ある日突然、建築中のマイホームの工事が止まる。
連絡しても電話は繋がらない。
数百万円の前払い金は戻ってこない。
「まさか自分が」と思うかもしれません。
しかし2025年、建設業の倒産は過去最多ペースで推移しています。
この記事では、その「まさか」を防ぐための具体的な方法をお伝えします。
建設業の倒産が「過去最多」を更新し続けている現実
まず、今の建設業界がどれほど深刻な状況にあるか、データで確認しましょう。
帝国データバンクの調査によると、2025年に発生した建設業の倒産件数は2,011件にのぼり、過去10年で最多を記録しました(出典:帝国データバンク「建設業」倒産動向調査, 2026年1月)。
2,000件を超えるのは2013年以来12年ぶりだとか。。。
ここで注目すべきは、倒産しているのが圧倒的に「中小零細事業者」だということです。
2025年の倒産のうち、負債5,000万円未満の事業者が1,167件と全体の約6割を占めています。
つまり、地域の工務店やビルダーが次々と倒れているのです。
倒産急増の背景には、一時的なものではなく「構造的な問題」があります。
ここが重要です。
建築資材・人件費の高騰と価格転嫁の壁
木材や鉄骨、住設機器の価格は高止まりが続いています。
帝国データバンクの調査では、建設業の価格転嫁率は39.6%にとどまっており、全業種平均を下回りました(出典:帝国データバンク, 2025年4月)。
つまり、コストの上昇分の6割は自社で吸収しなければならない状況です。
価格転嫁すれば顧客が離れ、しなければ利益が消える。
この「二重の板挟み」が中小建設業を追い詰めています。
特に断熱気密をウリにしていた工務店が、大手ハウスメーカーが同様の性能を当たり前にしてきたことできつくなったという話をよく聞きますね。
家が売れなくなってきた
物価高と金利高で家の価格が高くなり、売れなくなってきたというのも大きいです。
そのため、各社かなりお客争奪戦を繰り広げています。
少し前の記事ですが、展示場の来場特典も以前よりかなり豪華になっていますね。

また、うちの近所でも大手ハウスメーカーの建売がいくつも建ち始めました。
私が家を探していた2年〜3年前なんてまったく見なかったような大手ハウスメーカーの建売もたくさんあります。
担当営業マンの話を聞くとどうやら下請けに仕事を回さないといけないけど注文住宅の請負が少ないので、下請けの余力で建売を建てているとか。
(下請けに仕事を回さないと他社に移籍したり引き抜かれたりするそう)
大手は体力がありますからそれでも問題ないでしょうが、それ以外の建設業者の倒産が増えてしまうのも納得という状況ですね。
深刻な人手不足と「2025年問題」
建設業で人手不足を感じている企業の割合は約7割にのぼります。
2024年4月から適用された残業時間の上限規制も重なり、限られた人員で回さなければなりません。
さらに2025年は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる年。
熟練職人の大量引退が予想されており、若年層の「なり手不足」と合わせて、人手不足はさらに深刻化する見通しです。
ゼロゼロ融資の返済負担
コロナ禍で多くの建設業者が利用した「ゼロゼロ融資」(無利息・無担保融資)。その返済が本格化しています。
2024年の建設業倒産のうち143件がゼロゼロ融資利用後の倒産と判明しています。
コロナ禍で延命した企業が、体力を回復できないまま力尽きる。
そんなケースが後を絶ちません。
建築中に工務店、ハウスメーカーが倒産したら何が起きるのか?
