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都市伝説界隈で騒がれる「エルル29」とは。過去の大暴落との関係を検証

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都市伝説界隈で騒がれる「エルル29」とは。過去の大暴落との関係を検証

最近、都市伝説界隈で騒がれている「エルル29」をご存知でしょうか?

ユダヤ暦の年末にあたるエルル月29日と相場の急落を結びつける通称です。

2001年・2008年の米株急落がこの日に重なったことから、「7年周期」「シェミタ(安息年)と大暴落」という物語が拡散。

日本でも解説記事や都市伝説系の動画・まとめサイトで繰り返し取り上げられてきました

今回は一次情報(ユダヤ暦サイト等)と市場データの常識(季節性)を軸に、「エルル29とは何か/いつか/過去との符合はどの程度か」を冷静に検証します。

目次

エルル29とは

まずは今回の話の前提となるエルル29とはなにかの基礎知識をみておきましょう。

ユダヤ暦の年末「エルル月29日」

ユダヤ暦(ヘブライ暦)では、エルル月の29日=年末(大晦日)にあたります。

翌日がユダヤ新年(ロシュ・ハシャナ)。

信頼できるユダヤ暦コンバーターで日付対応を確認できます。

シェミタ(安息年)と7年周期

また、7年目の安息年「シュミータ(Shmita)」の概念があり、宗教上は土地を休ませたり債務の扱いに特別な規定があります。

投資では、この「7年周期」が相場の大きな変動と“結びつけられやすい”部分もあります。

直近のシェミタ年は5782年(2021/9/7〜2022/9/25)、次は5789年(2028/9/20〜2029/9/9)と整理されています。

都市伝説では「シェミタ最終日のエルル29と暴落が重なる」と語られがちですが、宗教的概念=株価の必然ではありません。日付対応の事実と相場の統計的性質を分けて考えるのが大切です。

エルル29はいつ?(2025年以降のカレンダー)

一次情報に基づく該当日(現地カレンダー基準)は次の通りです。

次のエルル29は

2025年9月22日(月)

です。

なお、ユダヤ暦は日没基準のため厳密には現地日没〜翌日没。

イスラエルの祝日表でも翌9月23–24日がロシュ・ハシャナ(新年)です

以降は以下のとおり。

2025年:9月22日(月)
2026年:9月11日(金)
2027年:10月1日(金)
2028年:9月20日(水)
2029年:9月9日(日)
2030年:9月27日(金)

毎年9月ころに訪れる感じですね。

「過去の大暴落」とエルル29の符合を一次情報で検証

それでは本当にエルル29で暴落するのでしょうか?

過去の大暴落との符号を一次情報で確認してみましょう。

一致した代表例:2001年と2008年

まずは一致した代表例です。

2001年9月17日(9.11後NY市場再開初日)

ヘブライ暦換算で5761年エルル29日。

同日は米市場が9.11の同時多発テロ後に再開し、株式は大きく下落し、ダウは過去最大級の下げ幅を記録しました(当時)

2008年9月29日(リーマン・ショック時の下院が公的資金案否決)

5768年エルル29日に、ダウが777.68ドル安という歴史的急落。

リーマン・ショック連鎖の中、米株は大幅安

史実として最も“エルル29一致”の根拠に使われます。

不一致の代表例:1973年・1987年・2015年・2020年

次は不一致のケースです。

1973年オイルショック

1973年オイルショックの発端は10月の中東戦争と10月17日以降の禁輸。

これはエルル29とは一致しません

1987年ブラックマンデー

1987年ブラックマンデーは10月19日。

ヘブライ暦はティシュレイ26日で、

こちらもエルル29とは一致しません

2015年チャイナショック

2015年の大きな下落は8月24日(チャイナショック)で、ヘブライ暦はエルル9日。

こちらもエルル29とは一致しませんでした。

なお、同年のエルル29=9月13日には“決定的なクラッシュ”は起きていません。

2020年新型コロナショック

直近の大暴落は新型コロナショック。

最大の一日下落は2020年3月16日(月)。ダウは-2,997pt(-12.9%)と1987年以来の下げ率を記録。

主要な急落(3/9・3/12・3/16)は3月に集中しており、エルル29ではありません。

エルル29「一致・不一致」早見表

まとめると以下のとおり。

事象グレゴリオ暦ヘブライ暦換算エルル29一致?備考
米株急落(市場再開初日)2001/9/175761/エルル299/11後の再開日。大幅安。
米株急落(公的資金案否決)2008/9/295768/エルル29ダウ -777.68pt。
オイルショック1973/10/17–20ティシュレイ×禁輸決定は10月。
ブラックマンデー1987/10/19ティシュレイ26×史上最大級の下落率。
チャイナショック2015/8/24エルル9×大幅下落は9/13ではない。
コロナ・ショック2020/3/165780/アダル20×2020年のエルル29は9月18日

表のとおり、過去の暴落とエルル29は一致するケースもありますが、毎回ではありません。

サンプル外も含め「起きた後で日付を探す」のは、典型的な後付け・チェリーピッキングです。

季節性(9月)という“もっと地味だが強い”説明

なお、9月は歴史的にパフォーマンスが弱い傾向が指摘されます。

ブラックロックの集計でも1928年以降、9月は下落月の割合が最も高いとの整理されており、非宗教的な説明がつきます。

「9月の弱さ」が物語を生みやすい土壌なのです。

つまり、9月に相場が不安定化しやすい傾向は歴史的にあり、“エルル29だから”ではなく資金循環や需給要因で説明できる部分が大きい、ということです。

日付占い、都市伝説に流されない

少し前にも2025年7月5日に大震災が起こるのでは?と大きな話題となったことがありました。

実際に中国や台湾からの観光客が減ったという影響まであったくらいです。

しかし、実際にはなにも起こりませんでした・・・

1999年7月のノストラダムスの大予言もそうでしたね。

それではそのような占いや都市伝説に流されないためにはどうすればよいのでしょう?

ファンダメンタルの同時点検

政策金利、景気サイクル、信用スプレッドを点検が重要です。

2001/2008はいずれも金融ショック要因が同時進行でした。

日付より“信用ストレスの有無”を見ます。

2008年9月29日は下院否決という政策イベント直撃が急落の引き金でした。

資産配分とキャッシュ比率

不安になるというのは投資比率が高すぎるかもしれません。

「9月は荒れがち」という季節性は事実としてあるため、年間のリバランス月を9月・3月などボラの出やすい時期に合わせ、キャッシュを厚めに持つ設計は合理的です。

ルール化する

プロスペクト理論が示す「損失の痛み>利益の喜び」を踏まえ、損切り・買い増しの基準を数値で事前定義。

不安ストーリーに左右されない機械的運用に寄せます。

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まとめ

今回は「都市伝説界隈で騒がれるエルル29とは。過去の大暴落との関係を検証」と題してエルル29について考えてみました。

エルル29はエルル29はユダヤ暦の大晦日。宗教的概念自体は事実です。

ただし、過去の暴落とは2001/2008は一致していましたが、1987/2015/1973は不一致。

ですから「毎回暴落」は成り立っていないのです。

ちなみに直近のエルル29は2025年9月22日(月)(現地日没基準)。

備えはする、決めつけないという前提で、日付神話ではなく季節性×信用ストレス×ルール運用で対応するのをおすすめします。

※本稿は投資助言ではありません。実際の投資判断は、最新の開示資料・市況・ご自身の投資方針に照らして行ってください。

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