読者様から上場企業の決算書の読み方についてご質問がありました。
そこで今回は簿記の知識のない方向けの決算書の読み方をみていきます。
上場企業は四半期(3ヶ月に一度)決算発表を行います。
とても重要な発表なのですが、内容が理解できなければ他の投資家と比べてかなり不利ですよね。
今回はそんな簿記の知識のない方にも分かるように決算書が読むためのポイントを解説していきましょう。
なお、会社四季報の読み方については下記記事で解説しております。
合わせて御覧ください。
前年同期比
まず、決算発表(四半期報告書や決算短信、有価証券報告書)で確認したいのは前年同期比でしょう。
決算発表ではわかりやすく表記してあるケースが多いです。
例えば、下記はトヨタ自動車の2022年3月期「第一四半期決算短信」です。
営業収益が対前年同期で72.5%伸びているのがわかります。
出典:トヨタ自動車 2022年3月期 第一四半期決算短信
前年の同時期はコロナでかなり落ち込んでいたこともあり、大きな伸びとなっています。
まずは昨年と比べてどうなのかというところを売上(トヨタは営業収益)、営業利益、四半期利益などで確認をします。
当然伸びているに越したことはありません。
ただし、トヨタ自動車のケースのように前年に一時的に伸びたとか減ったとか特殊なことがなかったのかは確認しておきたいところ。
業績予想に対しての進捗状況
次に確認したいのが進捗状況です。
多くの企業ではその期の業績予想を発表しています。
その業績予想と比較してどのくらい進捗しているのかを確認します。
こちらは決算短信ではあまり掲載されていません。
下記のような業績予想が掲載されていますからそこから自分で計算したり、証券会社によっては進捗状況が掲載されますのでそちらで確認するようにします。
出典:トヨタ自動車 2022年3月期 第一四半期決算短信
私の場合はチェックしている企業はエクセルで進捗を入力しておきますね。
進捗状況を確認することで業績予想の達成の有無も見えてきますし、上方修正や下方修正しそうなどうかも予想が可能です。
月ごとのブレが無い企業なら業績予想どうりに進めば四半期ごとに25%進捗するはずです。
それとのズレを確認するのです。
ただし、多くの企業は月によって大きな差があるケースもありますのでそのあたりも考慮の上で確認しましょう。(年度末に大きく売上あがるなど)
セグメントごとの確認をすると更によい
企業によってはセグメントや商品ごとの業績予想や売上を公開しているケースもあります。
飲食店などでは既存店と新規店で分けているケースも。
そのような分類があればそれも分けて進捗や前年同期比を確認するするとその企業の実情がより見えてくるでしょう。
例えば飲食店であれば売上が大きく伸びているけど新店分がほとんどなんてケースも
既存店の売上がどんどん下がっているなんて話になればかなり要注意です。
その店の魅力がさがっている、消費者に受け入れられていないってことですからね。
いきなりステーキなんかはその傾向が見えていましたね。
いきなりステーキの場合には新規出店しすぎてカニバニ(共食い)となってしまったことが大きかったようですが・・・
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
キャッシュフロー計算書のフリーキャッシュフロー
私の場合、次に見るのは貸借対照表でもなく損益計算書でもありません。
キャッシュフロー計算書です。
キャッシュフロー計算書はお金の動きだけに着目した決算書類でこれを見るとその企業の資金面の問題がよくわかるのです。
貸借対照表や損益計算書ももちろん大事ですが、粉飾決算も容易なんですよ。
キャッシュ・フロー計算書はお金の動きを見るもので粉飾決算がしにくいと言われています。
そのため粉飾決算を見破るには最適なんです。
特に本業でのお金の流れに着目した営業キャッシュフローや会社が自由に使えるお金を示すフリーキャッシュフロー(営業キャッシュフロー+投資キャッシュフロー)に着目して損益計算書と比較してみるとよいでしょう。
特にフリーキャッシュフローがマイナス続きの会社は要注意です。
※営業キャシュフローがマイナス続きなのはこれからのベンチャー企業ではよくあります。
キャッシュフロー計算書の作成はある程度の簿記知識が必要ですが、内容を理解するだけならパターンで認識が可能です
詳しくは下記記事を御覧ください。
中国恒大集団の例
- 売上:8.6兆円
- 営業利益:1.1兆円
- 当期純利益:0.5兆円
