保険、結局どれがいいの?
そう悩んだ末に、月数千円の県民共済へたどり着く方は少なくありません。
掛金は安く、割戻金まで戻る。
一見、最強の選択肢です。
ですが、その安さの裏には設計上の宿命が隠れています。
本記事では、共済と生命保険の根本的な役割の違いから、後悔しない使い分けまでをお伝えします。
「安くて最強」その第一印象は、半分正しい
県民共済って、安くて最強らしいよ
職場の同僚や、子育て仲間から、こんな言葉を聞いたことはありませんか。
実際、都道府県民共済は全国で約2,150万件もの加入を集める、巨大な保障制度です(2024年度末時点)。
保険を見直そうとすると、かなり高い確率で候補に上がるでしょう。
これだけ多くの人が選んでいるのですから、何かしらの理由があるはずです。
結論から申し上げます。
県民共済は、ある条件のもとでは間違いなく賢い選択です。
しかし「最強」という言葉は、決定的な一点を見落としています。
その一点とは何か。
順を追って、一緒に確かめていきましょう。
そもそも「共済」と「保険」は何が違うのか
まず、基本となる話から始めます。
ここを誤解したまま比較すると、すべての判断がずれてしまうからです。
県民共済と生命保険は、「もしもの時にお金が出る」という点ではよく似ています。
けれど、運営の思想がまったく違います。
生命保険は、保険会社という営利企業が運営します。
集めた保険料から保険金や経費を支払い、残りが会社の利益になります。
一方、県民共済は各都道府県の生活協同組合(生協)が運営する非営利の事業です。
加入者同士がお金を出し合い、誰かにもしものことがあればそこから支払う。
そして決算で掛金が余れば、利益として抱え込まず、加入者へ「割戻金」として返す仕組みになっています。
用語も少し異なります。
保険でいう「保険料」を掛金、「保険金」を共済金と呼びます。
呼び名は違っても、機能はほぼ同じと考えて差し支えありません。
ここで押さえておきたいのは、この一文です。
生命保険は「商品を売る事業」、県民共済は「組合員で支え合う仕組み」。
この出発点の違いが、後で効いてきます。
割戻金という、もうひとつの財布
県民共済の最大の魅力は、やはり掛金の安さです。
都民共済の場合、基本保障の毎月の掛金は1,000円〜4,000円程度。
年齢や性別を問わず一律です。
そして、ここが見落とされがちなのですが、表示された掛金がそのまま負担額ではありません。
非営利である県民共済では、決算で余った剰余金が「割戻金」として加入者へ戻ります。
これは病気やケガで共済金を受け取ったかどうかに関わらず、決算後に剰余金が生じれば対象になり、例年8月ごろに口座へ振り込まれます。
その水準は、決して小さくありません。
2024年度(2025年3月決算)の例では、総合保障2型の割戻率は全国平均で35%前後にのぼりました。
月4,000円・年48,000円を払っていれば、1万円超が戻る計算です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年間掛金(例) | 48,000円(月4,000円) |
| 割戻率(2024年度・総合2型の全国平均) | 約35% |
| 戻ってくる割戻金 | 約17,000円 |
| 実質的な年間負担 | 約31,000円 |
つまり、表面の掛金から3割前後が戻ることもあり、実質負担はさらに軽くなります。
「安い」という第一印象は、ここでは確かに正しいのです。
ただし、ここで早合点してはいけません。
次の3つは、必ず知っておいてください。
毎年必ずもらえるものではない
まず、割戻金は毎年必ずもらえるものではありません。
共済金の支払いが多かった年は減り、剰余金が出なければ発生しない年もあります。
割戻率は都道府県で異なる
二つ目は割戻率は都道府県でまったく違うことです。
2024年度を見ると、最も高い福井県民共済は50%を超えた一方、最も低い大分県民共済は約25%。
同じ掛金でも、住む場所で倍近い差が生まれます。
割戻率は年ごとに変わる
最後は割戻率は同じ地域でも年ごとに揺れることです。
都民共済の総合・入院保障型を例にとると、直近4年で約33%→約12%→約36%→約39%と上下しています。
割戻金は「ボーナス」であって「約束された値引き」ではない。
この理解が、過度な期待を防いでくれます。
県民共済、5つのメリット
土台を押さえたところで、県民共済のメリットを整理します。
よく言われるメリットは下記の5つです。
掛金が安く、割戻金で実質負担がさらに下がる。
前述のとおりです。
保障がシンプルで分かりやすい。
年代別に用意された数種類のコースから選ぶだけ。
複雑な商品設計に頭を悩ませる必要がありません。
加入のハードルが低い。
健康状態の告知は必要ですが、医師の診査は不要なことが多く、簡単なアンケートに答える形が中心です。
持病や通院歴があっても加入できる可能性があります。
掛金が年齢・性別で変わらない。
民間保険は年齢が上がると保険料が高くなりますが、県民共済は一律。
だからこそ、加入時の年齢によって「割安かどうか」が変わってきます(後述します)。
死亡保障と医療保障がセットで持てる。
