典:厚生労働省「公的年金の仕組み」、日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」)
ここで重要なポイントが2つあります。
1つ目は、厚生年金に加入している方は、国民年金にも同時に加入しているということ。
自分で別途、国民年金保険料を納める必要はありません。
2つ目は、会社が保険料の半分を負担してくれているということ。
例えば、給料明細で厚生年金保険料が月2万円引かれていたとしたら、会社も同額の2万円を負担しています。
実質的に4万円分の保険料が、あなたの年金のために積み立てられているのです。
これは、自営業者やフリーランスにはない、会社員の大きなメリットです。
厚生年金の保険料はどう決まる?「標準報酬月額」の仕組み
厚生年金の保険料は、国民年金のように一律ではありません。
給料が多い人ほど保険料も高くなる仕組みです。
その計算の基準となるのが「標準報酬月額」。基本給に通勤手当や残業代などの諸手当を加えた月収を、一定の等級表に当てはめて決定します。
新入社員の場合:「資格取得時決定」
入社時は、雇用契約書等に記載された報酬月額をもとに標準報酬月額が決まります。
これを「資格取得時決定」と言います。
つまり、初任給の金額で決まるってことですね。
2年目以降のポイント:4月・5月・6月が勝負
入社2年目以降は「定時決定」といって、4月・5月・6月に支払われた報酬の平均額で、その年の9月から翌年8月までの標準報酬月額が決まります。
つまり、4月~6月にたまたま残業が多いと、標準報酬月額が上がり、その後1年間の保険料が高くなるのです。
逆もまた然り。
もちろん、保険料が高い=将来の年金も増えるので、一概に損とは言えません。
ただ、目先の手取りを意識するなら、この仕組みは知っておいて損はないでしょう。

国民年金と厚生年金、将来いくらもらえる?
今は引かれるばかりだけど、将来いくら戻ってくるんだろう?
この疑問は、実は年金制度を理解する上で最も重要な問いです。
国民年金の受給額
国民年金(老齢基礎年金)は、20歳から60歳までの40年間(480か月)すべて保険料を納めた場合、令和7年度で満額 月額69,308円です(出典:厚生労働省「令和7年度の年金額改定について」)。
年額にすると約83万円。
これが1階部分のベースとなる金額です。
ただし、学生時代に保険料を猶予していた期間や、未納期間があると、その分だけ減額されます。
大学時代に「学生納付特例」を使っていた方は、余裕ができたら10年以内に追納することで、将来の年金額を増やせます。
厚生年金の受給額
厚生年金は、加入期間と現役時代の収入に応じて金額が変わります。
国民年金のような「満額」という概念はなく、人によって大きく異なるのが特徴です。
厚生労働省が公表しているモデルケースでは、平均的な収入(賞与含む月額換算45.5万円)で40年間働いた男性の場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて月額約17.3万円となっています(出典:厚生労働省「令和7年度の年金額改定について」経歴類型別年金額)。
衝撃の「月10万円の差」
実際の受給者の平均額を見ると、国民年金と厚生年金の差はさらにリアルに感じられます。
厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢年金の平均受給月額は次の通りです。
| 区分 | 平均月額 |
|---|---|
| 国民年金(老齢基礎年金のみ) | 約5.8万円 |
| 厚生年金(老齢基礎年金含む) | 約14.7万円 |
その差は月額約8.9万円。
年間では約107万円、65歳から85歳までの20年間で受け取ると約2,136万円もの差が生まれます。
「老後2000万円問題」を覚えていますか?
実はあの試算自体が「厚生年金をもらえる会社員世帯」が前提。国民年金のみの世帯では、不足額はさらに大きくなります。
これが「2階建て」の威力です。
今、給料から引かれている厚生年金保険料は、将来の自分に対する最も確実な「投資」とも言えるのです。