ここからが本題です。
「もし自分が依頼した会社が倒産したら、具体的に何が起きるのか?」を正確に理解しておくことが、身を守る第一歩になります。
ローンだけが残る「最悪のシナリオ」
最も怖いのは「建物は未完成なのに、住宅ローンの返済だけが始まる」というケースです。
注文住宅では一般的に、契約時・着工時・上棟時・引渡し時の4回に分けて代金を支払います。(大手ハウスメーカーだと契約時と引渡し時のみってケースもあります。)
住宅ローンを組んでいる場合、つなぎ融資などですでに銀行への返済義務が発生していることもあります。
ところが建築会社が倒産すると、着工金や中間金を支払った後に倒産した場合、そのお金が戻ってくる可能性は極めて低いのが現実です。
倒産した会社には、多くの債権者がおり、残った資産を債権者で分配することになるのですが、一般的に倒産する状況でまともな資産なんて残っていないんですよ。
つまり、数百万から数千万円もの大金が、文字通り「消えてなくなる」ことを覚悟しなければなりません
しかし、家が完成していないのにローンの返済だけが粛々と続く。
これが現実に起きています。
2025年5月には新潟市の住宅メーカー「ニコニコハウス」が自己破産を申請し、着手金などあわせて2,000万円の返金が見通せなくなった施主がいると報じられましたね。
工事を引き継いでくれる会社が見つからない
「じゃあ別の会社に続きを頼めばいいのでは?」と思うかもしれません。
しかし実際には、引き継ぎを請け負ってくれる会社を探すのは非常に困難です。
理由はシンプルです。
倒産した会社がどんな施工をしていたか分からない。
手抜き工事や施工不良があれば、引き継いだ会社が責任を問われるリスクがある。
そのため多くの会社が引き継ぎを断ります。
何社に相談しても断られ続けた、という事例は珍しくありません。
たとえ受けてくれる会社が見つかっても、一筋縄ではいきません。
引き継ぎ先の業者は、前の業者の施工状況を詳細に確認する必要があり、そのための調査費用が発生します。
また、前の業者の施工に問題があった場合、その手直し費用も発生します。
さらに、資材の高騰や人件費の上昇により、当初の契約金額よりも高額な費用を請求されることも珍しくありません。
すでに失った着工金や中間金に加え、新たな「追加費用」という二重苦が、あなたの家計をさらに圧迫することになるという。。。
放置された建物の劣化リスク
工事がストップしたまま放置されると、雨風にさらされた木材が腐食したり、金属部分に錆が生じたりする可能性があります。
特に上棟直後で屋根や外壁が未完成の段階で放置されると、構造躯体へのダメージは深刻です。
仮に引き継ぎの会社が見つかったとしても、こうした劣化部分の修繕費用が追加でかかることになり、当初の予算を大幅に超えてしまうこともあり得ます。
あなたの家を守る「5つの防衛策」
それでは、どうすればこうしたリスクを最小限に抑えられるのでしょうか。
5つの具体策をお伝えします。
防衛策1:住宅完成保証制度に加入しているか確認する
住宅完成保証制度とは、建設業者が倒産した場合に、施主が最小限の追加負担で住宅を完成できるよう保証する仕組みです。
住宅あんしん保証などの保証会社が提供しています。
具体的には、前払い金の損失と、工事を引き継ぐ際に追加でかかる費用(増嵩工事費用)の一定割合を保証してくれます。
さらに、工事を引き継ぐ事業者のあっせんも行ってくれるため、「どこに頼めばいいか分からない」という状況を避けることができます。
ただし、いくつか知っておくべき注意点があります。
加入は任意
まず、この制度への加入は「任意」であるということ。
建設業者が自ら申し込み、審査を通過して初めて利用できます。
逆に言えば、加入していること自体が「財務審査をクリアしている」という一つの信頼の証にもなりますね。
補償上限1,100万円
次に、保証には上限があることです。
前払い金の保証は請負金額の30%または1,100万円のいずれか低い金額まで。
増嵩工事費用の保証は請負金額の10%または200万円のいずれか高い金額までです。
全額が保証されるわけではない点は理解しておきましょう。
逆に言えば前払いの金額を補償上限以内にしておくというのもリスク対策として必要でしょうね。
大手ハウスメーカーは対象外
また、この制度は主に中小の工務店・ビルダー向けです。
大手ハウスメーカーは対象外となっています。
中小の工務店・ビルダーと商談するなら契約前に必ず「住宅完成保証制度に加入していますか?」と確認してください。
これが最もシンプルかつ強力な防衛策です。
防衛策2:経営事項審査(経審)を確認する
経営事項審査(経審)は、建設業法に基づいて建設業者の経営状況を数値で評価する制度です。
自治体などから500万円以上の公共工事を受注しようとする建設業者は、この審査を受けなければなりません。
そのため、多くの地場の工務店なども利用しているんですよ。
ここが一般にはあまり知られていないのですが、経審の結果は誰でも無料で閲覧できます。
一般財団法人建設業情報管理センター(CIIC)のWebサイト(http://www7.ciic.or.jp/)にアクセスし、商号や建設業許可番号を入力すれば、その会社の経審結果が表示されます。
経審では、経営規模(X1)、経営状況(Y)、技術力(Z)、社会性等(W)などの項目を総合的に点数化した「総合評定値(P点)」が算出されます。