最低限の備えを、ひとつのコースでまとめて確保できます。
これだけでもかなり魅力的です。
私の考える最大のメリット
しかし、私が考える県民共済の最大のメリットは、単なる安さではありません。
「保険選びで迷いすぎる人にとって、一定水準の保障をすぐ持てること」です。
民間の生命保険は、商品が多すぎます。
終身保険、定期保険、収入保障保険、医療保険、がん保険、三大疾病、就業不能、先進医療、払込免除。
しかも、同じような名前でも保険会社によって条件が違います。
あえて複雑にしているのか?って感じの商品も多いです。
その結果、保険選びに疲れて、何も決められない人が出ます。
これは実は大きな問題です。
保険で最悪なのは、完璧な商品を探し続けて、必要な保障を何も持たないことです。
県民共済は、この「決められない問題」をかなり解消してくれます。
つまり県民共済は、保険の世界における「既製品の良さ」を持っています。
サイズがぴったり合う人には、安くて十分。
すぐ使える。余計な装飾も少ない。
ただし、体型が特殊な人、つまり家族構成や収入、住宅ローン、教育費、相続事情などが一般的でない人には、既製品だけでは合わない可能性があります。
県民共済の落とし穴(デメリット)
県民共済の落とし穴は、安いことではありません。
一生ずっと同じように続く保障と思い込むこと
まず、危険なのが安い保障を「一生ずっと同じように続く保障」と思い込むことです。
県民共済の保障には、終身というものが存在しません。
すべて1年更新の掛け捨て型(定期型)で、保障の上限はおおむね85歳まで。
しかも60歳以降は、保障額が段階的に減っていきます。
何を意味するか。
病気やケガ、そして死亡のリスクが最も高まる高齢期に、保障が細り、やがて消える。
満85歳を過ぎた翌日いわば「86歳の朝」入院も、通院も、後遺障害も、死亡保障も、一切が支払われなくなります。
一番、保障が欲しい時期に、保障がゼロになる。
これが設計上の宿命です。
たとえるなら、傘を貸してくれるのは雨が小降りのうちだけで、本降りになる前に取り上げられてしまう。
そんな仕組みなのです。
さらに、加入そのものにも年齢の壁があります。
新規加入は満69歳までが上限で、70歳以上の方は入れません。
「老後が不安だから今から」と思っても、間に合わないケースがあるのです。
掛け捨てですから、満期保険金も解約返戻金もありません。
長く払っても、85歳以降に手元へ戻るお金はゼロ。
この点は、貯蓄性のある終身保険と違う点です。
死亡保障の金額
もう一つの落とし穴は、死亡保障です。
子どもが小さい家庭で、配偶者と子どもの生活費、教育費、住宅費を支える必要がある場合、死亡保障400万円や800万円では足りない可能性が高いです。
残された家族に、いくら不足するかで決まります。
ここが、県民共済と生命保険の最大の分岐点です。
生命保険契約者保護機構の対象外
もう一つ「共済は生命保険契約者保護機構の対象外だから危ない」という指摘があります。
制度上の違いとしては事実です。
生命保険契約者保護機構は、生命保険会社が破綻した場合に資金援助などで保険契約者保護を図る仕組みで、国内で事業を行う生命保険会社は会員ですが、共済や少額短期保険業者などは会員ではないのです。
各共済会内で支払余力(ソルベンシー・マージン比率)の確保や独自の基金・準備金で運営の安定を図っています。
ですから共済と保険ではセーフティネットの枠組みが違う。
ここは理解すべきです。
ただし、それだけで県民共済を過度に避ける必要はありません。
そもそも、県民共済は掛け捨て保険ですからもしもなにかあったとしても被害は最小限なんですよ。
そういった制度の違いを理解したうえで、保障額、保障期間、家計への負担を比較することが大切です。
おそらく生命保険を売っているようなFPや生命保険の代理人に県民共済について聞いたらこのあたりの落とし穴を取り上げてをボロクソに言うでしょう笑
比較検討をされると県民共済に流れる人が一定数いるため、事前にその手の対抗トークが出来上がっているんですよ。
ポジショニングトークであるという認識が必要ですね。

県民共済と一般の生命保険どちらがよいのか
ここまで読んで、「では一般の生命保険のほうがいいのか」と感じた方もいるかもしれません。
ですが、ここでひとつ、視点を変えてみてください。
「共済か、生命保険か」という二者択一こそが、実は落とし穴なのです。
なぜなら、両者は競合する同種の商品ではなく、役割の違う道具だからです。
包丁とハサミのどちらが優れているかを争っても意味がないように、共済と生命保険は「何を片付けたいか」で使い分けるべきものです。
あなたが本当に解決したい「用事」は何でしょうか。
もし、片付けたい用事が「子どもが独立するまでの間、大黒柱に万一があっても家族の生活を守りたい」なら、必要なのは3,000万〜5,000万円規模の死亡保障です。
県民共済の死亡保障は、最も手厚いコースでも数百万円〜2,000万円程度。
これでは到底届きません。
ここは収入保障保険や定期保険の出番です。
もし、用事が「90歳まで生きたときの医療費に備えたい」なら85歳で切れる共済では、肝心の時期に空白が生まれます。終身の医療保険が必要になります。