知っておきたい年金の3つの役割。老後だけじゃない
年金=老後にもらうお金、というイメージが強いかもしれません。
しかし、実は公的年金には3つの柱があります。
老齢年金は65歳以降に受け取れる、いわゆる「老後の年金」です。
障害年金は、病気やケガで障害が残った場合に受け取れる年金です。
国民年金加入者は「障害基礎年金」(1級・2級)のみですが、厚生年金加入者はそれに加えて「障害厚生年金」(1級~3級+障害手当金)が受給でき、保障の範囲が広くなります。
遺族年金は、加入者が亡くなった際に遺族が受け取れる年金です。
こちらも厚生年金加入者の方が、支給対象となる遺族の範囲や金額が手厚くなっています。
つまり、厚生年金は「老後の備え」であると同時に、現役時代の「万が一の保険」でもあるのです。毎月引かれる保険料は、この3つの保障すべてをカバーしています。
そう考えると、決して「取られている」お金ではないことがわかります。
将来の独立やフリーランス転身を考えている方へ
新入社員の方の中には、「いずれは独立したい」「フリーランスになりたい」と考えている方もいるでしょう。
その夢を否定するつもりはまったくありません。
ただ、年金制度の観点から、一つだけ覚えておいてほしいことがあります。
会社を辞めてフリーランスになると、厚生年金から外れ、国民年金(第1号被保険者)に切り替わります。
つまり、「2階建て」から「1階建て」になるのです。
先ほどお伝えした月額約8.9万円の差が、そのまま自分に降りかかる現実を直視する必要があります。
だからこそ、フリーランスや自営業の方には以下のような「自分で2階建て・3階建てにする制度」が用意されています。
付加年金は、国民年金保険料に月額400円を上乗せするだけで、将来の年金を増やせる制度です。
受給時には「200円×納付月数」が老齢基礎年金に加算されます。
2年で元が取れる計算で、国民年金加入者なら検討の価値は十分です。

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を拠出して運用し、60歳以降に受け取る制度です。
掛金は全額所得控除の対象となるため、節税効果も大きいのが魅力です。

会社員のうちに厚生年金の恩恵を十分に理解しておくことは、将来のキャリア選択においても大切な判断材料になります。
業務委託の場合も同じ
なお、最近、スタートアップ界隈で急激に増えていると言われているのが業務委託も基本的に同じです。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。

今日からできるアクション3つ
ここまで読んでくださった方に、具体的な行動をお伝えします。
5月の給料明細を「答え合わせ」してみる
この記事で学んだ知識を使って、5月の給料明細の控除項目を一つずつ確認してみてください。
所得税、雇用保険、厚生年金、健康保険。それぞれの意味がわかると、「引かれている」という感覚が「守られている」という実感に変わるはずです。
「ねんきんネット」に登録する
日本年金機構の「ねんきんネット」では、将来の年金見込額をシミュレーションできます。
マイナンバーカードがあれば、マイナポータルからすぐに登録可能です。
自分の年金記録がリアルタイムで確認でき、大学時代の未納・猶予期間があればそれも一目でわかります。
iDeCoに興味があれば情報収集を始める
公的年金だけでは不安が残る時代。iDeCoなど3階建て部分の準備は、早く始めるほど有利です。
月5,000円からスタートでき、掛金の全額が所得控除になるため、手取りにも効果があります。
「まだ早い」と思うかもしれませんが、20代から始めた人と30代から始めた人では、運用期間の差が複利効果に大きく影響します。

まとめ
新入社員にとって、給料明細の「控除」欄は不安の種かもしれません。
でも、その一つひとつには意味があります。
特に、厚生年金は国民年金を内包した「2階建て」の制度で、将来の老後資金だけでなく、障害や死亡時の保障も手厚い。会社が半額を負担してくれる点も、会社員ならではの大きなメリットです。
もちろん、少子高齢化が進む日本において、年金制度の将来は楽観できるものではありません。
だからこそ、公的年金の仕組みを正しく理解した上で、iDeCoやNISAなどを活用して「自分年金」を育てていくことが重要です。
「知っている」と「知らない」の差は、40年後の老後に数千万円の差となって現れます。
この記事を読んだ今日が、その第一歩です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