平均が700点になるよう設計されているため、700点を大きく下回っている場合は注意が必要かもしれません。
特にY点(経営状況)は、純支払利息比率、負債回転期間、総資本売上総利益率、売上高経常利益率などの財務指標をもとに算出されるため、財務の健全性を判断する参考になります。
ただし、経審にも限界はあります。
経審の結果は審査基準日(通常は決算日)時点のものであり、その後の経営状況の変化は反映されません。
また、すべての建設業者が経審を受けているわけではなく、公共工事を請け負わない民間専門の工務店は受審していないこともあります。
さらに、建設業界では経審目的の粉飾決算が問題視されることもある点は留意が必要です。

防衛策3:決算書の「3つのポイント」を確認する
上場しているハウスメーカーであれば、財務諸表が公開されています。
ここでは、最低限「ここだけは見てほしい」3つのポイントをお伝えします。
ポイント1:自己資本比率
自己資本比率は総資産に占める自己資本の割合です。
この数値が高いほど、借金に頼らない健全な経営をしていることを意味します。
建設業であれば40%以上あれば一つの目安。30%を切っている場合は、外部環境の変化に対する耐性が低い可能性があります。
ポイント2:当座比率
当座比率は短期的な支払能力を示します。
具体的には当座資産(すぐに現金化できる資産)を流動負債(1年以内に支払いが必要な負債)で割ったものです。
これが最低100%、できれば150%程度あればすぐに倒産するというのは考えにくいです。
ちなみに同じような用途の指標に流動比率があります。
流動比率の方が一般的なので、当座比率が公開されてなければそちらも見てもOK。
流動比率なら最低150%、できれば200%程度と考えればよいでしょう。
ただし、当座比率の方が材料の在庫や、やりかけの工事の影響を受けないので、建設業の分析には向いているんですよ。
ポイント3:営業キャッシュフロー
意外と見落とされがちですが、最も重要と言っても過言ではないのが営業キャッシュフロー(営業CF)です。
営業CFとは「本業でどれだけお金を稼いでいるのか」を示します。
帳簿上は黒字でも、実際に手元の現金が不足して倒産する「黒字倒産」は建設業で特に多いパターンなので、営業CFをみるのは有効なんですよ。
基本的に営業CFがプラスな企業を選択しましょう。
とくに営業CFが2期以上連続でマイナスになっている場合、資金繰りが厳しい状況にあると考えられますので避けたいところ。
なお、設備投資の負担が大きい建設業なので、営業CFと投資キャッシュフローを合計したフリー・キャッシュ・フロー(FCF)もチェックすると良いでしょう。
これがプラスだと尚良いです。
そのFCFがプラスの状況を言葉にすると「本業で稼いだお金で無理しない程度に設備投資等をしている状況」なんですよ。
つまり、お金がうまく回っているということ。

非上場の工務店・ビルダーの場合
非上場の工務店やビルダーの場合、決算書を直接見ることは難しいですが、先述の経審のY点がその代わりとなります。
また、帝国データバンクや東京商工リサーチの企業信用調査を利用するという方法もあります。
niftyビジネスなどのサービスを利用すれば、個人でもこれらの情報を一括で購入できる場合があります。
数千円〜数万円の費用はかかりますが、数千万円の家を建てることを考えれば、十分に見合う「安心料」です。
ただし、企業が情報開示に非協力的だった場合、得られる情報が限定的になる可能性もありますので、その点はご留意ください。
逆に考えれば情報開示に非協力的な会社はあまり経営状況が良くない可能性も高いですね。
防衛策4:前払い金を最小限に抑える
万が一倒産が起きた場合、前払い金が返ってこないリスクがある以上、そもそもの前払い額を抑えることが重要です。
注文住宅の支払いスケジュールは、一般的に「契約金10%・着工金30%・上棟金30%・引渡し時30%」が目安とされています。
これ以上に多額の前払いを求められる場合は、その理由を確認しましょう。
特に「契約時に50%以上前払いすれば割引」といった提案には慎重になるべきです。
大幅な前払いを求めること自体が、資金繰りの悪化を示すサインである可能性もあります。
ちなみに大手ハウスメーカーは資金繰りが安定しているのかそのあたりは安心できます。
私が契約したハウスメーカー(大手)は契約時に土地と建物でそれぞれ100万円ずつ。
合計200万円払っただけで、後は引き渡し時に精算となっていました。
防衛策5:住宅瑕疵担保責任保険の付保を確認する
仮に建物が完成した後に建築会社が倒産した場合でも、住宅瑕疵担保履行法に基づく保険に加入していれば、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について、引渡しから10年間は保険法人に直接補修費用を請求できます(出典:住まいるダイヤル)。
引渡し時の書類に「住宅瑕疵担保責任保険の付保証明書」が含まれているか、必ず確認してください。
この書類があれば、建築会社が倒産しても最低限の保証は受けられます。
住宅瑕疵担保責任保険は「完成後の欠陥」対策。
住宅完成保証は「完成前の倒産」対策。
役割が違いますが、工務店で建てるなら両方欲しいところですね。
「大手ハウスメーカーなら安心」は本当か?