もし、用事が「先進医療など、超高額な治療に備えたい」なら共済にも先進医療の保障はありますが、通算上限が抑えめです。
陽子線治療は1回あたり約300万円、重粒子線治療は約310万円。民間のがん保険が実費で1,000万〜2,000万円規模をカバーするのに対し、共済の上限は限定的で、治療の高度化に追いつききれていません。
逆に、用事が「とにかく安く、最低限の保障を、シンプルに持ちたい」「持病があって民間保険に入りづらい」なら県民共済はこの上なく頼れる相棒になります。
問いは「どちらが」ではありません。
「自分の用事に、どちらの道具を、どう組み合わせるか」です。
医療保障は「公的保険」を先に考える
県民共済や医療保険を考えるとき、もう一つ忘れてはいけないのが公的医療保険です。
日本には高額療養費制度があります。
医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が上限額を超えた場合、その超えた額を支給する制度です。
たとえば現行制度では、70歳未満で年収約370万円から約770万円の人が医療費100万円の治療を受けた場合、自己負担は約8.7万円まで抑えられます。
この制度があるため、医療保険や県民共済の入院保障は「医療費そのものを全額カバーするもの」と考えないほうがよいです。
差額分を保障できればよいと考えるのが妥当でしょう。
日本人は保険に入りすぎなんですよ。
ただし、高市政権になり、高額療養費制度が改悪がされることが決まったので、その辺りは加味して考える必要はありそうです。
詳しくはこちらの記事で解説しております。

県民共済が「向いている人」「やめたほうがいい人」
ここまでの話から県民共済が向いている人とやめたほうがいい人にまとめると以下の通り。
県民共済が向いている人
・最低限の入院保障を安く持ちたい
・大きな死亡保障は不要
・独身、子どもが独立済み、または配偶者にも収入がある
・民間保険を選ぶのが面倒で、とりあえず保障を持ちたい
・貯蓄がある程度あり、医療費の一部は自己資金で出せる
・終身保障や貯蓄性を求めていない
このような方だと一般の保険にはいるよりもお得なケースが多いと思われます。
県民共済「だけ」では、やめたほうがいい・足りない人
県民共済は悪い制度ではありません。
しかし、次に当てはまる人は、県民共済だけにするのは慎重に考えたほうがよいです。
・小さい子どもがいる世帯主
・収入保障保険のように、毎月の生活費を補う形で備えたい
・終身保障がほしい人
・保障期間、保険金額、特約を細かく設計したい
お気づきでしょうか。「やめたほうがいい」のは県民共済そのものではなく、「県民共済だけで完結させようとする発想」なのです。
つまり、県民共済と生命保険は競合ではなく、役割が違うのです。
保険料の安さだけで比べると、県民共済が勝ちやすいです。
県民共済は使い方によっては生命保険よりかなりお得ですからね。
しかし、必要保障額を満たせるかで比べると、生命保険が追加で必要な人も多くなります。
「主役」ではなく「土台」にする
県民共済をうまく使うコツは、主役にしすぎないことです。
もちろん、独身者や子どもが独立した世帯なら、県民共済だけでも十分というケースはあります。
しかし、家族を養っている現役世代なら、県民共済は「保険の土台」または「補助」として考えたほうが安全です。
たとえば、次のような設計です。
ケース1:独身会社員
県民共済で最低限の入院・死亡保障を持つ。
基本的に大きな死亡保障は不要なので、一般の生命保険は未加入。

ケース2:子どもが小さい会社員
死亡保障は一般の生命保険で大きく確保。
医療保障は県民共済で最低限持つ。
がんや三大疾病が不安なら特約や別保険を検討。
ケース3:自営業者
県民共済だけでなく、就業不能時の資金繰りを重視。
生活防衛資金、所得補償、事業資金の確保をセットで考える。
iDeCoや小規模企業共済や倒産防止共済などを優先するのもありです。
ケース4:50代以降
県民共済の継続後の保障額低下を確認。
老後の医療費は公的保険、貯蓄、必要なら終身医療保険を組み合わせる。
このように、県民共済は「全部入りの最強保険」ではなく、「安くて使いやすい基本パーツ」と考えると失敗しにくくなります。
まとめ:県民共済は「最強の保険」ではなく、「最強の土台」
最後に、本記事の核心を一文で。
県民共済は「最強の保険」ではなく、「最強の土台」である。
県民共済は安くて、分かりやすくて、入りやすい。
これほど優れた土台はそうありません。
ですが、土台の上にどんな家を建てるかは、あなたの「用事」次第です。
大きな死亡保障という柱、終身医療という屋根。
足りない部分は、民間保険で補う。
この設計図さえ持っていれば、県民共済は心強い味方になります。
「安いから最強」で思考を止めないこと。
「自分は、何のために、いつまで、いくらの保障が必要なのか」を考え抜くこと。
それこそが、保険選びで後悔しないための、たった一つの本質です。
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