当期純利益なんて日本企業で超えているのはソフトバンク、トヨタ、ソニー、NTT、三菱UFJ、ホンダ、KDDIだけなんですよ。
しかし、キャッシュフロー計算書をみるとこりゃやばい・・・とすぐに分かるレベルでした。
出典:中国株二季報WEB 中国恒大集団 より
フリーキャッシュフローをみると直近の2020年12月期こそプラスとなっていますが、それまで過去すべて大きなマイナスとなっています。
そのマイナス分は財務キャッシュフロー(借り入れ等の資金調達)で埋めています。
つまり、身の丈に合っていない投資を借り入れ等で続けてきていたということです。
黒字倒産によくあるパターンですね・・・
キャッシュフロー計算書は必ずチェックしておきたいですね。
レナウンの例
2020年に経営破綻したレナウンもキャッシュフロー計算書を見れば破綻の予兆はかなり出ていました。
下記はレナウンの破綻前に発表されたキャッシュフロー計算書の抜粋です。
本業でうまくお金が回っているのかを示す営業活動によるキャッシュフローは以下の通り、大きなマイナスに転じています。
2019年12月期 | △4,567百万円 |
2019年2月期 | 1,212百万円 |
増減 | △5,779百万円 |
出所:レナウン「第16期有価証券報告書」より
つまり、本業でうまくお金が回らなくなっている状況ということです。
かなり予兆が出ていたということなんですよ。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
ライザップの例
次にライザップの事例も見ておきましょう。
こちらも中国恒大集団と同じくイケイケどんどんのお金の使い方をしていたんですよ。
例えば2018年3月期のライザップのキャッシュ・フロー計算書を見るとこうなっています。
投資活動によるキャッシュフロー△3,495,265千円
財務活動によるキャッシュフロー22,725,250千円
現金及び現金同等物の増減額19,282,435千円
これをみると現金及び現金同等物は一年間で19,282,435千円増えているというかなりすごい状況であることがわかります。
しかし、問題はその内訳です。
営業活動で87,602千円のお金を産んでいるけど3,495,265千円のお金を投資にまわしているということがわかります。
それを財務活動によるキャッシュフロー(借り入れや資本政策など)で賄っているのです。
つまり、身の丈に合っていない投資を続けていたということです。
これもずっとうまく行っていればまったく問題ありませんが、なにかのきっかけで中国恒大集団のように資金の流れが止まってしまうと一気にやばいことになってしまうんですよ。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。
簿記や決算書の勉強をするのがベスト
今回は簿記などの知識がなくても大丈夫という話で書いてきました。
今日ご紹介した3つのポイントは決算書を読む知識がなくてもある程度対応可能です。
しかし、決算書を読むならやはりある程度の簿記の知識などを付けておくに越したことはありませんね。
特におすすめは以下の資格の勉強をすることです。
ビジネス会計検定
ビジネス会計検定は簿記と非常の近い検定です。
簿記は財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)を作ることが中心。
ビジネス会計検定は財務諸表を読むことが中心の資格となります。
ですから株式投資に役立てたいならビジネス会計検定のが最適な資格なんですよ。
ただし、知名度はあまりありませんから、就職や転職に役立てることを考えるなら簿記検定の方が有利でしょうけどね。
ちなみにビジネス会計検定の主催は大阪商工会議所となります。
試験を受けるまでする必要はないでしょうが、上記テキストで勉強するだけでもぜんぜん違いますよ。
他にも株式投資や資産運用に役立つおすすめ資格はこちらの記事でまとめてありますので御覧ください。
まとめ
今回は「簿記などの知識がなくても大丈夫。上場企業の決算発表ここだけは見ておきたい3つのポイント」と題して簿記などの知識がなくても上場企業の決算発表をみる際のポイントをご紹介しました。
まとめると以下の3つのポイントです。
- 前年同期比
- 業績予想に対しての進捗状況
- フリーキャシュフロー
最低限上記の3つは確認しておきたいですね。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。