ここで一つ、よくある「思い込み」に触れておきます。
「大手ハウスメーカーなら倒産しないから安心」という考えです。
確かに、積水ハウスや旭化成ホームズ(ヘーベルハウス)などの大手は財務的に安定しており、短期的な倒産リスクは極めて低いと考えられます。
しかし、忘れてはいけないのは「大手」と「中堅」の境界線は曖昧だということです。
大手ハウスメーカーの法的な定義ってないんですよ。
ちなみに元々、大手ハウスメーカーって8社会
積水ハウス、旭化成ホームズ(ヘーベルハウス)、大和ハウス工業、住友林業、パナソニックホームズ、三井ホーム、セキスイハイム(積水化学工業)、ミサワホーム
を指していたそうです。
しかし、最近では一条工務店、タマホーム、アイ工務店、トヨタホームなど8社会に所属していない企業も台頭してきており、そのあたりは曖昧な状況です。
やまぜんホームズの倒産
この話で象徴的なのが「やまぜんホームズ」です。
2025年8月に、「やまぜんホームズ」(三重県)が負債約17億9,300万円を抱えて破産しました。
創業約50年、累計施工実績2,700棟以上。
テレビCMも倒産直前までバンバンしていました。
2024年までTOKYO PRO Marketに上場していました。
ですからすれば決して「聞いたこともない会社」ではありません。
大手ハウスメーカーと認識していた人も多かったはずです。
上場しているから安心、知名度があるから安心、という単純な判断は危険です。
大切なのは、前述した財務データを自分の目で確認することです。
そしてそれが難しければ、住宅完成保証制度や経審といった「制度」の力を借りることです。
ちなみに「やまぜんホームズ」はダイヤモンド社が2022年にゼネコン、不動産業の経営「危険度」ランキングを出したときに1位だったのですし、上場廃止もありましたので、ちょっと財務状況を調べれば危険ということがわかったはずなんですよ。
>>週刊ダイヤモンド22年10月1日号 沈むゼネコン 踊る不動産
直近の倒産事例から学ぶ
具体的な事例を知ることで、リスクをよりリアルに感じていただけるかもしれません。
| 事例 | 時期 | 概要 |
|---|---|---|
| ニコニコハウス(新潟市) | 2025年5月 | 2期連続赤字。消費税の納税ができなくなり自己破産。施主に2,000万円の返金見通し立たず |
| やまぜんホームズ(三重県) | 2025年8月 | 負債約17.9億円。元上場企業ながら売上高はピーク時の約3分の1に縮小し破産 |
こうした事例に共通するのは、倒産の兆候が表面化する前に契約が進んでいるということです。
つまり、契約「後」に気づいても遅い。
だからこそ、契約「前」の確認が決定的に重要なのです。
契約前の「確認チェックリスト」
最後に、家を建てる前に確認すべきポイントをまとめます。この記事を読んだあと、ぜひ実際にチェックしてみてください。
| チェック項目 | 確認方法 |
|---|---|
| 住宅完成保証制度に加入しているか | 建設業者に直接確認 |
| 経営事項審査(経審)の結果 | CIICのWebサイトで無料閲覧 |
| 自己資本比率・営業利益率・営業CF | 上場企業は有価証券報告書、非上場は経審Y点で代替 |
| 前払い金の比率は適正か | 契約金10%・着工30%・上棟30%・引渡し30%が目安 |
| 住宅瑕疵担保責任保険の付保 | 重要事項説明書で確認 |
| 帝国データバンク等の企業信用調査 | 非上場の場合はniftyビジネス等から購入可能 |
まとめ:「調べる手間」が数千万円を守る
家は人生最大の買い物です。デザインや間取り、価格に目が行きがちですが、それ以前に「この会社は最後まで家を建ててくれるのか」という視点を持つことが、今の時代は不可欠です。
建設業の倒産は、2025年も過去最多ペースが続いています。
しかし恐れるだけでは何も解決しません。
住宅完成保証制度への加入確認、経営事項審査の閲覧、決算書の基本的なチェック。
これらは誰にでもできることです。
調べるのに必要な時間は、おそらく数時間。
しかしそれが守るのは、数千万円のお金と、家族の未来です。
この記事が、あなたの家づくりを少しでも安全なものにする一助となれば幸いです。
また、いろいろなハウスメーカーを比較して決めるのがおすすめですね。

